海上自衛隊の旗艦

旗艦(きかん)と言えば、文字通り、指揮官の座乗する「はたぶね」である。
そのため、海上自衛隊の各部隊においても、自衛艦隊旗艦、護衛隊群旗艦、掃海隊旗艦等と言う呼び方がされる。
しかし、海上自衛隊においては、組織上の「旗艦」は、自衛艦隊旗艦(1954.7.1-1961.7.26)と、護衛艦隊旗艦(1961.9.1-)しか存在しない。
その他の艦は、便宜上、旗艦と「俗称」されているだけである。

護衛隊群、潜水隊群、掃海隊群などの場合は、編制上は、一般に直轄艦が、ほぼ、旗艦用に割り当てられている場合が多い。
護衛隊群におけるDDHヘリコプター搭載護衛艦や、潜水隊群におけるAS潜水艦救難母艦、ARS潜水艦救難艦、掃海隊群におけるMST掃海母艦、などがそうである。
しかしながら、組織上は「司令部」のみが存在し、必要に応じて、艦艇に乗り組み指揮を執るのである。
当然、その最の司令部設備(=旗艦設備)が存在することは必須条件である。
が、作戦の都合や、艦艇の都合により、いくらでも別の艦に移ることが可能である。
近年、護衛隊群においては、DDHヘリコプター搭載護衛艦にも勝る機能のイージス護衛艦が配属されており、司令部が乗艦する機会も多くなっている。

通常、群司令や、隊司令の乗艦する艦を、指揮官旗が掲揚される事から、旗艦というが、その艦は、指揮官本人の意思で決定される。
もちろん司令部が艦上にあり、指揮官旗がマストにたなびく姿をして「旗艦」と呼ぶことに何ら問題はないのだが、一時期のこの状態を見て、編制上の旗艦とすることは正しくない。

艦長は、艦を指定して、人事が行われるが、司令は、部隊を指定して、人事が行われる。
従って、必ずしも、艦番号の若い、或いは新しい艦が旗艦であるという事はないし、在任中同一という事も限らない。
もちろん、作戦指揮をとるのに必要な施設があることは、当然の条件である。
ただ、群司令部には、群司令の他、数名の幕僚が、隊司令部には、隊司令の他、数名(約7名)の付官(幕僚任務)がいるので、日帰りの航海ならいざしらず、居室の割り当てが問題となる。
最近の艦では、艦長室と共に、司令官室を設けている事が多いが、それでも、群司令、隊司令が同居となると、上級からトコロテン方式で部屋が確保されるので、自ずと下級指揮官が割を食う事になる。
もちろん「不足は廊下」と言うわけには行かないから、艦側の士官室などを順次都合することもあるらしい。
それよりも、上級指揮官との同居自体、やりづらい部分もあるので、査察的乗艦を除けば、下級指揮官側の判断で、上級指揮官と同一艦とならないようにするようである。

また、隊司令の乗艦判断に、指揮下の艦長の錬度も、大いにかかわってくる。
かつては、最も信頼のおける艦を、安心して任せられるという意味から、旗艦にしない事が多いようであったようだが、最近では、安心して乗っていられないと不安という観点から、最も信頼のおける艦を旗艦にする事が多くなっているようである。
もちろん、作戦時においては、もっとも信頼できる艦に座乗し、安定した作戦指揮を執る必要が有るのだが、訓練時などは、もっとも錬度未熟な艦の育成の為、指揮監督をかねる必要も有るわけである。

尚、国会答弁の中で「各護衛隊群の構成上、ヘリコプター搭載護衛艦を旗艦及び対潜中枢艦とし」(内閣衆質一五八第一号)、という見解も出されてはいる。


自衛艦隊
昭和29年7月1日、防衛庁、自衛隊の創設、海上自衛隊発足により、PF、LSSLをもつて編成された、第1、第2、第3船隊群は、第1、第2護衛隊群、第1警戒隊群と名称を変更すると共に、この3個群をもって自衛艦隊が編成された。
昭和36年9月1日の自衛艦隊改編により、旗艦「あきづき」、護衛艦隊、航空集団、第2掃海隊群、潜水艦「くろしお」などをもって編成されることとなった。
その後、昭和38年3月、自衛艦隊司令部は、陸上に移り、現在に至っている。

自衛艦隊旗艦
1954.7.1-1957.4.1 PF295 けやき
1957.4.1-1961.7.26 DD102 ゆきかぜ
1961.7.26-1963.3 DDA161 あきづき

護衛艦隊
昭和36年9月1日の自衛艦隊改編により、旗艦「てるづき」、第1、第2、第3護衛隊群をもって編成された。
そして、昭和40年代にはいって、第4護衛隊群が編成され、現在の4個護衛隊群の体制が整った。
その後、護衛艦隊旗艦は「むらくも」「たちかぜ」そして「さわかぜ」に引き継がれ、現在に至っている。

護衛艦隊旗艦
1961.9.1-1985.3.27 DDA162 てるづき
1985.3.27-1998.3.16 DDK118 むらくも
1998.3.16-2007.1.15 DDG168 たちかぜ
2007.3.15- DDG170 さわかぜ


参考
海上自衛隊の司令部組織


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新規作成日:2003年1月18日/最終更新日:2007年8月13日