これはweb拍手の中で使われたものです。 本編とは関係が有りようで無さそうな…… 没から生まれたのである程度、遊ばれています。 なので、そういうものが許せないと思う方はここで引き返してください。 加えて私の中ではおまけに分類されて、なおかつ中心に居るのがオリジナルのキャラクターです。 そちらが駄目な方も、ここで引き返されたほうが無難だと思います。 設定と同じく文句を言われても困ります。 その点をご了承ください。 神の居ないこの世界で
これはweb拍手の中で使われたものです。 本編とは関係が有りようで無さそうな…… 没から生まれたのである程度、遊ばれています。 なので、そういうものが許せないと思う方はここで引き返してください。 加えて私の中ではおまけに分類されて、なおかつ中心に居るのがオリジナルのキャラクターです。 そちらが駄目な方も、ここで引き返されたほうが無難だと思います。 設定と同じく文句を言われても困ります。 その点をご了承ください。
由紀子は困り果てていた。 戻ってきたら、知っている人の面影がある子供が自分の椅子で寝ているのだから。 それはもう盛大に困っていた。 「……警備は一体どうなっているのかしら?」 大きく溜息を吐いて、自分の椅子をしげしげと見る。 はっきり言って、何故そこで寝ているのか判らない。 ソファーの方を見て、その原因がわかった。 有夏だ。 有夏がソファーで寝ている。それで次に寝やすいところといえば…… 体が小さいのだから確かに、次はそこを選ぶだろう。 「……有夏はここを託児所か何かと勘違いしてそうですわ」 眉間に手を当てて頭が痛いという仕種を見せる由紀子。 内線で秘書組を呼びつつ、由紀子は眠っている子供を観察する。 有夏が突然やってくるのは慣れた物だったが。今回のような事は初めてだった。 だから、何か事件を起こしたのかと勘繰ってしまう。 しかし、その小さな子供は確かに有夏の面影がある。 だが、有夏が子供を生んだと言う話は聞かない。 加えて、自分の子供が生まれたら真っ先に騒ぎそうな感じだがそれも無い。 よって、この子は有夏の子供ではないと結論付ける。 ふわぁ、と小さなあくびをしながらその女の子が起きた。 ばっちりと目が開き、目があう。女の子が慌てて椅子から飛び降りてお辞儀する。 可愛いなぁ、と由紀子は思う。 それと同時に、もしかして誘拐か? と親友である有夏を疑う由紀子だった。 「ごめんなさい……おしごとのじゃま?」 「ふふ……良いですわ。私は小坂由紀子。あなたのお名前は?」 「あいざわしずる、4さい!」 嬉しそうに笑う秋弦。由紀子もつられて笑った。 ほんわかする雰囲気が出来上がったとき。 扉が開いて、秘書3人組が慌てて入ってきた。 「申し訳ありません! 有夏様がお待ちという事を言うのを忘れていました」 「雪ちゃん抜けてるよねー」 「くっ!」 誰のせいでこうなったの!? という視線でみさきを睨む雪見。 シュンはすぐに紅茶の準備をはじめた。 由紀子は多少、表情を崩してしょうがないですわね、と言いその場を収める。 みさきが秋弦に気がついた。 「あれ? 有夏さん以外の子が居る」 「しずるっていうの」 元気よく挨拶をする秋弦。 みさきがそちらへと歩いていき、そして秋弦の前でしゃがみこんだ。 秋弦は不思議そうにみさきを見上げている。 「ちょっと、顔触って良い?」 「うん、おねえちゃん。しずるもさわって、いい?」 「うん、良いよ」 みさきが手を秋弦に伸ばし、秋弦もみさきに手を伸ばす。 さわさわと、お互いの顔を触るのだった。 不思議な光景に雪見も由紀子も顔を見合わせる。 ちなみに、有夏はまだ寝ていた。 シュンも観察程度には視線を送っている。 みさきが唸りながら、ポツリと呟いた。 「う〜ん、何だか祐一君に似てるような……」 相沢家関係の知り合いが多いのでみさきはそう言った。 