――時は1998年4月。
桜の蕾はまだ付かず、寒風の吹くこの雪の街で――
一つの物語が、主役一人を欠く未完成という状態でありながら幕を開けようとしていた――
「どうして、どうしてなの。確かに魔物は悪かもしれない。でも全ての魔物が悪とは限らない。少なくてもこの子が悪とは私には絶対思えなかった!」
「イチゴサンデー! 私にはこれ以外考えられないよ!」
「香里が恋ッ!? え、違う? 良かった。私ったらてっきり香里が発狂しちゃったのかと思ったよ」
彼女は疾風のごとき少女、普段ののんびりとした言動からは想像できないほどのスピードの持ち主。そして彼女も知らぬ、彼女の秘密とは……。
「名雪、確かに私は少々あなたに同情する。でもそんなチャチな感情忘れなさい。目的も無く道を選んだあなたと違って、私には目的がそして理由がある。私はあの子の為なら、これぐらいどうとゆうことは無い」
「起きなさい寝雪! 今日も遅刻ギリギリなんて嫌なのよ私は!」
「え、私がリーダー? 嫌よ、私は参謀役よ。それにほらリーダーって云えば赤でしょ、……え? 違う? ……いえ……妹の影響でね……」
「言葉どうりよ」
疾風の少女の親友は烈火の少女。大人の様で子供、子供の様で大人の彼女。彼女が歩む道は、希望かまたは絶望か……。
「オレはAランクのデモン・バスターなんだぜ、そこら辺の雑魚に負けるわけないだろう」
「これはだけは、どうしようもないんだ……。たとえ何をしようが、変わらなかったんだ……」
「ではこれより2−A極秘人気美少女ランキング投票を開始いたします!」
その力は組織内にも高く評価される高ランクデモン・バスター。でもその力とは裏腹に、学校の彼はお茶目な人気者。
「佐祐理は頭が悪いですからよく言えませんけど、あなたは一人ではありません。私たち皆合わせれば、五人もいるんですよ。悲しみは五分の一に、喜びは五倍になるはずです。きっと……。だから……」
「私はマジカルさゆりんですよー♪」
「あははー。それなら家の自家用ヘリを使いましょう〜」
癒される、その笑顔はいつも満開。スーパーお嬢様、マジカルさゆりん。
「実際の所、君が塞ぎ込んでいても私にはどうでもいいことなんだがね、君が何時までも塞ぎこんでいると彼女が悲しむ。彼女を悲しむ顔を見たくないから、私は彼女と一緒にこの組織に入ったのだからね」
「ふっ。この勝負、僕の勝ちのようだね、美坂君」
「倉田さんの為なら、たとえ火の中、水の中ーー!」
第7回華音高等学校生徒会長。冷徹な男が歩む茨の道は、恋の道。
「私が前へ出る。あなたは後ろを……」
「……はちみつくまさん」
「……私は魔物を討つものだから」
口数少ない剣士が望むのは平穏かまたは戦いか……。そして彼女は「黄金の約束」を胸に剣を取る。
「無駄口はたたかない。敵の前で会話などそんな愚かなことはないでしょう」
「私は華音の平穏を影から支える闇の術師、青影! …………死ぬほど恥ずかしいです。しかも闇の術士で名が青影というのは一体何々ですか……。センス零ですね」
「私は良くおばさん臭いといわれますが、若者らしい趣味だってあるのですよ。…………………………………………」
若くして一流の術士である少女の背負ったものは、その高すぎる精神年齢。彼女の過去の何があったのか? 彼女は黙して語らない……。
「私のこの名前はとても大切な人からもらった大事な名。それを知らなかったとはいえ、汚したあなたたちを私は許さない。……消えなさい――この世から」
「あぅー、何で肉まんが無いのよー。夏? 暑くても肉まんは食べるのよー」
「ほらー桜ー、木に登らない! 落ちても知らないわよッ。あ、楓! 道路に出ようとしちゃダメよー」
その子狐は二本足で立ち尻尾を隠し、三つのわらじを履いている。
「ガアァぁぁぁぁ……。貴様は一体何者だ? だが例え貴様が何であろうと俺の体は俺のものだ。お前のようなわけの分からない奴には渡せない。俺は死ねない、死にたくない」
