体のゆがみ

体のゆがみ

体のゆがみはいつ頃からどのような形で出てくるのでしょうか。体のゆがみが出るのにはいろいろな原因があります。また一つの原因だけでなく複数の原因が重なって出てくる場合も少なくありません。まだ歩けない乳幼児でも体の歪みがある場合もありますので、妊娠出生児に何らかの原因があるのかも知れません。というよりも、本来左右対称ということ自体が不自然なのです。例えばお顔ですが、左右対称の顔があったとしたら全く無表情で冷たい顔になってしまいます。利き手、利き足、軸足があるように左右非対称なのが性格を持った人間らしいあり方なのでしょう。
とはいえ、体に不調を起こした場合、その素因(元来その人が持っている体質や体格)を考えるときに、お体のゆがみに起因することが多いのです。例えば、尾てい骨を打って骨盤がゆがんだり、習慣的に姿勢が悪かったり、職業的に歪んだ姿勢を取っていたり、ギックリ腰・鞭打ち・捻挫・骨折や内臓の病気からでもお体のゆがみを起こします。

体の歪みの種類と発症しやすい症状・病気

正常正常右肩上がり左骨盤上がり右肩上がり左骨盤上がり左肩上がり右骨盤上がり左肩上がり右骨盤上がり右肩上がり右骨盤上がり右肩上がり右骨盤上がり左肩上がり左骨盤上がり左肩上がり左骨盤上がり











下記に示したのは基本的な状態です。脊柱の弯曲(側弯、前弯、後弯)の状態によって個人差があります。
(1)右肩上がり左骨盤上がりの場合
 右五十肩、右肩こり、右腱鞘炎、左腰痛、左膝関節痛、左こむら返り(左腓腹筋の緊張)など。
(2)左肩上がり右骨盤上がりの場合
 左五十肩、左肩こり、左腱鞘炎、右腰痛、右膝関節痛、右こむら返り(右腓腹筋の緊張)など。
(3)右肩上がり右骨盤上がりの場合
 上記(1)(2)の混合型。
(4)左肩上がり左骨盤上がりの場合
 上記(1)(2)の混合型。

体の歪みと腓腹筋の緊張

(1)右肩上がり左骨盤上がりの場合
 ■右肩腕の外側の筋肉が緊張している場合・・・左腓腹筋の外側が緊張します。
 ■右肩腕の内側の筋肉が緊張している場合・・・左腓腹筋の内側が緊張します。
(2)左肩上がり右骨盤上がりの場合
 ■左肩腕の外側の筋肉が緊張している場合・・・右腓腹筋の外側が緊張します。
 ■左肩腕の内側の筋肉が緊張している場合・・・右腓腹筋の内側が緊張します。 

鍼灸治療の原則

灸治療の原則

治療法には、痛むところを直接治療する局所療法と、局所から離れた反応点(ツボ)に治療して、体の歪みを取り全身のバランスを整える調整療法があります。特にお体のゆがみがある場合は、調整療法を行ってお体のバランスを整えることが必要になります。局所だけ治療してもお体全体のゆがみが改善されない限り根本的に治ることはできません。
 お体のゆがみを段ボール箱に例えると、段ボールを落としてしまって角がひしゃげてしまいました。そのひしゃげた段ボール箱を直す時に、ひしゃげた角だけを一生懸命直そうとしても直せるものではありません。このときに、他の7角を押したり引いたりすると段々きれいな四角な箱になってきます。お体のゆがみを治すときも同じで、悪いところから離れた部位で治療して、お体を治していくのです
 悪いところから離れたツボで病気を治していくよいう原理は、わかりやすくいえばリモートコントロールになります。また、左右の手足が交叉する四つ足の原理を利用して治療しますが、例えば右膝が悪い場合に、第一番目に使うツボは左手のツボを用います。リモートコントロールの原理は、また「テコの原理」ともいうことができます。テコは重い物を軽い力で持ち上げる、つまり軽い刺激で右膝を治していくことができるのです。

