nijidennsetsu   虹伝説


虹伝説―――こんなにリッチーへの愛情に満ち溢れたアルバムはかつてあっただろうか。。

日本人がRainbowのカバーをやっており、それがなかなかいいという記事を読んで、さっそく私も聴くことにした。
日本人ギタリストに疎い私は、梶山章という名前に全然ピンと来なかったが、むずかしいことは考えずにとにかく聴いてみた。

1.虹の彼方に〜キル・ザ・キング

おおおっ、これはのっけからライブのノリだ!
ギターの音色がリッチーそのもの。
キル・ザ・キングのイントロやサウンドの重ね方はスタジオバージョンだが、キーボードの入りとかボーカルのアドリブはライブだ。そしてなによりも梶山氏のギター!!細部までリッチー節を再現している。コピーというより、完全に自分のものにしている。まるでリッチーが乗り移ったようだ。
工藤氏のドラムも、パワフルなコージーに引けを取らない。宇宙的に広がるシンバル音なっていないのがちょっとだけ残念。

2.スポット・ライト・キッズ

森川氏とオリジナルを歌っていた、ジョー・リン・ターナー(特別出演)の掛け合いが楽しめる。
森川氏のボーカルは、声の張り上げ方がジョー・リンに似ていて、どっちが歌っているのか時にわからなくなる。主にバックコーラスがジョー・リンなのが痛快である。
レインボーの楽曲の楽しさを強調している。

3.アイズ・オブ・ザ・ワールド
これは、原曲よりもヘヴィーなアレンジ。
森川氏は、和製グラハム・ボネットと言われるだけの素晴らしい熱唱を聴かせてくれる。音域は広いし、音程はしっかりしている。
ギターソロは、導入部分の中世ムードをいっぱいに醸し出し、それだけで私は悩殺されてしまう。
終わり方も、さらに強力になっている。

4.銀嶺の覇者〜ミストゥリーテッド
この流れは、完全に初期レインボーのお得意のパターンだ。レインボー・オン・ステージで聴かせてくれた、後半の「Look t me〜」の発展させた形を余裕でこなしてしまう彼らの演奏が驚きである。ギターソロも早く派手になっている。
パープル時代のお得意のミストゥリーテッドは、なんと森川氏は、ロニー&デビカバとも言うべき声の伸びを聴かせてくれる。まったく驚きである。

5.ロード・トゥ・バビロン〜バビロンの城門

このトリビュートアルバムの聴き所の一つだろう。特別参加の元レインボーのデイブ・ローゼンサルの、オリエンタルムードたっぷりのオリジナル演奏で始まる。まるでライブのソロのようだ。
これがやがてバビロンの城門のイントロに流れていく。
ここでの、森川氏のロニーのクセを完全に把握したボーカルにいたく感動する。声の抜き方、母音がエからイ、アからイに変化するタイミングや発音がロニーそのものである。すごく丁寧に尊敬を込めて歌っているのがわかる。
それよりも感動したのが、森川氏のギター。リッチー以上にリッチーなのだ!!ビブラートのかけ方、特有のフレーズ、中世風のノリ、重々しさ、じらしかげんの間の取り方、高音のヌケ、すべてにおいて完璧で思わず頷きながら聴き入ってしまう。力が入ってしまう。これ1曲を聴いただけで、私はもう満足だ。何も言うことがない。

6.オール・ナイト・ロング

この曲は、個人的に、声を張り上げるパートと甘くささやくようなパートがあって、その使い分けが意外と難しいと思うが、それを森川氏は難なくこなしてしまう。
ギターソロは、オリジナルよりも早弾きで、“もしやインギーを意識してる?”と思えるインギー特有のフレーズを感じたが、アルカトラスのライブのオール・ナイト・ロングと比較すると、インギーはさらに早弾きでした。^^; リッチーとインギーの中間ってとこでしょう。
これもライブ・バージョンを採用していて、「I wanna love you、I wanna love you〜」と続く。

7.スターストラック

いきなりのジャジーな展開。いったいこの曲は??とはっとするが、いいアクセントになっている。
これも、ライブバージョンを踏襲して、初めの1音を引っ張って歌がすんなりとは始まらない。
ギターは、ソロが長引いて、あれっと思ったら、ジャジーな要素がちらっと顔を出そ。遊び感覚がたまらない。

8.ストリート・オブ・ドリームス

いきなりの森川氏のボーカルで始まる。アコギと哀愁溢れるボーカルがとにかく美しく、思わず目に涙が浮かぶ。
この曲は、際立ったギターソロがなかったと思うが、終盤のボーカルとからむギターもそうだが、素晴らしいとしか言いようのないアレンジにうっとりする。梶山氏は、私がこうしてほしいというギターソロを再現してくれる。これは、リッチーが大好きで、リッチーのことをよく理解し尊敬している人でなければできないアレンジだと思う。その根底に流れているのは愛情だ。全作品愛情に溢れていると思うが、特にこの曲で感じる。
プログレがかっていた原曲をはるかに上回る、実に聴き応えのある作品に仕上がっている。

9.ドリンキング・ウィズ・ザ・デヴィル
再びジョー・リン参加の曲。ジョー・リンと森川氏が交互に自在にボーカルを交えるさまがスリル満点でとにかく楽しい。ゴキゲンなロックンロールナンバーだ。ノリがとにかくいい。二人のシャウト合戦のようだ。(^^)
ライブでやったらウケるの間違いなし。最後にドラムソロがついていて、これがライブアルバムじゃないのが信じられない。

