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美術・九条の会 呼びかけ人からのメッセージ(2005年6月28日掲載)

池田龍雄【画家】

戦争放棄をうたった九条は、絶対、守らなけれ ばならない。それは表現の自由を守ることでも あります。
美術家は、作品(制作活動)で、戦争への道をふ さぐことはできないけれど、こうして声を上げ ることは大きな力となるでしょう。


稲木秀臣【画家】

戦後60年の平和と繁栄は九条の賜物(たまもの) であり、世界に向けた日本人の誇りでもありま す。
文化人として、より輝きのある九条にしたいも のです。


大西みつぐ【写真家】

不思議なのは、イラクなどの戦場に赴き、報道 写真といわれる写真をたくさん撮って、雑誌な どに発表し、あるいはニュース番組やワイドシ ョーに出演し、しっかり「伝えて」いる写真家た ちが、ここ(美術・九条の会)に名を連ねようと しないことです。日本にはたくさんのカメラマ ンや写真家がいるのですが。
私は決して戦場には行きません!
生まれ育った東京下町の足もとの「環境」から 戦争反対という声を挙げていきたい。「東京大空 襲」の惨禍を、直接父や母から聞いた最後の世 代として。


片岡 昌【人形作家】

片岡 昌・画
▲'04 ノー・ウォー美術家の集い横浜展のポスターの挿画。手術後療養中のため、仮に。



金澤 毅【美術評論家】

君は見たことがあるかい、戦争というものを。
それはあらゆるものを破壊するエネルギーな のだ。人体も精神も、過去も未来も、理性も 感情も、都市も自然も、そして国土と歴史も。
勝利者も敗者も最後にはむなしさだけが残る のさ。
そんな経験談は昔話の中だけでいいんだよ。
世の中にはもっと楽しい話題がいっぱいある のだから。





内海信彦【美術家】

敬愛する池田龍雄先生からお誘いがあり、呼びかけ人を引き受けました。名を連ねて自己満足 する知識人や大学人とは違い、 美術家は個人ですべての圧力と闘わなければなりませんから、求められたコメントを記します。 今、中国全土で澎湃と始まっている反日デモは、9条を象徴として行なわれる憲法改正の動きに も密接に関係しているでしょう。
私は多くの美術家とともに89年6月3日未明の天安門の大虐殺の晩から声明を出し、中国政府の 暴虐に反対して犠牲者の家族に義捐金を送るチャリティ展を開いたことがあります。その後、 虐殺はなかったとか、もう時間がたったのだからというような声を聞くようになり、15年たっ た今ではもう忘れかけている仲間もいることでしょう。しかし私は、けっしてこの事件を忘れ ません。必ず6月4日近くには若い人たちにこのことを語るようにしています。
中国の人びとにとって、過去の歴史は今に連なり、忘れるどころか今を生きるなかでもっとも 重要な事実なのです。
反日デモについて、やり方が悪いという批判もあるでしょう。政府への批判をそらす目的があ るというのもその通りです。あの大虐殺を公然と行いながら、政府批判さえしなければという 今回の中国政府の態度には釈然としないものがあります。
しかし、だからといって反日デモの底流にある中国の人々の怒りを否定することはできません。 いわゆる自虐史観批判に見られる過去の歴史認識の歪曲や、首相の靖国神社への公式参拝な どが、どれほど中国や朝鮮半島の人々にたいして挑戦的なことであるかを、今回の事態は物語 っています。南京大虐殺はなかったという歴史はそのままにしておいて、中国への経済進出に よって利益を得ようという矛盾がすべて破綻することになったのでしょう。しかし今後、日本 で不測の事態でもあれば、一挙に一世紀近く前の過去の恐ろしい時代を、ふたたび繰りかえす ようなことも十分考えられます。
こうしたなかで美術家による9条の会が声明をだすことはきわめて重要だと思います。
美術家はこうした事態に深い責任を負っています。戦前戦中にどれほど多くの美術家たちが 戦争に協力させられ、そのことを拒むことすらできなくされたかを今こそ想起する必要があり ます。
今回この声明を出すにいたるまで、連帯を拒んだ人の名を聞くと深い失望とともに、辛い過去 が甦って来ます。
無関心を装い、己の損得と傾斜する時代に追従する知識人、大学人が、あるところに来ると どれほど若者を扇動して戦争と排外主義に狂奔したことか。今の日本の美術家には、9条の問題 が基本的人権と言論および表現の自由に深くかかわり、それが断末魔の危機にあることにどれ だけの意識があるのでしょう。
戦後の長い間、憲法と9条を守ると言いながら何ら自分自身の存在を問い、保守的で体制依存 的な自分を変えることをしてこなかったことの代償が今、求められています。改憲が迫った から慌てて9条を守れでは調子が良すぎます。変えてはならないのが基本的人権と言論および 表現の自由であるならば、それを守るために何ら自分を変える闘いをしてこなかった戦後の 革新、革命勢力こそ変わるべきでしょう。
9条を守れという声明は、自分たちの過去を洗い 出し、自分たちが変わることで変えてはいけないものへの必然を自分たち一人ひとりで噛み締 める好機だと考えます。おそらくそう遠くないときに、国家のために美術家が何を貢献するの かという踏み絵が突きつけられるときが来るでしょう。
呼びかけ人の美術家の平均年齢を直視してください。愛国主義の波が高くなるなかで、9条の会 に若者はあまり関心を示していません。9条の会の呼びかけ人の子どもは?呼びかけ人の教室の 学生は? 私が気になるのはこのことです。
(*4月18日新聞記者発表時、各社に配布したもの。内海氏の意向でここに転載)

下田尚利【いけばな】

たいへん難しい状況です。だからこそ声を大きく 強く拡げていかねばなりません。



建畠覚造【彫刻家】

最近の国、公立美術館が、当局?の圧力で右傾化 が進み、前衛が阻害されつつある事に、疑懼の念 をいだきます。右傾化は美術だけでなく、全てに 漲っています。



日夏露彦【美術評論家】

いま激しさを増す反日デモの背景には、憲法9条 を反古にしようとする一部日本人の画策への危機 感があると思われます。
創ったのがだれであれ、人類最高のルール・“文化 国家”への保証といえる憲法9条は、国際的視野 で創造しようとする美術家にとっても、誇るべき 条項としてアピールするしかありません。
明治憲法と軍国主義のもとで、いかに自由な創造 が捻じ曲げられ、萎縮したか、その歴史の痛みと 惨めさを振り返れば、ごく当然のアピールといえ ます。
美術は政治・社会と関係ないと思い込むことが、 創造を圧殺する勢力に利する歴史の教訓を、いま あらためて思い返し、広く美術家のみならず市民・ 学生に“憲法9条を守り、誇りにしよう”と呼び かけるしだいです。
(*注・4月18日記者発表時に配布したもの)



ワシオ・トシヒコ【美術評論家】

残念なことに、
「戦争を実際に体験したことがないので、良く も悪くもわからない」
という若者がいる。
そのために、わかろうとする読書であり、映像 鑑賞などではないのか。
これまで、いったい何を学んできたのだろう。
それでは、「これからアメリカの戦争を積極的 に請け負い、ナマの現場へ送ってやろう」とする 戦争利権屋たちの思う壺ではないのか。
九条の意義を説き、そうした若者たちが一人でも 少なくなるように努めなければならない。