子供
5章




「何をされているんです!?」
屋上にいた女性に叫んだ年は二十歳くらいだ。
なんと結界を開こうと経文を言っていた。

「見ての通り、この子に自由を与えてあげるのよ・・・。可愛そうになってね。ただで入れるマンションと聞いてきたら、・・・」
少し間をおき、
「親を待つ封印されかけの子付きだよ。・・・親じゃないね。この子によると父親に生き写しなんだって。」

分かっていたのか・・・。

鵺野も雪女も玉藻さえ騙されていると思っていた。

「あの子はこの封印を受け入れている。お父さんの生き写しの人が望んだことって、だからあの子は、その人の知り合いの唱える
 経に合わせて自分からふさいでいるわ。・・・どんどん。・・・どんどん。これはこの前こっそりのぞいちゃって分かったけど」

鵺野たちは言葉を失っていた。

あの子を封じたくない。

鵺野と雪女はそう思った。そして、ちらっと玉藻を見た。玉藻は何も言わない。
女性は鵺野たちに凄い霊力の首飾りを差し出し、
「これからあの辺の端にでもおこうと思うんだけど・・・。可愛い首飾でしょ。あの子がそのお父さん似の人に渡してと言って、
 私に預けたものよ。・・・お父さんが昔、戦いで抜けてしまった牙のお守りだって。・・・一瞬でも、・・・何か別の理由でも
 お父さんと呼ばせてもらい、・・・応えてもらったことに対するお礼だって」

玉藻は何も言わない、受け取ろうともしない。
鵺野は受けとり玉藻の首に無理矢理付けた。
女性は背中を向け、

「もし・・・その人が、おいでって言ったら出てくるわよ。あの子は約束を守って待ってるんだから。」

一瞬風が抜けたかと思うと、玉藻が貯水層の上にいた。

そして大声で
「明!!!」
と、叫んだ。


すると、明が姿を現した。
凄い嬉しそうな顔だった。正に極上の笑みだった。
玉藻が広げた腕に飛び込んで来た。
玉藻は優しく明を包んだ。
明は腕の中に入るやいなや眠ってしまった。
玉藻は明を両腕に包み、ヒラヒラと木の葉のように降りてきた。
二人は本当の親子のようであった。


「どこに行かれるんです?」
玉藻は下りながら、こっそり出ようとしている女性に話しかけた。
女性は振り向いて、
「えっ、一件落着と思ってこれからお酒を・・・」
「それは良かったですね。ここまでお膳立てしたかいもお有りだったでしょう。」
「何の話かしら?」
女性は微笑んで聞き返してきた。

鵺野も玉藻の言葉に確かにこの女性の不審な点に気が付いた。

このマンションは今俺たちで貸し切っている。
売られてなどいない。
第一この人から凄い妖気を感じる。

神のように強い妖気。
おそらく神だ。
しかし、神はこの子の封印を望んでいたはず・・・。
いや、望んでいなかった神が1人いる。


「メア様!?」
3人は珍しく声があった。
女性は深い溜息をついた。
「明ちゃん、起こしちゃうじゃない。ここは寒いし、明ちゃんをだっこしたままじゃ腕が疲れるでしょ。中に入りましょ。」
と言い、鵺野たちを連れ階段を下りていった。





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