平成14年 財政委員会


 

2002年11月12日

馬場裕子

一 個人都民税について

一 個人都民税について

◯馬場委員
 本日は事務事業の質疑ということで、私は、都民が納める税金、都税ですね、固定資産を初めとしてたくさんありますが、その中で、すべての都民が納めるものという意味で、きょうは都民税の中の、さらに個人住民税、個人都税といったらいいのでしょうか、について何点かに分けて少し質疑をさせていただきたいと思います。
 都民税は、平成十二年度で都税収入の二八・五%を占める主要な税目でございます。その内訳は、おおむね個人が三割、法人が六割で、残りが利子割ということになっております。
 個人の都民税とそれから区市町村民税でしょうか、を合わせて個人住民税というふうに呼んでいらっしゃるということですが、区市町村が、都道府県分と区市町村分をあわせて、個人住民税の場合徴収をしている。
 この個人住民税は、給与所得者は源泉徴収をされます。自営業者なども、税務署に確定申告をすれば、自動的に区市町村から納税通知書が送られてまいります。給与所得者も、毎年五月ごろ納税通知書が送られてきて、それで税額が幾らであるかということがわかるわけです。つまり、自分で計算をしない税金であるということですね。
 さらにいわせていただければ、計算をしないということであれば、その中身が、つまり控除額がどうなっているのか、また、その計算がどうなってそういうふうな税額になったかということも、なかなか関心が向かないということが、自分自身も含めて見受けられるのではないかなというふうに今思っているところです。
 しかし、この住民税は、市町村における国保や介護保険、保育料などさまざまな算定の基礎に使われている、いろいろな自己負担の基本になる税金だということであります。また、受益と負担の関係が最もわかりやすい税でもある。つまり、サービスを受けるときに、そのサービスを受ける基準になるということで、本来わかりやすい税であるといいたいのですが、しかし関心が薄い、こんな状況であるというふうに思います。
 その点から、個人住民税と所得税では、所得を課税標準とする点では同じということですが、地方税は応益税という性格を持ち、それが税の仕組みにも反映をされている。控除の面でも、それぞれの控除の額が、所得税の控除の額と違うということも含め、はっきりいわせていただくと、控除の額が所得税よりも低いというような状況にあると思います。
 そんな点からして、この住民税と所得税の異なっている点というのを、まずご説明をいただきたいと思います。



◯齋藤税制部長
 個人住民税は、地方自治体の住民サービスに必要な経費は、その自治体の住民がその能力に応じ広く負担を分任するという考え方に基づきまして課税をされております。
 このため、ご指摘のとおり、両税とも所得を課税標準とする点では同様でございますが、個人住民税におきましては、所得税にはない均等割が設けられているほか、税率及び所得控除額が異なっております。
 具体的には、税率が、所得税では一〇%から三七%の四段階となっているのに対しまして、個人住民税では、都民税、区市町村民税合わせて五%、一〇%、一三%の三段階となっており、住民税の方がよりなだらかでございます。
 また、所得控除額につきましては、例えば、扶養控除額が所得税では三十八万円であるのに対しまして、個人住民税では三十三万円とされているなど、個人住民税の方が低くなっております。



◯馬場委員
 今お答えいただきましたように、負担分任、私も今回いろいろ質問をするということで初めて伺った言葉なのですが、負担分任といわれるようですが、この考え方から、住民税の控除額が所得税より少ない、つまり課税最低限といったらいいのでしょうか、その額が低い。このことは、今お答えいただきましたように、広く負担を分任するという意味と伺いました。
 また、所得で七百万円を超えると最高税率が適用される、つまり住民税の場合は、七百万円前が二%で、七百万円を超えると三%という都民税の税率──区市町村民税はちょっと違うのですが、そんな二段階に今都民税はなっているということがあります。所得税と違って、そういう意味では累進課税という形の課税の方法ではないということですね。
 それぞれの自治体が自主自律という形で運営をしていくためには、また、東京のように不交付団体であるという状況からすると、個人住民税の税収に占める比率を高めていく、つまり安定した税制であるということが、ある意味では都政を運営していく上で大事だというふうに思います。それは単に住民税を上げればいいという意味の比率を高めるのではなく、先ほどもお話がありましたように、所得税から住民税への税源移譲ということをする必要があると、改めて私も思いました。所得税は全国レベルで使われるものですので、都民が、高い所得税を払っているという中で、なかなか都民に還元をされない。そういう意味では、都税というところでのきちんとした財源を持つことが、ある意味では安定するということだと私も思います。そうしたことから、都も国に対して、所得税から住民税への税源移譲ということを提案要求していらっしゃいますが、財務省の厚い壁をなかなか打破できていないのが現状だというふうに思われます。
 国における税源移譲の検討状況はどのようになっていらっしゃるか、お伺いをいたします。