「国連機関の討魔者どもか。貴様らのような雑魚がうろつくから、俺らが肩身の狭い思いをする……」
「水瀬さん、川澄先輩。水瀬さん、川澄先輩。水瀬さん、川澄先輩。水瀬さん、川澄先輩。…………ああ、一体全体どっちにしたら」
鋼鉄の意志をもつ戦士は半身を得、更に力を得る、だが尚も力を求める。果たしてその心は……。
「いつかは話さなければならないことでした。それが今日だった、それだけの話……。……そう、それだけの話……。私のこと、あなたのこと、……そしてあの男のこと……」
「甘くないジャムもありますよ」
「了承(1秒)」
過去に傷を負い今なお痛む心の傷とは裏腹に、彼女の表の顔はそんなことは微塵も感じさせない最強の「主婦」。
「この傷が私に訴えるのさ。ヤツを殺せ、ヤツを殺せ。とね」
「任務だ」
顔を忘れた男、そう呼ばれるこの男には顔がない。……半分だけ。
今ここに闇夜の戦いが始まる……。
彼ら、彼女らの物語が始まる……。
この闇夜の戦いの名は……
デモン・バスター
―――北の町における雪の少女の退魔伝〜序章〜―――
今ここに物語の幕が開く……。
…………………………………………。
「ちょっと待ってください。何で私の出番が無いんですか、名前だけじゃないですか!」
「いいじゃない≪ピー≫ちゃん。≪ピー≫ちゃんはもしかしたら出番があるかもしれないでしょ?」
「まあチョイ役ですけど……。……そーですね、≪チュドン≫ちゃんと≪ドッカーン≫さんはこの話では、全くと言っていいほど出番が無いんですよねーー」
「ちょっと待て、聞いてないぞ。俺の出番がないだと、この≪ドッカーン≫の出番が!」
「いえいえ、全くというわけではないそうです。≪ドッカーン≫さんは、プロローグとエピローグに少し」
「じゃあじゃあ、ボクは?」
「全くこれぽっちも微塵もありません」
「うぐぅ〜〜」
「なんじゃこりゃーー!! 本当に少しだけじゃないかーー!!」
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・登場人物 (1998年4月、プロローグ開始時)
水瀬 名雪 …… 主人公。華音高校二年。陸上部々長候補。
美坂 香里 …… 華音高校二年。学年主席。
北川 潤 …… 転校生。フランス人とのハーフ。A級デモン・バスター。
倉田 佐祐理 …… 華音高校三年。名家倉田の長女。
久瀬 英治 …… 華音高校二年。生徒会長。
川澄 舞 …… 華音高校三年。女子剣道部々長。
天野 美汐 …… 華音高校一年。帰宅部。
沢渡 真琴 …… 華音高校一年。兼、保育所のアルバイト。
斉藤 徹 …… 華音高校二年。男子剣道部員。
水瀬 秋子 …… 水瀬名雪の母。主婦。年齢不詳。
他……
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どうも初めまして。紅き後継者です。
実は初投稿なんですね……。まあ粗だらけですし、思いっきり短いですし……。
まあ私のことはともかく、内容についてですね。
実はこの予告編、プロットにはあったのですがプロローグを書き終わった後に思い出したというダメっぷり。そのため急遽書きました。
その為、かなーり荒いですが本編もまあ、似たようなものかと……。
さてこの物語、退魔物と言っていますが、むしろ人間関係のほうがメインだと思います。……まあ、こればっかりは書いてみないと分からないのですが……。
最後に。この物語、掲示板で書いた通り名雪主役で祐一君(ほとんど)出てきません。
本当は「本章」の方で、祐一君大活躍の予定なのですが、このホームページの投稿規程に引っ掛かってしまうので断念です。何処ら辺に引っかかるのかは、想像にお任せします……。
では、次のお話で!
P.S. 18禁ではないですよ?
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