3人も相沢さんとか相沢君とか言うと混乱するからである。 秋弦はそれを聞いて目をきらきらし輝かせ始めた。 誰が見ても喜んでいるだろう。 「ねぇねぇ、それほんと? ほんとかな?」 「え? うん、似てると思うよ」 ちょっと戸惑いつつ、返事をするみさき。 秋弦は可愛くガッツポーズをとっていた。 何だかよく判らない展開がある。 「秋弦ちゃん。どうしてうれしいのかな?」 「あのね。パパに、にてるっていわれたことないの」 「えっと? ぱぱ?」 「ぱぱはね、ぱぱなの」 「相沢祐一?」 「そーなの」 みさきの表情は意外そうな感じである。 まさか、あの人がと言った感じ。 となると、黙っていないのは由紀子である。 まさか、有夏と祐一の子供なのか? と寝ている有夏をソファーから落とした。 ゴンと良い音が鳴って、有夏が目を覚ます。扱いが酷いのはしょうがないだろう。 「有夏? 聞きたい事があるのですが?」 「あぁ、おはよう。素敵な起こし方ありがとう。そうだな百年の恋も冷めそうな起こし方だな」 文句を言いたくなる気持ちを抑える由紀子。 シュンが紅茶を差出してそれを飲み干し、何とか気持ちを落ち着けた。 「あの子は誰と誰の子ですか?」 「あぁ、秋子と祐一の子供だが?」 「え?」 「まさか、私が自分の子供に手を出すわけにいかんだろう?」 由紀子は理由を知っているだけにまぁ、と納得する。 そのとき内線がなってみさきがそれに対応した。 雪見と秋弦は楽しそうにお茶お飲んだりお菓子を食べている。 シュンも楽しそうに秋弦の世話を焼いていた。 「ではどうして、ここに秋弦ちゃんが居るのですか?」 「アー……そのなんだ」 歯切れの悪い有夏に眉を寄せる由紀子。 こういう時は有夏には良い事をしないと経験で知っていた。 「ちょっと秋子の隙を伺って「姉さん!」」 被せる様に響く秋子の怒号。 部屋に飛び込んできていた。 「ちょっと、目を放した隙に秋弦をつれて消えないでください!」 「良いじゃないか、孫とのスキンシップなんだから」 そう言いながら、秋子から逃げる有夏。 秋弦も連れて行こうかという目線を送るが、秋弦が嬉しそうにお茶をしているので諦める。 流石に、嬉しそうにしているものを壊してまでつれまわす気はないみたいだ。 「秋子様、秋弦ちゃんは責任もって相手しますわ」 「すいません! 待ちなさい、姉さん!」 素晴しい逃げ足を見せる有夏。 秋子は有夏を追って部屋を出て行く。 麗しき、姉妹愛だった。
ONE本社地下、クロノスの本部。 その訓練場の一角はかなりぴりぴりとした雰囲気で包まれていた。 祐一と浩平が真剣に組み手をしている。 「くっそ! 速いっての!」 「狙っている場所がえげつないぞ、浩平!」 時折そんな声も聞こえつつ、組み手は続いて行く。 その横でファイと呼ばれる少年とメルファと呼ばれる少女がそれを見ていた。 ファイは、カメラでその様子を克明に記録している。 カメラに収められている記録はドールに再現させる動き等に利用される予定である。 メルファはウズウズとした感じで、それを見ていた。 更にその先にはみさおを除いた、クロノスのメンバーが興味深そうに見ている。 ちなみに、みさおはこの場に居ない。 「全く化け物ね……あの2人」 「近接戦闘じゃあ、この中で入れるのは七瀬さんくらいじゃないか?」 「……それでも剣が無いと無理だわ」 「みゅ……それでもきつそう」 「お兄ちゃん何だか嬉しそうだね」 この中で格闘戦から意味を見出せるのは留美くらいだろう。 何故なら、高度すぎるからだ。 見ているだけで意味があるのは自分よりも数段上までである。 駆け引きの意味も解らなければ、それは自分の技術にはならない。 「「はぁ!」」 びた、と2人の動きが止る。 それぞれつけていた足枷のような物を外していた。 それは一定の距離から逃げられないようにする為のもの。 