これはweb拍手の中で使われたものです。 本編とは関係が有るようで無さそうな…… 没から生まれたのである程度、遊ばれています。 なので、そういうものが許せないと思う方はここで引き返してください。 加えて私の中ではおまけに分類されて、なおかつ中心に居るのがオリジナルのキャラクターです。 そちらが駄目な方も、ここで引き返されたほうが無難だと思います。 設定と同じく文句を言われても困ります。 その点をご了承ください。 神の居ないこの世界で
kanonも大きな会社である。だから受付と言うものがあるのは当たり前。 今、受付をしている彼女自身はいたって普通と思っている。 怖いもの知らずのOLである。(リンカにしてみれば絶対に違うと主張するだろうが) 彼女は今日もいつものように、指定の位置に座っていた。 ただ、今回は普段の仕事をさせてもらえないような予感が彼女にはある。 いや、目の前の女性が居なくならない限り仕事は出来ないだろうと諦めていた。 さっきからずっと目の前に居る女性のせいだ。 目の前に居るのは羨ましくなるくらい綺麗な黒髪の女性。 いつも理事の横に居て彼女の身を護っている川澄舞だった。 「あ、あの……何か用でしょうか?」 戸惑いが隠せない。 先ほどからじっと見られていて何も反応を返さないのだ。 怖いわけではないが、何故が先行する。 何もするわけでもない、ただ、目の前に居る。 果てしなく迷惑な彼女はそこから動かない。 舞が何だか、物騒な気配を匂わせて居る為に人が寄り付かない。 仕事は無いのは楽だが、この気配が仕事よりも辛い。 (何だか……もう泣きたいって感じです) 受付は完全に機能停止。 使用したいが、舞に睨まれる位なら独力で探したほうが良いと利用者が逃げていた。 この状況を打破しようとリンカは声をかけている。 しかし、先ほどの声をかけたのは4回目なのにまるで言葉が通じていないかのようだった。 溜息を吐きたくなるのをぐっと我慢して舞を見上げる。 リンカは何かを言い返すようなことが無いのか、と思う。 もしかして言葉が通じていないのか、と不安になってくる。 (英語は苦手なんですよね……) 「話がある」 彼女が英語で問いかけようとした時に舞が口を開いた。 聞き逃しそうになったその言葉。 用と言われても困る、というのが彼女の心情だろう。 「一弥との関係は?」 「はぁ?」 あんぐりと言うのが一番似合う効果音だろう。 まさに、口を開けて何を言っているのだか? と言う表情になった。 「……話し、聞いてくれてる?」 「…………はい。聞いてますが?」 どう答えて良いのか判らないリンカ。 舞が何故こんな事を言い出したのかわからず困惑するしかない。 どこから、そんな話が出てきたのか判らないからでもある。 「最近、一弥と仲が良い」 「え? そうなんですか?」 純粋に不思議だ、と言う感じで答えを返すリンカ。 はっきり行って、意外だと言うしかない。 仲良くしている気が無いといえば嘘になるが、そこまで親しいわけではないだろう。 それがリンカの素直な気持ちだ。 「一弥さんは誰にだって優しいじゃないですか?」 「それはそうだけど……」 「それに、ただあの仮面が不気味なだけだと……じゃなかったらもっと人気があると思いますが?」 「うっ……」 素直な感想を漏らしたリンカ。 それの答えで舞は苦虫を噛み潰したような表情になる。 一理あるが認められない舞。 今にも、ぽんぽこたぬきさん! とでも叫び出しそうな雰囲気。 どちらかと言うとリンカに向けられたものではなく、一弥に向けられたものみたいに感じてしまう。 態度を言葉にすると、以下のような感じかもしれない。 (もっと私を甘えさせてくれてもいいのに!) とか (何で、みんなに優しいの!?) とか (その優しさを、私にだけに向けてっ) など、そんな感じだろう。 先ほどの中に佐祐理の事は入っていないが、実際には入っていると思いたい。 ともかく、恋する乙女は複雑なのだった。 リンカは曖昧な笑みを浮かべたまま、舞の視線を受け流す。 思考がリンカから外れているのか、それほど威力の無い威圧力。 何とか耐え切れる、居心地の悪さだったのは言うまでも無い。 こんな日が多いなぁ、と思うリンカ。 リンカにとってはちょっと、災難な日だった。
