俊輔ラストゲーム

              対東京ヴェルディ1969    於 国立競技場  52,073人

                                              2002.7.21



【ゲームの前に】
今日は俊輔のラストゲーム!
明日にはイタリアに発ってしまう。
今ここにいる俊輔で、文字通りの見納めになってしまうのだ。

俊輔には大きく羽ばたいてほしい。日本だけでなく海外のチームで活躍してほしい。スペインやイタリアのチームで活躍できてこそ、一流と言えるのだ。
私が高校の選手権で俊輔のプレーを偶然見てからというもの、その確かなパス力、キック力、そして何よりも想像をはるかに越える、意外な展開に魅了されてきた。ボールを持ったらいったい何をしでかすかわからない。力よりもワザでかわす、柔軟なプレーぶりにすっかりまいってきた。
飽きっぽい私が、他のJリーガーなんて目もくれず、俊輔ひとすじだったのだから、その愛情ぶりがわかるだろう。


ということで、7/21は、ものすごく暑い中、国立競技場へ行ってきました。
試合開始1時間半前から千駄ヶ谷の駅にいたんですが、ここで早くもサポーターが群れをなしていて、その熱狂ぶりが伝わってきました。
俊輔のマリノスユニや、なんと日本代表ユニを着た人までいます。彼らは、MATSUDAのネームが入ったユニか、14番のSHUNSUKEユニを着ているんでしょう。
時折赤い、スペインのユニを着た人がいて、W杯のあとの試合だと思わせます。
私もいっしょに観戦するしほりんから俊輔Tシャツを借りて着、席についてからはマリノスのタオルマフラーを首から掛けて、もう思い残すことないように準備万端でした。

手荷物チェックを済ませてから中に入ると、俊輔のステッカーを配っていたのでもらいました。【Thank You 俊輔】と書いてある。。。ああ、ホントにさよならなんだな。。。
俊輔グッズの長蛇の列はものすごくて、とても並ぶ気になれませんでした。
でも、そのとなりに、shunsukeHPに書かれていた、サエさん中心のフラッグへの寄せ書きがあったので、参加させてもらいました。
「レジーナでも活躍してくださいね massh」と書いたんですが、にじんでよく読めません。でも、それが俊輔の手に渡ると思うと感慨深いです。

52000人もの人が集まってきているので、飲み物を買うにも並ばなくてはなりません。
メンドーなので、ビールの客席販売に賭けました。^^;

席につくと、もうすでにサポーター席は満杯で、旗を振り、小刻みに揺れています。あの席につくために、前日からシートを貼り、コンディションを整えて来ているんだなと思うと、それほどまでに愛されている俊輔って、ホントに私たちと同じ人間なんだろうか? そこまでする価値が十分にあるんだなと感激しました。
私たちは指定席のSSです。もう若さとそこまでする情熱がないから楽々コースですぅ。^^;
前から11列目。程よく近くていい席でした。
(写真は、ウキウキ気分のmassh。俊輔Tシャツにマリノスタオルマフラーです。)

さて、選手が入場して練習が始まりました。俊輔のシュートは外れています。キックの強さもいつもほどじゃありません。ケガで戦列離脱していたのが響いているのかな?
それでも、パスの時に身をかわすのは速くて、身体能力の高さを感じさせます。

そうこうしているうちに、メンバー紹介となりました。
「背番号10 ミッドフィルダー 中村俊輔っ!!」
そうアナウンスされた時のものすごい歓声!!他の人の3倍はありました。
おお〜っ、みんな気合入っているなぁ〜。テンション高いゼぃ!
いやがおうにも、期待が高まります。


【試合開始!】
そしてホイッスルが鳴り響き、試合が開始いたしました。
(写真は、ラストゲームのスタメンです。)
エノの歌が響き渡ります。おおっ、エノの歌もできたんだぁ〜。
序盤はヴェルディが押し気味です。まぁ、マリノスは後半の方が動きがいいし、特に序盤は相手の出方を伺うからこんなもんさとは思いながら、ヴェルディのエジムンドがいい動きをしてボールをキープしていたので、何となく不安でした。
先にシュートをしたのは、ヴェルディでした。他にもゴール前にボールを持っていかれるけれど、そのつどマツが落ち着いてうまくカバーをしていたのでほっとしていました。
けれど、マツってゴール前の大切な場所でファールを取られるからなぁ〜〜と、なんともイヤな予感がしていたのでした。