ドール戦では行動範囲が狭い時がある。それを少しでも再現する為の苦肉の策だった。 ようやく試合が終ってそれぞれのメンバーの元に行く祐一に浩平。 メルファとファイに確認する為に祐一が2人に話しかける。 「どうだった?」 「問題無」 「お父さん! 私と、一戦しようよ!」 メルファは殺し合いは嫌いだが、武道やスポーツは好きだ。 だから、試合ならなと苦笑する祐一。 祐一はメルファにせがまれてもう一戦するようになった。 「あいつ……タフだな……」 「まぁ、お兄ちゃんだし」 「有夏さんのしごきに耐えれるんだから……」 今度は足枷はつけない。 自由に、それこそメルファは壁さえ使って祐一を翻弄しようとする。 祐一はそれに落ち着いて対処するたびにメルファは嬉しそうにするのだった。 相手をしてもらう機会はそうない。 まぁ、一緒に行動している時は有るのだが、それでも仕事がある場合が殆ど。 やはり相手にしてもらえない。だから、余計に嬉しい。 「みなさん、どうですか?」 みさおが、寝ている秋弦を背負ってやってきた。 ファイが、気がついて秋弦を引き受ける。 しかし、祐夏以外の興味がその子に行っているのはよく判った。 試合を横目にあの子、誰? と言う視線をやり取りしている。 「みんな〜、差し入れだよ」 『そうなの』 みさおに遅れて、瑞佳と澪の2人が入ってくる。 その手に、スポーツ飲料とタオルを持って。 瑞佳は真っ先に浩平にタオルと飲み物を手渡した。 ちなみに、まだメルファと祐一は試合を続けている。 その試合だが、メルファに疲れの色が見え始めていた。 ファイは、もうすぐで試合が終ると予想していた。 「はぁぁぁぁぁ!」 「甘い」 壁を蹴る反動を利用しての三角蹴り。 メルファ渾身のそれが受け止められる。 受け止められた勢いもそのままに腕を取られて、勢いをそのまま利用する形で投げられた。 が、投げる時に威力を殺したのか、メルファは優しく地面に着地させられる。 「ウ〜ん、やっぱり駄目だったね」 「自分の動きと相手の動きをよく見ないと駄目だな」 息を弾ませるメルファに祐一は丁寧に武道ではどうするかを教える。 流石に、身に染み込んでいる術を教えるわけではない。 ファイはその姿さえ、撮影していた。 『この子は何なの?』 「えー……社長にここに連れて行ってくれって頼まれただけですから……」 澪に尋ねられて曖昧に笑ってみさおは誤魔化した。 ファイはそれをみて不思議そうな顔をする。 祐一を指差してから、秋弦を指差して一言ぽつりと言った。 「親子」 「え?」 声が重なった。それも綺麗に。 まぁ、驚きと言えば驚きだが確認してみれば確かに祐一の面影はある。 特に羨ましそうな表情をしているのは澪に瑞佳だった。 「そういえば、七瀬はそんなに驚かないんだな」 「相沢君ほどの良い男なら、相手が居てもおかしくないもの。折原もそうでしょ?」 案外あっさりした対応に拍子抜けする浩平。 もっとも、留美にはあまり思い入れがなかったのかそれほどショックには見えない。 ショックを受けているとしたら瑞佳と澪の2人だろう。 「いいなぁ、かわいいよぅ……私も子供が欲しいもん」 『私も子供が欲しいの』 「折原、頑張りなさい」 微妙に清々しい笑みの留美に肩を叩かれる浩平。 なんだか、浩平の顔が微妙に引きつっていた。 『先輩。また、夜に連れて行って欲しいの』 「え?」 お腹を擦り光悦の表情をしながら澪がスケッチブックを見せる。 瑞佳の纏う雰囲気が一気に冷たくなった。 浩平は、それを感じ取り、逃げようとする。 「浩平?」 「あぁ、なんだ?」 退路の上に瑞佳が居る為に浩平は逃げれない。 笑っているが、これはマジ切れする直前の表情だった。 背中に冷たい汗が流れる浩平。 「七瀬さん、あれ借りて良いかな?」 