腓腹筋の緊張が出ている足の反対側の手に治療する

人間の体は手足が左右交叉する人間の体は手足が左右交叉する
「体のしくみ」でお話させていただきましたように、人間の基本的構造は「四つ足動物」と変わりありません。四つ足で歩くときは右前足と左後足、左前足と右前足がセットになって左右の手足が交叉して交互に動きます。また二本足で立ったためにふくらはぎ(腓腹筋)の疲労や緊張がでることをお話しました。上半身や内臓の症状や病気でも腓腹筋に疲労や緊張が現れてきます。例えば、左足の腓腹筋の内側に緊張が現れている場合は右手の前腕部の外側のツボに鍼(はり)やお灸をすると左足の腓腹筋の内側の緊張が解消します。右足の腓腹筋の外側に緊張が現れている場合は左手の前腕部の内側のツボに鍼(はり)やお灸をすると右足の腓腹筋の外側の緊張が解消します。このことは、ただ腓腹筋の緊張を解消することが目的ではなく、お体全体のゆがみを矯正し、一番おつらい症状やご病気の改善につながっていくのです。
腓腹筋の緊張が現れる部位は、内側か外側というだけでなく、緊張が現れる高さがあります。「鍼灸治療(予診)」のところで腓腹筋の図を示したように、Ⅰ部・Ⅱ部・Ⅲ部に分けて配当します。
専門的になりますが、腓腹筋の緊張の現れかたと治療するツボ(経絡経穴)の名を図示いたします。
腓腹筋検査と治療穴腓腹筋検査と治療穴








陰陽六行図

古典鍼灸医学は「陰陽五行説」が基本で一般的になっています。しかし、十二経絡(手の太陰肺経、手の陽明大腸経、足の陽明胃経、足の太陰脾経、手の少陰心経、手の太陽小腸経、足の太陽膀胱経、足の少陰腎経、手の厥陰心包経、手の少陽三焦経、足の少陽胆経、足の厥陰肝経)の存在と経絡循環を考えると、「陰陽六行説」の方が合理的で柔軟性に富んでいます。特に近年は、奇経や経別、経筋、子午流注などの療法や、中医学(中国医学、中国ハリ)などが盛んに導入されてきています。腓腹筋診断法と陰陽六行説はこれらの療法と融合しうる「経絡治療体系」になっています。
(資料:「陰陽六行の鍼術」宮脇浩志著.創医会出版.昭和54年11月1日発行。「メビウス環状配経法」宮脇浩志/臼田裕子著.谷口書店出版.1990年発行
陰陽六行図陰陽六行図












治療

治療は、「腓腹筋検査と治療穴」による手足2点のツボと、六行図の「三陰三陽」或いは「六行循環」、「子午相対」や「奇経八脈」などのシステムの中から患者さんの症状に合ったシステムを選び、残りの手足2点のツボを治療点として用います。
例えば、左腓腹筋の内側でⅠの高さに緊張があれば、まず右手の「遍歴」或い「合谷」に鍼またはお灸をします。これだけで左腓腹筋の緊張が緩みます。次に、右足の「大鍾」或いは「太谿」に鍼またはお灸をします。
そうすると、基本的なお体のゆがみが改善されてきます。
それだけでなく、お体のゆがみからくる苦痛症状や圧痛が少なくとも半分以上は解消されてしまいます。
もし、「体を冷やして風邪を引き、お手洗いが近くなった」という症状があったとすれば、Ⅰの組み合わせである左手の太陰肺経の「列欠」或いは「太淵」と左足の太陽膀胱経の「飛揚」或いは「京骨」と胸腹部の「中府(肺)」と「中極(膀胱)」を治療点として用います。
背部は「肺兪・腎兪・大腸兪・膀胱兪」が基本的な治療穴になります。ただし、取穴部位は手足の取穴部位と逆側になります。例えば「遍歴」は右手に取っていますので、「大腸兪」は左腰部に取ります。
 その他、患者さんの症状やご病気の合わせていろいろな治療システムを応用して、根本的に改善するよう治療させていただいています。

鍼灸治療のテスター

鍼灸治療のテスター

実際の鍼灸治療に際して、テスターを用いると、どのツボ(経穴)に鍼やお灸をすると効果があるかがわかります。治療前にテスターを用いることによって、どのツボ(経穴)が効果が高いかを判別できるだけでなく、過誤な治療を防ぐことができます。

