Arachnes   

Apocalypse (2002)





【曲名】
1 .The Concept Of Time And Space
2. Decisive Battle
3. Apocalypse
4. Prayer(Part 1)
5. Prayer(Part 2)
6. My Destiny
7. A New Breathing
8. Decisive Battle(reprize)
9. Tango
10. The Rain Song
11. Forever
12. The Blade Of My Brain
13. The Dreamer
14. The Power Of God
15. Realm Of Spirits
16. Epilogue


【全体的な印象】

イタリアのメロディック・パワー・メタル、アラクネスの3枚目に当たるApocalypse(アポカリプス)は、最近では一番感動したシンフォ・ロックです。私が気に入ったんですから、大仰です。(^^)

メンバーは平均年齢が23歳と若いのですが、若さに似合わぬ、練られて熟成されたバラエティ豊かな楽曲と、ボーカルとキーボード担当ののエンツォ・カルーソと、ギター担当のフランコ・カルーソの兄弟の超絶テクニックがキラリと光ります。


【ギターを聴いて感じたもの】
プログレ、ジャズ、ネオクラシカルと、多岐に渡った音楽性です。
興味深いのが、ギターのフランコ・カルーソの敬愛するギタリストです。イングウェイ・マルムスティーンリッチー・ブラックモ
です。1曲目はイントロなので置いておいて、2曲目のDecisive Battleからは、リッチーの影響をびんびんに感じました。あまりにもギターフレーズが心地よく、またリッチー節を効果的にセンス良く取り入れている点に、完全にKOされました。
たとえば、「Decisive Battle」を例に取ると、
@ 0:18でのメロディ音を引っ張りながらタメを作るフレーズです。これは『バビロンの城門』のタイトルナンバーのギターソロに通じるものがあります。
A 0:25ではドリームシアター『メトロポリス Pt.1』「The Dance Of Eternity」のラストのフレーズを思い起こさせます。
B また、1:18では、再びリッチーの『銀嶺の覇者』の「へびつかい」のギターフレーズを思い出します。ものすごく中世的です。
C 1:45ではドリーム・シアターの『Six Degrees Of Innner Turbulence』の「Aboout To Crash(Reprise)」の3:30あたりの印象的なフレーズを思い出しました。
D そしてとどめ!!間髪いれず、1:56の早弾きはインギーのフレーズだぁぁぁ〜〜!!

こんなのの連続なので、私が嫌いになるワケありません。
好きなフレーズがいっぱい飛び出してくるのに、それが無理なく自然につながっていて、しかも恐ろしいことにレベルアップしているんです。完全にアラクネスの世界を構築しています。
パクリだとかは、全然思いません。それどころか、よくぞここまで凝縮された楽曲を作ってくれたと感謝したい思いです。
インギーをさほど聴きこんでいないため、インギーからの影響がまだ少ししかわかりません。それが悔しくて、ただ今インギーを聴き込み中です。こうなると、ますます気に入ってしまいそうです。
My Distinyのギターリフには、ラプソディのルカ・トゥリッリの影響も感じました。

アラクネスは、私が中学生の時に初めてリッチーのギターに触れた時以来の、私の好きなギターの原点や根源を、あらためて考えるきっかけを与えてくれました。それほどまでに、私の体内に流れている血が反応してしまうんです。
いつ、いかなる時でも、必ず反応してしまうフレーズってあるんですが、それがまさにアラクネスに存在しているんです。
『中世的でメロディアス!早弾きだってほしい!!さらにプログレがかったシンフォロックがいいっ!!』この欲張りな要求に答えます。私が求めていたギターの回答だとも言えます。アラクネスを聴いて感じる至福の思いを止めることができません。
リッチーのギターのアコースティックバージョンが“ブラックモアズ・ナイト”で、エレクトリック・バージョンが“アラクネス”。。。そこまで言ってしまいます。(^^)v

リッチー直結のサウンドを持つアラクネス!彼らが今後どう変化していくのかが楽しみで仕方ありません。



【ボーカル・スタイル】

エンツォ・カルーソのボーカル・スタイルは、クィーンズライチのGeoff Tateに似ていると思います。全体的に声がよく出ていて、高音に強く、感情を込めて歌えるタイプです。
パワフルに歌いこんでいるんですが、決して1本調子ではありません。

それがよくわかるのが、11曲目の感動的なバラードの「
Forever」です。
シンセでのやさしげなイントロで牧歌的な風景を描き出したかと思うと一転、それにかぶさるスローなピアノのアルペジオがマイナーな緊張感を作り出し、エンツォが珍しく低音でデリケートにゆっくり歌い始めます。
この声が男らしくて繊細ではっとします。低音のみ、ゲディ・リーです。(^^)
それがロッカバラード特有の徐々なる盛り上がりを見せ、キーも上昇し、クサいほど感情移入したサビに繋がります。息づかいや声の出し方など、なにもここまでやらなくてもと思いますが、サビを引っ張らず、しかも余韻を残した終わり方がマル!これでクサさをかなり消しています。いや、クサさがイヤなんじゃありません。むしろその感情移入が好きだったりします。すごく感動的です。エンツォはいろんな表現ができると驚き感心します。
ギターは中間から加わります。メローで風が流れるようでそれほどでしゃばらずに心地いいです。
ヘヴィーな作品が多い中で、いいアクセントになっています。