「えぇ、思う存分やって頂戴」 そう言いながら浩平につけられたのは先ほど使っていた足枷。 留美は外れないように複雑に結ぶ。 瑞佳もそれをつけていた。これで浩平は逃げられない。 「1から10、ううん。0.01から100、まで言ってもらうんだよ?」 「あ、あのな、瑞佳?」 「私を差し置いて何をしているのかな?」 はい、とみさおから訓練用の模擬刀が渡されて試合開始。 浩平の技術をもってしても逃げ切れない斬撃が繰り出される。 それも、留美が目を見張るほどの。ファイはそれをも撮影していた。 「……ねぇ、みさおちゃん。なんで長森さんをスカウトしないのかな?」 「みゅ……瑞佳凄い……」 「あはは……ほら、お兄ちゃんのお仕置き限定の能力だし」 「そっか、残念」 そんな会話があったのは2人の耳には入らない。 留美が熱心に瑞佳の繰り出す斬撃を観察する横では澪が嬉しそうに報告会をしていた。 どうやら最後までいけたらしい。子供は出来なかったみたいだが。 祐一とメルファはどうして良いか判らずに、立ち尽くしていたのはまた別のお話。
聖にとって見れば、久しぶりの里帰りだった。 と言うのも、設備的に船の中では検査しようとしても出来ない事がある。 たまたま実家の近くに停泊したのだからそれを使おうとメルファとファイそして秋弦をつれてきたのだ。 秋弦に関して言えば、ついてきたと言うのが正確だ。 何故ついてきたのか判らない。 「さて、久しぶりの実家は……」 「あ、こら! 待って! まだ治療が終ってないです!」 「治療は良い! 自分で出来る!」 上半身、裸のまま飛び出てくる往人。 それを追う様に飛び出る佳乃。 白衣をまだ初々しく着こなしている佳乃が往人のTシャツを持っていた。 呆れる聖。しかしそのままで良い訳がない。 「佳乃、機材を借りるぞ!」 「あ、お姉ちゃん! どうぞ! 今は手を離せないから!」 「良い! 離してくれて良いから!」 遠くに行きつつある2人を呆れた顔で見る聖。 彼らの進展具合がわかるというものだ。 置いてきぼりにされたメルファ、ファイ、秋弦。 当然のことながら展開についていけない。 「あの、あれは何?」 「不思議空間?」 「げんきなのねー?」 「気にしたら負けだ。では許可も出たので入ろうか」 聖は3人の言う事を封じ込めつつ、元の職場に入る。 診療所は細部が佳乃の色に変っているがそれほど変化が無かった。 知った内部を歩いて、メルファとファイの検査をテキパキとこなして行く。 秋弦は楽しそうにそれを見ていた。 聖は見ても支障がないところまでしか秋弦に見せていない。 見ても判らないだろうが、念のためと言う事もある。 ロビーに祐一が入ってきた。 「晴子さんに頼まれてここに来たけど……佳乃さんは居ない」 「ぱぱ!」 「うん? 秋弦どうしてここに居るんだ?」 「あのね、せんせにつれてきてもらったの」 「そっか」 診察室から飛び出る秋弦。 祐一がここにくるのを知っていたのかと聖は思う。 珍しくついてくるなとは思っていたのだ。 秋弦の頭を撫でながら、診察室を覗き込む祐一。 「聖さん、メルファとファイの検査はどうなってますか?」 「ふむ、悪化もないが好転もない。手を加えなければこのままで問題ないだろう」 「そうですか」 「あ……お父さんそんな顔しないで」 「辛」 「うん、そんな顔されると私達が辛いよ」 秋弦が祐一を心配そうに見上げ、ファイとメルファが声を上げた。 気を使われているのが解って祐一は微笑んだ。 聖も微笑んだ祐一を見てホ、と安堵の溜息をついた。 「さて、残りの検査もしてしまおうか」 「はい」 メルファは声を出してそれを肯定し、ファイは頷いてそれを肯定した。 聖は腕まくりをして、検査に取り掛かる。 しばらくしてから、外から声が聞こえてきた。 祐一に相手をしてもらっていた秋弦が微妙に不機嫌そうな顔をする。 「おーい、中に入ってもええか?」 「あぁ、晴子さん。