私って、悪い予感だけは当たるのです。この時のファールもマツでした。ゴール前正面ですが、少し距離があるところでヴェルディがFKを得ました。キッカーは、再三いい動きを見せていたエジムンド!ファールを掛けられた本人です。
マリノスはエノの指導のもと、壁を作りましたが、ちょっと隙間があったのよね〜。エジムンドはその隙間をうまく抜けてゴール左のサイドネットへゴ〜〜〜〜ル!!(前半20分)
くっそぉ〜、防げなかったかなぁ。オーロラビジョンで見てみると、エノが右へ寄りすぎのようでした。

あ〜、あ〜、何で先制されるんだぁ〜?
ヴェルディなんて、下から数える方が早いんじゃないの〜?知ってる選手も少ないよ〜〜。
首位のマリノスが何てこった!
でも、前半だってまだ25分あるし、チャンスは必ず巡って来るはず!焦らずに見守って行こう。
これを逆転して勝った方が、感激の度合いが強まるってもんだわ!

不安を打ち消し、応援を続けました。
“オ〜〜〜、Fマリノ〜ス、マリノス、マリノス、マリノ〜〜ス!!”
“Fマリノスッ!(チャチャンチャチャチャ!)”
今までも聞いてきた応援歌は、いっしょになって歌って手拍子です。

コーナーキックは、全部俊輔が蹴るんですが、今日は一段とものすごい閃光です。俊輔がコーナーにやってくるだけであちこちでフラッシュがたかれ、キックともなれば、花火が炸裂したかのような、ライブ会場でストロボが点滅したかのようなまばゆさです。一瞬ボールを見失いそう。
その中で蹴る俊輔がすごければ、それを防ぐキーパー高桑もすごいわぁ〜。
(写真は、ボールをキープする俊輔。フォローの選手はどこに?)

そんな中、ゴール前近く、ゴールよりも左寄りという絶好のポジションで、マリノスがFKをGETです。
キッカーはウィルか俊輔か。。。
ここは左からなので、当然俊輔でしょ!
けれど、俊輔が蹴ったボールはヴェルディ選手の壁の胸に当たりました。あ〜、残念!
みんながそう思ったのでしょう、どよめきました。
私がびっくりしたのは、胸に当たった瞬間、劇画のように当たった胸が閃光したこと!フラッシュの光とボールが重なってそう見えたらしいのですが、ボールに仕掛けでもあるのかと、一瞬目を疑いました。^^;

でも、マリノスの攻撃は徐々に形になってきています。
マツはオーバーラップしてくるし、ウィルが前線でキープしてきたし、ハトが中へ切り込むと、中沢がカバーして万全の構えです。ドトゥラ→奥のシュートは惜しくもクロスバーの上でしたが、確かな手ごたえがありました。
そうした前半34分、またしてもFKです。さっきよりも距離があるので、直接狙うのかどうか――。
俊輔がまたキッカーです。頼むよ、俊輔!
今度は左から右へものすごくカーブするキックです。ちょうど私の席からはその球筋が見えて、そのままだと左へ切れてしまうボールが、キーパーの場所へ来ると右側へ切れ込んできました!
あれじゃ、キーパーはパンチで防ぐのが精一杯でしょう。そのパンチングした拳の前でドトゥラがジャンプし、そのボールが頭に当たり、際どくゴール左のサイドネットに転がり、マリノスゴ〜〜〜〜ル!!
やった、やった、同点だぁ〜〜〜!!
混戦模様で何がどうなったのか確認できなかったのですが(ファウルしてるのかなぁ)、オーロラヴィジョンでクリーンなゴールが認められると、友達と飛び上がって喜んじゃいました!!
俊輔は、両手を上げてからガッツポーズ!!
そしてグラウンド中央まで走って行きます。
ああ〜っ、うれしいわぁ〜。俊輔カッコいい〜〜〜っ!!
(写真は、そのFKです。体を“く”の字にして、カッコいい〜!!)

そして、もっと歓喜の声を上げたのが、その5分後だったんです。
前半39分、俊輔は右コーナ近くでボールをもらうと、ヴェルディのDFが二人つきました。その二人を相手に、右や左へ、足の裏を使ってボールを回すという、トルシエが嫌いなプレーをしています。今日2回目です。私は早くボールを他の人に預けちゃえと思ったんですが、それを俊輔は予想をはるかに上回るプレーで打開です。
な、なんとDF二人の間を抜けていこうという寸法です。ああ、俊輔、それは無謀じゃないのか。。。
ところが、ここからは見えないのですが、DFの間が開いていたのか、虚をつかれたのか、その狭い間を俊輔は抜けて行ったのです。DFはたまらず足を出したら一瞬遅くて俊輔を引っ掛けて、転倒。。。
ピィィィィ〜〜!!
うっ、何だろう。。ファウルならPKだけど、シミュレーションならイエローだぁ。。。
引っ掛けられたように見えるけれど、ビミョーだぁ〜。

判定には、やけに時間がかかったように思います。
マリノスサポーターは気が気じゃなかったことでしょう!そしてそれがPKだとわかると、もう総立ち!!
やったぁ〜〜!最高の舞台で最高のお膳立て!
これを見事に決めて、イタリアへ行ってねぇぇぇ〜〜!!
俊輔の並外れた精神力なら、きっと決められるはず!

