平成12年度 第二回都議会定例会


 

2000年7月5日 代表質問&答弁要旨 

馬場裕子


 

一 都市外交について
二 介護保険制度と保健・医療・福祉の連携について
三 医療改革について
四 情報公開について
五 東京都の財政再建について
六 副知事の選任について
七 都職員に対する知事発言について
  ※実際の本会議では、まず、全ての質問をした後、まとめて答弁があります。

 都市外交について

1 民族分断以来初の首脳会談を行った韓国の金大中大統領は、北朝鮮の金正日総書記とともに会談の成果をうたう「南北共同宣言」に署名した。そして、この3月に誕生した台湾の陳水扁総統は、この南北首脳会談を受けて、台湾と中国も必ず「和解の時代」を迎えることができると主張し、中国の江沢民国家主席に対して、「前提を設けないで、ともに歴史的な握手の一瞬をつくることは可能だ」として、中国と台湾との首脳会談の実現を呼びかけた。私は、安全保障上の厳しい現実を直視しながらも、「太陽政策」を掲げた金大中大統領、「善意と誠意」の姿勢を示し続けてきた陳水扁総統、この二人の政治家を高く評価したいと思う。いずれも具体化するためには幾つもの困難を乗り越えなければならず、過大な期待は禁物だが、東アジアは確実に動いていることを実感させるものである。知事は、このような昨今の東アジア情勢についてどのように受けとめておられるのか、見解を伺う。

(知事答弁)
 昨今のアジア情勢については、大変好ましい事であると思うが、同時に国際政治と言うものは、善意やヒューマニズムだけで動くものではなくて、あくまでも冷厳な、パワーポリティックス、パワーゲームであるという事も承知して、アジアの動きを見つめるべきだと思う。アジアは、世界の発展途上地域の中でも最も潜在能力の高い地域であり、我が国にも重要な関わりを持つ国々である。平和の内に、非常に可能性に満ちた東アジアが、共存していくことが望ましいが、単に今回の南北首脳会談が成就し、陳総統が冷静に北京に呼びかけてもなお、早々楽観した新しい事態がアジアに到来するということは、にわかには言えないのではないかと思う。

2 知事は所信表明において、「アジア大都市ネットワーク構想」について、この8月に、デリー、クアラルンプール、ソウル及び東京が共同提唱都市会議を開催し、ネットワークの理念や取り組むべきテーマについて協議すると述べられた。私たちも、東京がアジアの諸都市と連携し、環境問題への対応、文化の発信や文化産業の育成、災害時の総合支援体制の確保、都市づくりに関する技術・人材交流などを進めていくことは基本的に賛成するものだが、それがかっての冷戦構造を引きずるものであったり、中国包囲網を形成するものであってはならない。知事は、「アジア大都市ネットワーク」についてどのような理念に基づいて取り組むのか、伺う。

(知事答弁)
 東アジアは非常に可能性に満ちた発展途上地域であり、そういう国々との関わりを、中核をなしている大都市が具体的なアイテムをかまえて、協力していくという事は、新しいアジアのアイデンティティを確立する上で好ましいのではないかと思う。日本が中心になって、マーケットの開拓と同時に、あわせて東アジアの大都市がイニシアティブをとって協力するということは、アジアの新しいアイデンティティのために必要だと思う。

3 このネットワークへの参加を呼びかける都市については、共同提唱都市会議の場で検討されると聞いている。ネットワークの理念や取り組むべきテーマによって、呼びかける都市は異なってくるとは思うが、東京都の友好都市である北京や国交のないピョンヤンをも含めたアジア全域を視野に入れ、戦略的な視点から、参加を呼びかける都市について検討すべきと考えるが、見解を伺う。

(知事答弁)
 8月末に、デリー、クアラルンプール、ソウル、東京の4都市による共同提唱都市首長会議を開催する。さらにそれに輪を広げて、アジアに存在する大都市に声をかけていこうと思っている。

