艦船模型の作り方(一般論)

船の模型は、プラモデルを組み立てればお手軽だが、いかんせんすべての船が揃っているわけではないし、数を揃えようとすると金額も馬鹿にならない。
かつてウォーターラインシリーズが出始めた頃は重巡洋艦が250円、戦艦が400円、駆逐艦が100円から始まったが、当時のお小遣い500円1000円程度で考えれば大変な価格である。
最近ではイージス艦が2000円程度らしいから、所得水準の割には低価格だが、それでも艦隊を揃えるのに10000円も支払う気には毛頭なれないし、第一メジャーな艦艇しか売っていない。

モデラーとして作るのであれば、市販のものをキレイに作るのも道だが、艦隊を揃えようとすればそれに甘んじていては話にならない。

ということで、自作ということになる。
ここでその素材は色々あるのだが、私は紙で作っている。
が、パソコンが入ってからなかなか作る機会に恵まれていないのだが。
ここでは、試しに1隻作ってみよう。

模型の種類には、色々あるが、私は洋上模型を作っている。
これは、並べたときに、あたかも港にいるような光景を目にすることが出来るものである。

今回、アメリカ海軍で計画中の、LCS(Littral Combat Ships)を作って見よう。

資料収集。
自作であるから、まず対象を細かく知る必要がある。
そのためには、各種の雑誌や資料を集めることが必要になってくる。
該当する本船の資料がなくても、同型や同種の船の資料を見ることによって、推定することも出来る。

参考資料
ここにあるのは、Jane's FIGHTING SHIPS 2005-2006、Naval Institute Guide to Combat Fleets of the World 2005-2006、The Ships and Aircraft of the U.S.Fleet 2005 18th Edition (USNI)、PROCEEDINGS (USNI)など。もちろん、作成対象によってさまざまだろう。
Dcim2051/DSC_9213. Dcim2051/DSC_9214. Dcim2051/DSC_9215. Dcim2051/DSC_9216. Dcim2051/DSC_9218.

図面作成。
思いつきで作ってもかまわないのだが、図面を書くことによって、細かい部分がわかってくる。
白い紙でもかまわないのだが、方眼紙のようなものの方が使いやすいかもしれない。
船の長さと幅、これは基本である。
スケールは各自の自由だが、最近の洋上模型は1/700が多い。
もちろん、飾る場合の寸法を基準にしてもかまわない。
写真や図などを見ながら、自分専用の図面を書いてゆく。
図面自体を作品にするわけでもないから、実際に作りこめる細かさ程度で十分である。
用具は、シャープペン、定規、電卓、消しゴム程度。

図面
Dcim2051/DSC_9217. Dcim2051/DSC_9219.

図面
model001_00. 原寸.

部品図
私は部品図か書かないのだが、これを見て作ってみようと思う人の参考に書いてみた。
model001_01. 原寸.
model001_02. 原寸.

船体部品
101. 船底
102. 甲板
103. 縦板(艦首側)
104. 縦板(艦尾側)
105. 舷側板
106. 舷側板
107. 船尾板
上部構造物部品
201. 上部構造物甲板
202. 上部構造物側板(艦首) (2枚作成)
203. 上部構造物側板(舷側) (2枚作成)
204. 上部構造物側板(艦尾)
205. 艦橋ウイング(2枚作成)
211. 上部構造物甲板
212. 上部構造物側板(艦首) (2枚作成)
213. 上部構造物側板(艦尾)
221. 上部構造物甲板
222. 上部構造物側板
艤装部品
301. マスト
302. マストデッキ
303. レーダー
304. マストトップ
305. ヤード
401. 艦首砲
402. 艦首砲
411. RAM
412. RAM
413. RAM


材料。
厚紙と紙。
厚紙は船底にする。
紙は、甲板用と外板用、上部構造物用で厚さを変えたほうが作りやすい。
甲板用は固めのほうがよく、外板用はやわらかめ、上部構造物用はその中間かやや固めがよいだろう。
色は後から塗るよりも、カラー用紙を使用することにより完結したほうが簡単だろう。

材料
Dcim2051/DSC_9221.

部品
搭載兵器などはあらかじめ作っておくと簡単。
Dcim2051/DSC_9263.

工具。
工具としては、カッター、はさみ、カッター台、接着剤、定規、ピンセットなど。
刃物を使うときは、怪我をしないうに十分注意しよう。
カッターの刃先は、使用するとき以外は格納するほうが安全だ。
カッターを刃を進めるときは、ゆっくりと。
そして刃先を紙や定規を押さえている手のほうに向けないように。やや外側にテンションをかけながらの方が怪我の心配がない。

工具
Dcim2051/DSC_9220. Dcim2051/DSC_9262.