俊輔はボールをプレイスすると、そんなに考えることなく、すぐに走り出しました。どちらに蹴るんだろう?
するとボールを足首に当てて、鋭い角度で右のサイドネットへゴ〜〜〜〜ル!!
やったぁ〜、やったぁ〜〜!!
うっわぁ〜、スゴいよ俊輔!もう飛び上がって喜んじゃう!!
右手にデジカメを持ち、左手で何度もガッツポーズ!!
高桑は左へ飛び込んでいました。逆方向です。
オーロラヴィジョンで見ると、俊輔の体は左を向いています。なのに蹴り足だけは途中から右へ流れてきて、しかも足の甲でなく足首あたりに当てたのだから、コースが読めなくなっていたのです。
なんてスゴい技術なんだろう!
そんな蹴り方でワクへ行くこと自体が驚異です。こんな蹴り方もできるんだぁ〜。
(写真:フィールドプレーヤーの右から二人目が俊輔!)

そうやって、2-1で逆転したあとは、俊輔のキレが一段と良くなり、再三スルーパスが通るようになってきました。
マリノスペースのまま、前半は終了しました。
(写真:シャツで汗をぬぐう俊輔。それと、必ず下を向いて退場の俊輔。)

【後半】
さぁ、後半!
マリノスがさらに得点して突き放すか?
今日は絶対に負けそうにないから、安心して見られます。

後半は、終始マリノスペースでした。
俊輔は守備が課題だと言われていますが、パスカットをするために足を出すだけでなく、ボールのもとへ近づいて、体を入れてボールを奪っていました。2本はそうやって奪ってました。
こういった守りの意識は、初めて見るものでした。俊輔がじかにボールを奪うなんて!うまくなったわぁ〜。
他にも、ボールを持ったと思ったら、体を素早い動きで動かし、まったく相手を寄せ付けなかったのです!その華麗なプレーにはため息が出ました。
そうかと思うと、ダイレクトパスで、一瞬で誰もいないところにボールを転がし、チャンスメークをしてました。
ナザやドトゥラの両外人は、見た目ソックリで見分けがつかず、プレーのうまさと運動量も変わらずすごくて、彼らが守備や俊輔からのパスをよくフォローしていて、見ていて安心しました。
ボランチの上野は、ボールを持つとすぐに俊輔に渡します。今日は俊輔のゲームだというのをよく理解しています。

後半71分、ここでよく運動していたウィルに代わり、平瀬投入です。
彼は、他の控えの選手と、私たちの目の前でアップをしていたんですが、いつの間にかいなくなっていました。どうしたのかなと思っていたら、ユニフォームに着替えに行っていたんですね。
観客席に向かって笑顔も見せていたし、好感度上昇中です。

その平瀬に向かって、俊輔といい、ハトクンといい、見事なセンタリングが上がっていました。平瀬は意外と足が速いから追いつきます。
でも、ここが問題なの。追いついても、フィニッシュがうまくいかない!
それとオフサイド取られっ放し!
パスを受ける前は、少し下がってねぇぇぇ〜〜!!
俊輔や他の選手との連携もうまくいかず、ボールを同時に追ったり、譲り合ったりしていたけれど、それはそのうち修正できるでしょう。でも、ボールをキック、あるいはヘッディングする時に、腰が入っていないというか、突っ立っているシーンが何度かありました。
あれを体ごとぶつかっていけば、得点できたんじゃないかなぁ。ウィルなら。。と2回は思いましたぁ。
でも、オフサイドさえなければ、そのポジショニングは見事です。それを生かして、時節にも登場して、なんとか得点してほしいっ!!

83分には、かつてファン感謝デーでサインをもらったMFの遠藤がINです。
FWの清水との交代なので、守備固めでしょう。ソツなくプレーしてました。

そして!もう終了間際の時には、ついに俊輔が交代です。
え〜〜っ、なんでぇぇぇ〜〜〜???