kanonも大きな会社である。だから受付と言うものがあるのは当たり前。 今、受付をしている彼女自身は少しずつ自分が変っていくのを自覚している。 神経が太くなりつつあるOLであった。 彼女は今日もいつものように、指定の位置に座っていた。 そこへ、ものすごい勢いで駆け込んでくる女の人が居る。 カウンターを乗り越えて、一言。 「人が来たら誤魔化してくれ」 はぁ? と言いたくなるのを我慢して困惑した顔を返すリンカ。 その人は周りに気づかれる事なく自然にそして素早くカウンターの下に隠れた。 困惑しているのはリンカだけ。 隠れてから数分後、しっかりとしたスーツに身を包んだ男の一団が息を切らせて走ってきた。 リンカは顔を引きつらせる。 「こちらの建物に逃げ込んだと……」 「判った、私が聞いてくる。他のものはここを中心に探し出してくれ」 「はい」 何なのか判らないが、あまり関わりたくはない。 そう感じるリンカ。しかし、多分さっきの人だと考え付いてしまう。 息を切らせていた男性が深呼吸をしてからリンカの元へ向かってきている。 よくよく観察すると良いスーツを着ていた。 先ほど慌てていたのが、嘘みたいであった。 「申し訳ないが、聞きたいことがある」 「はい。なんでしょうか?」 仕事用の笑みを顔に貼り付けたまま、リンカはそう対応した。 男は写真を探しているようだったが、先にする事が有ると気が付いたのか名刺を取り出してリンカに渡す。 男は怪しい者ではないんだよという表情だった。 その名刺を見て、リンカは目を疑った。 相沢海運、取締役、相沢大祐とある。 そういえば、よく思い出してみると時折テレビに出ている顔でもあった。 しかし、その取締役が何故、人探しみたいな事をしているのか不思議である。 その不思議な顔をしていたのが解ったのか大祐は苦笑した。 一枚の写真を取り出して、リンカに見せる。 「この女性を知らないか? 先ほど何処かに行ったのだが……」 リンカはさぁ? としか、返せない。 その女性が今リンカのいすのすぐ近くに居るのだ。 何故だか判らないが言う事が出来なかった。 大祐はそうか、と言って渋い顔をした。 そうして渋い顔をしてから携帯電話を取り出す。 おもむろに電話をかける大祐。 「あー、私だが……祐一か? 有夏を知らないか?」 『母さん? いや? こっちには着てないぞ?』 「隠すと為にならんぞ?」 『親父……俺、今エリアKに居るんだぞ? 母さんが居なくなったのはいつだ?』 「ウ、すまなかった。いやそれだけだ、じゃあな!」 慌てて、電話を切る大祐。 リンカは不思議そうにそれを見ていた。 エリアKといえば、一弥さんの出張先だなぁと思いつつ。 携帯電話を少し残念そうに仕舞おうとした時にそれがなった。 慌ててとる大祐。 「はい」 『非常勤顧問は見つかったかね? 大祐』 「お父さん……それが『渇!』」 『公と私の区別をつけんか! だから、お主はいつまでも若旦那と呼ばれるんじゃ!』 「も、申し訳有りません会長」 『まぁ、良い。今回は非常勤顧問抜きで商談をまとめるんじゃな』 その言葉に、やっぱりと言う顔をする大祐。 リンカの足元ではごそごそと何か動いている。 しかし、目の前に居る大祐は気が付かない。 「やはりですか……」 『あの鉄砲玉を押さえつけるには鎖で繋げるしかあるまい。それを承知で結婚したのではないのか?』 「解ってますよ。有夏を愛してますから」 『かー! お前の惚気は耳に毒じゃわい! ならば時間に間に合うように行くのじゃぞ!』 「はい。任せてください会長」 大祐はそう電話を切って、リンカに向かって一礼をした。 申し訳無さそうに、迷惑をかけました。 そう言って、颯爽にその場から消えて行く。 その姿を見れば、確かに会社をまとめるだけの人物だと判った。 しかし、リンカにしてみれば良い迷惑である。 そんな事を一言も言わず、リンカは足元に目を向けた。 既にあの女の人は居らずに一枚の紙だけが残っている。 それは名刺で、裏にありがとうとだけ書かれていた。 【相沢海運、非常勤顧問 相沢有夏】 その名刺と先ほど貰った名刺をセットにして後で報告しようと決めた。 ただ、こんな訪問はこれで御終いにしてもらいたいと思うのはリンカの贅沢ではないだろう。 変な訪問にはホトホト困るリンカだった。