どうぞ。と言っても、俺も勝手に入っているんですけどね」 祐一が扉を開けて観鈴と晴子の2人を診療所のロビーに招き入れる。 診察室に聞こえたのか、聖の声が聞こえた。 「晴子さん。申し訳ないが今は手を離せない」 「うん? 聖先生も居るんか? ……居候は居らんけど」 「……おかしいなぁ」 2人は診療所に居ない主と診察に行った筈の人間が居ない事に首をかしげていた。 秋弦が知らない人間が来たために驚いて祐一の後ろに隠れる。 晴子は小さな気配を見逃さずに秋弦を見つけた。 隠れている秋弦に目線を合わせて、優しげに微笑む。 「はじめましてやな。神尾晴子や」 「……あいざわしずるなの」 「そうか、ええ子やね」 ぐりぐりと秋弦の頭を撫でる晴子。 髪の毛を乱されるのが嫌なのか、秋弦は微妙に晴子の手から逃げようとしている。 しかし、晴子が逃がしてくれるわけがない。 無駄な抵抗かも知れないが、右へ左へと秋弦は逃げ続ける。 祐一が、それを止めるように秋弦を抱き上げた。 秋弦は祐一に抱きついて、晴子を迷惑そうな目で見ていた。 「うん、有夏の言ってた通りにええ子や」 「にはは、はじめまして神尾観鈴です」 「はじめましてー」 晴子から観鈴に視線を移しながら秋弦は反応を返す。 観鈴は晴子のように無理に触ろうとせずに手を差し伸べた。 秋弦はびっくりしながらも、それに手を伸ばす。 握手を普通にして、観鈴は更に微笑んだ。 「それにしてもあの2人はどこまで行ったんやろね?」 「ふむ、今頃は砂浜を走っているのではないですかね?」 そういってロビーに入ってくる聖たち3人。 観鈴と秋弦が交流している間に晴子はメルファとファイに挨拶をしていた。 初対面であるし、秋弦と微笑ましい交流をしている自分の娘に関しても説明する。 それは差し障り無く終った。 ちなみに、聖の予想は正しい。 佳乃と往人が帰ってきたのは更に1時間後。 2人とも汗だくになり、酷い有様だった。
平定者の船室。そこから姦しい声が聞こえる。 声の元はアリアにサラサ。加えて秋弦に秋子の声。 双子の2人は声が明るく、秋弦の声は微妙に固い。 「お母さん! これはこれは?」 「アリア、ずるい!」 「私が先に着るの!」 「ほらほら、喧嘩しないの」 アリアとサラサは新しい服の取り合いになっている。 女の子らしい、可愛いワンピースの取り合いだった。 淡いピンクのワンピースを取り合っている。 秋子は涼しげな青がアクセントになっている白地のワンピースをサラサに進めた。 「あ! サラサ……」 「アリアはそっちに決めたんでしょ? 今回は我慢しなさい」 秋子にそういわれて引き下がるアリア。 淡いピンクのワンピースとサラサのワンピースに視線を行ったり来たりさせながらアリアは頷いた。 サラサはそれが気に入ったのか、抱きしめてくるくる回っている。 羨ましそうに見るアリア。しかし、その手の中のも捨てきれないと言う表情だ。 秋弦だけがその輪の中に入りきれていない。 その表情は普段着が一番と言っているような感じだった。 そもそもの発端は、祐一の着ている物と似た物を着たがる秋弦を女の子らしくする為の秋子なりの苦肉の策。 秋弦の普段着は本当に男の子が着るようなものだ。 秋子が2人の女の子らしい服を着せれば羨むかと思ったがそうでもないみたいだ。 ちなみに、秋子は秋弦が興味を持つように女を意識した服装で居る事が多い。 「じゃあ、着て見ましょうか? 手伝いはいるかしら?」 「「大丈夫!」」 2人は声を合わせて元気よく返事をする。 この船室はどちらかと言えば、クローゼットみたいなものだ。 聖の白衣とか通天閣のロゴの入ったシャツから始まり。 果ては祐一や茜の着る作業着まである。 秋弦が興味を持っているのは作業着等の方だ。 しかし、秋弦に合うサイズは可愛い服しかない。 「秋弦も選んで。