massh2号による感想
さて、本日ゴジラサントラを入手しました。私がゴジラを観たのは小学校の4年か5年のころだったと思います。堀切の映画館です。ゴジラが海底で平田昭彦に抹殺されるときに流れた曲が衝撃的でした。伊福部氏の曲です。とても悲しい曲です。その映画館以来一度も耳にしたことのない曲。それを今聴いています。
この曲はその後何十年も心にわだかまっており、いつかはサントラを買うつもりではいたのです。それがなぜか現在に至ってしまいました。考えてみると不思議ですよね。他にくだらないレコードはたくさん買い漁っていたのにね。それがなぜなのか。
実は私の父親は東宝に勤めておりました。オヤジはゴジラなどくだらない子どもだましだと思っていたようです。父親にとっての映画は黒澤や小津なんですね。そこに勤めている人間がそういうのだから、私もゴジラはくだらぬ映画だと思っていたのです。小学生の私にゴジラの真の意味など理解できるはずもありません。続編が作られる中、いよいよミニゴジラが登場するにいたって、やっぱりくだらない映画だと確信したのです。当時、ゴジラ誕生の背景などまったく知らぬ私は、曲には衝撃を受けましたが、作曲者にまで思いが及びませんでした。当時サントラ盤なんていうのも知らなかったですしね。そして何より私は日本の音楽に対し偏見をもっていました。それが長いあいだ伊服部氏と出会えなかった理由だと思います。
ご承知のとおり、当時私が聴いていたのはクラシックです。伊福部氏の曲は当然クラシックではありません。そこに驚きを見出したのです。オーケストラサウンドでこんな曲ができるということに。
一度ゴジラの作曲者が伊福部という名前なのは聞いたことがあります。まさか音大の学長とは知りません。ましてや芥川や黛の師匠だったとは知りませんでした。masshに言われたときもピンときませんでした。
実は怪鳥ラドンの曲も伊福部氏です。以前マイク・オールドフィールドのオマードーンのラストのギター音がラドンの断末魔だと書いたことがあります。そうです、似てるんですよ。曲が似てるのではなくて、根底に流れるものが似てるんです。うまく表現できないけど、外に向かわず内にこもる破壊的な、あるいは破滅的な音とでもいうのでしょうか。両者ともけっして建設的な音楽ではないような気がします。今のマイクは違いますけどね。
異種音楽の融合だけではなく、根底に流れるリズム、反復メロディー。ストリングスがまるで打楽器のような音を奏でる。それも怒涛の音の畳みかけで聴くものを圧倒する。移調変調を繰り返し、ピアノが不協和音を奏でる。鬼気迫るサウンドといえばありきたりですが、クリムゾンの太陽と戦慄を思わせるものがあります。マイク・オールドフィールドというより、プログレそのものじゃないですか。
masshが私が気に入ると思ったのはたぶんそういうところだと思います。実は1回聴いてすごいアルバムだということはわかりました。私の場合そんなことってなかなかないんですよ。でも初めて聴いた音じゃないんだから当然なのかも知れません。何しろ私の音楽の原点なんですから。
祭りの後の寂寥感を祭りの最中にすでに味わっているという音楽です。
マイクと似てる点ですが、「4声」(確かそういったと思う)にあると思います。同じフレーズを4回繰り返すのです。有名なエクソシストの出だしだと思えばいいです。昂揚感を煽るのによく使われる手です。マイクは好んで使います。これは5本の指でギターを弾くことと関係があるかも知れません。クラシックギターではよく使われますからね。ちなみにマイクはエレキギターを弾くのにピックを使いません。指で弾いてます。
なお、伊福部氏は東映時代劇の音楽もやっていたとのことで、邦画のサントラに多大な影響を与えた人でもありますね。マイクもキリング・フィールドのサントラ手がけてますし、似た点は多いですね。一番似ているのはどちらも暗いという点です(笑)。
外に向かわず内にこもる破壊的な、あるいは破滅的な音
1号: 破壊的、破滅的ですか。確かに構築してきたものを惜しげもなく、あとかたもなくこなごなにしてしまう感じはあります。
様式美とは遠く離れていますからね。
勧めてくれた人は、伊福部さんを攻撃的、野蛮、土着的と表現しています。
2号: 勉強しなかった人の最大の武器ですね。荒っぽいところが非常に魅力的です。
1号: そう、形式にとらわれない。内なる音にだけ耳を澄ましている感じです。日本の伝承曲と西洋の音楽の融合って、ヘタをすると民謡のシンフォ化になっちゃう気がして、寒く感じる気がするのです。が、これは、あくまでも伝承曲を一部分だけしが使わないから、その部分が生きているし、不思議な雰囲気をかもしだしていると思います。
2号: 本人がどこまで意識しているかわかりません。意識的に融合させたのか、それとも自然と出てくるのか。そのへんがあまりに巧みでわかりません。いずれにしても日本古来の唄は基本的にもの悲しいですよね。
それが滲み出てて、なおかつ欧米パワーにはない日本の奥床しさの中に秘められた屈折した爆発的なエネルギーを感じさせます。捨て身のパワーというのか、玉砕精神というのか。やぶれかぶれになったときのある種の爽快感と悲壮感が入り混じった音楽でしょうかね。本当にいいアルバムです。