 介護保険制度と保健・医療・福祉の連携について

1 介護保険制度が導入されて三か月が経ち、家事援助に対する介護報酬、低所得者対策など解決していかなければならない問題も山積しているものの、思っていたほどの大きな混乱もなく、とりあえず無事に制度がスタートしたのではないか。しかし、介護の現場では、医師とケアマネージャーとの連携不足が指摘されており、ケアマネージャーからは、在宅医療に関して医師から有効なアドバイスが得られにくいとの声も聞かれる。また特に、痴呆に関わる要介護認定については、実際に必要な介護サービスの程度と判定された要介護度との間に乖離があると指摘されている。痴呆の方の介護をめぐる状況には大変厳しいものがあり、きちんと要介護度を判定することは不可欠であり、そのためには、三年後の見直しを待つことなく、要介護度の適切な認定に向けて、国に対して積極的に働きかけて行くべきと考えるが、見解を伺う。

(高齢者施策推進室長答弁)
 都内の区市町村においては、「かかりつけ医のための痴呆の手引き」の活用などを通じ、要介護認定は認定基準に基づき、適切に行われているものと考えている。しかし、痴呆の方の要介護認定が難しいという各方面の意見がある事は承知しており、過日、痴呆の状態により要介護度を変更する場合の事例集を示すよう、国に要望したところである。今後とも、認定の実施状況を踏まえ、区市町村と連携して、国に対し必要な働きかけを行っていく。

2 介護保険制度の導入を契機として、福祉の分野においても措置から契約という基礎構造改革が進んでおり、これからは、医療をはじめ、介護や福祉の分野でも契約制度に基づいたサービスの提供がなされるようになるわけである。国においては、年金、医療、介護など、社会保障制度の全体像をどうしていくのかという議論がなされようとしているが、都においても、医療、介護、福祉が連携してサービスを提供できるよう努めていく必要がある。例えば、介護基盤の整備について、医療圏の違いから、各区市町村に必ずしも一般病床が適正に配置されていないこともあり、一般病床の療養型病床群への転換が遅れていることが指摘されている。また、高齢者のみでなく、障害者にとっても、医療と介護、福祉とは一体のものでありながら、個人の実態や生活の状況に則したサービスが必ずしも提供されてはいないという実態もある。私は、将来の社会保障のあり方なども見据えつつ、保健・医療・福祉が連携して、都民へのサービスを進めていくことが必要であると考えるが、知事の見解を伺う。

(知事答弁)
 行政が決定する福祉から利用者が自ら選択する福祉への転換を実現する上で、保健・医療・福祉の連携は重要な課題。都は、社会保障制度改革の動向等を踏まえ、東京における福祉改革の指針である「福祉改革ビジョン」及び「高齢者保健福祉計画」を発表した。今後、年内を目途に策定する「福祉改革推進プラン」などにより、サービス内容や提供システムなどを改革するとともに、保健・医療・福祉の連携を図りつつ、都民の満足度や利便性の一層の向上に努めていく。

 医療改革について

1 知事は先の所信表明において、「日本の医療に対しては、患者への情報提供の不足や相次ぐ医療事故などから、かってないほど不信感が蔓延している」として、「東京発の医療改革」を宣言された。医療機関においても様々な取り組みが進められているところだが、今なお患者への情報提供の不足や医療機関についての情報不足が指摘されている。東京都保健医療情報センター(ひまわり)では、電話・FAXによって保健・医療・福祉の相談、医療機関の案内等を行っているほか、夜間・休日診療機関情報等も音声応答システムによって提供している。この4月からは、インターネットによる医療機関案内も開始されている。しかし、その次に都民が望んでいるのは医療機関に関する評価ではないか。体調を崩したときにまず聞くのは、どこに医療機関があるか、そしてもっと大事なのはどこなら安心して診てもらえるかではないか。このような医療機関に関する評価と情報提供についてはどのように考えるか、見解を伺う。

(衛生局長答弁)
 都民が適切で質の高い医療を安心して受けられるようにするためには、医療機関自らが努力するとともに、第三者による評価をあわせ行うことが必要である。医療機関に対する第三者評価としては、財団法人日本医療機能評価機構による病院機能評価が行われており、都は、民間病院がこの審査を積極的に受けられるよう、財政支援を行う事としている。今後、こうした取組みを通じて得られた情報を都民に提供していくよう関係機関と協議していく。