10.ロスト・イン・ハリウッド

この曲はまた、森川氏の迫力溢れるボーカルが炸裂!!ものすごい熱気だ。
ギターソロの終盤の、アドリブのような、ライブでやったらさぞかし盛り上がる場面で、ここぞとばかりたっぷり奔放に弾きまくっり、狂気の世界までも再現している。ヘッドフォンで聴くと、右と左で違うギターを使用しているのか、出てくる音が違う。左からはリッチーそのものの攻撃的でとがった音、右からはインギーばりの早弾きで、心なしかインギーのわずかに丸みのあるストラト音に聴こえてくる。両方とも梶山氏による演奏だが、これが最高のハーモニーを生み出している。
もしもレインボーがツインギターだったら、このようなライブをしていたんだろうなぁ〜。
夢のような再現である。

11.ア・ライト・イン・ザ・ブラック

引っ掻くようなノイズ音から始まる。うっわぁ〜、リッチーがライブでよくやっていた音だよぉっ!!こんなのまで入れているのかぁ。。
もう初めからリッチーが弾いていると錯覚して、森川氏のボーカルが乗ってきて、初めてこれが虹伝説と気づく有様だ。ドラムもキーボードも完璧。
だけどギターは数倍パワーアップしている。もう何百回と聴いているア・ライト・イン・ザ・ブラックなので、その隅々の音まで頭に叩き込まれている。ともすれば、トリビュートアルバムは、原曲との違和感と原曲への愛着感で、原曲を超えるのは困難だと思えるのだが、ここでのプレイはそんな心配なんかとっくに隅に追いやっている。
はっきり言って、原曲よりもいいっ!!オリジナルが基本だとすれば、ここでのプレイは応用編。なかなか核心に迫ってくれないリッチー節満載、アーム多用、早弾きや引っ掻く音、攻撃的な音、中世フレーズなど、もうムチャクチャだ。リッチーが最高にレインボーらしかった時代に、こう弾いてくれれば最高だろうなとの願望をクリアする、すべてにおいて満足させるアドリブ演奏。原曲を進化させた完全版と言うべきものだ。
梶山氏は、リッチー以上にリッチーのことが分かっている。

12.虹の彼方へ〜リプリーズ〜

アコギ1本でのエンディング。
ゆるやかに余韻たっぷり、心を込めて、穏やかに爪弾かれる。全ての力を出し切ったあとの心地良い疲労感のような、力を抜いた癒しを感じる。間の取り方、終わり方に梶山氏のセンスを感じる。
「nijidensetsu」は、コージー・パウエルへの追悼の意味も持つ。
この曲は、おだやかで優しげで、コージーの魂をそっと包んでいるように感じる。こう受け止めると、聴いていて涙が止まらないのだ。
ハードなだけじゃなかったレインボーにふさわしい終わり方だと思う。愛情を感じてならない。


13.レインボー・アイズ
She's been gone since yesterday
Oh I didn't care
Never cared for yesterdays Fancies in the air
Chorus:-

No sighs or mysteries
She lay golden in the sun
No broken harmonies
But I've lost my way
She had rainbow eyes
Rainbow eyes
Rainbow eyes
あの娘は昨夜から行ったっきり
あぁ、僕は気にもとめなかった
昨日のことを何も気にしてなかった
空中の幻よ

あとかたも謎も残さず
陽の光の中に彼女は黄金の体を横たえていた
二人のハーモニーは壊れることもなかったのに
僕は道を失ってしまった
あの娘は虹色の瞳を持っていた
レインボー・アイズ....

まるでボーナストラックのようにくっついている。
サード・アルバムの「バビロンの城門」のラストに収録されている。
アルバムが出て、聴き込んだあとでロニー脱退を知ったので、今の今までその詩に隠されていたメッセージを知らなかった。(右参照)
彼女をレインボー、僕をロニーと置き換えると、ロニーのその時の心境がはっきりとわかる。
ラストに収録されていることから、ロニーの置き土産のように思えてくるのだ。
望んでいない脱退だが、二人の見つめる方向が違ってきてしまった今、別々に歩むしかない。レインボーでいっしょにやっていきたいのだが、これが最良なんだ。。。と。

当時高校生のひよっこだった私は、なんとなくニュアンス的にはわかっていたのだが、これほどまでには理解していなかった。25年目の真実でようやく理解し、憎みあって別れたわけではないロニーとリッチーのそれぞれを思い、後から後から涙が溢れて仕方ない。
詩の内容に気づかなかった自分の無念さと、この曲のメッセージ託された意味と、自分の道に素直に突き進むミュージシャン達に感動して。


それを梶山氏と森川氏が、余分な装飾なしに素直に穏やかに控えめに演奏する。それがまた私の感性に訴えかけ、感情的になってしまうのだ。彼らは泣かせどころを知っている。。。
ロニーがいた頃が好きだったと無言で語っているようで、うれしかった。


思い入れが強いので、感情的なレビューになってしまってちょっと恥ずかしい。人によって、思い入れが違うので、また違った印象があるだろう。
しかし、この歓喜で感動的なアルバムは、レインボーの作品群をもっと高度に押し上げてくれたと思っている。心にすっと入り込んでくる。
製作されたことが奇跡的でさえ思えてくる。このアルバムに出会えて良かった。
素晴らしいアルバムを作ってくれた梶山氏と森川氏にものすごく感謝する。
特に梶山氏は、リッチーのプレイをさらにテクニカルに早弾きにしてくれた。
そして、レインボーがますます好きになっていくのだ。