著述(高橋永寿)Top

LinkIcon著述(高橋永寿)Top

―灸法の民間傳承―「二日灸(二十日灸)資料集成」

LinkIcon―灸法の民間傳承―「二日灸(二十日灸)資料集成」

逆子(骨盤位)の鍼灸治療

LinkIcon逆子(骨盤位)の鍼灸治療

切診(触診)のコツ

LinkIcon切診(触診)のコツ

ブレスレット・ネックレスのつけ方使い方

LinkIconブレスレットのつけ方、使い方

『イメージトレーニングで切診(触診)の感性を磨く』

(「鍼灸臨床のコツ」共著、医道の日本社、2008年11月11日発行)

はじめに
 手先を使う職業は経験に支えられている。経験を積みながら技術は洗練され、物を作り上げる「コツ」を覚えていく。臨床経験を積まずに「コツ」は覚えられないし、頭で教えられるものでも覚えられるものでもない。そこが難しい。臨床経験が少ない中で触診技術を研くためには、日頃から患者の体を自分に投影しながらイメージトレーニングをして、自分の手と体に覚え込ませ、触診の感性を養うのが良い。

【1】見る・観る・診る
 街にはさまざまな老若男女があふれている。ただ漫然と歩かずに、痛そうに歩いている人がいたらどこが悪いかを「見る」。腰が悪そうだったら、腰のどの辺りに痛みがあるかを「観る」。わからなかったら同じような格好をして歩いてみると、どこに痛みがあるかわかるようになる。
 肩は左上がりか右上がりか、骨盤は左上がりか右上がりか(ベルトの位置、スカートやズボンの裾の左右の高さ)、鼻中隔の彎曲、脊柱の彎曲、利き足、軸足、靴底の減り具合などから、体の歪みがどのようになっているか、どこに負担がかかっているかを「診る」1)。さらに、人には素因(体質)がある。肥痩、皮膚の色、筋肉、声、血行の状態などから、肝実証・肝虚証・脾虚証・肺虚証・腎虚証など、どのタイプに属するかを「診る」2)。
【2】経絡経穴の存在を体感する
(1)経絡の流注
 肺経は中焦に起こり、順次各経絡を循って最後に肝経に入り、肝経の支は隔を貫いて肺に注ぐ。中府・雲門などの経絡経穴だけを覚えるのではなく、十二正経と奇経八脈の全流注を手でなぞりながら確認する。このとき、手根部から手掌と全指が皮膚面に軽く密着するように触れ、示指・中指・環指は揃えておく。そして前後にさすりながら手掌で経絡経穴を察知し、指先を滑らせていくに従い、中指全体で経穴を探知し、最後に中指の指腹で経穴を確定し指を止める(全指のうち中指が一番敏感である)。
 訓練を積み重ねていくと、患者から「先生は、痛いところで手がピタリと止まる」と言われるようになる。また、一経ずつだけではなく、部位別に他経との位置関係を確認しながら経絡経穴を手と体に覚え込ませるとよい。特に他経との交会穴を頭に入れておくと、列缺で中脘、公孫で期門、太衝や行間で百会などの反応が緩解する理由がわかる。
(2)運動テスト
 経絡を伸展する姿位をとり、伸展される経絡経穴と屈曲される経絡経穴を手で触りながら確認する。例えば、頚を右屈した時には左側頚部の三焦経あるいは小腸経が伸展され、右側頚部も原則的に同経が屈曲される。伸展時の牽引感や痛みが小腸経の天容にあれば、右手の中指腹で左手の少沢穴から小海穴まで一穴ずつ軽擦しながら頚を右屈する。そうすると、ある穴のところで頚の右屈が楽になることがわかる。屈曲側でとる場合は、表裏経である右手の心経で緩解する。手慣れてくると、患者に頚を右屈させながら自分の頚も右屈し、自分の手の要穴を擦り上げていくとどの経穴で緩解するかがわかるようになる(患者の体を自分に投影する)
【3】指頭感覚の訓練
(1)皮膚の感触
 まず初めに、手の甲の各中手骨間を反対の手の中指腹で軽擦する。このとき圧を加えずに、筆で払うようにサッサと素早く擦る(ゆっくりやるとなぞられた感触がわからない)。そうすると各骨間でなぞられた感触が違うのがわかる。でもそれは、なぞられた感触(患者サイド)であって、なぞった感触(術者サイド)ではない。何回も何回もやっているうちに術者サイドの感触がわかるようになる。感触がわかるようになったら、他の人に試してみる。
(2)磁石の極性を当てる
 指頭感覚の訓練に磁石のプラス・マイナスを当てる方法がある。磁石は安定性のある円筒形のものがよい(市販の磁気腰痛ベルトの磁石が丁度よく、直径1.5㎝、高さ8㎜の円筒形、900ガウス)。やり方は、目をつむった状態で、磁石の表裏をひっくり返しながら、磁石に指を触れずに中指をかざしてプラス・マイナスを当てる。磁石と中指との間隔は5~15㎜がよい。左中指の極性はマイナスに、右中指はプラスに相当する(3)。
 10回のうち7回以上正解すると合格になる。これができると、例えば肩井部の凝りが外関穴と足の臨泣穴のどちらで(左右を含めて)緩解するかを比較するときに、術者の片方の手の中指腹を肩井部に当て、もう片方の手の中指腹を外関穴と足の臨泣穴に交互に接触させると、どちらの方が緩解するかがわかるようになる。つまり、自分の手をテスターとして使えるようになる(上達すると左右の中指に極性を持たせることも、極性に関わりなくフリーにすることもできる)。
(3)気功訓練
 磁石の極性を当てる準備段階として、気功の訓練法として知られる、「気」の体得法を行うとよい。そうすると、磁石の吸
 引感や反発感を体得しやすくなる。
1.両足を肩幅に広げ、少し腰を落としてゆったりと立ち、軽く目を閉じて静かに呼吸を整える。
2.両手の手掌を合わせて、熱くなるまでこすり合わせる。
3.両手の力を抜き、指先が触れない程度に合わせてから、手掌に意識を集中しながらゆっくりと1~5cm位の範囲で近
 づけたり離したりする。
4.この動作を続けると、両手を離すとゴムで引っ張られる感じがし、両手を近づけるとゴム風船を押しつぶすような抵抗
 感がある「気」を感じることができる。
5.確実に「気」を体得できたら、両手の距離をどんどん広げていく。

