夢の集まる場所で
嘗ての戦い
「見事……」
低い声が響いた。
地の底から響く様な低く深い声。
だが、その声が今、静かな想いを伝えていた。
静かでしかしそれでいて強い想いを。
「よもやこの様な力があろうとは」
言葉を発しているのは巨大な人影。
いや、人に似た形をしている全く異質の存在。
絶大なる闇の具現。
だが、今その闇の具現たる巨大な身体に光があった。
闇を打ち砕く4つの光。
全てを薙ぎ払う闇の右腕を裂く魔人。
全てを焼き払う闇の左腕を穿つ鬼人。
そして、全てを闇の下に堕とす頭部を光の剣で貫く人の女性。
最後に、全ての闇の源たる負の心臓を砕く1人の人間の青年。
「この世界では、己の力こそ全ての筈だったのだがな」
周囲を見れば、この場所は通常の世界とは違うものだった。
球形の結界かと思われるが、通常の結界とは違い、まったくの異世界に思える。
そして、この世界だからこそ見える輝きが在った。
「……」
青年は何も言わない。
何も想わない。
嘗てあった憎しみすら、今ここには無い。
ただ在るのは―――
「なかなか、楽しかった―――」
最後にそう言い残し、砂の様になって崩れ消えていく巨大な闇の影。
その最後の姿は、何故か満足そうに見えた。
「……」
青年は口を開かない。
想いを宿す視線も無い。
確か、言いたいことが沢山あった筈なのに。
ぶつけたい想いが山ほどあった筈なのに。
消え行くその影に、何もできずにいた。
けれど、青年に悔いは無く。
最早全てここに―――