◯齋藤税制部長
 本年五月には、片山総務大臣が具体的な規模、移譲税目などを示した税源移譲の試案を発表いたしました。六月には、国庫補助負担金、交付税、税源移譲を含む税源配分のあり方を三位一体で検討すべきとする、経済財政運営と構造改革に関する基本方針二〇〇二が閣議決定をされました。
 しかしながら、先月末に発表されました地方分権改革推進会議の最終報告である事務事業のあり方に関する意見におきましては、国庫補助負担金の廃止、縮減を提言するのみで、これと一体のものであるべき国から地方への税源移譲については、全く言及されておりませんでした。今後とも、都といたしましては、機会あるごとに提案要求の実現に向け、各方面に働きかけてまいりたいと考えております。



◯馬場委員
 引き続き国に対して、この税源移譲を強く働きかけていただけますよう要望しておきます。
 ところで、個人所得課税のあり方についてお伺いをいたします。
 この課税の仕組みなんですが、現在の課税の方法は、住み方というんでしょうか、もう一つライフスタイルに合っていないなという思いがしております。これは前からいわれている、例えば、国でもモデルにしている夫婦に子ども二人というような形の基本的な考え方ということが、特に東京のような都市においては合っていないというのもありますが、大事な点では、税制の基本原則である中立性を損なっているのではないかというふうに思われる部分があります。
 現在、政府税調などにおいて、この個人所得課税のあり方について議論がされていると思いますが、その内容についてはいかがでしょうか。



◯齋藤税制部長
 本年六月の政府税制調査会のあるべき税制の構築に向けた基本方針では、個人所得課税について各種控除を簡素化、集約化する方向を目指す。二番目といたしまして、ライフスタイルの多様化、少子高齢化の進展等、構造変化の中で個々人の自由な選択に介入しないような中立的な税制とする。三つ目といたしまして、高齢化の進展で課税ベースが縮小するが、この空洞化を是正するため、課税ベースを拡大する方向で諸控除のあり方を見直すといった視点が示されております。
 これらの考え方に立ちまして、九月のあるべき税制の実現に向けた議論の中間整理では、一つ目といたしまして、配偶者特別控除につきましては、基本的に制度を廃止する方向で見直しを行うこととし、税引き後、手取りの逆転現象に対しては所要の措置を検討する。二番目といたしまして、特定扶養控除を初めとする各種割り増し、加算措置等については、廃止を含め、制度をできる限り簡素化する方向で検討するとされたところでございます。



◯馬場委員
 この広く負担を分任するということで、均等割という制度があるというふうにさっきお答えをいただきました。個人の住民税では、均等割という制度がありまして、特にこの均等割のあり方について、一つは、都内に住んでいなくても事務所や家を持っている人に課税ができるという表記もあるのですが、このことについては、また次の機会に触れさせていただきまして、きょう私がこの税のガイドブックを見せていただいた中でびっくりしましたのが、この均等割の部分で、課税されない場合というところですね。
 その中の、均等割のみ非課税というところの対象に、均等割を納める夫と生計を一にし、同一区市町村内に住所を有する妻というふうな表記があるのですが、このことも含めて、現実にこの文章そのものも現状には合っていないというか、夫と妻という位置づけをはっきり表記し過ぎているといったらいいのでしょうか、そういう意味では、この文章そのものも、今の男女共同参画社会、平等について、少し表記として、それから、税の非課税の対象をこういうふうに規定するということ自体おかしいと思うのですが、現状は、こういう状況に合わせて今課税をされているのではないかなと私は思っているのですが、こうした点で、まだ地方税法の中に男女平等の観点で問題があるというふうに思う部分が何点かあります。
 大きくは、先ほどお話がありましたように、世帯単位の課税であるということも含めて検討課題だというふうに思いますが、特にこの均等割について、国にないこの均等割の考え方なんですが、国の税調ではどのような論議が行われているのか、先ほどのことも含めてあると思いますが、お願いいたします。



◯齋藤税制部長
 均等割に係る生計同一の妻に対する非課税措置について、政府税調では、妻も地方公共団体から行政サービスを受けており、また男女共同参画社会の進展の中で、一定の所得を稼得する妻は担税力を有するため、個人単位課税の観点から、そのあり方を見直す必要があるとしております。



