船の指揮所(船橋)の変遷
船には操船の拠点がある。
その昔、帆や手漕ぎによる動力と共に、舵が船に備えられたとき、舵は船尾に取り付けられた。
船の構造上しかるべき位置である。
この時点から、船の操船の拠点は船尾となった。
洋の東西を問わず、船長、船頭などの船の指揮官は、船尾配置である。
船もそれほど大きくも無く、船尾にいれば、進路を見通せると共に、甲板の乗員の動きもよく見えるということである。
船首にある場合は、いちいち振り返らなければいけない。
ただ、この機能を維持するため、船尾は一段も二段も甲板がかさ上げられる必要があった。
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やがて蒸気機関が発明され、船に搭載されたとき、推進器としてパドル(外輪)が備えられたが、機関の大きさと、推進器の構造から、船体の中央に備えられた。
蒸気機関には煙突があり、船尾の操船拠点からの見通しが著しく悪化することとなった。
このため、操船拠点が移される事となった。
船体中央両舷に張り出して備えられた外輪に、橋を渡すように備えられたもの、それを船橋と呼ばれることとなったと言う説がる。
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その後船は巨大化するが、基本的に、機関も船橋も船体中央という姿が続く。
やがて客船は、客室が巨大化し、船体のほぼ全長に渡るようになる。
そして、船橋は、見通しのよい、船首へ移動する事になってゆく。
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貨物船の場合は、船体中央の幅のある部分は、貨物搭載の一等地であり、そこを機関室が占有することはある意味無駄であり、また、プロペラシャフトを短くする意味もあって、機関室は後方へ移動する。
そして同時に船橋も後方へ移動してゆく。
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機関の小型高性能化のおかげで、機関を船尾そのものに置くことも可能となったが、この場合、船橋が船尾にあると、前方見晴らしが極めて悪化する。
特にコンテナ船の場合、コンテナを高く積み上げてしまうと、前方の見通しが利かなくなってしまう。
そのため、船尾機関と共に、船首側に船橋を分離して配置する船もある。
が、乗員配置が分断してしまうこともあり、こういう配置の船は少ない。
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タンカーの場合、更に船体は巨大化する。
その大きさに対応するプロペラシャフトは無理が多いため、機関はさっさと後方に移動するが、大きな船体の船橋は、船体中央に残ることとなった。
長大な船体の後方では、見通しが苦しすぎるためである。
が、レーダーなどの航海機器が発達することにより、船橋も船尾に移動することとなる。
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艦艇の場合は、操船指揮とともに、戦闘指揮も執らなければならない。
戦闘時の見晴らしのため、できるだけ高い位置を求められた。
また、航海艦橋と、戦闘指揮所が分離されることもあり、また、損傷時の為に、予備艦橋を持つものもある。
戦闘時の損害を最小限とするため、装甲を厚くしたりということもされた。
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やがて直接の戦闘指揮と共に、周辺情報がより重要視され、戦闘情報指揮所、いわゆるCICが置かれ、艦長による指揮はここで執られることになってゆく。
CICは、当初艦橋の近傍に置かれていたが、攻撃による損害を受けにくくするため、船体内に置かれるようになってゆく。
また、応急指揮所というものがあり、被害発生時の指揮が執られる。自衛艦の場合は、操縦室(機関制御室)がこれにあたる。
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航海練習船では、多くの実習生が航海訓練の為に乗船する。
その為十分なスペースも必要であり、通常の航海船橋のほかに、実習用の船橋が設けられたり、シミュレーターが搭載されたりする。
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参考
⇒ 船橋の色々
⇒ 船の指揮所(船橋)の変遷
⇒ CIC 戦闘情報センター
⇒ 機関制御室
⇒ 航海用機器
新規作成日:2004年7月4日/最終更新日:2004年7月4日