上弦の月が煌々と輝いている、そんな夜。
酷く暗く、酷く重く、闇が世界を支配せし、そんな深い夜。
そんな天空の金と世界の黒に、突如一つの蒼い影が降臨する。
霊体化を解き、具現化したその影は闘争心溢れる修羅の顔立ちをしていた。
優雅さを含んだ蒼い軽鎧が、天上から降り注ぐ光によってより一層優雅と成る。
それは唯一影が手にしている紅い武具を更に際立たす。
そんなことに気付く様子もなく、影は平淡と足を進める。
影は一切の気配を殺すことなく、軽い散歩をしているように歩く。
辿り着こうとしている目的地は、深山町の遥か高台に位置している柳洞寺。
そして、今現在影はその柳洞寺の手前にいる。
ただ、その両足は少しも前へと踏み出そうとはしない。
なぜなら、柳洞寺の前に巨大な壁が影を迎え撃っているからだ。
目前に聳えるのは、何百段あるか目測さえも許さないほどの長い石段の群れ。
――――――ヒュゥゥゥ
山頂にある柳洞寺から、塊のような風が吹き降ろしてくる。
その風は決して冷気を帯びているわけでもないが、肌を突き刺すような冷たい刺激を放っていた。
敵意を持った悪風ではないが、影は如何してもこの風に嫌悪感を感じざるを得なかった。
柳洞寺を睨み付け憎らしく歯を噛み締めてから、石段に一歩足を掛ける。
己に命じた男と、命じられた言葉を深く思い出しながら、一歩ずつ登る。
突風のような悪しき風が頬を撫でる。
まるで侵入者を阻むためだけに暴れ吹き荒んでいるよう。
しっかりと足場を確かめるために、石段を踏む脚に否が応でも力が入る。
――――――だが、
「其処までにしておけ、ランサーよ」
突如届いた声。
気付かなかった気配。
石段の脇から掛けられた男の声によって蒼い影――――――ランサーの足は止まった。
鏡月下
作者:琉海
上石段の脇、一本の木に寄り添っている一人の男。
如何見ても二枚目風の、端整な顔立ちをしている一人の男。
時代を逆行したような、気品溢れる群青色の陣羽織を羽織っている一人の侍。
蒼い影――――――ランサーと同じように風を浴びている筈が、それを感じさせない立ち振る舞い。
それどころか、まるでこの強風を心地よいと感じているようにも思える。
高貴な振り袖と艶やかな長髪が風と遊び踊っているようで、その靡いている様子は正に美しいの一言。
抜き身の長刀を片手に携えて、侍は再度忠告する。
「自殺願望が無いのなら大人しく去るが良い」
「………あァ!?」
激昂掛かった声をその身に受け、陣羽織の男は跳んで石段まで移動する。
軽く跳躍して、振り袖が風に当てられるそのシルエットは宛ら翼を拡げる巨大な鳥。
長刀を構えている男は、命じられた使命のためにランサーの前に立ち塞がる。
男に命じられたことは『柳洞寺に侵入する者は唯の一人も例外なく皆殺しにしなさい――――。』
霞掛かった己の存在意義を証明するために、男は行動を起こす。
それが、此処柳洞寺を守護する門番であり、獰猛な牙を持つ群青の壁である。
「ふむ、解り難かったようだな。 私はこう言ったのだランサー、――――――命を大事にしろと」
風を生む音と、煌く刹那の光が放たれる。
大気を抉るためだけに放たれた、針のような鋭い一突きが、陣羽織の男を襲う。
躯全体を駆使したわけでなく、肘から下のみで振るわれた最小動作の攻撃。
――――だが、ヒュゥっと風切り音だけが流れた。
陣羽織の男は一切の表情を変えることなく、揺らめく陽炎のようにスゥと半身外して躱す。
それは誰にも出来る短い動作にも関わらず、足取りは誰にも真似することが出来ない優雅さを醸し出していた。
寒気すら憶えるその悪風が結んだ髪玉に押し寄せ、その毛先が風に逆らわない柳のように揺れる。
「――――――テメェ、次はねぇぞ」
始めから躱されることが解っていたように武器を手元に引き、己の肩へと傾けて預ける。
その言葉の裏には、態と狙いを外したと表現したかったのかもしれない。
そんな彼の瞳には憎悪の象徴とも呼べる燃え盛る意思がはっきりと浮かんでいる。
意思を象徴するかの如くランサーの手には、血の如く紅い武器――――――魔槍と呼ばれる槍が握られている。