kanonも大きな会社である。だから受付と言うものがあるのは当たり前。 今、受付をしている彼女自身は少しずつ自分が変っていくのを自覚している。 神経が太くなりつつあるOLであった。 彼女は今日もいつものように、指定の位置に座っていた。 その目の前にはいかにもしょんぼりとした、女の子が居る。 いつもは忙しいはずの時間帯だが、あまり人が居ない。 訪問者の予定もなく、のんびりとしているおかげでその女の子が居ても特に問題にはならなかった。 「あぅ〜……」 何か悲しそうな声を上げる女の子。 沢渡真琴だった。とぼとぼと受付の前を行ったり来たりしていた。 何故ここに真琴がいるかと説明すると、今真琴の乗れるドールが無いからだ。 ドールが無ければ、平定者の活動にも参加できない。 もちろん、kanonでの仕事も出来ない。 それで本社に残ったのだ。それで待っていたのは舞との特訓。 彼女の悲しそうな声はそれを表現しているのだった。 ちなみに逃げてきたわけではない。今は休憩時間。 巧くいけば一弥に会えるかも、とした感じだろうか? 言っている言葉は呟き程度なので聞こえる事はない。 「一弥、まだかなぁ……」 リンカは彼女が一弥と仲が良いのを知っている。 本社の中で一弥と普通に接しているのはリンカを除くと舞、佐祐理、美汐、そして真琴だけだ。 他の人は必要な事しか交わさないような感じである。 特定の人間としか話せないのだから、いやおうにも目立つ。 それにしても、美汐も居ないのに一弥の名前しか出さないのだから真琴は結構薄情なのかもしれない。 リンカはリンカで、この目の前でウロウロする少女に興味を持っているのだった。 「あぅ……」 それも、利用する人がおらずに暇をしているせいもある。 観察していると面白いだ。 入り口の方を見ては、溜息を吐く。 そして、それっぽい人を見つけると一瞬だが嬉しそうな表情をする。 しかし、それが別人だと知るとかなりの勢いで落ち込むのだ。 それを可哀想だと思いつつも、微笑ましくみている。 表情の変化が面白く、微笑ましいのだ。 誰を待っているというのは何となく見当が付くがあえてそれを意識から黙殺するリンカ。 彼女とて一弥が受付に来てくれなくて寂しい思いをしているのだった。 「!」 何かを感じ取って入り口に向かって走り出す真琴。 もし、耳が付いていたらビクンと反応しているだろう。 もし尻尾が付いているなら振り切れるほど振っているだろう。 そんなことが想像出来てリンカは微笑ましく思っていた。 次の瞬間を見るまでは。 そう、その瞬間を見るまでは。 「一弥!」 だき、という音が似合いそうなくらい遠慮なく一弥の腕に抱きつく真琴。 当の本人はしょうがないなぁと言う感じの口元を見せている。 真琴の表情は本当に幸せそのものだ。 羨ましくそして、ジェラシーっぽい視線を真琴と一弥に送る。 羨ましいがまだ業務時間である。 この場を動けるわけではない。それに、そこまで親しいわけではなかった。 「真琴、ただいま」 「あぅー、一弥遅いんだから! 真琴は優しいから許してあげるけどっ!」 「ははは、ごめんごめん」 ちょっと不満そうなそれでも、幸せそうな表情を見せる真琴。 幸せだろうとリンカは思う。 あれだけ、素直に感情を表現できてしかも、その人の腕を独占できるのだから。 「真琴、ほらお土産」 「あぅ? 本当? 一弥大好き!」 「あぁ、大した物じゃないけどな」 「ねぇ、あけて良い? ねぇねぇ、開けて良い?」 「ここじゃなくて、後でな」 「あぅ……なんだろ? うふふ」 とろけてしまいそうな笑みを見せる真琴。 ジェラシーのボルテージが上がって行くリンカ。 好きとは違うだろうが、あれだけ素直に感情を表現できるのは羨ましい。 出来るはずもなく、いつもの笑みを引きつらせて受付に座っていた。 「あ……リンカさんにもお土産」 「え?」 「大した物じゃないけどね。いつもありがとう」 もらえると思ってなかったリンカは今までのことを水に流してそれを見つめた。 小さな箱に、可愛らしい包装がしてある。 先ほどまで胸に渦巻いていた感情を綺麗さっぱり洗い流してそれを見る。 ポーっと見上げようとして隣の真琴の視線に気が付いた。 ばっちりと目が合う。 その目が告げていた。何だか気に食わないと。 「一弥、行こっ!」 「あ? あぁ」 そういって、不機嫌な真琴に引きずられるように行く一弥。 勿体無いような気分でそれを見送るリンカ。 ちなみに貰えた物は小さなイヤリングだった。 結構、幸せな一日なのかもしれない。真琴の事がなければ。