清水 晃インタビュー 聞き手:平野 到



H- このシリーズ(ブラックライト)は、1962年の第2回の個展から始まっています。その時はオートバイを用いていますが、ブラックライト自体に興味を持ったのはなぜですか。

S- 電気部品を作っている町工場が川崎にあって、そこのご主人にすすめられて、ブラックライトを初めて見ました。その美しさといったらなかった。そして、すぐにこれを作品に使おうと思いました。しかし、ただきれいなだけでは意味がありません。ブラックライトの電灯がタイマーで間欠的に光る仕掛けをつくり、そこに廃品を持ち込み、ある時ハガラクタに見え、ある時は極彩色に輝くようにしました。そういう変貌に興味があったのです。

H- 現実の廃物と虚構の幻惑的な光景の二重性に興味があったということですね。発光するものに惹かれたのは、富山で体験したことと何か関係がありますか。

S- あります。稲妻、ホタルイカ、太刀魚、理髪店のサインポールなどを思い出します。特に富山の冬は暗いので、光るものがきれいに見えます。二人目の父が理髪店をやっていましたが、曇った日に理髪店の鋏を青い殺菌灯で消毒すると、並んだ鋏が光って薄暗い店の中できれいに見えました。子供の頃から、暗い中で光るものに対してはすごく敏感でした。冬に光って見える雪山がそうですが、富山に漂う光は、逃げ場のない光で、その光が凝縮されているように見えます。それは、印象派のモネが<印象・日の出><1873>で捉える光とは、全く違う光です。富山の光はこちらに染み込んでくる光で、ものに反射する明るい光とは違うのです。そういう独特の光が富山にはあると思います。それがたまたま見つけたブラックライトに文句なしに結びついたのです。ブラックライトは極彩色ですが、直感的に富山の光と同質のものと感じました。


図録 「漆黒の彼方」掲載 清水 晃インタビュー 聞き手:平野 到氏(埼玉県立近代美術館)2012より抜粋


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