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「僕にとって自分自身の特別な世界観、個性なぞ存在しません。また持とうとも思いません。それらは問題のいろいろの解き方の一つで、ちょっとばかり色分けされてくるだけのものでしかなく、またそれだけのものでなければならないと考えています。そして重要なのは、問いに対して、芸術だけに可能な解き方それへの参加のしかたを見出すのではなく、この解き方、その方法の中における可能な芸術を取り出すことと考えます。この位置が作品を生み出す母体であり、何かをより具体的で明確に、その実相を取り出す場所でもあると考えるわけです。」
「虚と実、嘘と真、偽物と本物の境界線、こんなものはあるべきはずのものではありませんが、しかし確実に存在しているこの線を限りなく消去していくこと、前者を後者に限りなく還元してゆくことを、まず考えます。つまり、居住権を取り返してゆこうというわけです。このとき、特に努力すべきことは、この引越し屋稼業の実際問題の条件として、亀が亀よりより勤勉な兎に、いかにして打ち勝つことが可能かを研究することです。僕の場合、この研究報告が作品を通じての発言であり、また、嘘を嘘でなくする作業でもあります。」
「アンケート 創造とコミュニケイション」「美術ジャーナル」1966年57号