ジェットフォイル

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ペガサス
(2001.9.10)

p2194011. p2194013. p2194021. p2194023.
セブンアイランド愛、虹 (2002.3)

p2221005. p2221004. p2221012. p2221017. p2221019. p2221021. p2221026. p2221030.
セブンアイランド愛、虹 (2002.3)

ジェットフォイルをよる船旅は、船に対する印象を大きく変えてしまいます。出航を告げるドラの音や低いディーゼルエンジン音のかわりに、航空機用のガスタービンの軽快な音が、ジェットフォイルによる“海上飛行”に案内するからです。
巡航速度に達したジェットフォイルは、水面下の翼とウォータージェット噴流の力で、秒速22mで空中を飛んでいきます。荒れた海でも、船体は波の上を飛び越えていきますから、不快な動揺がありません。旋回をするときは、航空機と同じように船体を内側に傾斜させてスムーズに回ります。目をつぶれば、エンジン音といい乗り心地といい、あなたは自分が船に乗っていることを忘れてしまうでしょう。
このすばらしい船舶「ジェットフォイル」は、米国の世界最大の旅客機メーカー・ボーイング社が、15年の歳月と1,000億円を超える開発費を投じて完成した、世界最高の航海性能を持つ超高速旅客船です。その魅力の主なものだけでも
1・45ノット(時速83Km)の超高速
2・波高3.5mの荒海でも、安定した船速低下のない航走
3・船酔のない快適な乗り心地
4・抜群の操縦性
5・フェイルセーフ機構による安全性
6・少ない騒音、無公害の排気ガス
この世界最高の性能をもつジェットフォイルの製造と販売の権利を1987年に川崎重工業(株)がボーイング社から引継ぎ、同社がジェットフォイルを完成させました。






どういう仕組みて゜海上を「飛ぶ」のか?

ジェットフォイルは、ガスタービンエンジンで駆動される「ウォータージェット推進機」の推力で前進し、船体の前後の水中翼に発生する揚力で海面上に飛び上がります。 海面上に飛び上がって走行する状態を“FOIL BORNE”(翼走)といいますが、翼走中のジェットフォイルの動きは航空機ときわめて似ています。 すなわち、船体のバランス制御を行う際には、水中翼の後縁に装備されているフラップをAUTOMATIC CONTROL SYSTEM (ACS=自動姿勢制御装置)でコントロールしてつねに水面から一定の高さを保ち、旋回時にはヘルム操作一つで船体を内側方向に傾斜させて滑らかに回頭させることが出来るからです。
要するにジェットフォイルは、大気のかわりに海水から揚力を得て飛ぶ “海の飛行機” なのです。水の密度は大気の約800倍の為,ジェットフォイルは、航空機に比べて低い速度と小さい翼で飛び上がる事が出来るわけです。世界には現在、35隻のジェットフォイルが就航していますが、そのうち24隻は米国のシアトルのボーイング社の航空機製造工場で製造されました。この工場の中では、当時ボーイング727、737、757も製造されていました。航空機のエンジニアが設計し、航空機の製造技術者が組み立てを行ったのですから、ジェットフォイルが航空機に類似している点が随所にみられるのも、むしろ当然かもしれません 。


従来の水中翼船とどう違うのか?

従来の水中翼船は、「半没翼型」と呼ばれ船体が傾くと傾いた側の水中翼がその分多く水中に沈み、両サイドの翼に発生する揚力の差によって自然に船体姿勢を復原させる構造になっています。従って、船体の姿勢制御は、波によって翼に発生する復原力任せのために大変不安定で、微妙なコントロールは出来ませんでした。
一方ジェットフォイルは「全没翼型水中翼船」と呼ばれ、翼が全部水中に没する為、船体が傾いても復原力(揚力)に変化が生じません。復原力は、水中翼についているフラップを自動姿勢制御装置で動かす事によって、適切にコントロールされます。
つまり、従来型水中翼船が波浪中でも動揺せず、安定した走行が可能になったというわけです。


なぜ、乗心地がよいのか?

