――――――好きです

 

 

 ――――――愛しています

 

 

 

 

 

 朝起きてすぐ思い浮かぶのは、少し寝ぼけ顔の貴方のこと。

 娘には決して見せることのない顔の貴方。

 無防備で弱い貴方を、私だけに見せてくれます。

 

 

 料理を作るときも、考えるのは私に微笑んでくれる貴方のこと。

 食事の後には満足そうな表情をして、必ず褒めてくれる貴方。

 何気なくも楽しい会話の合間に時々見せる色っぽさ。

 

 

 買い物や仕事中でも、頭の中を埋め尽くしているのは凛々しい貴方のこと。

 大事なことを尽くすとき頼もしい顔になる貴方。

 その顔が私を魅了していることに、貴方は気付いていません。

 

 

 

 私の一日は常に貴方と共にあります。

 貴方の思い出と共にあります。

 今までも。

 そして、これからも。

 

 

 


 

 

I Love You, But ……。

 

 

作者:琉海

 


 

 

 

 

 

 この恋が成就することは絶対にありえないでしょう。

 それは既に決定付けられている悲恋。

 

 私から想いを告げることは一生ないでしょう。

 これほど貴方を愛しているというのに…。

 

 

 

 私は縛られている。

 

 

 左薬指に填められている色褪せた思い出に。

 躯に流れる愛しくも忌まわしき血に。

 

 

 

 ――――――縛られています

 

 

 【過去】や【血族】という名の鎖に、私は縛られています。

 重く固いその鎖は自分ではどうしようもできません。

 

 鎖は私を弱くする。

 

 

 ――――――ジャラジャラ

 

 

 貴方にしかこの鎖は外せませんけど、私はそれを頼むことはしません。

 私は臆病です。

 自分からは頼みもしないのに、心の奥底では鎖を外して欲しいと願っています。

 貴方に救って欲しいと願っています。

 

 何て自分勝手で我侭。

 

 

 

 私を自由にできる唯一の人。

 私が愛している貴方。

 

 

 普段は子供っぽく、少々破天荒な部分もある貴方。

 けれど、誰かを失う辛さを知っている貴方は常に誰かを思い遣っています。

 人見知りせず親しみ易い性格の貴方。

 何をするにも貴方はその中心にいます。

 

 

 ――――――貴方は誰?

 

 

 『あの人』とは似ても似つかない。

 顔や背丈、癖、仕草、性格。

 あの人と何一つとして似ていない貴方。

 共通するものがないのに、何故か貴方と一緒にいると感じます。

 あの頃のような心地良さと幸福感。

 

 最愛にして、私の全てだった$l。

 あの人が亡くなって、全てに絶望したあのとき。

 

 

 私の中で【トキ】が止まりました。

 

 

 それは呪い。

 

 私があの人を護ることができなかったから。

 私があの人を信じることができなかったから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あの人は私を赦してくれるかしら。

 

 

 この指輪を外すことになったら、赦してくれるかしら。

 

 

 私が再び人を愛したことを、赦してくれるかしら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 愛した人が近親者でも、赦してくれるかしら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私が愛する貴方は、如何して甥なんですか?

 

 

 何十回、何百回、そう思ったことか。

 

 この躯に流れる血を、憎みました。

 両親と姉さんたちを、恨みました。

 私たちが出逢った運命を、呪いました。

 

 何故、私たちは赤の他人として出逢えなかったんでしょう。

 

 

 

 ――――――ジャラジャラ

 

 

 金属音が、理性に響く。

 その音は私を現実に戻してくれます。

 

 私を縛る鎖は戒めの証。

 

 

 最近、段々と抑制できなくなりつつある、この想い。

 

 貴方は誰が好きなんですか。

 知りたいのに、怖くて訊くことができない。

 だから、私は貴方にただ微笑むだけ。

 嫌われたくない一心で、偽りの顔を。

 

 

 最愛の人。

 貴方が大切に想える人を見つけてくれればいいのに…。

 そうすれば、私は貴方のことを諦められます。

 

 

 

 ――――――――本当に?

