都議会レポート 平成14(2002)年10月
とりもどそう東京の元気
都民生活の不安解消に積極的提言
9月18日に開会された平成14年第三回定例会は、議会側からすればアクシデントともいえる石原知事の訪米により、やむなく会期を延長し、10月15日に閉幕しました。本定例会では、会期冒頭に都議会民主党の主導で「北朝鮮による日本人拉致問題に関する意見書」を可決、成立させました。また長引く景気低迷のなかで増大する都民の生活不安を解消し、活力ある都政の実現につながる提言を積極的に行いました。
デフレ克服が緊急課題
東京都も都債最大限活用を
デフレ・スパイラルの危機が迫る中で、日銀は、大手銀行が保有する株式を直接買い取るというリスクの高い方針を決めましたが、もたつく政府にしびれを切らした市場は、バブル崩壊後の最安値を更新する株暴落を引き起こしました。しかも、医療、雇用、介護の社会保険料引き上げなどで、2兆5千億円もの負担を企業や家計に押しつけるというデフレ克服に逆行する政策が進められています。
デフレ克服は、今や緊急かつ至上課題です。私たちは、東京都に対しても、規制緩和などの制度的改革とともに、都債も最大限活用して事業を進めるべきと主張しています。
NPO法人の活性化へ
市民寄付の新しい受皿を
福祉、教育、環境などの分野で社会的に意義ある活動を進めているNPO法人の活性化は公益の増進につながるとともに、新しい雇用の場にもなります。
私たちは、これまでもNPO法人活性化のため、法人都民税の免除や寄付金控除などの道を開いてきましたが、さらに、NPO法人への資金供給が円滑に進むよう、寄付者の意図が十分反映される新たな寄付の受け皿となる仕組みを作るべきと主張しています。
東京都も、新しい受け皿づくりに向けて、東京ボランティア・市民活動センターなどの関係機関と協議を進めるとしています。
急がば回れ!都立病院改革
都立病院の再編整備については、本年度中に基本構想の詳細を検討することになっています。
しかし、対象病院の地域住民との対話や地域医療の代替措置の確保については不透明感が強いのが現実です。
初めに決めてしまった開設予定の実現にむけて急ぐのではなく、関係者との合意形成には、じっくりと時間をかけることが必要です。
私たちは、当該病院が果たしていた医療機能の代替措置の確保など、何が求められているのか、ひろく地域の声を聞き、対策を講じるべきであると主張しています。
大転換期の障害者福祉
障害者福祉は、平成15年度から「措置から契約へ」と制度が大きく変わります。しかし、障害者が契約により選択できるサービス、とりわけ生活寮など地域で生活ができるためのサービスの量は不足しています。私たちの指摘に、東京都も「さらに設置を促進する方策を検討し、整備を強力に推進する」と新たな対策を示唆しました。
また、廃止や見直しが議論されている都立福祉施設や社会福祉法人への補助は、規制緩和による競争だけでは語れない部分をフォローし、福祉向上に資するものとすべきであると主張し、東京都も「サービス向上の努力に報いる」との姿勢を示しています。
温暖化対策の上乗せを!
東京都は、今年4月から事業者が排出するCO2の抑制策などを提出させる制度をスタートしていますが、その集計結果によると東京都のCO2削減目標は達成が困難な状況となっています。
私たちの質問に対し、東京都は「現行制度のレベルアップを図るなど、事業所対策の強化を検討する」ことを約束しました。
また、家庭部門でのCO2削減のために、今年の7、8月に実施された「少エネ商品拡大キャンペーン」の拡充を求め、東京都も、「よりわかりやすいラベル表示や対象商品の拡大など、消費者への適切な情報提供のあり方について積極的に検討する」との前向きな姿勢を示しました。
木材を活用し森林再生を
日本の温室効果ガスの削減目標6パーセントのうち3.9パーセントが森林による吸収量分として期待されています。
森林再生のためには、間伐材の利用を進めていくことが必要です。私たちは、住宅や学校での机や椅子などに、多摩の木材を利用することを提案するとともに、バイオマス(生物燃料)としての活用を提案し、東京都も「公的な分野での多摩産材の利用促進に取り組む」「木質バイオマス利用の事業化の促進に向け、さらに検討を進める」と約束しています。
臨海部で森林創設を
私たちは、森林再生のために、多摩の森林だけでなく、臨海部で森林を創設することを提案してきました。
中央防波堤内側は、区部から出たゴミにより埋め立てられており、この土地を都民との協働で緑の島によみがえらせることは、自然再生の大きなシンボルともなります。
東京都は、私たちの質問に対して、「本年度は植物の生育条件などの調査を行い、来年度以降は、都民協働の仕組みづくり、事業展開のあり方の検討などを進めていく」と述べています。
ディーゼル車規制まであと1年!