2 医療機関には、安心できる、信頼できることが不可欠である。しかし、先日発表された厚生省の「利用者の立場から見て望ましい出産のあり方に関する研究」班の調査によると、女性がお産をするとき、世界保健機関(WHO)のガイドラインでは慣例的な実施はやめるべきだとされている様々な措置が、日本の病院では広く行われており、しかも、大学病院や大病院ほど実施率が高いと報じられている。女性に対する人権侵害ともいうべき行為が堂々とまかり通っている。「患者中心」とは大きくかけ離れているのが現状である。このような現状の改善に向けて、都として今後具体的にどのような取り組みを行うのか、伺う。

(衛生局長答弁)
 医療においては、医療従事者が患者に一方的に医療を提供するのではなく、双方の十分なコミュニケーションのもと、患者が主体的に選択する医療サービスを提供していくことが重要であると認識している。これまでも、都立病院においてはカルテなどの診療情報の開示やインフォームド・コンセントの推進を図ってきたが、更に患者の立場に立った医療を提供する姿勢を明確に宣言する「患者の権利章典」を策定していく。また、衛生局に患者の声相談窓口を新たに設置し、都内の医療機関に対する患者や家族の様々な要望を今後の病院運営に反映させていく。

3 日本の医療では救命救急医療を担当する医師の不足が指摘されているが、この現状をどのように認識し、今後どうしようと考えるか、見解を伺う。

(衛生局長答弁)
 都では365日24時間対応可能な救急医療体制の整備を進めているところである。今後、更に救急医療を充実するためには、救急専門医の確保が重要であると考えている。そこで、救急医療医師研修会の充実や都立病院における救急専門医の育成、臨床研修医制度の拡充を図るとともに、国に対しては医師の養成・研修の充実を提案するなど、引き続き救急医療体制の充実に努めていく。

4 東京の医療は第一次医療圏、第二次医療圏、第三次医療圏という医療計画の網が掛けられ、必要病床数が定められている。これが都民の医療を確保するための指針として機能しているのならばまだしも、新規の参入を阻止するような医療界における護送船団方式であっては、医療資源の効率的利用を妨げ、都民の選択権を狭めることになる。少なくとも病床規制の弾力的運用を図ることが、先に述べた医療機関に対する評価制度と相まって東京の医療を改善していくことにつながると思う。しかし、そのためには国の姿勢を変えさせなければならない。都として、国に対してどのような働きかけを行っていくのか、見解を伺う。

(衛生局長答弁)
 東京都保健医療計画に定める病床数は、医療法に基づき、医療資源の適正配置と効率的な利用を進めるため、二次保健医療圏ごとに算定する事とされている。この制度に関しては、必要病床数の算定方法が全国画一的で地域の特性が反映されにくく、機械的な規制になりがちな事などの問題が指摘されている事は承知している。今後、より地域の実情に応じた効率的な医療を実現するために、病床数の算定や医療計画の運用において、知事の権限を拡大するなど、国に対して積極的に改善を働きかけていく。

5 知事は、「東京ER」について、「二年以内」に設置すると述べられた。いつでも誰でもあらゆる症状に対応できる緊急診療体制の整備は、都民に大きな安心をもたらすものであり、多くの都民の歓迎するところである。しかし、「入院を必要としない救急患者」「入院・手術を要する救急患者」「生命危機を伴う重症・重篤救急患者」の救急医療を、東京ERが引き受けることになっているが、現状において都立病院三病院に、365日24時間、救急医療を担当するフル・スタッフを確保する展望があるのかどうか、また、将来全都立病院に拡大することが可能なのかどうか、伺う。

(衛生局長答弁)
 今後、医師をはじめとする救急専門スタッフの育成や臨床研修医制度の拡充など、人材確保のための様々な工夫を行いながら、必要なスタッフについて計画的に整備していく。他の都立病院への拡大については、今後設置する「都立病院改革懇談会」において、地域特性や都立病院の担うべき役割を踏まえ、検討して頂く事としている。