さて作成。
造船所で言えば、起工式だ。

各部品をカットする。
最初にすべての部品を用意してもよいし、工程に従って作ってもよい。
今回、部品図を用意したが、これに従ってカットして行ってもよいし、工程にあわせて図面と半完成の模型の寸法を測りながら行ってもよい。

船体の作成。
厚紙で船底をカットする。
甲板用の紙で、上甲板をカットする。
次に、船体のシアーにあわせて、厚紙か甲板用の紙で、縦紙を作る。
縦紙を船底に貼り付ける。
エッジに直接貼り付けるので強度に欠ける様に思われるが、別にホンモノの強度は必要ないし、多少の剛性は維持できる。
そして、上甲板をこの上に貼り付ける。
最後に、外板用の紙を、これに巻きつけるように貼り付ける。
そして、船底の紙の面にあわせて、外板用の紙の余りを切り落とす。
上甲板の紙の面にあわせて、外板用の紙の余りを切り落とす。
このとき、ブルワークを持つ船であれば、その分余白を残す。
これで船体が出来上がり。

船体組み立て
101. 船底に、103. 縦板(艦首側)、104. 縦板(艦尾側)を立ててゆき、その上に102. 甲板を貼り付ける。
Dcim2051/DSC_9223. Dcim2051/DSC_9224. Dcim2051/DSC_9225.
これに、107. 船尾板を貼り付ける。
Dcim2051/DSC_9226. Dcim2051/DSC_9227.
これに、105. 舷側板、106. 舷側板を貼り付ける。
Dcim2051/DSC_9228. Dcim2051/DSC_9229. Dcim2051/DSC_9230. Dcim2051/DSC_9231. Dcim2051/DSC_9232. Dcim2051/DSC_9233.
そしてハサミで余分な部分を切り落として行く。
Dcim2051/DSC_9234. Dcim2051/DSC_9235. Dcim2051/DSC_9236. Dcim2051/DSC_9237.
Dcim2051/DSC_9238. Dcim2051/DSC_9239.

造船所で言えば、めでたく進水式を迎えることになる。

上部構造物の作成。
上部構造物用の紙と、甲板用の紙で、作ってゆく。
昔の船の場合、箱を積み上げるだけだったが、最近の艦艇はステルス仕様で顕著な傾斜面があり、面を貼り合わせる手間がかかる。

上部構造物組み立て
201. 上部構造物甲板、202. 上部構造物側板(艦首) (2枚作成)、203. 上部構造物側板(舷側) (2枚作成)、204. 上部構造物側板(艦尾)、211. 上部構造物甲板、212. 上部構造物側板(艦首) (2枚作成)、213. 上部構造物側板(艦尾)を組み立ててゆく。
Dcim2051/DSC_9240. Dcim2051/DSC_9241. Dcim2051/DSC_9242. Dcim2051/DSC_9243. Dcim2051/DSC_9244. Dcim2051/DSC_9245. Dcim2051/DSC_9246. Dcim2051/DSC_9247. Dcim2051/DSC_9248.
船体に搭載。
Dcim2051/DSC_9249.
221. 上部構造物甲板、222. 上部構造物側板を組み立て、船体に搭載。
Dcim2051/DSC_9250. Dcim2051/DSC_9251. Dcim2051/DSC_9252.

マストその他の艤装品。
図面に従い、紙を切って取り付けてゆく。
が、細かいところをどこまで作るかが問題だ。
紙を切ってゆく場合、カッターでどこまで細く切れるかという、工作技術上の問題もある。
もちろん、紙にこだわる必要もなく、バルサ材などの工作が容易な材料や、針金などを使ってもよい。
搭載兵器などは、市販のパーツを使ったほうが見栄えがするかもしれない。
また、そもそもが模型なので、自分が満足すればそれでよく、搭載艇を省いても、ちゃんと載っているように自己認識できれば満足も出来る。

部品搭載
301. マスト、302. マストデッキ、303. レーダー、304. マストトップ、305. ヤード、を取り付けてゆく。
Dcim2051/DSC_9253. Dcim2051/DSC_9254. Dcim2051/DSC_9255.
205. 艦橋ウイング(2枚作成)を搭載。
Dcim2051/DSC_9255. Dcim2051/DSC_9256.
401. 艦首砲、402. 艦首砲、を組み立て搭載。
Dcim2051/DSC_9257. Dcim2051/DSC_9258.
411. RAM、412. RAM、413. RAM、を組み立て搭載。
Dcim2051/DSC_9258. Dcim2051/DSC_9259. Dcim2051/DSC_9260. Dcim2051/DSC_9261.
アンテナドーム、給排気口を搭載。
Dcim2051/DSC_9264. Dcim2051/DSC_9265.

塗装。
カラーペーパーを使用し、塗装済みのパーツを取り付けていれば必要ないが、そうでない場合は一色で収まらない場合は、塗装が必要だ。
が、本体が紙なので、水性塗料でぺたぺた塗ると、乾いたときにパカパカになってしまうので注意しなければならない。

さて完成。
市販されていないオリジナルの完成だ。
制作時間は約2時間(図面作成時間を除く)。

造船所で言えば、晴れて引渡し式と相成る。

Dcim2051/DSC_9264. Dcim2051/DSC_9265.

はたまた量産して大艦隊を作ってもよいだろう。
最初の一隻でうまく出来ないからといって諦める必要はない。
大日本帝国海軍でさえ、台風で壊れてしまう艦艇を建造したこともあったのだ。
そしてなにより、どんな船でも作れるというのが味噌だ。
プラモデルに余分に武器を積んで改造する例や、船体を削って改造することはあっても、しょせん原型をとどめた範囲だろう。
それがこの方式なら、どんなものでも作ってゆける。
その姿が未知数の16DDHや、未来の艦艇などなど。

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新規作成日:2005年9月4日/最終更新日:2005年9月4日