絶対的に誇れる武具が槍だからこそ、彼はランサーなのだ。
「オレは柳洞寺に用があって来たんだがな」
「それは私を倒してからにして頂こう、ランサーのサーヴァントよ」
ランサーは心の中で重い溜息を吐きつつ面倒臭いと思うが、冷静に現在の状況を把握していた。
目の前の男は理由こそはっきりと解らないが、誰かに門番の役目を言い渡されているのは明確だと断言できた。
――――――ランサーよ、全員と引き分けてこい。
ふと、ランサーの大脳に、依頼と呼ぶよりは絶対命令のような言葉が電気信号のように走った。
その言葉が『私を忘れるな』とでも言いたいように、煩い位響き反芻する。
それはランサーのマスターが使用した二度目≠フ令呪内容。
全員と『闘って』ではなく、『引き分けて』の意味は全員の戦力を知るためなのだろうか。
本来の目的は、此処柳洞寺に潜んでいるサーヴァントと引き分けることだったが、
「まさか、もう一人サーヴァントがいるとはな」
連戦なんてメンドクセェ、とランサー。
予想外の展開とでも言おうか、闘うべき相手が増えたということで思わず愚痴を零す。
だが、思わず口に出たのも仕方ないというか、当たり前だろう。
陣羽織の男と闘い、勝たずして柳洞寺へと進み、更にその先のサーヴァントとも引き分ける。
これは面倒臭いというレベルではなく、到底不可能無理難題なのだから。
……………尤も、それでも実現可能に移すのが、このランサーという男なのだが…。
「では私と死合い、我が身を超えてゆくが良い、ランサーよ。 私の名は、佐々木小次郎」
「―――――――――っは。 サーヴァント自ら真名を明かすなんて、なっ!!」
言い終えるが三段跳びで跳び上がり、烈火の如く紅い魔槍が火を吹く。
それは一突きで三本は在ろうかというほどの残像を残して、陣羽織の男――――――佐々木小次郎を攻める。
佐々木小次郎も上段にいることを利用しつつ、五尺は在ろうかと思える長刀でこれを迎撃する。
――――――ゥゥゥゥン
一足という間合いからの刺突が空を裂く。
肩から生じた巻き付くような回転力は、紅い魔槍へと混じり佐々木小次郎を貫こうとする。
肩から肘へ、肘から手首へ、手首から魔槍へと“殺”という思いは螺旋巻く。
それは、一瞬の閃光が生んだ紅き一条の光。
だが、佐々木小次郎はそんな紅い削岩機のような点穴を涼しい顔のまま難なく長刀の峰で弾く。
それが至極当然の出来事のように、遊び事のように躯を流して軽くいなす。
――――――キンッ!
――――――ブウウゥゥン!
峰で外に払った長刀はその軌跡を恐ろしく真っ直ぐに真逆へと反して、鋭い三日月のような弧を描く。
大した体重移動もせずに、刃はその刀身に目でも付いているようにランサーを斬り裂こうとする。
だが、それはサーヴァント中最速のランサーからしてみれば、遅いの一言。
弾かれた魔槍を引き、棍のように半回転させ刃に対して魔槍の柄で垂直に打ち上げる。
―――――――――キィィィィィィィン!!
闇夜に明りを灯す火花。
甲高い金属音が石段の脇の木々を揺らすだけでなく、頂にある柳洞寺内までも響き渡る。
ランサーは半歩横に跳び、鍔迫り合いを回避する。
打ち上げと打ち下ろしでは如何しても不利だと感じたからだろう。
そのまま軸足を固定させたまま、回転して捻心力が加わった渾身の――――――横払い。
それは見る者を魅了させてしまうほど無駄がなく、清流の如く綺麗な動作。
だが、表情を崩すことなく涼しい顔のまま、それにも反応する佐々木小次郎。
振り下ろし状態の――――躯を閉めた状態から――――溜めた力を解放するために躯を開く。
振るわれた右薙ぎは魔槍と交叉し、暗い闇夜に不釣合いなほど鮮やかな火花を散らす。
石段という狭く足場が悪い場所で、二人の戦士は踊り舞う――――――舞踏。
運命か偶然か、服装も武具も全く異なる二人の間合いはほぼ同位。
つまり、互いに得意不得意という間合いの差はないに等しい。
つまり、二人の勝負は互いに最強と自負する技次第で決まると断言してもいい。
――――――フワリ
――――――ゥゥンッ!
――――――キィィンッ!!