今日は外出するから」 「う、うん」 そういって選んだのは聖サイズの通天閣Tシャツだった。 それを今着ている服の上から被る。 もちろんサイズが合うわけ無く、裾は多分に余って床についている。 もし、このまま歩いたら、すぐに駄目になるだろう。 秋子は溜息を吐きながらそれは駄目よ、と優しくTシャツを元の場所に戻す。 秋弦はたいそうご立腹だった。 「ままは、わがままなの」 「後で、ママが選んであげるわね」 そう言って秋子はアリアとサラサの2人の着替えの手伝いをする。 残された秋弦は服を見て回る。 これはと思う服はやはり祐一の着ている服と同じものだった。 秋弦サイズの服は秋弦の手の届く範囲にある。 しかし、祐一サイズの服は手の届かないところにあった。 背伸びをして手を伸ばすが、全く届かない。 「む、む〜! うー、あ〜」 不思議な唸り声を上げつつ、手を伸ばす。 ちょっとバランスを崩して、こけそうになって手を引っ込めた。 周りをきょろきょろ見渡して何か足場を探すが見つからない。 がっくりと肩を落として凹む秋弦。 だぶだぶでも良いから、祐一の服が着たかったみたいだ。 アリアとサラサの2人は着替え終わったのかお互いに見せ合いをしている。 秋子が、秋弦のほうへと歩いてきた。 「決めれないの?」 「あのね、しずる。あれがきたい」 指を差すのは祐一の普段着だった。 秋子は溜息を吐きながら、説明する。 今回は出かけるのだから、普段着は駄目なのだと。 「じゃあ、お母さんが選んであげるわ」 秋弦に理解できているのか判らない。 しかし、秋子はテキパキと選んで秋弦に着せかかった。 苦戦するのは言うまでもない。 アリアとサラサも総動員しての着せ替え合戦だ。 祐一はそのことを知らずに歩いていた。 もう少しで、港に着く。そんな時間帯だった。 目の前から凄い不思議な集団が走ってきている。 「はずかしーの!」 「その白衣を返しなさい! 秋弦!」 外出用に着飾った秋子と裾を盛大に引いてたぶだぶの白衣を着た秋弦だ。 それが祐一の目の前で止る。 秋弦が祐一に気がついて、回れ右をしようとした。 が、秋子に捕獲される。 「やー! なの!」 「秋弦、どうしたんだい?」 「祐一さん、この子の外出着を見てもらえますか?」 「やー!! なの!!」 半べそになりながら拒絶する秋弦。 祐一はしゃがみ込み目線を合わせながら秋弦を見据える。 「みせてくれないかな?」 「う、うー……」 観念したように白衣を脱ぐ秋弦。 その下には可愛いふりふりのついた服を着ている。 秋弦の顔は不機嫌だった。 「可愛いじゃないか。どうして見せてくれなかったんだい?」 「え? かわいい? しずる、かわいい?」 「あぁ、可愛いよ」 「えへ、えへへ」 さっきまでの不機嫌はどこへやら。 一転して、ご機嫌だった。 「そうか、今日は外に出る日だったな」 「えぇ、先に準備してます」 「こっちも、すぐに準備を始めるよ」 秋弦の手を引こうとして、秋子は手を差し伸べる。 しかし秋弦はその手は握らずに自分の手を隠して秋子を見上げた。 秋子はしょうがないわね、と呟いて秋弦を抱き上げる。 「まま、だいすき!」 「しょうがない子ね。では祐一さん、また後で」 「はい、また後で」 秋弦は上機嫌のまま秋子に抱かれて先ほどのクローゼットに戻る。 今回の秋子の作戦はどうやら成功したみたいだ。