水面に浮かんでいる船は、水の表面に波浪が起これば、動揺から逃れる事は出来ません。これはいってみれば「船の宿命」で、長年にわたって「揺れない船」をめざしてさまざまな努力がなされてきましたが、結局、「波の影響を避けるためには、飛びあがるしかない。」との結論に達しました。
この結論が、ジェットフォイル開発の基本的な考え方です。
通常の船とは異なり、翼走中のジェットフォイルは水の浮力を受けておらず、海中を進む水中翼に発生する「揚力」で海面上に飛びあがっているのです。そして、その揚力は水中翼の後縁部のフラッグを作動させる事によって思うままにコントロールできる為、ジェットフォイルを旋回させることも、また、海面からの高さを一定に保ち、不快な動揺をおさえるようにコントロールする事も出来るのです。
ジェットフォイルは海面上を飛んでいるため、翼走に入るとほとんど動揺せず、素晴らしい乗り心地で航走します。この間、船体の各部に備えたセンサーとACS(自動姿勢制御装置)が、船の姿勢と動揺を抑制しています。
波が高くなり、波が船体に当たりはじめると、いよいよ船長の出番です。船長は右手でヘルム(操舵ハンドル)を握り、左手でフォイルの深度をコントロールするデプスコントロールレバーを持ちます。左手のレバーを上下することによってジェットフォイルの船体が高い波の波頭を越えるよう、海面上の高さをコントロールしてやるのです。これにより、一般的にみられる不快なスラミング(=波と船体の衝突)を発生することなく、スムーズに荒海を走ることができるのです。
旋回時は、船体を内側方向に傾斜させて回頭します。これはちょうど航空機の旋回と同じで、スピードを落とさず、しかも乗客に不快感を与えることなく、旋回することができます。 また、ジェットフォイルは船体を海面上の持ち上げて航走する為、水しぶきが窓にかかる事もなく、客室からの眺望も抜群です。


波高何mまで航海できるのか?

ジェットフォイルの翼走限界波高には、波の周期(波長)、波の方向、船長の技量など、さまざまな要素が絡み合っていて一概にはいえませんが、一般的には波高3.5m程度まで航走可能です。さらに具体的に述べると―
波長が80m以上のいわゆる「うねり」であれば航海はきわめて容易であり、有義波高5〜6m以 上でも航海が可能です。15年程前にボーイング社が行なった試験航海では、実に波高13mの 中を航走した例があります。
※有義波高 :波の高さは、通常 「有義波高」で表示します。有義波高とは、観測された
波のうち、波高の高いところから1/3までを取り出して平均化したものです。
このため、有義波高を1/3最大波と呼ぶこともあります。有義波高と他の波
との関係は、
有義波高 1.00m 2.50m 3.50m
高い方から1/100の平均波高(最大波高) 1.61m 4.03m 5.64m
波長が70〜80m位の条件であれば、有義波高4.0〜4.5mまでは大丈夫です。
波長が50mと短く、時に30m程度の極端に波長の短い、いわゆる三角波が混じるという悪条件を考えても、およそ有義波数3.5mまでは航海できます。


舵がないのに、どうやって旋回するのか?

翼走時の旋回は、主としてフラップを使って行ないます。後部水中翼のフラップを左右逆方向に動かすことによって、ジェットフォイルは内側に傾斜して旋回をはじめます。これに伴って前部ストラットが旋回方向に向かって回転するため、水流の抵抗のないスムーズな旋回が可能になるわけです。
艇走中の本線のコントロールは、デフレクタとリバーサを駆使して行なわれます。デフレクタによって噴流の方向を左右に偏向させ、また、リバーサによって逆噴射も行ないます。ウォータージェット推進機は2基ありますので、2つの噴流を前後左右にいろいろ組み合わせることで、ジェットフォイルをあらゆる方向ヘ移動することが出来るわけです。船長は、操縦ハンドルとスロットルの操作だけで噴流を調整し、離着桟操作などを行ないます。また、バウスラスタが装備されているため、狭い港湾などでの操作も一層容易になっています。


浮遊物に衝突しても大丈夫?

ジェットフォイルは、緊急時には自動車なみの短い制動距離で停船できるうえ、操舵に対する応答性がきわめて速いため、浮遊物を回避することはとても簡単です。
もし、万一大きな浮遊物に衝突した場合でも、ジェットフォイルの前後の水中翼には衝撃吸収装置(ショックアブソーバ)が装備されているため、乗客の安全を守ります。つまり、前部のストラット(水中翼の支柱)は、大きな衝撃が加わると後方へスウィングするとともに衝撃吸収装置が作動してショックを吸収します。また、後部のストラットも衝撃力が加わると、ストラットを船体に止めているシアーピン(別名ヒューズピン)が折れ、ストラット・フォイル全体が後方に振れてショックを吸収します。
衝撃吸収装置が働くと翼走は続けられなくなりますが、艇走で最寄港まで航海することが出来ます。なお、衝撃が小さい場合は浮遊物はフォイルで飛ばされてしまいますし、木材などは切断されます。


ジェットフォイルは風に強いか?

ジェットフォイルは、常に水平姿勢を保つように自動姿勢制御装置が前後の水中翼に備えたフラップを動かしているため、風によって艇が少しでも傾こうとするとセンサーがキャッチして直してしまいます。


騒音のレベルは?