蒼い影が地に伏せるように深く沈み、サバンナにいる豹の如く脚が獲物へと疾駆する。
踏み込みの際に足元から発せられた音はその場に置き去り、紅い魔槍が風を切り裂く。
蒼に包まれた躯は休むことを知らないのか、ランサーの槍は絶えず縦横無尽に軌跡を描く。
それ自体が意思を持っているかのように回転し、殴打し、払い、刺突する。
「ウオオォォァァ――――ッ!」
ランサーの咆哮じみた叫び声に呼応するかの如く、蒼い躯が弾ける。
連撃というよりは寧ろ乱舞に近いほど時間差が零に等しい無差別同時攻撃。
刺しと引き、払いと薙ぎの逆動作がほぼ同時に、横槍に降る細雪のように迫る。
右半身のみで魔槍を手足のように、自在に操るその姿はまさに闘神阿修羅。
――――――バケモノか。
それは佐々木小次郎の言葉だったのか。
眼前の敵、凡そサーヴァントの枠を超えていそうな電光石火な速度は、まさにバケモノ。
サーヴァント中最速を誇るランサーと言えども、歴史の中でこれほど迅いランサーは果たして居たのだろうか。
生命を抉り抜く決定的な突きは一つも受けてはいないが、その三回に一回は風圧でその身や服を鋭く掠っている。
現に佐々木小次郎の気品ある陣羽織は無惨にも所々に穴や斬り傷が見え、僅かながら血も滴っている。
――――――バケモノか。
それはランサーの言葉だったのか。
佐々木小次郎が無限とも言える槍の雨を全て捌ききっている姿は、まさにバケモノ。
だが、最速の槍を長刀一本で全てを防ぐことにははっきりとした理由があるからだ。
佐々木小次郎は剣技に長けていたが、こと反し≠ノ関しては神技かと疑ってしまうほどだった。
加えて、刃を反すタイミングとその際の躯の体重移動に一切の無駄がないのだ。
だからこそ、佐々木小次郎は長い武具でもランサーの槍に付いて行ける。
魔槍と長刀の奏でる鍔迫り合い音は、宛ら歌う喜びに酔うデュオのよう。
指揮者は、不規則に揺れ動く木々の葉。
伴奏は、轟々と吹き降ろしてくる悪風。
スポットライトは、遥か遠くから優しく見守る上弦の月。
観客は、楽しそうに耳を傾けているのかゆっくりと流れる夜雲。
――――――舞台は、これ以上ないくらい最高のステージだろう。
「テメェ…………セイバー、じゃねぇな」
ほぼ一方的な手合いは何十という域を越えて、百へと迫ろうとしていた。
だが、ランサーは初めてその両足を止め、敵意を持った双眸で睨みながら己に確かめるように言葉を紡ぐ。
先日銀の甲冑を纏ったセイバーと闘ったランサーは解っている――――――つもりだった。
――――――佐々木小次郎がセイバーでないことを。
なぜなら同じ聖杯戦争に召喚されるサーヴァントのクラスは決して重複することがないから。
だが、如何見ても“剣士”である佐々木小次郎のクラスはセイバー以外に考えられなかった。
だから、混乱している己の頭を冷静に働かせて、解っているつもり≠していた。
「………私はアサシンのサーヴァントだ」
「な―――、にぃ!?」
名は体を現す。
アサシンとは暗殺者であり、基本能力は低いが気配が察知し難いというサーヴァントである。
佐々木小次郎の気配を察知し難いというのは、石段を登る最中に身を以って知ったこと。
その点に観点を絞れば確かに佐々木小次郎という人物はアサシンかもしれない――――――が、
如何しても納得出来ないことがランサーにはあった。
それは、
「――――――アサシンってのは影でコソコソしてる陰険なサーヴァントだと思ってたぜ」
そう。
佐々木小次郎は知識上のアサシンらしからぬ、正々堂々と“剣士”として振舞っているのだ。
そこにランサーは違和感を憶え、佐々木小次郎のクラスを聞いても信じられないでいるのだ。
「………関係あるのか?」
「――――――あ?」
「私は私だ。 佐々木小次郎という月を堕とそうと試みた剣士以外の何者でもない。
“クラス”で呼び合うなど、其処に“私”という存在意義が在るのか? そう思わぬか?」
佐々木小次郎は問う。
クラスで呼ぶことに個人の意思などあるのか、と。
それは、サーヴァントらしからぬ発言だということに本人は気付いているのだろうか。
戸惑いの表情をしているランサーを羨ましく見ている佐々木小次郎は、散り際の花のようにとても儚い。
「私はアサシンと成ろうとも、剣士である魂は忘れておらぬ」
それは嘘だ。
それは希望だ。
名も無き剣士が佐々木小次郎を演じているのだから、佐々木小次郎という魂などある筈がない。
――――架空の英霊。
――――過去に存在していたのかも不明確な存在。
――――矛盾点だらけの男。
それは書記にのみ記されている伝承。
物干し竿という五尺の長刀を携えた剣士が、二天一流を振るう剣士に敗れたという記録。
名無しの剣士だからこそ、架空の英霊だからこそ、彼はアサシンのサーヴァントに成り得たのだ。
だからこそ、彼は“佐々木小次郎”なのだ。
彼は名を持たない。
だからこそ、羨ましく思う。
名前在る者を。
英雄としての記憶を持つ者を。
称えられていた存在の者を。
