「ワヤンを続けてきて、“できることをまずやろうよ”っていうふうに、思えるようになりました。」



―今回、100万人のキャンドルナイトに関連したイベントに参加するということについて、どうですか?100万人のキャンドルナイトはご存知だったんですよね。

はい、2、3年前に知りました。ホームページで見たんですけど。夜に電気を消して、家で参加したこともあります。うちで、ローソク灯して。やってみて、なるほどなあ、こういう時間の過ごし方もあるんだなあ、と思いました。ふだん、家に帰れば何も考えないで電気つけてテレビつけますけど、ちょっとだけ電気を消してみようよって言われて、なんていうか、ゆっくりしなきゃね、こういうこともあるんだな、と。

―ワヤンをやってらっしゃると、ゆっくりするとか、日常と違うリズムでいられる時間というのが普通の人より多い気がするんですけど。

ああ、ワヤンを知る前と今では、考え方が変わりました。

―おおっ。

これは、確かに。

―どんなふうに?

もう20年くらいずーっとワヤンとつきあっていると、知らず知らずのうちに影響を受けてるっていうか。ワヤンの話の中って結局は神様が決めたように物事が運ぶから、ま、できるときに、できることを、できるだけやるしかないよね。っていうふうに、思えるようになりました。なんでも。最後は殺されちゃう運命かもしれないけど、でもそんな先のどうなるか知り得ないことを考えてもしょうがないから、いまいっしょうけんめい、やることやろうよっていう。うじうじ言ってないでやってみようよ!っていうふうになりました。やらない前にマイナスなことをあれこれ考えても、どうしようもないよーって。それはでもなんていうんですかね、のんびりした気分で、そう言えるようになりました。

―はあ、すごい。

以前はとても、失敗するのはイヤだったし、恥かくのはイヤだったし、下手くそとか思われるのが怖かったんです。ここまでできなきゃ見せられない、ここが自分の満足ラインっていうのがあって。でもその満足ラインって、近づけば遠のくものなんですね。なーに恰好つけてるんだろ私って、と思って。いっしょけんめいやって、できることをまずやろうよ。身の程でいいじゃない、っていうふうに思えるようになりました。これはもしかしたら、ワヤンのおかげかなと。というのは、勉強しても勉強しても奥が深いし、とてもジャワ人にはなれませんから。千年の歴史のあるものを、外国人がほんのちょろっと勉強するぐらいではどうにもなりません。そうなってくると、自分なりに解釈して、向こうの人に敬意を払ってやんないとできませんよね。と思って。いっしょけんめいやるしかないよね。っていうカンジです。

―では最後に。これからの目標や夢をお聞かせください。

現実的な目標として、1年に1度くらいは、みなさんにワヤンをお目にかけられる機会をつくれたらいいなーと。今はひとつの作品をつくるのに、1年くらいかかってしまうので。メンバーみんなそれぞれ仕事を持ちながら、やっているので。集まれるといっても週に1度か2度。平日の夜も集まっていますけれども、なかなかね、自分の生活もあるし。それでやっていくしかないんで。続けていくことが大事だと思ってます。過去には、なんでできないのよ!っていうキモチになったこともあったんですけど、いまはもうそれはありません。みんなそれぞれ好きで関わっているのだから、それぞれのペースでやれることを、コツコツと積み重ねて、その時にできることを1年に1回、発表したいなっていう、それが具体的な目標です。

END

ワヤンに対する加清さんの深い愛情が、ひしひしと感じられるインタビューでした。6月18日(土)の公演では、そんな加清さん率いる「クルタクルティ」が、「キャンドルナイト」といういつもと少し違う舞台で、いつもと少し違う表情をもった「ワヤン」を上演します。ぜひ、お見逃しなく。