【 天の祈り、明日への翼 ---パラレル//アス×天使キラ 】
【2】
母の死を看取ったのは、自分だけだった。
あの事故の直後、母はまだかろうじて息をしていた。
泣きながら必死で呼びかけたけれど、母の目はとても虚ろで、ここではない何処かを見ていた。
それが何なのか知ったのは、ほんの微かに聞こえてくる母の声でだった。
『……ごめ……な…さ』
『母上……っ!!母上、ははうえっ!!』
『ごめ……さ………パト…リッ……』
『…っく…うぅ……やだよ…しな…ないで……っ!はは…うぇ………っ!!』
『パ…ト……ク…………ど…う……か………』
『は…母…上……?ははうえーーーーーっ!!!』
それきり母は動かなくなった。
最後に父の名を呼びながら、父にごめんなさいと謝りながら、母は逝った。
そしてその後病院の一室で会った父は、清められた母の遺体に縋り付いて号泣した。
父が激しく感情を乱したのを見たのは、あれが最初で、そして最後だったと思う。
最後まで愛する人の名を呼び続けた母。
何より気にしていたはずの体裁をかなぐり捨てて母に縋った父。
────許されないと、思った。
母を犠牲にして生き残ってしまった罪。
きっと、一生、許されないと。
ふたりの間を無惨に引き裂いたのは他ならぬ自分だと、痛いくらいに理解せざるをえなかったから……。
だから、自分を見る父の瞳に憎悪を見たとき、これは罰なんだと思った。
父から母を奪った罰。
母を父の隣に居させられなくした罰。
涙を流す権利なんてないから、それから涙は一切封印した。
与えられる痛みも、苦しみも、当然のものなのだから。
悲しいなんて、辛いなんて思っちゃいけない。
だって、これは罰なのだから。
母を殺した自分への、一生終わらない……────。
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み、短い……ι
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