――――――とりあえずは、目前の敵を。
だが、名無しの彼にも在るものが、存在する。
今の佐々木小次郎としての記憶、意思、魂。
つまり、今存在しているということ。
その存在意義こそ彼を佐々木小次郎とする唯一の鍵なのだ。
剣士が暗殺者に成り下がろうと、心まで堕ちたわけではない。
彼――――――佐々木小次郎はそう言ったのだ。
「―――――――――ふ」
その小さな呟きのような声はランサー。
思わず心の底から全てを吐き出してしまうほどの笑いたい衝動を抑えている。
少なからず佐々木小次郎に好意を持ってしまうくらい、今の時間が楽しく思える。
「テメェを召喚したマスターも、似てんのか?」
それは本来の目的ではなく、本当に何気なく口に出た言葉だった。
目の前に居る変わり者のサーヴァントを召喚したというマスターに会ってみたくなったのだ。
そこに敵意はなく、純粋にそう思ったことだと佐々木小次郎は悟った。
だから、
「………あれは弱き狐の類よ。 狡賢い女狐の皮を被った偽りの魔術師に過ぎぬ」
故に貴様とは合わぬ、と佐々木小次郎も少し愉快そうに応える。
明らかに己の主であるマスターを卑下しているような物言い。
「なら、オレのマスターは臆病な亀ってとこか。 何せ姿を見せず、命令だけするような奴だからな」
「籤運が悪かったのであろう」
「かもな。 こればっかは死んでも治らねぇみたいだ」
長年寄り添った友人のように、愚痴るように軽く言葉にする。
だが、それも瞬間の出来事に過ぎなかった。
緩んだ口元を縛るように、目元を釣り上げるように、表情を強張らせたように、言う。
「でもな、今の話を聞いて漸くやる気が出てきたぜ」
己の直感というべきか、おそらく佐々木小次郎の主とは性格的にソリが合わない。
ランサーはそう考え、今日この瞬間初めて本気≠ナ柳洞寺まで挑もうと思った。
佐々木小次郎の主、それは放って置くと後々厄介な敵へと成り得るような気がしたからだ。
そこには、今のランサーとしての直感ではなく、生前の英雄としての勘があった。
「……………今一度貴様に尋ねるが、如何しても去れぬか?」
その長刀の刀身を僅かに下げて、再度訊く佐々木小次郎。
ある程度互いの技量が解ったことで、判断が変わるかもしれないからに違いない。
「――――――へ。 悪いがこっちもクソ野郎の命令なんでな」
「………そうか。 では――――良いのだな?」
「あ?」
佐々木小次郎は静かに瞳を閉じて、最終勧告のように訊く。
「―――――――――貴様を殺しても良いのだな」
死の気配を嫌というほど感じさせる瘴気のような殺気が、閉じられた双眸の奥から生まれる。
その殺気は、柳洞寺から吹き降ろす悪風が自然と収束して惹かれてくるほど禍々しい。
刀身に木の葉と悪風が絡み纏わり、逃がさぬようにと更に渦巻く。
――――――これがコイツの宝具か。
ランサーは己の血が煩いくらい警戒警報を発しているのでそう思ったが、それは違う。
彼、佐々木小次郎に宝具など在りはしない。
そう、それは唯の一つも在りはしない。
なぜなら、彼は存在したかも定かではない架空の英霊だから。
なぜなら、彼は宝具がなくても互角以上に渡り合えるモノを持っているから。
閉じられた両の瞼が開かれる。
歌舞伎役者が隈取を塗り替えたかのように、佐々木小次郎の表情が変わる。
変わるというより、表情を無くすと言ったほうが正しいだろう。
それほど、今の彼から読み取れるものが、ない。
今までは『守り』に入っていた佐々木小次郎が『攻め』へと転じる。
――――――!!!
音無き音。
それ以外喩えようのない響き。
抜き身の長刀が無造作に振るわれ、刹那的だが光の軌跡が奔る。
「――――ッ!!」
これも一種の悪運とでも言うべきか、ランサーは咄嗟に感じた気配から逃れるために後退した。
――――否。 正確には、石段にして軽く十段ほど後方の位置まで滑り降りたというべきか。
――――それも否。 態と、意図的に滑り降りさせられた≠ニいうべきか。
――――――い、今のは………何だ?
無形の位、と呼ばれる至極自然体に近い構えから放たれる静かな刃は、躱すことが難しい。
呼吸と筋肉の伸縮運動からの“読み”など、全く以って無駄なことに過ぎない。
前動作がないそれは前奏がないことからこう呼ばれる―――――――――無拍子、と。
嘗ての幕末時代や、生と死が隣り合わせの血塗れ時代を生き抜いてきた者たち、
それこそ『名を馳せた剣士』たちにとっては然程普通の技術技能だが……。
「ふふ、如何したランサー。 私を倒して柳洞寺まで行きたいのだろう? 後退して如何するのだ?」
確信犯のような、悪戯が成功したような、人の神経を逆撫でするような、微笑。
嬉々の表情を見せ、一歩踏み出して石段を降りる。
一歩、それは揺れるようにゆっくり。
「……………来ぬのならこちらから行くぞ」
一歩、それは疾風のように素早く。
石段を猛然と駆け降りる。
斜め下に滑空するように跳び、敵の脹脛を両断するような両手での薙ぎ払い。
―――――――――ジュッッ!!!
