4−5.八潮地区

4−5−1.地区の特色(現況と課題)

▽地形、市街化の変遷

 この地区は大井ふ頭を初めとする埋め立てにより形成された地区で、京浜運河の東側に位置する。埋め立ては昭和35年から昭和40年にかけて行われ、八潮団地の開発は昭和50年代に計画的一体的に行われた。大井ふ頭には火力発電所や清掃工場、JRの車両基地、貨物ターミナルやコンテナバースなど、国内向けばかりでなく国際的な物流や港湾機能に対応する様々な施設が立地している。

 また、大井貨物ターミナル内の敷地などについては高度利用等により、有効な土地利用の付加の可能性も秘めている。


▽分野別まちづくりの現況と課題
都市の活性化

 八潮団地は計画的に形成された住宅団地であるが、一時期に入居が始まったため入居者世帯の年齢や世帯構成にやや偏りがある。居住者の高齢化が進行し、街の活力が低下しないよう配慮していく必要がある。

すまい・住環境

 八潮団地は、歩車分離の考え方に基づき計画的に整備された市街地であり居住環境は良好である。しかしながら、モータリゼーションの進展と共に居住者の駐車スペースの拡大に対するニーズが増大し、公開空地の減少につながっている。

 東海道貨物支線旅客化計画の動向に合わせ、JR貨物ターミナル内の駅設置の可能性や住宅整備等も視野に入れたまちづくり構想について検討していく必要がある。

安全性向上

 八潮団地については、建物は不燃建築物であり火災や延焼の危険性はほとんどない。

 大井ふ頭は内陸部の住民にとって重要な広域避難場所であるため、内陸部との結節点にある橋梁などの安全性の確保等が必要である。

都市環境

 八潮団地は計画的に造成された住宅団地であり、公園、空地、緑も多く、特に公園・運動場は土地利用構成の中で20%以上を占める。大井ふ頭周辺は港湾計画等により広大な公園、緑地がバランスよく配置されている。広大な土地利用を活用して、ロードレースやマラソンなどに活用されている。品川区民にとっては、直接海に接することができる貴重な環境要素を有した地域であり、関係機関に要請していくなど、水辺空間の確保・創設及び整備を図っていく必要がある。

道路・交通

 八潮団地は、交通についても計画的に体系化され、歩車分離が徹底されており、地区内交通処理面は比較的整っている。

 地区の約半分は半径700mの駅勢圏に入らない品川区内では数少ない地域であるが、臨海副都心線の開通により、改善される。現在は、路線バスによる交通手段が主体となっている。


▽まちづくりの現況と課題(総括)

 八潮団地は昭和50年代に計画的・一体的に開発された中高層の住宅団地で、歩車分離が徹底されているのをはじめ、緑やオープンスペース、運動場等も豊富にあり、子供のいるファミリー世帯にとっては良好な住環境が確保されている地区である。

 京浜運河沿いは、緑道公園が整備され、潤いのある歩行者空間となっている。

 しかしながら、一時期に入居が始まったため、世帯構成・年齢構成にやや偏りがあり、住民の高齢化の進行や活力の維持等が課題となる。

 大井ふ頭は港湾計画等により広大な公園、緑地がバランスよく配置されており、広大な土地利用を活用して、ロードレースやマラソンなどに活用されている。

 運輸省による「都市鉄道調査」にて調査対象となった東海道貨物支線を旅客化する計画については、JR貨物ターミナル内に駅が設置される可能性も含め、その動向を注意深く見守るとともに、その動向に合わせ、将来を見すえたまちづくりを誘導していく必要がある。

八潮地区・・・将来への可能性を残した水辺空間ゆたかなまち

4−5−2.まちづくり方針(市街地整備の方向)

(1)将来市街地の方向性

 八潮地区は、首都圏の港湾機能の拠点として、東京湾沿岸の流通・業務の重要な役割を担っている。大井貨物ターミナルに関しては、民営化したJRが、広大な土地の有効利用等について模索しているところであり、品川区の施策と合致した活用が図られるよう、区としても注意深く見守り誘導していく必要がある。

都市の活性化

 将来的には土地利用転換もあり得る地区であり、今後の開発構想や環境・公害に関する各種の調査・検討を待って将来の土地利用構想を描くことが必要である。

すまい・住環境

 補修の時期に入った中高層住宅の改造に際して、あるいは契約更新時期に空きができた賃貸住宅については、単身者からファミリー世帯、高齢者世帯まで多様な居住者が入居できるような仕組みを確立するなど、多様な居住者から構成される活力ある街を実現する。

安全性向上

 大井埠頭は内陸部の住民にとって重要な広域避難場所であり、内陸部との結節点にある橋梁などの安全性に万全を期す必要がある。

都市環境

 計画的に整備された緑地やオープンスペースの環境を維持管理・保全し、一方で水辺空間を活用し、より一層潤いのある住宅市街地として保全していく。

道路・交通

 居住者の駐車スペース拡大のニーズがある中で、緑やオープンスペースの確保についても配慮する。


(2)拠点・ゾーン別整備方針
−拠点−
○みどりの拠点(潮風公園、中央海浜公園)
 臨海部における水辺を感じさせるような、区内外の来訪者を対象としたオープンスペースとして整備・保全を図っていく。

−ゾーン−
○大規模団地ゾーン(八潮団地)

 将来的な高齢化の進展による街の活力の低下を防止するために、多彩な住宅政策を展開することが必要である。

 環境・大気汚染に配慮しつつ緑豊かな居住環境を維持・保全する施策を展開する。

○臨海部有効活用ゾーン(臨海部埋立地)

 首都圏の港湾機能の拠点として、東京湾沿岸の流通・業務の重要な役割を担っている。羽田空港のハブ空港化への動きや、現在行われているコンテナバースの高度化・耐震化整備等により、その重要性はますます高まりつつある。

 同時に、品川区民にとっては、直接海に接することができる貴重な環境要素を有した地域であり、関係機関に要請していくなど、騒音・大気汚染に配慮しつつ水辺空間の確保および整備を今後も一層図っていく必要がある。

 大井貨物ターミナルに関しては、JRが広大な土地の有効利用等について模索しているところであり、区の施策と合致した活用が図られるよう、区としても注意深く見守り誘導していく必要がある。