◯馬場委員
 そういう観点から、この文言の見直し等も含めて対応を図られたいというふうに思っております。
 今のお答えにありましたように、世帯単位から個人単位へという大きな税制の改正が今検討されているところですが、特にパートの主婦が年収百三万円を超えると、配偶者控除から外れるということから、年末になると勤務を調整し、事業者も従業員確保に難渋するといったような、まだそういう状況があります。
 また、世帯といっても世帯の構成はまちまちであり、担税力を反映する何らかの人的控除は必要であるとの考え方、まだまだ根強いものがあることは承知をしておりますが、今後の検討課題ということも含めて、我が民主党の税制調査会も検討を始めております。本年八月に発表した税制改革の基本構想の中で、高所得者に有利な控除主義を改めて、必要な人に対し確実な支援が可能となる給付主義への転換を提唱しております。このため、扶養控除や配偶者控除、配偶者特別控除などの人的控除を見直して、これによって生まれる財源を、子育て支援策など社会保障給付の財源とするというものでございます。
 各種控除の見直しは、課税最低限の引き下げにつながり、住民税の負担もふえるということになりますが、一方ではセーフティーネットの充実も図られることになる、こういうふうに考えております。
 これも、もちろん一つの考え方であり、このような方向での見直しが、一朝一夕に進むものとは思えない点もあるのですが、しかし、この東京の現状を見まして、大都市での生活の価値観が多様化しているときに、税制が個人のライフスタイルの選択をゆがめるということのないようにすべきだということを強く主張しておきたいと思います。
 主税局としても、少子高齢社会の到来という大きなうねりの中で、住民福祉の向上という目標を達成するという観点から、税制について幅広く研究を深めていただきたいということをお願いを申し上げます。
 最後になりますが、それでは、この徴収について、住民税、どんなようになっているかというところで、一点ご質問をさせていただきます。
 この個人住民税は、区市町村が、区市町村民税とあわせて都民税についても賦課徴収する仕組みとなっております。都税については、ここ数年徴収努力を傾けて徴収率がアップしていると聞いております。都民税の徴収率につきましては、平成十二年度において約八八%と、他の税目に比べて非常に低いという状況があります。今後この徴収率を引き上げるには、都民税の徴収率アップが、結果的には区市町村民税のアップにつながっていくものというふうに考えます。
 そこで、この個人都民税の徴収率向上について、都として区市町村とどのように連携して進めているのか、お伺いをいたします。



◯菅原徴収部長
 委員ご指摘のとおり、個人都民税の徴収率につきましては、他の都税と比較いたしまして低い状況にございます。このため、かねてから都といたしまして、区市町村からの研修生の受け入れ、あるいは徴収事務の研修、そして徴収困難事案の処理について積極的に相談に応じるというような連携、そして協力関係を進めてまいりました。
 十四年度からはさらに一歩踏み込みまして、区市町村長の同意を得ました上で、都が直接徴収する制度をスタートさせまして、支援体制を強化しているところでございます。



◯馬場委員
 最後に、意見等を申し述べさせていただきます。
 徴収率向上ということでお願いをしたいのですが、都の積極的取り組みということでお答えをいただいたのですが、なぜそうなのかという原因も含めて、この十年来の徴収率八六%から今は八八%というお答えをいただきましたけれども、この徴収率を見てみますと、やはりバブル崩壊というころからの税率、その前もあるかもしれませんが、そのころから上がっていない。つまり、バブルの後遺症という意味で大きくこのことが影響しているのではないかなというふうに思っております。
 先ほどお答えいただきましたように、そういう意味では、不動産の処分等を含めて、区市と一緒になって徴収率、また、納税者も納税方法等について相談に乗っていただけるというのはある意味でありがたいことですので、強制的な徴収ということでなく、一緒になって、生活の改善も含めて、生活に密着をしている都民税ですので、ぜひその徴収については配慮をしながら、さらに理解を得て徴収が進むということをお願いしておきます。
 また、特に二十三区では、住民の流動性が高いということで、移転をする方、それから外国籍の方等いらっしゃるというふうなことも影響しているのかなと考えております。そういう意味では、課税制度をも含めて、この徴収制度と一緒になって、公平な課税であり、そしてほかの税金と同じように、できるだけ皆さんにきちんと納税をしていただくということで、都民税をそれぞれが払っているのだという認識をまず都民の皆さんに持っていただきたいということと、それから、この納付について協力をいただきたいということを、私どもも強く進めていきたいと思っておりますので、さらなる努力をお願いして、質問を終わります。
 ありがとうございました。
 

  

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