弧月の白光と、深紅の噴水が同時に二人の網膜に焼き付く。
声を失ったように口だけ開けて、眉間に皺を寄せて苦痛の表情をするランサー。
肌が摩擦で焼き斬れたように熱くなり、ジュクジュクと赤い液体が零れ落ちる。
骨までは両断されていないが、奔る神経ともに少しは斬られたかもしれない。
それは斬痛の痛みが、よりはっきりと事実だと知らせる。
――――――ゥゥゥンッ!!
低く、唸り声のような鳴き声を響かせて、大気を斬り裂く。
払われた筈の刃が、磁力に引き寄せられるように再びランサーを襲う。
両手で呼び戻したそれは真逆へと薙ぐ――――――斬り返し。
キィンッ!、と瞬間だが短い金属音が響く。
ランサーは魔槍の矛先で気配の大元を弾き、目の前の敵に向けて速射する。
躯全体をバネのように駆使して、反動力を加算して、肩や肘に回転力の捻りを加えて、射抜く。
弓なりのように腰を曲げ、刺突の瞬間に一歩前に踏み出した脚は、形だけではまさに溜めた正拳突き。
奥義は基本に在り、とは一体誰の科白だったか。
槍を極めし者の最強の技もやはり『刺突』なのだ。
――――――殺った!!
一歩踏み込んだため、間違いなく佐々木小次郎は魔槍の射程圏内。
加えて長刀が弾かれたため、躯は無防備だと言わんばかりに開いている。
確実にこの魔槍は心臓を貫く―――――――――筈だった。
――――――ビュゥゥン!
「―――――――――あ?」
阿呆なほど気の抜けた声。
気付けばランサーの槍は逆風と虚空を貫いたに過ぎなかった。
「如何したのだランサー。 私の幻影でも見ていたのか?」
踏み込んだ足、伸び切った腕、魔槍の矛先。
その遥か彼方――――とは少し過剰な言い方だが、ランサーの前方七メートルほど。
数瞬前には何も無かった空間に、悠然と立っている一人の剣士・佐々木小次郎が居た。
それは、幻覚を見ていたかのような幻夢。
それは、蜃気楼を視ていたかのような偽夢。
それは、間合いを測り間違えたと思わせる白昼夢。
―――――――――と、思い込ませるほどの瞬発力と跳躍力。
恐るべきは佐々木小次郎の身体能力か。
佐々木小次郎と血に塗れた両足を交互に見、ランサーはうっすらと笑みを浮かべる。
己の読みが間違っていたことに、漸く気付いたのだ。
心の内を見透かされたような佐々木小次郎の物言いは、そのことをより強く解らせた。
「へ。 この足の代償は高くつくぜ」
「………………ふむ。 悪いが踏み倒させてもらおうか」
因みにいくらだ、なんて小次郎。
借りた小銭の金額を訊くように、簡単に言う。
「そうだな――――――
――――――――――――テメェの心臓一つ
空気が、歪む。
視えないナニカに、空間が圧迫されるような感覚。
視えないナニカが、世界を捻じ曲げるような錯覚。
唯、手にした魔槍を若干下げただけの動作。
それだけの筈が、何故か立ち合う二人の間合いを酷く重くした。
と同時に、凍てつくほど寒い空気が露出している肌を痛いくらい刺激する。
どんよりとした粘着質のような魔力が、紅い魔槍を中心に渦巻く。
それは、絶対的に相手を殺すためだけに収束されるような、魔力。
――――――ッ!!
神風の如く疾駆。
影に落ちる程深く沈み、地を這うような躯。
その躯自体が一つの弾丸のように猛攻体勢に入る。
駆けながら、自然体で立っている佐々木小次郎の膝元目掛けて捻刺突。
だがそれは、思わず佐々木小次郎の唇が歪むほど余りにも愚策。
「“――――――刺し穿つ”」
一呼吸置いて、ランサー。
その言葉自体にはまだ∴モ味はない筈だが、何処か死の匂いを感じさせる。
それも、神憑りなほど絶対的な死を。
「“死棘の槍――――――!”」
解き放たれた魔力ある言葉は、紅き魔槍の真名。
突き出た魔槍の先には佐々木小次郎の姿はない。
一瞬の屈伸運動から膝に溜めた力を解放して空へと跳躍していた。
それは宛ら大空を舞う群青色の鳥のよう。
――――だが、
――――何故、
―――――――――魔槍と佐々木小次郎はこんなにも限りなく近いのだろう。
そう。
どういう訳か、魔槍の矛先は佐々木小次郎の心臓目掛けて直進しているのだ。
軌跡が急遽その方向性を変えたというわけではない。
魔槍が突然変化して伸びてきたというわけでもない。
だが、魔槍と佐々木小次郎の距離は、不可思議なほど限りなくゼロに近い。
「――――ッ!」
空中という足場がない空間は、攻撃を躱す体勢に移ることがほぼ不可能に近い。
そこに、意図的に差し向けられた魔力の塊のような一本の紅い魔槍。
―――――――――ザシュウウゥゥッ!!!
