九尾の狐
1章



鵺野の受け持っていたクラスも6年となった。
今日はそのクラス発表である。しかし、クラスの書かれた紙を渡された生徒たちの顔はどれも寂しそうであった。それもそのハズである。鵺野先生が6年のどのクラスの担任でもなかったのだ。仕方ないことだが一同ため息をついた。
「1年の担任らしいぜ」
「じゃあ、俺たちとはあんまり会えないかもな」
方々からいろんな声がする。しかしみんなには1つ大きな疑問があった。

なぜ、急に1年の担任になったのか

今年は1年は入学生が少ないと言うことはみんな知っている。たしか20人だけである。鵺野は確かに計算間違いやらを沢山やるが何もそんな人数の少ない学年でなくても。しかもこのクラスは新しく来た教頭が決めたもので、鵺野からあの教頭には気を付けるよう言われた。
何かある。

みんなそう思った。何かは分からないが何かとんでもないことが起こりつつある予感がした。


鵺野も同じ思いに駆られていた。教頭は人間とは思えないほどの霊力を感じる。まるで神のような力・・・いやそれ以上かもしれない。そして、玉藻が最近、この学校の校医も掛け持つようになったこと。明らかに玉藻が進んでそうなったことは分かるが、何故そうしたのか分からない。そして最近このあたりに狐や妖狐の姿を見るようになった。こちらに攻撃したり被害をもたらそうとする気配はない。しかし、いやだからこそ不気味である。

何かが起こりつつある。いや起こっているのかもしれない。
おそらくカギを握っているのは明日合う新入生の誰かだ。

鵺野は新入生の名簿を見た。
りりりりん急に電話が鳴った。
「はい。・・・あっ、教頭。」
教頭は事務的な口調で、
<入学生が減りました。これからやめた人の名を言います。>
「はい」
鵺野は鉛筆を持った。
<藍名井さん、郁夫さん、鵜飼さん・・・>
どんどん名をいわれ、その名を鵺野は線で消していった。
<・・・以上が当校への入学をやめた方々です。>
「・・・」
鵺野は名簿を見た。線を引かなかった生徒は・・・・1人。
「あの教頭、ということは入学生は・・・」
<ええ。1人です。あっ・・・必要があれば6年生のクラスと合同にします。それでは明日>
「はい。・・・あっ・・」
鵺野が言う前に電話は切れてしまった。

「まっ、探す手間はなくなったな」
鵺野は残った生徒<天道舞>の名を見た。

天道舞か・・・。・・・んん、天道。どこかで聞いた名字だ。

鵺野はしばらく考えたが思い出せなかった。
「明日分かるか」
鵺野は布団に入った。

明日になったら何が起こりつつあるのかわかるさ。明日・・・・




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