子供の神人
1章



「5歳と6歳くらいの子供、特に女の子が昔からよくこの辺消えるわよね。」
美樹がどこで聞いたのか鵺野も知らない話をしている。

鵺野は何となく聞いていたこの話が全ての始まりだった。

「ああ、昔からそんなニュースよく聞くな。で、それの原因は妖怪だって言うのか?」
「ええ。昔、きれいな山林の景色と駅に近くて安いことを売りに、マンションが出たんだけど。」
「そりゃ、相当売れたんだろうな・・・」
「ええ。でも2年もしない内にそこは入居者全てはおろか管理人業者も出ていったの。理由は・・・」
「入居者の子供が消えていったんだろ」
鵺野に先を言われむっとした。
「ええ。しかも管理人や住居者の多くが見知らない・・・」
「子供を見たんだろ・・・。それも突然出てきたりしたんだろ。」
鵺野はまた先を言った。
鵺野が何故こんな不機嫌かというと、この話は今度行う新入生歓迎の肝試しに使う怪談を考えているからだ。
彼はこの肝試しに乗り気ではないのだ。
「でも子供が消えるだけなら普通男だけとかなら・・・」
「入居者が残ったんじゃ」と言いかけたとき、美樹はほほえみ。
「それが、子供だけじゃないのよ。ある程度すると帰ってくるんだけど、大人の男も消えているのよ」
「へえ。で、消えているときの記憶はないと」
「ええ。でもみんなその見知らない子供に<お父さん>て呼ばれたらしいわ。」
「ふうん・・・」
「これ以降、事件は大きく町内に広がっていったの。つまり、そのマンションが、この事件の発端なの・・・。それで・・・」
「肝試しの場所にしたいと・・・・」
「ええ。」
美樹は期待を込めて答える。
「だ!め!」
「どうして・・・」
「肝試しはな・・・・」
鵺野が言おうとしていたとき、
「んんっ!」
もの凄い妖気を感じた。今まで感じたこともない凄い物だ。
「美樹!校庭にいる人を全員を教室に入れるんだ!早く!!」
美由紀は急いで校庭にいる生徒たちに中にはいるように言い、外を見た。


鵺野は水晶と白衣観音経を持って校庭に出た。しかし、もう妖気の持ち主は消えていた。
気配の残っている校庭の端にある大きな木の下を調べたが、何も残っていなかった。
鵺野は取りあえず校舎に入り、残っている生徒たちにいなくなった生徒や、何か気分のおかしな生徒はいないかといったが、誰もいなかった。
しかし、教室に戻り美樹にそのことを言い注意するように言っていると、
「あの・・・」
遠慮がちに1年生が入ってきた。そして言いづらそうにもごもごしている。
「怒らないから言いなさい」
と、鵺野が言っても何も言わない。美樹がふと、
「知り合いの妹が消えたんでしょ」
と言った。図星らしくその子は頷いた。そして、ゆっくり・・・
「直紀君の家の妹のまこちゃんがさっき、まで・・・おねいちゃん叫ぶまで木下にいたんだけど・・・」
鵺野は身を乗り出し、
「校庭の1番大きな木下かい?」
「・・・うん」
美樹は落ち着き払って、
「その時その子、木に向かって・・・誰もいないところに話してたでしょ・・・」
「・・・うん。僕、妹だから遊びに入れてやろうって言ったんだよでも、あいつ<いいの、いいの。あいつ妹ったって血もつながって
 ないし。親もいらないって言ってるから>って。ここに相談も来ないの・・・」
美樹は
「連れてかれたわね」
と言った。そして遠慮無くその子に、
「その子に言いなさい。もう妹は帰ってこないって」
「・・・えっ・・・」
男の子は今にも泣きそうな顔をして鵺野を見て、
「ほんと・・・?」
「違うよ・・・」
鵺野は何とかその場をごまかし、その子をかえした。


ひも大分落ち生徒たちが全員帰った。いや、美樹が残っていた。鵺野はいつも以上に真剣な顔で、
「どうして帰ってこないんだ?」
「だって、・・・たぶんさっき言ったマンションから始まった子に連れてかれたから。言わなかった。その子、親から可愛がられて無かっ
 たり、1人にされてた子を狙うのよ。まず話しかけて、それから・・・」
「もう、帰ってこないのか?」
「ええ、1度連れてかれると・・・」
美樹は言いかけて、思い出したのか
「あっ、でも1度帰ってきたこともあるわ。ぬ〜べ〜も読まなかった大ニュースになったじゃない。」
「何をしたんだ。」
「泣いて暮らしたのよ。子に対する態度を悔いて。お母さんはお百度詣り、お父さんは自殺まで考えてた、誘拐3日目にけろって
 帰ってきたらしいわ。いなかった記憶はなかったらしいけど。ようは親や家族が悔いれば帰してくれるみたい。」
「そうか・・・」
鵺野はさっきの子の話から悔いいりそうにないと思った。
「あと、噂だとその子、連れてきた子をマンションに連れ込むんだって、子供がいなくなった日あの辺で子供が通るのを見られる
 らしいわ。」
「そのマンションの管理会社の連絡先は?」
「はい。でも、あのマンションはもう好きにしていいって言ってたわよ。電気も水道も止めたらしいわ。」
鵺野は美樹からメモを受け取った。


「・・・と言う分けらしい。」
美樹が帰った後、玉藻と雪女が来た。
鵺野はさっき見聞きしたことを話した。

「患者の中でもつれてかれた子がいますね。私はいませんでしたが」
「スケート場にもいたわ。私がいなかったとき」

どこでもあるのか・・・・

鵺野は2人にまじめな顔で
「放っておけないな・・・。連れ帰さないとな。」
「ええ」
雪女だけ答えた。鵺野はだまっている玉藻を見た。

その子たちは帰りたいのか・・・。

鵺野は玉藻がそう言いたいことが分かっていた。

自分もその疑問があった。

でも、このままではいけないような気がするんだ。

鵺野は目で答えた。玉藻は苦笑して、
「明後日行きますか?そのマンションに」
と聞いた。


玉藻は明後日でなければ病院を休めなかったのだ。
翌日、鵺野と雪女はかつてマンションの住み込み管理人だったおじさん話しを聞きに行った。
「年は5歳か6歳の女の子。金色の髪で、確か、青い目。」
「そうですか。」
元管理人は必死に思い出しながら言っていた。
「あと、さらわれる男性に何かにた点はありませんでしたか?」
「そうですね・・・。」
思い出しながら、
「金髪の長髪で、青い瞳。ま、同じ色のコンタクトの人も襲われてましたが。顔が細く、あと、体つきがしっかりしてて・・・」

誰かに似てる。

鵺野たちは男を思い描きながら思った。
「こういう男ですか?」
「はい。いや、その人なら確実に連れてかれますね。」
「そうですか」

鵺野たちは玉藻の写真をしまった。

単なる偶然かな。

鵺野と雪女は2人ともその時は深くは考えなかった。





ぬ〜べ〜の間 NEXT
トップ