鼓膜に響いたのはそんな裂き音と、既に嗅ぎ慣れた生暖かい香り。
季節外れな桜花のような鮮血が、暗闇の大空へと咲き広がる。
肉が裂ける音が聞こえたのは、槍が佐々木小次郎を貫いたから。
それによって、か細く千切れそうな声が漏れた。
振り散る幾多の血と共に佐々木小次郎は石段に降りた。
その隣には既に同段へと辿り着いているランサーの姿。
佐々木小次郎の表情は先ほどまでとは全く違い、生命力が底をついたように辛そう。
だが、ランサーは強く歯を噛み締め、煮え切らないという表情をしていた。
なぜなら、
「テメェ………俺の槍を躱したな」
だからだ。
この場合の躱した≠ニいう意味が差すことは唯一つ。
地を踏んでいる足から噴き上がるほど低い声は、憤怒を現していた。
「は――――――ぁ、っぐ――――――、はぁ、ぁ――――」
傷口を手で押さえ、咽喉元まで昇ってきた血塊を飲み込む。
「い、今のは………心の臓へと導く呪いの槍、か……?
……………く、異国の英雄とは随分と面妖な技を持っているのだな」
ゲイ・ボルク――――――それは必殺の宝具。
その紅い魔槍の正体は、対人宝具として遺憾無く発揮する呪いの宝具である。
槍が相手の心臓を貫いたという結果の後に、槍を放つという原因を導く。
既に結果が在るその攻撃は、必ず相手を殺害するための宝具であり、文字通り“必ず殺す”。
喩えその過程が心臓へと迫らなくとも、事象は結果へと辿り着く。
それは誰の防御を、誰の回避を、誰の迎撃を、微塵も赦すことはない因果の逆転。
真名が紡がれれば絶対不回避な死が刻まれる呪いの魔槍。
――――だが、
――――いや、
――――――だからこそ、ランサーは納得がいかない。
槍が的に貫かなかったことが…。
佐々木小次郎のとった行動に…。
「テメェ………一体何をした?」
瞳を細めて睨むように、ランサー。
静かな怒号とでもいうべきか、眼前の男の不可解な行動に怒りを憶える。
それは黙認しかねるほど納得出来るものではなかった。
心臓の僅か左≠貫かれた佐々木小次郎の躯は、小さな灯火が消え失せるように随分儚い。
だが、そこに敢えて追撃することなく、ランサーは唯一にして最大な謎を問う。
「因果すら逆転させるというその発想、恐ろしい邪術よな」
「………その存在を知らなかったテメェが、何故躱せた?」
完全にランサーの理解する度合いの範疇を超えていた。
必殺の筈の魔槍が何故、如何いう理由から躱されたのか。
「―――――――――ふ、これは可笑しなことを問うのだな、ランサー。
“佐々木小次郎”は古より伝わる書に記された、居る筈が無い架空の人物だぞ。
現世に存在しない筈の……………真か偽すらも定かでない“私”に呪いなど掛かるわけがなかろう」
返ってきた答えに絶句する、ランサー。
挙げた疑問など咽喉の奥に詰まり、躯が海月の毒にでもやられたかのように麻痺し、動かない。
自信満々な、正論を吐くような言い分に押され、強引に納得させられたというわけではない。
――――――ンな、莫迦な…。
出鱈目な理屈だということは、多少混乱気味の頭でも辛うじてだが理解できた。
つまりは、目の前の男・佐々木小次郎は自力で、それも力づくで“結果”を変えたのだ。
因果を逆転させたランサーもバケモノだが、既に完成された“結果”を捻じ曲げた佐々木小次郎はそれ以上。
尤も、あらゆる外的要因が関係しての事象、奇蹟と称されるものかもしれないが…。
スウゥゥ――――――
長刀が静かに咆哮し、猛るよう。
上半身を捻った躯で、それを肩と平行に掲げて携える――――担ぎ刀の構え。
佐々木小次郎はその構えをとり、石化したように微動だにせず無心に気を高める。
長刀の切っ先に、迷い鳥が羽休みにくるようなほど、完全静止。
「…………………心地良いな」
「は?」
「久々≠ノ感じるこの昂揚感。 私はやはり生涯を刀に賭けることしか出来ぬようだ」
それこそ生を感じる唯一の時間だ、と佐々木小次郎は語る。
生と死が絶えず拮抗している天秤の上、実に場違いなほど清々しく嬉しそうに笑う。
それはランサーも羨望の眼差しを向けてしまうほど綺麗で、刹那的に思考が止まるほどだった。
佐々木小次郎が此処で闘う本当の理由。
当初の目的は、此処を通過する者を例外なく殺すというものだった。
つまりは、マスターの命令に従い、此処を守るため。
だが、今の彼の行動理由にこれは一切含まれていない。
今、佐々木小次郎がランサーと闘う理由、それは唯一つの純粋な想いからに過ぎない。
それは、強い者と死合うため。
佐々木小次郎の視界には前方の石段、思考には背後の柳洞寺などない。
全てはランサーと互いの誇れる技をぶつけ合うことしか頭にない。
奮えるような、心躍るような、躍動感しか占めていない。
――――だから、
「先の一撃は実に素晴らしかった」
――――だから、
「御礼とは些か可笑しいかもしれんが、我が秘剣もお見せしよう」
――――この瞬間こそ生を謳歌していると感じ、どんな十年にも勝ると思う……。
――――――ッ!