磁気サクションカップ

磁気サクションカップ磁気サクションカップ
中国製で製品名は、哈慈五行針〈Magnetic Acupressure Cup〉といいます。磁石にカップとゴム球がついていて、ゴム球をつぶすと陰圧になって皮膚に吸い付きます。赤は陰極(+)、青は陽極(-)になります。
不整脈や動悸の治療に心臓部の反応点に陽極を付けて脈の変化を診たり、腰の運動テストで痛みの出る部位に付けて再度運動テストをします。的確な取穴ができていると痛みは改善されています。また手足のツボ(経穴)を用いて頚部や腹部などの反応点を消去するときに、どのツボ(経穴)が効果が高いかを選定できます。

ダイオードテスター

ダイオードテスターダイオードテスター
銅とアルミの棒の間にダイオードが入っていて、経絡の流れに沿って置いて、補瀉の決定や、銅あるいはアルミ面を手足のツボ(経穴)に接して全身各所の反応点消去の確認に用います。また、皮内針の刺入方向の決定にも用います。外傷によって前腕部から先を切断された患者さんの、手首相当部にダイオードテスターを置くと、反対側の腓腹筋の緊張が緩解しました。とても貴重な治験を得ました。



磁石

磁石(マグネット)磁石(マグネット)
900ガウスの磁石です。左の磁石の上面が陽極(+)で、右の磁石の上面が陰極(-)になります。手と足のツボ(経穴)それぞれに磁石の陽極面或いは陰極面を置いて、躯幹部の反応点を消去したり、置鍼した上から磁石をテープで留めて、治療効果の強化を図ることもあります。

鍼灸治療器具

鍼灸治療器具

鍼灸の治療器具は、基本的には1本の鍼と一つまみの艾です。たったこれだけで人間の体を治していくのですから、鍼灸は偉大で素晴らしい治療法だと思います。

はり(鍼)

■ディスポーザブル鍼
ディスポーザブル鍼ディスポーザブル鍼
 当院で使用する鍼はすべて一回限りしか使わないディスポーザブル鍼(EOG、エチレンオキサイドガスで滅菌済み)を用いています。鍼の種類には直径0,12㎜~0,18㎜まで、長さは30㎜~39㎜までの数種類の鍼を用います。お一人々々の患者さんに適した鍼を使用いたします。
 治療するときの鍼の刺入は極めて浅く、刺すというよりも留めるという位で鍼先の1~数ミリ程度です。特に手足のツボについては切皮(0,5㎜~1,0㎜以内)程度です。こんなに浅い鍼で何故効果があるのかというと、全ての病気は必ず皮膚上に信号を出してくれます。例えば、胃の痛みがあれば皮膚上から痛みの反応点を押さえることができます。これは皮膚内臓反射や皮膚体壁反射ともいわれますが、胃に向けて深い鍼を刺さなくても、皮膚上の反応点を治療することで、胃は十分に治っていくのです。また、鍼灸治療の原則でお話ししたように、リモートコントロールとテコの原理を用いますので、手足のツボは極めて浅い切皮程度の刺入で効果があるのです。

お灸

お灸お灸
冷えがあったり、病気や症状が慢性的になると血行が悪くなります。そのような時にはお灸が良く効きます。
お灸は、ゴマ粒くらいの小ささの艾(もぐさ)にお線香の火をつけてすえますが、燃え尽きるまですえずに途中で消します。、熱さに敏感な患者さんには早めに取りますし、お灸の痕は残りませんのでご安心ください


紙灸

紙灸紙灸
眼精疲労・近視・老眼・白内障・緑内障などの眼疾患、鼻風邪・アレルギー性鼻炎・花粉症・副鼻腔炎(蓄膿症)などの鼻疾患、咽風邪・咽の痛み・咽咳・扁桃腺炎・声がれなどの咽喉疾患、気管支炎・気管支喘息などの呼吸器疾患、顔面神経麻痺・三叉神経痛などのお顔や咽まわりの治療には、吸水性の良い厚手の紙(褒賞紙や吸い取り紙)に水分を含ませてから、紙の上からお灸をします。そうすると熱すぎず、痕もつけずに、ほど良い熱感を伝えることができます。現在は便利な灸点紙として市販されていますが、この紙灸を初めた40年位前はそういったものがなく、褒賞紙を塩水につけたものを1㎝角に切って使っていました。現在は吸い取り紙を使用しています。