でもいいやぁ〜、退場する時に近くを通るから。。と待ち構えていたら、俊輔はそのままベンチに座りました。
左から2番目の席。ベンチは透明なので、俊輔の背中が見える。そして俊輔はいきなり脱ぎ始めた。汗で脱ぎづらそうでした。
「最後だから、挨拶をするために残っているんじゃない?」友人が言いました。
きっとその通り。着替えるために脱いだのでしょう。
でも暑いためか、俊輔はハダカのまんま。筋肉質の美しい背中です。ただ、メンバーの名前を書いたボードが邪魔をして半分しか見えないの。ああ〜っ、あのボードをはずしたい!!

膝は、まだ良くなっていないのか、アイシングをトレーナーが始めました。
試合終了!!
けれど、まだ悠然と座っている俊輔!!
スポンサーが書かれたボードがグラウンド内に運ばれ、ヒーローインタヴューになりました。
その時に俊輔は初めて自分がインタヴューをされるのがわかり、シャツを頭に被せた状態で、慌ててグラウンド内に入っていきました。おいおい、シャツは後ろ前じゃないよね?(^^)
歩きながらシャツを無造作に着ると、すぐにインタビューは始まりました。
カメラのせいで、頭しか見えないよ〜〜。
もぉ〜〜、オーロラヴィジョンを見るしかない!!

【俊輔さよならセレモニー】
それが終わると、この暑いのに、俊輔はシャツをもう1枚、そして“ありがとうTシャツ”を着込みました。白くて胸に「Thank You!!」と書かれているものです。

そのあとは、再びマイクの前に来させられて、移籍の挨拶です。イタリアでも出来る限りがんばる!ときっぱりと言い切っていました。
俊輔は無理な約束はしてこなかった。。。
今回の言葉も有言実行してくれるはず。きっとだよ、俊輔っ!!
(写真は、神妙な面持ちであいさつする俊輔。)

そして、マリノスの選手たちに囲まれ、胴上げをされました。3回は宙に舞いました。
なんだかとってもうれしそう。
俊輔は、このマリノスでの王様で、みんなから慕われていたんだなぁ〜と、改めて思いました。名残惜しいでしょうね。でも、このラストゲームを勝利で飾れて、ホントに良かったね!!送る側も、ほっと一安心だったことでしょう。
俊輔は、胴上げの輪を離れると、競技場のトラックの一番外側を歩き始めました。ファンのみなさんに挨拶をするためです。
歩くたびに、花束が落ちてきます。まるで、フィギュアスケートの演技が終わったあとみたいと友達が言いました。うん、当たっている!!超満員の観客席で、帰ったのはヴェルディ応援団の約200人くらいです。あとは、みんな俊輔の勇姿をこの目に焼き付けようとかたずを飲んで、見守っていました。
一際声援が大きくなったのは、やっぱりサポーター席です。“俊輔”と書かれた紙やフラッグが無数に上がりました。
俊輔はそこで、5段くらいの階段に登り、両手を挙げて大観衆に答えました!!
はにかみ屋の俊輔が、こんなこともできるんだね!大人になったね!
大げさながら、サッカーが彼をこんなにも成長させたと、感動していました。

そして、報道陣に逃れるようにグラウンド内に入ったりまたトラック側に来たりして、私たちの前にもやってきました。俊輔は終始おだやかな笑顔です。
50000人以上の人に、俊輔なりのお別れを誠意を込めて、一生懸命にやっています。
(写真は、私たちの前を通った時の俊輔。)
そして、最後はあっけなく、グラウンドを後にして去ってしまったのです。
でもね、最後の最後で、俊輔は上目使いで観客席を見たのです!
それは初めて見る光景でした。あんなシャイな俊輔が、いつも下を向いて会場INやOUTをしていたのに、上目使いでこちらを見たんですよ〜。
もう、私はこれだけで満足です。目線ははずれていましたが、その顔がくっきりと脳裏に焼きつきました。
ああ〜っ、見に行った甲斐があったよ〜〜。笑顔じゃなかったけれど。。。
それは、VIP席にいた家族に向けられていたのかも知れない。この日の俊輔Familyは20人だったらしいから。じゃぁ、行ってくるよと。


行ってらっしゃい、俊輔!!
レジーナで、新たな歴史を作ってほしいっ!!
そして、今までの数え切れないくらいの感動をありがとうっ!!!!


 

横浜Fマリノス     東京ヴェルディ1969
   2     -     1 
 
 34分 ナザ              20分 エジムンド
 39分 中村俊輔                     
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