大きな踏み込み一つ。
そこに音は一切必要なく、あるのは平行に滑ったという事象のみ。
前方に倒れるように推進力に流された躯は、月光が造りだす影を置いて間合いを狭める。
捻りを加え、旋風じみた腕が振るわれる。
「秘剣――――――」
豪速。
煌くは白銀を散開する剣閃。
薙ぎ払われし刀は魔剣と称されし最強の一本――――
「――――――燕返し」
――――の筈だった。
柔らかい°O跡を描く、銀閃。
己の瞳に映し出された、その不思議な現象≠ノ戸惑ったランサー。
その一瞬の戸惑いが、刹那の判断が、唯一にして最大の過ち。
気が付けば月光によってその輝きを増した白刃が、死を誘うように踊っていた。
美麗に舞う刃は、個の“一”ではなく全の“三”。
―――――――――ヒュウゥゥンッ!!
―――――――――ザシュウウゥゥゥッ!!!
鉄籠に閉じ込められ逃げ場を失った哀れな小鳥は、その身を真紅に染め立てられた。
三種の斬り傷≠その身に刻まれた蒼い躯は瞬く間もなく紅に濡れる。
「ぐっ、、、はっ――――――ぁ、っが――――ぁ」
傷口から逃げ出す酸素分を取り込むために、呼吸を繰り返す。
焼けるような激しい痛みを吐き出すように、呼吸を繰り返す。
――――――狼狽と苦痛に歪みながら、呼吸を繰り返す。
「ほぅ、四肢を奪うことすら適わなんだか」
口調は変わることなく、清んだ声で楽しそうに紡ぐ。
燕返し――――。
それは、佐々木小次郎が編み出した唯一にして最強、究極の剣技である。
全く同時≠ノ異なる三種の剣閃を描くそれは正に“神技”。
一の太刀で弧月のような半円を描き、二の太刀で槌のように縦に斬る。
最後に三の太刀として、周囲を封鎖するための真横に刀を振るう。
――――――囲うように描く剣閃は、正に逃げ場を無くすための結界。
このような技、誰が対策を練れようか。
躱す空間を封じられ、捌こうがその剣閃は一つではないのだから……。
佐々木小次郎は言う、「私の極めし道は邪道だ」と。
この技、“神”と呼ぶよりは寧ろ、“悪魔”に近い。
尤も、この振るい手である佐々木小次郎は、唯の“人間”に過ぎないが……。
「ぐっ………い、今のは宝具、か? いや……………違う」
宝具独特の持つ、魔力の波動など感じられなかった。
だとしたら、今の反則級のアレは純粋に佐々木小次郎の持つ剣技だというのか。
そんなことをランサーは考え、目の前の男を凝視する。
唯の人間が努力のみで宝具と同等の技を練り上げた、佐々木小次郎という強敵を。
ポッ――――。
ポツ――――。
雨が、落ちる。
上空に幅広く拡散しつつある黒い雲から、弱くも冷たい雫が降り注ぐ。
それ自体は小さいにも関わらず、誰の例外もなく体温を奪う雫。
待つことを知らないように、その雨足は段々と大きく強くなる。
ザア――――――――。
耳障りなほど五月蝿くなった大きい雨音。
瞬く間に雨に濡れ、肌に密着した前髪を払いながら、天を見上げる。
無数に迫る雫と垣間見ることさえ適わない月。
「…………………夜雲で月が見えぬ」
「あ?」
「興が醒めた。 月が見えぬ刻に決着をつけるほど、我らの死合いは陳腐ではなかろう」
長い雲に遮られて見えない月を見て、詩人のように言う。
本当に勿体無さそうに言うその言葉は、疑うまでもなく完全に真意だ。
「今宵は痛み分け、ということには出来ぬか、ランサーよ」
…………とんだサーヴァントがいたものだ。
月が見えなくなったから勝負を引き分けにしないか、というその発想。
サーヴァントらしからぬ意思を持ち、宝具に匹敵する技を持っているその男、アサシン。
誰にも縛られず、誰の影響も受けない。
――――――それは気侭に流れる雲か、自由奔放に飛び回る鳥か。
「そいつは出来ねぇな―――――――――と言いたいところだが、正直その意見には賛成だ。
オレもクソ野郎の命令で、宝具を外したら戻るってのが最優先なんでな」
お互い一歩身を引き、滲み出ていた敵意を薄める。
だが、二人は場を離れずに立ち止まったまま瞳に互いを写している。
警戒心を解かず、武具を手放さず、お互い鏡を前にしたように対峙している。
「…………………貴様は何故聖杯を欲す? 主のためか?」
言葉とは裏腹に油断出来ない緊張感漂う中、そんな一言。
サーヴァントの役目は、従うマスターを聖杯戦争に勝たせることだと佐々木小次郎は知って≠「る。
だが、それは知識として知っているだけで、個人として納得など欠片もしていない。