さて、久しぶりの登場である彼女。 kanonの受付嬢であるリンカは普段と同じように仕事をしていた。 ただ、雨で暇だったのはしょうがないことだろう。 訪問してくる人の予定も無くのんびりとしている。 それはそれで良いことなのかもしれない。 雨が弱まってきた時にその人達はやってきた。 「ねぇねぇ、お父さん。ここがまこ姉とみし姉が仕事してる場所なの?」 「ここのどこでお仕事しているの?」 「2人はここで仕事はしているけど俺は詳しい事はわからないからなぁ」 5人家族であろうか。関係者なのかもわからない。 どう見てもお客ではない。時間で言うと3時を過ぎたところ。 何故、この時間帯に来たのか判らない。 リンカは首をかしげつつ、誰なのか観察を開始する。 一人は三つ編の女性。穏やかな笑みを浮かべて男の人に寄り添っている。 その女性の横に居る男性は穏やかな感じである。 男性に肩車をされている女の子。ご満悦そうだ。 そして、男性の手を取って疑問があるか、男性を見上げる多分双子。 会話からして多分家族なのだと、リンカは理解した。 姿はパーティーにでも行くのか着飾っている。 (それにしても……3人も生んであの体型……羨ましい) 「祐一さん、呼び出してもらいましょう?」 「そうだな。佐祐理さん達はもう移動しているから、遅れるわけにもいかないだろう」 リンカは知らないことだが、秋弦の誕生会をする為にわざわざ外の料理屋さんで食べる事になっていた。 ちなみに、佐祐理さん達には茜、舞、聖、メルファ、ファイが含まれている。 あとは真琴と美汐が合流すれば祐一たちは移動できると言うものだった。 「「お姉さん! 天野美汐と沢渡真琴を呼んでください!」」 「え? あの……どちらさまでしょうか?」 え? どうしてそんな事を言うのと言う感じでリンカを見上げる双子。 そして何か思いついたのか、頷きあった。 「「家族です!」」 「……えっと」 対応に困ったリンカはとりあえず、年長者である2人に視線を配る。 2人はしっかりと頷いてくれたのでとりあえずは連絡を入れることにした。 ちなみに、頷いた時に秋弦が祐一の頭から落ちそうになったのはしょうがない事だろう。 「さて、2人がくるまで待とうか?」 「「うん!」」 しっかりと頷くアリアにサラサ。 祐一は2人に微笑み返しながら、秋弦をゆっくりと地面に下ろす。 下ろされた事が不満なのか、それとも落ちそうになった事に不満があるのか。 秋弦は不機嫌であった。しかし、祐一に頭を撫でられると大人しくなる。 嬉しそうに祐一に撫でられていた。 「えへへ……パパ、だっこ」 「やれやれ。しょうがないな」 「あの、失礼ですが、ご家族の方で?」 「えぇ。そうですが?」 それに答えたのは秋子。 リンカの問いに不思議そうに返した。 祐一は秋弦を抱き上げていた。今度は肩車ではない。 リンカは、お似合いの夫婦だなぁっと思ってから、それを自分と一弥に当てはめる。 何となく自分がイメージに当てはまらないと凹んでから何かに気がついた。 そう、一弥とイメージが重なるのだ。 「再び失礼な事を言いますが、倉田一弥氏と面識は?」 「えぇ、彼とは幼馴染でして。よく雰囲気が似ていると言われます」 そう言われて、一弥と祐一を比べて一弥のほうが雰囲気が子犬っぽいと結論付けるリンカ。 幼馴染なら雰囲気は似ていてもしょうがないし、それにこんなにしっかりしてないよね? と考えていたりする。 確かに、よく人を探して、しょんぼりしている人とちゃんと父親している人のイメージが重なるわけがない。 とりあえず、5人家族なのだとリンカはこのときは理解していた。 「お待たせしました。さぁ、行きましょうか」 「あぅ〜。ごめん、仕事が多かったの……」 「まこ姉!」「みし姉!」 「ごめんなさい、サラサ」 「うん、次はちゃんと時間守るね、アリア」 現れた美汐と真琴。 リンカは混乱する。真琴と美汐を姉と呼ぶ双子2人。 家族であり、姉をつけて呼ばれると言う事はあの2人の子供なのか? そう混乱していた。 「そちらの2人が天野さんと沢渡さんの両親なんですね?」 「あぅぅ……」 「……そんな酷い事はないでしょう」 リンカのその一言に対して、2人の声は深く沈んでいる。 その声だけが、リンカには印象的。 ちなみに、誤解は簡単に解けたのは言うまでもない。 冷静に考えれば、すぐに気がつく間違いだった。