シンフォニーX

X-新・神話組曲-



タイトル通り、シンフォニーXの5枚目のアルバム。
これは、彼らが独自に創造した『アトランティス文明の支配者』のストーリーに沿った展開になっている。

ストーリーの内容
遥か太古の昔、高度な文明を築いたアトランティスは、肉体を持たない純粋意識である創造主との関係を失っていなかった。アトランティスの支配者と、支配者が誤って創造してしまった邪悪な半人半蛇の被造物の戦い。その光と闇の戦闘の結果、アトランティスは滅んでしまう。
舞台をエジプトに移して、依然戦いは続く。。というのが大雑把な内容である。
これに「マアアトの御子」という、平和と秩序をもたらす使者がからみ、ストーリーに幅をもたせる。
物語は悲劇的な結末を迎えるが、「X」をキーワードに回復の道が残されないではない。

おそらく、シンフォニーXで一番プログレがかった作品だろう。
壮大なストーリー展開に合わせたトータルアルバムなので、初めて聴くとなじみにくい。
けれど、シンフォなサウンドでありながら、詰め込みすぎず、流れを大切にし、その場その場のテーマに合ったドラマティックなメロディには見事と言うしかない。

サウンドはマイケル・ロメオのギターが中心。それにマイケル・ピネーラのキーボードが被さって、広がりと立体感を形成している。
マイケル・ロメオは、クラシックに精通しているので、メロディラインの美しさには定評がある。
超人的な早弾きでありながら、音のつながりがきれいなのは、ピッキングを多用せず「レガート奏法」をしているからだそうだ。
そのサウンドは、バロック音楽あたりを起源とし流麗なので、「こんなにできるんだぞぉ〜〜!」という圧倒的な早弾きでなく、威圧感がなくて聴きやすい。
特に「X」はヘヴィー面よりも叙情性を重視し、テクニカル面はサウンドを構成する一要素に留めていて好感が持てる。
イングウェイ・マルムスティーンの影響はあるものの、叙情性の充実により、独自の世界を切り開いている。

ラッセル・アレンのボーカルは、ダイナミックで雄大に歌い上げる。感情移入が上手で声もよく出ている。
ボーカルが入ると、メロディアスでテクニカルなパートを弾いていたギターは複雑なリフを弾くことになり、ボーカルとの競合はしないので、決してボーカルを邪魔しない。これがシンフォニーXが聴きやすい理由のひとつになっている。

ボーカルがコーラスになっていたり、他では聴かれない、感動的で印象的で独特なメロディを歌うので、心に染み入る。
多分、歌メロはネオクラシカルというより、プログレに近いと思う。これをネオクラシカルの声で歌っているのだ。

マイケル・ビネーラのオーケストレーション(マイケル・ロメオアレンジ)は広がりがあり、出すぎず音の空間をきれいに埋め尽くしている。ピアノの音色がクラシック調で美しく、格調を高めている。
先ほどのラッセル・アレンのボーカルと合わせ、シンフォニーXがオペラから発展したグループだというのがわかる。

マイケル・レポンドのベースとジェイソン・ルロのドラムスもテクニカルで、変リズムの多い楽曲を支えている。


私は、好きな楽曲の条件として再三「静と動の対比」と書いているが、「X」にはそれが見事に表現されている。
対比のバランスがこれ以上ないくらいよくとれている。
そして、メロディが信じられないほど感動的で大仰だ。よくここまで緊張感を持続させながら、場面を展開させ、それぞれが印象的なフレーズになると思う。聴いていて退屈することは全くない。
5曲目の「Communion And The Oracle」のように、プログレのように反復が多用されるが、それがまた心地いいのだ!主に静の場面でギターのアルペジオなどが使われるが、そこでそっと力を抜いて、次のヘヴィな面を聴く用意ができる。
ピアノの音色が圧倒的に美しく、幻想的である。時たま入るマイケルのギターがRushのアレックス風に聴こえて仕方ない。

部分的によそのバンドと似ている面はあるけれど(冒頭のオーケストラちっく&オペラちっくな「Prelude」はラプソディ、「Communion And The Oracle」の1:30あたりはカンサス、「A Fool 's Paradise」はインギー)、その後のネオクラシカル勢にパクられるだけあるなと思う。
しかし、2曲目の「Evolusion」の2:45の大仰で感動的な歌メロ、その後の早弾きのスリル感は誰にもマネできないだろう。あっ、ラプソディがいたか。(^^)