【4】経絡経穴の存在を体感するモデル例
(1)大腸経は鼻唇溝で左右交叉する。
 ~環出挟口交人中、左之右右之左、上挟鼻孔(環(めぐ)り出(い)でて口を挟み人中に交わり、左より右に之(ゆ)き右より左に之(ゆ)く、上って鼻孔を挟む)〔霊枢経脈篇・十四経発揮〕 
 =片方の手の指で左右交互に鼻孔を塞ぎ、鼻呼吸をしてどちらの鼻が通りにくいかを確認する。左鼻の方が通りが悪ければ、通りが良い右鼻を左手の示指で塞ぎ、右手の親指と示指先を合わせて丸い輪(いわゆるO‐リング)を作る。そして右鼻を塞いだまま左鼻で呼吸をすると鼻の通りが良くなっているのがわかる。もし改善しない場合は、左鼻塞の原因として肺経・大腸経以外の経絡が関与していることが考えられる。
(2)大腸経は前頚部を通る。
~其支者従欠盆上頸、貫頬入下歯中(其の支は欠盆より頚に上り、頬を貫き下歯中に入る)〔霊枢経脈篇・十四経発揮〕 
 =頭部を後屈し前頚部の筋肉の張り感やつっぱり感を確認する。次に左右の合谷を比べて硬結や圧痛のある側の合谷を押しながらもう一度後屈すると前頚部の筋肉の張り感やつっぱり感が軽減している。
(3)合谷は風邪のツボ。
 ~傷寒無汗、補合谷、瀉復溜(傷寒して汗無きは、合谷を補し、復溜を瀉す)〔鍼灸聚英、攔江賦〈明・高武著〉〕
 =風邪の引き始めは背中がゾクゾクして寒気を覚える。手の甲を上にして両手を真っ直ぐ前に伸ばし、両手の合谷を擦り合わせる。擦り合わせ方は、まず左手の母指のCM関節(母指手根中手関節)から爪甲根部の間で右手の合谷を擦る。また同時に右手の示指のMP関節(中手指節間関節)から爪甲根部の間で左手の合谷を擦り、これを30回行う。次に、手を逆に持ちかえて、右手の母指で左手の合谷を擦り、同時に左手の示指で右手の合谷を擦り合わせ、これも30回行う。そうしている間に背中の風門から肺兪あたりが熱くなって汗ばんでくる。
(4)膀胱経は攅竹を通り項背腰部を循る。
 上体を前屈し、左右それぞれの手と床との指床間距離を測る。指床間距離が長い患側の攅竹に健側の手の中指を当てたまま、もう一度前屈すると指床間距離が改善している。
(5)親指と小指のリングは呼吸を深くする。
 =普通に数回深呼吸をして呼吸の深浅を確認する。次に両手を下ろして、それぞれの手の親指と小指の先を接触させてリングを作り、再び深呼吸をする。そうすると、腹の底まで深く呼吸ができるのがわかる。親指は肺経、小指は心経が循り、リングを作ると心肺循環がスムーズになる。
(6)横骨穴で下肢伸展挙上が改善する。
 =仰臥位で左右の下肢を伸展挙上する。挙がりの悪い側の横骨穴を指で軽圧すると、下肢の挙上が改善する(横骨穴は間中喜雄氏の膀胱経腹部圧診点)。
(7)太白は胃を温め、消化を良くする。
 ~配公孫、治腹脹食不化、鼓(こ)腸(ちょう)腹中気(き)大満(だいまん)(公孫を配して、腹脹りて食化せず、鼓腸して腹中気大満するを治す)〔鍼灸資生経〈宋・王執中〉〕
 =両足を揃えて仰向けに寝て、左右の太白を20~30回擦り合わせる。そうすると胃が温まってきて胃の重さやお腹の脹り感が無くなって空腹感が出てくる。