 情報公開について

1 本定例会には、情報公開条例の一部を改正する条例案が上程されることになっている。これは、私たち民主党が昨年の第三回定例会において、東京都公安委員会・警視庁を実施機関に加えるべきと主張したのを受けて提案されるもので、基本的に評価したいと思っている。しかし、あれから既に10ヶ月も経過しており、かつ、施行期日が「公布の日から起算して1年3ヶ月を超えない範囲内」となっている。知事が「実施機関に加える」と答弁してから施行まで2年もかかるというのは、あまりにも時間がかかりすぎる。この間の相次ぐ警察の不祥事の中で、都民の信頼を回復するためにも速やかな施行が望まれるが、見解を伺う。

(政策報道室長答弁)
 警察業務については、全国斉一性を考慮し、国の情報公開制度との均衡を図る必要があるが、情報公開法の関係政令が本年2月に公布され、国の制度の詳細が明らかになったことから、直近の時期である今定例会で条例改正を行うこととした。また、公安委員会・警視総監は今回初めて条例上の実施機関となることから、膨大な既存文書の分類整理、適切に対応するための体制整備や職員研修などに、相当の準備期間が必要となる。これらの要素を勘案し、遅くとも来年10月までには施行する事とした。

2 地方自治法施行令の規定により公安委員会には付属機関を設置できない事を理由に、情報公開審査会などに諮問する実施機関から東京都公安委員会・警視庁を除外している。一方、「付属機関を設置できる」とはされていない都議会の情報公開条例では、東京都議会情報公開推進委員会を設置し、あらかじめ学識経験者を指名し、不服審査の際に意見を聞くことにしている。この都議会の例と比べると工夫が足りなさすぎると思うが、いかがお考えか。

(政策報道室長答弁)
 ご指摘の通り、現行法令では公安委員会・警視総監が行った非開示決定に対する不服申立ては審査会へ諮問することができない。審査会ではなく、何らかの第三者的機関を置き、その意見を求めることも、公安委員会が附属機関へ諮問できないとする現行法令に抵触するおそれがある。現行の法制度においては、第三者的性格を有する公安委員会が、行政不服審査法に基づき、条例の趣旨を踏まえ、適正な判断をするものと考えている。

3 都の情報公開条例の趣旨から言えば、審議会等についても原則として公開されるべきものである。同条例が成立する以前であっても、前知事の生活都市東京懇談会は公開されており、その議事録はホームページに掲載され、常時都民の意見を受けつけていた。そこで不可解なのは、「東京の問題を考える懇談会」と「横田基地の民間利用を考える会」はどちらも非公開である。論議の段階から都民に公開し、都民の意見を受け容れながらまとめ上げていくことが、「東京構想2000」を活きたものとし、「横田基地の民間利用」を促進することにつながるのではないか。情報公開を重視する知事の姿勢とも相反するものと考えるが、見解を伺う。 

(政策報道室長答弁)
 これらの会は、知事自らが都政運営の参考とするため適宜会議を開いて各界の有識者から情報や提案をいただくものであり、審議会のような答申を求めるものではない。また、出席者の自由な意見交換を行うためにも、個人や企業の情報保護に配慮することが不可欠である。このような会の性格から非公開としており、情報公開の趣旨に反するものではないと考えている。

4 知事は先の所信表明において、「電子都庁の実現に向けた第一ステップとして、本年秋に、約三千台のパソコンをインターネットに接続する」と述べられた。この4月に発表された「東京における情報化ビジョン」においても述べられているように、都庁の経営革新にITを戦略的に活用するためには、各担当組織を情報サイドから総合調整するCIO、最高情報統括責任者を副知事級に設けることも検討する必要があると考える。都庁の電子化について、全庁的な推進体制の確立を早急に図る必要があると考えるが、見解を伺う。

(総務局長答弁)
 電子都庁を推し進めるには、あらゆる分野の行政活動を人手と紙による管理から、ITを活用した情報の管理へ移行させるため、仕事の進め方の根本的な改革が必要である。そのためには、電子都庁の目標を明確にするとともに、全庁的な推進体制を確立したいと考えている。

