2008.2 当面の海運株の読み

尚、本情報の利用に関する責任は、当方では一切関知いたしません。


2007年、海運株は未曾有の急伸を見せたが、後半の下落もきつかった。

新興国の急成長に伴い、資源輸送需要が急伸、船舶需給が逼迫し、運賃高騰、それによって海運会社の業績も急伸し、株価も大幅に上昇した。
が、反面、「この急成長は今回限りで、来期以降は続かない」との観測から、後半から売り叩かれる展開となった。
そしてまた、サブプライム問題に端を発した金融不安からの市場全体の冷え込み、下落に引きずられるまま、年初になっても下げ止まらなかった。
しかし、成長率は鈍化してもも、業績自体は堅調であることから、2008.1末からの株価急反発の展開となっている。
では、これがどこまで続くのかというのが次のテーマになる。

一般に、下落幅の1/3戻し、1/2戻しで反落を見るという。
戻り売りといわれるものだが、今回、それはあまりみられない。
確かに、下げる展開はあるものの、ごく短期間で切り替えしている。
これは、下落局面で、ホルダーがうまく入れ替わったことが考えられる。
すなわち、高値で買った人は、戻ったときに売って手仕舞いしようとするから戻り売りで頭打ちになるわけだが、海運株のこの半値前後までの株価下落の展開では、皆さん適宜損切りしていたのではなかろうか。
下落局面で買う人は逆張りといわれるが、それは慈善事業ではなく、反発を期待してのものだが、こうまあ底が見えずに下げ続けると、あきらめざるを得ないだろう。
1000円が500円になる展開で、900円で買った人は800円で損切り、800円で買った人は700円で損切り、700円で買った人は600円で損切り、600円で買った人は500円で損切り、としていれば、それぞれのフェーズで100円づつの損失で分散し、完了している。
これが、900円で買ったままで引っ張っていれば、当然限界になる。
また、市場の観測を真に受けて、「海運株はもうお終い」として、信用売りに走った人も少なくないようで、信用取り組みも、かなり好転している。
下落半ばでは、買残がかなりあったのが、注意喚起が発せられるほどに切迫している銘柄も出ている。
これは、踏みあげの要素ともなる。

バルチック海運指数は、ここ数日上昇し、2008.2.15には、7355になっている。
一般に、年初は旧正月明けで鉄鉱石契約が始まるに伴いあげており、年末は穀物需要が一服して下げているようである。
2006年は、1/27 2057を底に、2/20 2798、一服した後、6月から年末にあげて4397で終わっている。
2007年は、2/1 4219を底に、5/15 6685、いったん下げて6/18 5254を底に、10/26 11026の最高値、2008/1/28 5615の底に至っている。
その意味では、去年に比べて+30%の運賃水準といえる。
もちろん、去年の最高値は、船舶需給が最も逼迫した稀に見る時期であり、その再来は望むべきもないかもしれない。
が、運賃水準自体は、年初の段階で去年の水準を上回っており、海運界の好調を暗示している。

また、バルチック海運指数は、バラ積み貨物船の運賃指数であり、すべての海運業績を示しているわけではない。
ましてや、長期契約が多い会社においては、実はその影響度はさほど大きくなく、別に下げたところで、業績が簡単に悪化する要素ではないこともポイントである。

そして、2010年には、タンカーのダブルハル化が完了を迫られ、その時期をピークに、タンカーの需給が逼迫する要素も見えている。

日経平均は、2006/11/27の15615を底に、2007/2/26 18300.39まで上げている。
2/27には、中国株安が世界市場を席巻し、日本市場も5日急落で16700台まで下げ、半月以上低迷し、その後の上昇速度も鈍化している。
2008年においては、去年末からの下落トレンドが2008/1/22の12672.68を底に、ようやく反発かの展開を見せているものの、金融不安から、楽観はできない。

海運株の権利落ちは
2007.3の権利落ちでは、3-5%程度の権利落ちがみられる。
ただ、上昇トレンドの中、4月の数日を経て、上昇している。

むしろ、2007.2の中国株安での落差のほうが倍程度で、3月はその半値戻しから、権利落ち、そして上昇トレンドの復活に向かったようである。

今後の動きとしては
3月末の権利日、配当取り。
4月末-5月初め、2007年度決算発表。
などがある。

配当取りに関しては、2%前後の配当性向が見込まれ、優良株の材料だろう。
そして、去年の例からは、配当落ちは数%で、数日間のつなぎ売りの手間をかけるほどのこともなく、上昇しそうである。

決算発表に関しては、過去の各四半期決算の発表でもおなじみの上方修正であろう。
海運界は、業績見積もりに対して極めて慎重で、期初のプラス要素の設定レートを、未達分に対しては修正しておらず、期初時点の想定より悪化しない限り、下方修正は出てこない。
その控えめな各四半期決算の発表の清算は、期末に集中するわけで、かなりの数字が期待できる。

そして2008年度の業績予想は、、基本的に、2007年当初に準じたものとなるだろう。
結果、成長は鈍化というが、好業績が継続されることも確かである。

株価の最高値更新はあるのか。
去年の高値更新は、バルチック海運指数の伸びと、海運の業績急成長によるものだとすると、さすがに厳しそうだ。
が、世界経済不安定で、業績不振の企業が増え、下方修正の決算発表が増える中、好況な業界は注目されるはずで、安定的な海運業界は、着目される要素ではなかろうか。
ただ、いかんせんPER8.0前後と、日経平均に比べても低調で、それは海運業界に対する注目度があまりにも低いことを意味している。

チャート的には、昨年来の3ヶ月の下げ幅の半分を、1ヶ月で戻すほどの急反発で、それも海運業界総じてであり、いつ反落しても不思議ではない。
信用取り組みの数字は注意が必要だろう。

不安要素は、市場急落等で、利益の乗った株を損失補てんに売る動きも考えられ、下落を見る要素はある。

これらを勘案すると。。。
当面は、海運株の堅調は継続すると想定される。
短期的にも、5日移動平均線の上方、ボリンジャーバンドの+2σの線上を上っている間は、そのまま追従できそうだ。
中期的には、直近の高値に迫ることも夢ではないと思われる。
もちろん、市場要素での反転の警戒は怠ることはできない。

個人的作戦としては
当面は、買い先行、持ち玉維持。
最高値の90%までは追跡。
反落開始時は、同数売建て。
を考えている。

ちなみに、2007.10期には業績好調を確信し、反落時にナンピンも入れつつも暴落のまま動くこともできず、ひたすら耐え忍んでいた。
2008.1末からの反発に関しても、戻り売りを警戒したデイトレ中心としていた。
今後は、戻り売りを警戒したデイトレとともに、上昇に追随する玉も増やすことを視野に入れている。


尚、海運といっても多種あり、大手三社、中堅、その他、それぞれの事情があり、特定銘柄に関しては、更なる分析を要する。




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新規作成日:2008年2月17日/最終更新日:2008年2月17日