まとめ
 触診技術の上達には、まず指頭感覚を鍛えて、自分の手と体に経絡経穴のイメージを刷り込むことが重要である。そして自分の手をテスターとして使えるように訓練しながら、経絡経穴の存在を体感するモデル例数を増やしていくとよい。

参考文献
1)磯谷圭秀/青木美保子.磯谷療法ガイドブック:たにぐち書店:2002.p29~30
2)経絡治療学会.日本鍼灸医学(経絡治療.基礎編):経絡治療学会:1997.p94
3)伊藤修.PIAレーザー速効療法:エンタープライズ:1992.p7


【補遺】
(1)磁石による気の体得訓練法
 指頭感覚を鍛える方法の一つに、磁石の極性を当てる訓練法がある。その前段階として、下図のように手掌(労宮)や中指の指腹部に磁石をつけて磁石の反発力や吸引力を体感すると良い。磁石はプラス同士であったり、マイナス同士であったり、或いはプラスとマイナスを組み合わせて、手を近づけたり遠ざけたりしながら反発力や吸引力を確認する。そして近づけたり遠ざけたりしながら段々その間隔を広げていく。慣れてくると両手を精一杯広げても感じることができるようになる。最初は、マイナス同士よりもプラス同士の方が反発力が強く感じることが多いが、これはモデルの体に陽イオンが多く、陰イオンが少ないとプラスの方が強く感じるようである。
 そしていよいよ磁石のプラスマイナスの判別になる。磁石を置き、左手の中指の指腹を磁石から5~15ミリ位の間を上下させながら磁気を感じていく。左手中指の極性はマイナスになるので磁石がマイナス面だと反発力を感じ、プラス面だと吸引力を感じるようになる。これらの訓練は、ただプラスマイナスの判別能力だけでなく、気功力がつくようになる。
磁石のプラスマイナス判別磁石のプラスマイナス判別磁石による気の体得訓練法(中指指腹部)磁石による気の体得訓練法(中指指腹部)磁石による気の体得訓練法(手掌部)磁石による気の体得訓練法(手掌部)












(2)ダイオードの整流作用(方向)の判別
 ダイオードは電流を一定方向にしか流さない整流作用をもっているので、コードの両端をダイオードにつないで、どちらのどちらの方向に電流が流れるかをコードの上を円を描くようにしながら手掌をかざして判別する。
ダイオードによる整流作用の判別ダイオードによる整流作用の判別