5 平成9年に策定された都庁の「情報化推進計画」も、本年度でその計画期間を終了することになる。全庁的な推進体制のもとで、13年度以降の「情報化推進計画」、「都庁電子化プラン」を策定すべきと考えるが、見解を伺う。

(総務局長答弁)
 現在、都庁の情報通信基盤であるTAIMSを整備しており、これを核とした電子都庁の実現に向けて、新たな情報化の推進計画の策定に着手しているところである。本年度には、電子申請などの具体的メニューをおりこんだ電子都庁の実施計画として策定する予定である。

 東京都の財政再建について

1 都においては、財政再建に着手したとはいえ、財政の危機的状況は今も続いている。先日、財務局が発表した小冊子にも明らかにされているように、11年度の一般会計決算が、前年度より赤字幅がわずかながら縮小するとはいえ、なお約900億円もの赤字が見込まれている。財政の弾力性や健全性を表す経常収支比率が100%を超えることは必至であり、引き続き極めて厳しい状況にある。知事は予算編成について、「今年は、泣く子と政党には勝てなかった」、「来年はやってやろうと思った」と述べているが、特に、来年度は私たち都議会議員の選挙が控えており、今後、様々な歳出圧力が色々な方面から吹き出してくることが予想される。私たちもまた様々な都民要望を受けることになるが、私たちは極力都財政の一刻も早い再建にそのスタンスをおこうと考えている。そのことが、結果として将来にわたって都民生活を守っていく道であると確信している。知事におかれても、財政構造改革を断じて先送りすることなく、むしろ前倒しするぐらいの気構えで取り組むべきと考える。今回の総選挙における政府与党三党のような予算バラマキの姿勢はとらないよう強く求めるものである。
 また、昨年12月の「広報東京都」紙上を用いた「財政問題特集」も、財政再建に対する都民の理解を深める意味で大きな役割を果たした。私たちは、今後も財政再建に向けた重要な局面においては、都民に積極的に情報を公開することによって都民の理解と協力を求めるべきと考える。2年目の都政運営に望む知事の、財政再建に向けた決意を伺う。

(知事答弁)
 就任以来、財政再建を都政の最重要課題の一つと位置付け、給与削減をはじめとする内部努力や聖域なき施策の見直しなど、かつてない厳しい取組みを行ってきた。しかし、財政再建はまだ緒についたばかりであり、厳しい都財政の現状を考えれば、財政再建に向けた道のりはまだ遠く険しいと言わざるを得ない。財政構造改革を進めるにあたり、地方への税源の移譲など、税財政制度の改善は必須の問題であり、今後とも、私自身も先頭に立ち、東京都税制調査会などを通じて、国がうんと言わざるを得ないような内容の要求を、地方自治体を代表した形で、国に向かって働きかけたいと思っている。

2 先般、外部の専門委員から、「機能するバランスシート」の中間報告が発表された。私たちは、かねてから官庁会計に企業会計手法を導入すべきとして、公営企業や監理団体全てを網羅した連結バランスシートの作成や、官庁会計における「歳出」ではなく、減価償却費などを含めた「コスト」をきちんと把握し、財政負担と対比させる行政サービス計算書の作成、さらに都民に対する説明責任を十分に果たせるよう、こうした財務諸表の公表を行うべきであると提言してきた。今回の報告書は、こうした私たちの提言と同様の内容が端々に盛り込まれており率直に評価するものだが、この中間報告を受けて、都は今後どのように対応するのか、伺う。

(財務局長答弁)
 東京都参与を中心とする専門チームからいただいた中間報告においては、バランスシートとともにキャッシュフロー計算書や行政コスト計算書などの財務諸表に関する貴重な提言をいただいた。今後、今回の提言や最終報告を踏まえ、新たな財務諸表を作成し、情報開示に努めるとともに財政分析に役立てていきたい。

