Take 1
『我が名はゼ』「ゼンガー・ゾンボルト。かつて俺と同じ教導隊に所属していた男だ」
『ンガー……』
名乗りを遮って、ユウイチが喋る。
良いところを奪われたゼンガーは、最後まで言うことなく名乗りを止める。
心なしか肩を落としたような零式。
『むごい……』
『名乗りは遮っちゃあかんでしょ名乗りは』
『芸人として心よりお悔やみ申す』
『シイコさんにもその気持ちわかるなぁ。黄門様が印籠出す時乱入するようなもんだし』
こそこそと通信機越しに何か会話するコウヘイとシイコ。
幸か不幸かユウイチの耳には入らなかったが。
と、いきなり顔を上げる零式。
機体の目がギラリと赤く不気味な光を発した.。
「ん?」
『チェストォォォォォォォ!!』
「うぉあ!?」
襲い掛かってきた零式を避けるゲシュペンスト。
だが間に合わず、右肩から叩き斬られた。
その踏み込みは機動兵器にあるまじき超高速。
ユウイチの腕を以ってしても反応するのがやっとだった。
斬られ流れた右腕が爆発する。
「な、な……いきなり何だこの野郎!!」
『黙れ!!』
『っ!』
『そして聞け! 我が名はゼンガー! ゼンガー・ゾンボルト!!悪を断つ剣なり!!
武士の名乗りを遮るなど言語道断!!
そのような卑怯な男は、今ここで零式斬艦刀によって潰えるのだッ!!』
「ちょ、待てやこら! あんた言ってる事滅茶苦茶だぞ!? 第一武士じゃねぇだろ」
『ツッコムとこそこかよ?!』
コウヘイのツッコミが駆け巡る戦場で、反転した零式が再度攻撃態勢に移った。
加速。
如何なる原理か、通常時の数倍の速度で疾駆する。
その速さは、示現流の理想『雲耀の間』の如きだ。
一瞬で間合いを詰め、ユウイチの眼前で斬艦刀を振り上げる。
『我が斬艦刀に断てぬものなし!!』
「え? マジ……?」
情け容赦なく振り下ろされる刃。
迫り来る白刃を目に宿し、ユウイチは友人の大人気なさに頭を抱えた。
−DEAD END−
Take 2
『我が名は……』
言葉の途中で停止する。
それにあわせるかのように振動する零式。
何か力を込めているかのようだ。
「なんだ?」
『むむ!?』
『何オリハラ?』
『これはネタの気配。あの機体は今ネタに入ってる』
『……はいはい』
『信じろよ!?』
ルミは取り合わないが、ユウイチはありえると思った。
昔から変なところで一般人とズレてる人間だったのだ、あの男は。
宴会芸でマグロを丸ごと真剣で捌いたりした事もある。
それはエルザムが見事に調理したのだが。
(良いコンビだったな。……変人度も同等だし)
何気に酷い。
しかし、彼自身その2人に引けを取っていない事に、不幸にして気付いていない。
人間は自分だけは違うと考えて生きているのだ。
『我が名は!!』
突如声を張り上げる。
零式も両腕を広げるような格好になった。
全身のいたる場所に罅が生じ、次いでそこから光が漏れる。
「……やばくね?」
『嫌な予感がしますね』
『これはネタだ』
『煩いわよオリハラ』
『何が起こるのかな? マイもドキドキしない?』
『する』
『この場合期待より不安のドキドキじゃないか?』
零式を囲んだ面々が、口々に言葉を吐き出す。
膨れ上がる不安を忘れようとするかのように……。
そして爆発。
皆の不安は見事的中。
予想を裏切ることなく爆発する零式。
巨体を隠すほどの光量が放射される。
「眩しいなー」
『いよいよだ!』
『ユウイチさんどうでも良さげですね……』
嬉しそうなコウヘイとダラケまくったユウイチが対照的。
正直ユウイチは疲れていた。
と、零式がいた地点から現れるシルエット。
両肩に紅いドリルを背負った、白くスマートな巨体。
「っておい! どう考えても零式よりでかいだろうが!?」
『ネタの中身は巨大化か……ロマンだな』
機体の名はスレード・ゲルミル。
ある施設を守る切り札。
と、そこで通信機に張りのある声が響く。
『我はウォーダン・ユミル! メイガスの剣なり!』
「それは次作の話だ!?」
音が伝わらない宇宙に、ユウイチの絶叫がこだまする。
その時、彼のツッコミは伝説になった。
OG2に続く……?
作者コメント
お遊びです。
親分登場でネタが2つ出来たんでちょっと乗っけてみました。
一応隠し扱いなので、見つけ方とかBBSに書かないで下さい。
Take 1
まぁ、何となく親分ならやりそうかなと。(爆
口上の途中でストップかけられると怒るでしょうしね。
あの人変なところで大人気なさそうでしょ?
Take2
ネタ的には、こちらの方が先でしたね。
発売決定を記念してってところでしょうか?
仮面だもんなぁ……。(笑