翼走中の客室内の騒音レベルは65〜80dBで、ジェット旅客機の機内とほぼ同じです。従って、会話に支障をきたすような心配は全くありません。


ジェットフォイルの寿命は?

ボーイング社が製造したジェットフォイルの1号艇は1975年製ですが、現在でも香港とマカオの間で就航中です。
通常の船舶は長年使用すると、船体が腐食したり、エンジンの性能が落ちたりして経済性が極端に悪くなり、その結果引退を余儀なくされます。
しかし、ジェットフォイルの船体はアルミ合金で腐食にはきわめて強いうえ、エンジンは一定期間ごとにオーバーホールして常に新品と同じ性能を発揮するため(これをOVERHAUL NEWと呼んでいます)、船齢が高くなっても性能や経済性が落ちることはありません。


燃料消費量は?

ジェットフォイルが、43ノットの航海速力で航走している際の主機ガスタービンの燃料消費量は、およそ毎時2.150g(軽油)です。これはディーゼルエンジン駆動の他の船舶に比べて少ないとは言えない消費量ですが、軽量で強力なガスタービンの採用によって、軽量化、高速化、振動の軽減など、数多くのメリットが得られることを考えると逆に安いともかんがえられます。
また、ジェットフォイルの燃料を考えるときには、燃料消費量だけでなく、1時間当たりの航走距離を考慮する必要があります。つまり、一定の距離(例えば1海里)を航走するのに必要な燃料の量で比較すると、ジェットフォイルの燃料消費量はディーゼルエンジン駆動のSWATH船とほぼ同じだからです。


特別な岸壁設備が必要か?

ポンツーン式の桟橋があれば、潮位の高低にかかわらず主甲板乗降口(1F)から乗下船ができ好都合ですが、ジェットフォイルは、主甲板、上部甲板(2F)、中段の後部暴露甲板から乗船できる為(但し、上部甲板出入り口はオプション)、通常の岸壁では、潮位が変化してもほとんど問題なくタラップを利用して乗降ができます。
また、従来型の水中翼船と異なり、ジェットフォイルは水中翼が左右に張り出していないため、これまで必要だった、本船を岸壁からある程度離して係留する必要がありません。わずかに、防舷材(1.5mφ程度の空気式フェンダ)を入れるだけで、通常の岸壁にも係留できるのです。


水深が浅くても入港できるか?

ジェットフォイルは、他の水中翼船に見られない、「水中翼を水面上に引き上げられる」という優れた特徴をもっています。このため、水深の浅い港湾でも、特別の改修をすることなく使用することができます。
ジェットフォイルの最大喫水は、翼を降ろした状態で4.9m、翼を上げた状態で2.2mで、海底の土質を考慮して表のように推奨所要水深を定めています。
ジェットフォイルは、他の水中翼船に見られない、「水中翼を水面上に引き上げられる」という優れた特徴をもっています。このため、水深の浅い港湾でも、特別の改修をすることなく使用することができます。
ジェットフォイルの最大喫水は、翼を降ろした状態で4.9m、翼を上げた状態で2.2mで、海底の土質を考慮して表のように推奨所要水深を定めています。
推奨所要水深
  翼ダウン 翼アップ
海底の土質 砂利 6.7m 3.6m
荒砂 6.7m 3.6m
6.1m 3.0m


乗員の資格は?

ジェットフォイルの乗務員の資格は、沿海航路の場合、下表の通りです。法定の乗務員は、船長、機関長、一等機関士の3名ですが、わが国ではさらに一等航海士1名を加えて計4名で運航されるのが通例となっています。
船長:2級海技士
機関長:3級海技士
一等機関士:4級海技士


夜間航海はできるのか?

「水中翼船の暫定基準」(昭和36年運輸省船舶局長通達)により、これまでジェットフォイルの夜間翼走は認められていませんでしたが、平成3年7月、運輸省海上交通局より「ジェットフォイルの夜間翼走についての許可基準」が定められ、この条件を満たすことを前提に夜間翼走が認められることになりました。
この許可基準を受けて、まず平成3年末から、非輻輳海域で14年以上のジェットフォイル運航実績がある佐渡汽船 新潟⇔両津航路において、夜間運航が開始されました。その後、2ヶ月程度の実績をみて安全性を確認し、他の非輻輳海域に就航するジェットフォイルの夜間翼走が認められることになります。さらに、非輻輳海域の1年程度の実績をみて安全性に問題が無い場合は、輻輳海域に就航するジェットフォイルも夜間翼走が認められることになります。


水中翼の型式

半没水型水中翼船
Pict_0875.

全没水型水中翼船
Pict_0876.


ジェットフォイル
ホーバークラフト / エアクッション艇
SES 表面効果船
[図解] 世界のジェットフォイル


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新規作成日:2002年3月2日/最終更新日:2002年4月23日