3 都の銀行業等への外形標準課税の導入や、4月から施行された地方分権一括法により、地方税法で定められた税目以外でも自治体独自の課税がしやすくなったことから、各自治体に自主財源を模索する動きが広がっている。先月、大阪府議会が、東京都同様、銀行業等への外形標準課税を導入する条例案を成立させ、三重県の産業廃棄物埋立税や横浜市の場外馬券売場や風俗店などへの課税等々の新税構想が発表されている。しかし、銀行業等への外形標準課税は、地方交付税の交付団体にあってはその増収分の8割に相当する交付税が減額され、法定外税についても、政策誘導的なものであって、自治体の主要な税源になるとは考えられない。こうした点を勘案すると、自治体の自主財源を確立するためには、国からの税源移譲が不可欠である。今回の総選挙に当たって、私たち民主党は、国と地方の税源比率を現在の「2対1」から「1対1」に転換すべきと主張しており、自民党も公約に「地方自治体の課税自主権を尊重しつつ、国から地方への税源の移譲を含め、地方税の充実確保を図る。」としている。これが単なる口約束でないならば、国からの税源移譲もそう遠い将来のことではないはずである。都においても既に税制調査会を発足させ、国に対する布陣を敷いているが、今回の総選挙における各党の公約をもふまえて、知事の税源移譲をはじめとした税財政制度の改善の展望と実現に向けた決意について、伺う。

(知事答弁)
 財政構造改革を進めるに当り、地方への税源の移譲などの税財政制度の改善は地方主権にふさわしい自主・自立的な財政運営を行うために不可欠であり、是非とも実現しなければならない課題である。その早期実現が現段階では容易でないことも十分承知しているが、今後とも私自らが改革の先頭に立ち、東京都税制調査会などを通じて活発な議論を巻き起こすとともに、都議会をはじめ他の地方自治体とも連携を密にしながら、国に対して粘り強く働きかけてまいりたい。

 副知事の選任について

1 今回提案されているす副知事の選任については、昨年の臨時都議会以来の懸案事項であった。石原知事は、今回改めて浜渦氏を副知事に提案されているが、知事は、氏にどのような仕事を期待しているのか、また、副知事3人体制により、今後どのような都政運営を図ろうとしているのか、伺う。

(知事答弁)
 本定例会で、同意いただければ、浜渦氏にはこれまでの経験を活かして、国との連絡・調整、監理団体等の改革、産業振興を中心に、従来の都庁には無かった発想で仕事に取組んでもらいたい。また、3人の副知事が一体となって私を支え、東京の危機を打開するための明確な方針と具体的な政策を打ち出す事により、日本の改革につながるような都政運営を行っていく。

 都職員に対する知事発言について

 最後に、一言。先週末の各新聞に知事の記者会見の発言が報じられた。紙面には、「木っ端役人」「小役人」「バカ役人」という言葉が踊り、知事が怒りを露わにしたとされている。都職員に誤りがあれば厳しく叱責されるのは当然であるが、それは内部で行われるべきことであり、都職員のトップである知事が外部に対して言うべきことではない。知事は政治家であると同時に、都職員を束ねる最高責任者である。最高責任者であるならば、対外的には職員の誤りを、責任者として謝罪するのが本来の姿勢ではないか。しかも、もし万が一にもこれが誤報による誤った判断であったならば、この発言によって傷つけられた島民の善意やまさに不眠不休で職務にのぞんだ都職員の名誉はどうなるのか。くれぐれも都知事の職にあるというご自身の立場に留意され、事実関係を正確に把握した上で発言されるよう求めておきたいと思う。

(知事答弁)
 三宅島の問題について、非常に腹が立ったので申したが、私が新聞から受けた情報では、いかにも地方に出向している役人が余計なことをしたなという印象で物を申したが、その後精査したら、そういうことではなくて、地元の政治家が変に気をきかして、ああいう措置を講じたようで、支庁の役人の名誉のために彼らにも謝罪するし、もう一言申し上げれば、新聞にも正確な情報を伝えてもらいたいと要求したいと思っている。いずれにせよ、的確な指摘ありがとうございました。
 

  

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