エンツォは優れたボーカリストである以上に、優れたキーボードプレーヤーだと思います。
8曲目の
Decisive Battle(reprise)では、荘厳でいて崇高ななチャーチオルガンによる小曲なんですが、イタリアというお国柄か、神格化された寺院の宗教めいた空気が漂っています。リプライズというだけあって、2曲目のドリシアに似たフレーズも飛び出してきます。このセンスはただものじゃないです。
また、15曲目の
Realm Of Spiritsでも、その緊張感のある空気感が漂っていて、アラクネスの持つ世界観に容易に入れます。
タイトルがアポカリプス(黙示録)という重いテーマだけあって、曲名にもあるように、“祈り人”“夢見人”“神の力”さらに詩にある“破壊”“狂気”“地獄”がネオクラシカルだなぁ〜と思うんですが、神による救いが最後にあるのがイタリアっぽいと思います。戦闘の描写が少ないのも特徴だと思います。
シンセによる分厚い音の壁がワクをなし、その分軽めのギターが控えめに入るのが、センスの良さの表れです。


【なんと言ってもTango!!】

しかぁ〜し、これだけじゃ終わらない!
アラクネスの一番素晴らしい点は、9曲目の「
Tango」にあるんです!!
Decisive Battle(reprise)の荘厳なチャーチオルガンが終わるか終わらないかで、いきなりけたたましく入るイントロ!!「なんじゃこれは??」と、のっけから耳が惹きつけられます。ギターとベースとドラムスのリズムがユニゾンで一体になっていて、ものすごいインパクトです。
するとザクザクとスピード感溢れるリフが始まり、「どうしたんだ、この迫力は??」と聴き入ると、もうリッチーが乗り移ったんではないかと思える鬼気迫るギターソロ(しかも超絶!)が始まり、この演奏からはもう逃れることができません。使用ギターが白のストラトなのがいいね♪
めちゃくちゃ早弾きで何がどうなっているのかわからないパートとメロディアスなパートが混在しているにもかかわらず、それがひとつの作品としてまとまっています。コードやメロディ進行は、まさに私の好みのど真ん中です。ネオクラシカルまっしぐら!です。
メロディは、0:26での始めの音は伸ばし気味でタメを作っているんですが、0:42の同じメロディでは伸ばさずに弾いていて変化をつけています。タメがあるのにくどくならないのは、この辺の工夫にあると思います。
疾走感とメロディアスさとテクニカルさとインパクトがきれいに融合していて、何度聴いても飽きません。ギターのカッコ良さといったらありません。まったく信じられない曲です。


リッチーのスピリットとテクニックはここに受け継がれたかと感動した、魂のアルバムです。Tangoに関しては、もう40回聴いていると思います。
テクニックとメロディが渾然一体となって迫ってくるのには、ゾクゾクします。
いやぁ〜、いいアルバムに出会えたものです。(^^)v



【マサさんによる感想とサウンド解説】
最初に聴いて、やっぱしビックリ。最後まで続いた印象で強いのは「疾走感にあふれたサウンド」であるということ。
しかも聴けば聴くほどに、ギタープレイの正確さを感じる「味のある作品」に仕上がってます。
ボーカルの「マイケル・キスク」ばりのハイ・トーン、そして粒揃い・エッジの効いたギター。
やはりフランコのギター!様々な音楽からの影響を感じます!
#2「Decisive〜」では、ゲイリー・ムーアばりの下降フレーズ、ブラックモア〜ばりのエスニカルなフレーズを奏でたかと思えば、さらにはあ曲ラストの「速弾き」ではイングヴェイの「トリロジー・スーツ」を彷彿させる壮絶なフィンガリングをも放つ!!

しかし、バッキングからの表情を変えるソロパート、曲の間を結ぶ間奏における疾走感は止まらない。
そして後半からは、バッキングにもピッキング・ハーモニクスを交えたバッキング、スウィ−プを惜し気も無く披露しまくり。
#9「tango」の疾走感、聴けば聞くほど病み付きになること間違いなし!
急にテンポが変わり、いきなり音を刻んでいきつつアームで揺らしたあと、そこから奏法チェンジ。
あのグググといわせる音は、「音を落として〜戻してを細かく繰り返している」という、アームでしか出来ない操作なんです。

そして、全編にわたってのアーミング・ヴィヴラートも奏法も決して単調では終わらせない!
#11の「Forever」での泣きのフレーズも後半を締めるアクセントになっている。
#13「The Dreamer」では、一本弦でのクラシカルプレイ、#14「The Power Of God」でのイングヴェイ「ライジングフォース」で、新旧ネオクラファンを頷かせる。
#14「The Power Of God」でのイングヴェイばりに、指板上を上下に疾走するフレーズを取り入れたからには、生でみてみたい!!
これにつきます。



管理人のおせっかい^^;
 ・マイケル・キスク・・・・・・ハロウィーンの元ボーカリスト
 ・ピッキング・ハーモニクス・・・・・・倍音(1オクタープ上の音)を出す奏法
 ・スウィープ・・・・・・急速に連続した高音を出していく超絶奏法
 ・アーミング・ヴィヴラート・・・・・・アームを使って音を震わせる奏法