現にアサシンのサーヴァント佐々木小次郎は、己のマスターの生死に微塵も興味がないのだから。
「オレは別に聖杯が欲しいわけで参加してるわけじゃねぇよ」
「………どういうことだ?」
「オレは聖杯自体に興味はねぇ。 重要なのは聖杯戦争≠セ。
強いヤツと闘えれば………それだけで充分だ。 そう、テメェみたいな強いヤツとな。
だから聖杯を巡る“今”、……今この時こそ、オレは望みを適えてる最高の瞬間だと思うぜ」
大型肉食動物はそれに酷似している。
己を誇示するためにより強い獣と闘い、自分を限界まで追い詰める。
やがて己すら解らないほどの、限界を超えた能力を引き出すために。
その果てにあるものは、生死を別つ至高の瞬間。
刹那の動作一つにも命が爆ぜるような危険が伴う、正に命の削り合い。
闘うことでしか己を表現出来ない、不器用な獣。
「それは奇遇だな。 私も貴様と同意見よ。
時の流れにより朽ちることしか出来ぬこの身で可能なことと言えば、最早それ以外ないのだからな。
………尤も、仮に時間制限がなかろうと答えは同じだと断言出来よう」
「ん……?」
瞳を閉じて、何かを模索するように深く考え込む。
それは昔の思い出を回想するかのように、記憶の海へと潜る。
「…………………くくっ、そういうことか」
「む?」
「いや、テメェが誰かに似てると思ってたが、そういうことか。 なるほどな、確かにそうかもな」
探し物を引っ張り出して満足したように、瞳を開ける。
顔を手の掌で覆い、肩を上下させて思い出したように笑う。
一人で勝手に頷き、納得して、嬉しそうに笑う。
「私が? 貴様の知り合いの誰かに似ているというのか」
「………オレさ。 テメェはオレと似てんだよ」
何がそうさせるのか、極上の笑みを浮かべて、言う。
「……………ふむ、少なくとも望みと技は通ずる箇所があるやもしれぬな」
闘いこそ、我が望み。 命の駆け引きこそ、我が幸せ。
唯、強い者と武具を交える瞬間こそ、生きている。
防ごうとしてもそれを赦さず、躱そうとしてもそれを赦さない。
唯、相手を滅殺するためだけの最強を自負する技。
そうして、別れの言葉を吐くことなく、二人の獣は別れた。
腫れ物が取れたように清んだ表情をしながら、在るべき場所へと帰還する。
へ、痛み分けだとっ……よく言うぜ…!
オレの目的は柳洞寺に辿り着くことで、テメェはそれを赦さない門番だろうが…………。
石段を登り切ることが出来なかったオレは、どう見ても“負け”じゃねぇか。
弓兵とは思えねぇほど剣に長けた、あの赤い外套の男…。
小せぇ形して不可視の刃を振るう、あの銀の甲冑の女…。
そして―――――――――佐々木、小次郎……か。
…………随分とおもしろくなってきたじゃねーか。
通り雨だった所為か、もう雨足は弱まってきている。
雨の薫りと共に、そんな言葉が柳洞寺まで届いたとか、届いていないとか。
あれほどの死闘を繰り広げた二人は、何を感じ取ったのだろう。
他人でありながら誰よりも自分に近い、まるで鏡と闘っていた存在に何を求めたのだろう。
やがて、二人は出会う。
命を懸け、信念を懸け、誇りを懸け、二人の獣は忘れられない者と出会う。
生涯一、死を忘却するような死合を……。
剣戟と快楽の狭間にある刻の死合を……。
己の総てを駆使して闘う獣と、二人はそう遠くない未来出会う。
鏡月下〜閉幕〜
あとがき
どうも、久しぶりにSSを投稿しました琉海です。
最後のランサーの言葉と佐々木小次郎とのバトルを描きたかっただけで生まれたこの初FateSS。
設定として、セイバーVSランサー以降のとある夜の話というものです。
出演者が二人しか居ませんが、これはFateで私の好きなキャラ最上位二人が彼らだからです。
ちなみに三番目はアーチャー(見事にサーヴァントのみ
女性キャラが一人も入ってません(苦笑
主役は一番好きなランサー。
………あー、佐々木小次郎の方が目立ってたとか言わないで(汗
しかも、口調が間違ってるとか言わないで(滝汗
ランサーは引き分けてくるという令呪が働いているので、若干劣勢にしました。
佐々木小次郎に関して。
私の中ではこれくらいの強さの彼なんですけど、どうでしょうか?
……………というか、頭の中で思い描いた戦闘シーンを上手く表現できなかった。
行間隔を今までより狭めたのですが、どっちのほうがいいのだろう…?
その辺りも含めて、技術的指摘や誤字脱字は勿論、感想などあれば遠慮なく言って下さい。