 

 

 【私】は私に問い掛ける。

 

 私は弱い。

 誰かに縋っていないと生きていけない寂しい人間。

 今はこの距離でも貴方がいます。

 でも、拒絶されたら……?

 

 

 

 私はどうなるんでしょう。

 

 

 

 

 ―――――――――――――――想像、できない。

 

 

 

 貴方は私の中に深く入りすぎて、貴方がいない生活は考えることができない。

 それはもしかしたら、一種の麻薬のような…。

 私にとって貴方はなくてはならない存在。

 空気のような、いることが当たり前の存在。

 

 

 

 

 

 いつからでしょう。

 

 私が貴方への想いに気付いたのは。

 

 

 退院した私を笑顔で迎えてくれたとき?

 

 嬉しさのあまり、私に対して泣いてくれたとき?

 

 

 七年振りに再会したとき?

 

 それとも、七年前のあのときから?

 

 

 

 

 

 いくら考えても答えは出ません。

 出口のない迷路のように、堂々巡りを繰り返します。

 

 

 それくらい、自然だったんです。

 

 気付かなかったくらい、自然だったんです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 気付いたら、私は貴方に恋していました。

 

 

 

 

 ―――――――――貴方を愛しています

 

 

 

 

 

 

 

 でも、私が貴方を想うのは禁忌。

 世間が、法律が、何より【私】がそれを認めません。

 

 

 だから、私はこの想いを口にすることなく墓まで持っていきます。

 

 お互いのために、こうするのが最善。

 

 

 

 【私】はそう納得させるけど、私は認めたくない。

 

 

 叶うのなら、全てを失ってでも貴方を愛し続けたい。

 命ある限り、愛し続けたい。

 

 

 けれど、それは夢。

 決して叶うことない、悲夢ユメ

 想ってはならない、恋夢ユメ

 

 

 

 だから私はこれからも演じ続けます。

 貴方にとって、【良い叔母】である役を。

 それが、【私】。

 

 

 だからお願いです。

 

 私をこれ以上苦しめないで下さい。

 澄んだ瞳で私を見ないで下さい。

 優しく私に微笑まないで下さい。

 

 

 

 貴方に甘えてしまうかもしれません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――――秋子さん、大切な話があるんです

 

 

 ――――――祐一さん? 真剣な顔して如何したんですか?

 

 

 ――――――実は俺、ずっと前から秋子さんのこと………………

 

 

 


 

あとがき

 どうも、SS書き初心者の琉海です。
 今回はKanonの秋子さんをメインに書いてみました。

 テーマは【葛藤】と【短編】の二つ。
 好きだけど伝えることができない。
 悩み苦しみながらも想っている。
 そういうものを感じ取ってくれれば嬉しいです。
 もう一つのテーマとして、続きがあるような終わり方をする短編。
 それらしく表現出来たかわかりませんけど、この話はこれで終わりです。

 前回は三人称で書いたので、今回は一人称に挑戦。
 一人称で書いてみたんですけど、難しいですね。
 というのも、秋子さんの口調が巧く出せないところが多々ありました。

 今回は秋子さんの独白みたいなものですから、短いです。
 しかもシリアス風味ですから萌え要素は何一つとしてありません(断言
 ほのぼの・ラヴラヴといったジャンルではないので当たり前かもしれません。

 誤字脱字は勿論、技術的指摘などありましたら嬉しいです。
 相変わらずネーミングセンスないタイトルですね。
 誰か考えてくれないかな…?
 それでは、次回までごきげんよう。








管理人の感想


 琉海さんからまたSSを頂きました。
 私は、秋子さん原作で1番好きなキャラです。(爆
 ネーミングセンスの欠如は人事じゃないですなぁ。

 秋子さんの独白。
 普通に考えれば甥叔母の関係ですからね。
 恋愛なんてもっての他、忍愛は本人からしたらキツイものでしょう。

 中々に葛藤が表れてます。(何様か
 ただ、抽象的な表現が多かった気もします。
 だからこそ独白なんでしょうけどね。


 この調子で、秋子さんをヒロインにした長編を。(爆


感想は次の作品への原動力なので、送っていただけると作者の方も喜ばれると思いますよー。

感想はメールBBSまで。