刺さない鍼治療

刺さない鍼治療

 鍼灸が普及してくると、鍼灸未経験の方が治療にいらっしゃることが多くなりました。また、鍼灸は効くというけれど、鍼は痛いのではないか、お灸は熱いのではないかなど心配や不安でなかなか足が向けられないという方も多いようです。そのような未経験の方には、実際の鍼治療の前にテスト的に刺さない鍼治療をして効果を確認していただいたり、神経が敏感で痛みに弱い方には下記のような「刺さない鍼治療ー刺す鍼を使わない鍼治療」をお勧めしています。神経が敏感な方には、無痛で極めて少ない刺激でも十分に反応してくださるので治療効果は全く普通の方と変わりありません。鍼は痛いのが当たり前、お灸は熱いのが当たり前というのは昔の話になっています。どうぞリラックスして気持ちの良い治療をお受けください。

磁気サクションカップ・ダイオードテスター・磁石

テスターが治療器具にテスターが治療器具に
 磁気サクションカップ・ダイオードテスター・磁石は前項の「鍼灸治療のテスター」で取り上げましたが、テストがそのまま「刺さない鍼治療」になっています。



皮膚鍼・小児鍼(しょうにハリ)

皮膚鍼・小児鍼皮膚鍼・小児鍼
 神経が特別過敏な方や小児の治療には直接鍼をしない皮膚に接触したり、押したり、軽擦するだけの皮膚鍼・小児鍼を用います。また、顔面神経麻痺の麻痺部の回復にローラー鍼や車鍼を用います。(写真説明左から:ローラー鍼、車鍼、スプリング鍼、銀杏鍼)



鍉鍼(ていしん)

鍉鍼(ていしん)鍉鍼(ていしん)
 鍼の形をしていますが刺さらない鍼です。「気」の治療をするときや、神経が特別過敏な方や小児の治療にも用います。最近は一番右の鍉針(つま楊枝と同じ大きさ)をテスト鍼(痛みや凝りを取るのに、そのツボに効果があるかないかを調べる)として、普通の鍼治療をする方にも必ず用いています。また、刺す鍼が恐いという方には普通の鍼を使わずに鍉針を用いています。



接触鍼(せっしょくしん)

接触鍼の鍼先接触鍼の鍼先
 普通の鍼を使いますが、刺さずに皮膚面に鍼先を接触させるだけで治療をします。鍼は普通の鍼先(図の左側)のものと、鍼先を研磨して丸めた鍼(図の右側)の二種類を過敏度によって使い分けます。鍼の用い方は、通常の鍼のようにツボに鍼先を当て微細な捻りを加える方法や、皮膚面をブラシで払うように軽擦する方法などがあります。


イオンパンピングコード

イオンパンピングコードイオンパンピングコード

 イオンパンピングコードはダイオード(一方方向にしか電気を流さない整流器)を埋め込んだ電気コードです。経絡の流れを上下に調整したり、のぼせ症状を下に降ろしたりして生体電流の流れを調整します。通電するわけではないので全くの無痛です。


低周波治療器

低周波治療器低周波治療器

 低周波治療器はゴム電極を二ヵ所のツボにテープで固定して通電します。通電する電気の強さは少し感じる位で十分です。例えば腰痛でしたら腰部に二ヵ所、坐骨神経痛でしたら腰部に一ヵ所と足部に一ヵ所取ります。鍼は全く使いません。

 このように刺さなくても十分な効果が発揮できるのは、「敏感な方は極めて弱い刺激でも十分に反応してくれる」からです。ストレスの多い現代社会に於いては、このような刺さない鍼は益々必要とされる治療法になるでしょうし、鍼灸に対して抵抗がある方々に鍼灸の素晴らしい治療効果を味わっていただきたいと思います。