来年10月から環境確保条例によるディーゼル車規制がスタートします。国の対応が遅れるなか、私たちは、ディーゼル車規制が円滑に実施できるような取り組みを求めています。
特に、東京都の行う立ち入り指導対象外の車が全体の65パーセントを占めており、小規模な事業者への対応が不可欠であることを指摘ました。東京都も、「事業者の方の規制への対応が進むよう、さまざまな検討を行っており、今後、支援策の充実を図っていく」との決意を示しています。
観光振興で東京に活力を
展開せよ!戦略的取組み
観光振興は、東京都の経済復興への大きな鍵であり、千客万来の世界都市東京創生に欠かすことのできない課題です。
現行の観光部を独立させ、より戦略的な事業展開が必要だとする私たちの指摘に、やがては観光局の誕生の可能性もと、石原知事は含みのある発言をしました。
なお、欧米の主要都市に民間委託で、観光レップを置くとのシティーセールスの新手法の実行が発表されました。私たちは、成果は期待するが、やはり都自身が現地事務所を開設し、職員を派遣するなど、シティーセールスに本腰を入れるべきと強く指摘しました。
モノづくりは人づくり
従来の製造業はもとより、情報サービスやアニメなどを含めたソフトなものづくり産業の振興のためには、何よりも人材育成が重要です。
私たちは、人材育成のために、従来のインターンシップよりも長期の就業訓練を実施し、それを学校の単位として認定する東京版デュアルシステムの導入を求め、東京都教育委員会も、「10月に作成する都立高校改革推進計画の新たな実施計画において、東京版デュアルシステムの導入について具体化をし、早期の実現を図る」と約束しました。
都立高校改革は都民と一体で!
新しいタイプの高校づくりをすすめるなど、都立高校改革が進んでいます。
しかし、「生徒のニーズに応える」新しい学校づくりに際して、生徒や保護者、地域の声は充分に生かされているとはいえません。
また、既存校の問題検証、改善策の検討も不充分です。中退者・不登校も依然増加傾向です。単なる受け皿づくりでは解決できません。
私たちはよりよい学校づくりのため、今後も、学校ごとの裁量を広げ柔軟な取り組みを可能とする、情報公開を推進するなど、さまざまな角度から学校のあり方自体をただす取り組みを進めます。
都立高校にバランスシート
=今年度は、まず5校=
私たちは、これまでにも再三、公会計に企業会計的手法を導入すること、そして個々の事業の行政コストを明らかにすることを求めてきましたが、東京都も「事業別バランスシート作成マニュアル」を作成し、行政評価対象事業から順次事業別バランスシートを作成することになりました。
また、私たちが求めてきた都立高校ごとに教育活動に要するコストや資産の状況を都民に明らかにする点については、今年度5校、15年度40校、そして16年度には全校で、都立高校ごとのバランスシートを作成することになりました。
急げ!治安対策の強化
新警視総監の決意促す!
不法滞在、不法入国の来日外国人による凶悪犯罪が増加の一途をたどり、社会不安の大きな要因として、顕在化しつつあります 都内だけでも、今年6月までに来日外国人の検挙数は、4,725件と昨年同期の実績を、すでに162件も上回っています。
すべての都民が、安心して日常生活をおくれるためには、防犯・治安対策の拡充・強化は喫緊の課題であるという私たちの指摘に対し、石原知事も石川新警視総監も「来年には組織犯罪対策部を各署に新設するなど、全力で治安対策に取組む」との決意を示しました。