眼前に立つ1機のPT。
スクリーン越しに見えるその機体は、手にナイフとリボルヴァーを持っている。
装甲は厚いが、各部のスラスターが機動性を上げているのだろう、バランスの良いPTに見えた。
対してこちらの武器はライフルとプラズマカッター、必要最小限の装甲のみ残した高機動戦闘用の機体。
「ユウ、良いかい?」
外から声が聞こえる。
若い男の声だ。
「OKだ」
答えたユウイチは、操縦桿を握り締めた。
スーパーロボット大戦 ORIGINAL GENERATION
Another Story
〜闇を切り裂くもの〜
第3話 舞台裏の主人公
基地に到着し、3人で色々と話し合った次の日。
ユウイチはテスラ研に着た目的を果たすべく、ジョナサン、ロバートともに格納庫に訪れていた。
今回のユウイチの目的は、部隊に必要な物資の調達である。
本当なら補給部隊なりに運んでもらうのだが、部隊の特異性のためユウイチ自身が調達に来たのだ。
「それで何が入用なんだ? お前の頼みなら袖の下なしで聞いてやるぞ」
「そうそう、ユウからは貴重な話も聞けたしね」
先導するように歩くジョナサンと、それに頷くロブ。
1日経って大分打ち解けたのか、ロブはユウイチを『ユウ』と呼ぶようになっている。
彼はユウイチが話した教導隊時代の事がいたく気に入ったようだ。
「そうだな……」
ユウイチは周りを見ながら、
(しかし、さすがはテスラ研と言うべきか……。メジャーな武器や、何に使うか解らないものまでが多い)
そんな事を考えていた。
「取り敢えず武器が欲しいな。配属の決まっている2人がまだまだ新人だからなぁ、武器くらいまともじゃないと心許ない」
少し思案した後、希望を述べる。
2人の新人とはマイとサユリの事だ。
訓練ではかなりの成績を叩き出している2人だが、実戦では何が起こるか分からない。
そんな時に心強い武器があれば、精神的にも楽になるだろう。
強すぎる武器というのも問題なのだが、あの2人ならその点は大丈夫だろうとユウイチは思っている。
「武器か……ん〜」
「カザハラ博士、武器ならあれがありますよ」
立ち止まって考えていたらしいジョナサンに、ロブが話を持ちかける。
「あれ? 何かあったか?」
「ほら、例の試作品」
「……おお、あれか!」
何か思い出したのか、面白そうな顔で頷くジョナサン。
どうやら良い物があるらしい。
「ユウ、近遠どっちが要るんだい?」
「できるなら両方で頼みたいんだが……」
「おう、丁度両方ある。運が良いぞお前」
ロブの質問に、図々しくも答えるユウイチ。
教え子の命に関わる事なので妥協はしない。
そんなユウイチに頷いて、ジョナサンはまた先導して歩き出した。
数分歩き、格納庫内にあるシャッターの前に着いた。
PTなども格納されているのだろう、シャッターはかなりの大きさだ。
「この扉は?」
「一応この奥には秘密のパーツなんかが入ってるのさ。第零格納庫、略して
「へぇ、零格ねぇ」
ユウイチの質問にロブが答える。
シャッターの10メートルほど手前で話している2人を尻目に、ジョナサンはシャッターの横のパネルを操作している。
「良いのか? そんなとこに俺を通したりして」
「良いさ。秘密と言っても見られて困るものがあるわけじゃないからな」
「そりゃそうだ」
笑いながら話していると、シャッターが音を上げながら開いた。
ジョナサンが操作したからだろう、人間2人が横並びで通れるくらいの隙間ができている。
「まぁこんなもんで良いだろう、2人とも早く来い」
そう声をかけると、ジョナサンは中に入っていった。
ユウイチ達もそれに続く。
埃が溜まってはいたが、零格の中は綺麗なものだった。
というより物があまり置かれていないのだ。
そして入って1番目に付くモノが、最奥に存在している。
「あれは……グルンガストか!」
そう、格納庫最奥の壁の前に鎮座していたのは、テスラ・ライヒ研究所謹製の機体グルンガストである。
「その通り。まぁオーバーホールのために戻ってきたんだがな」
懐かしそうに眺めながらジョナサンが言葉を紡ぐ。
グルンガストの設計を行ったのは彼なので、感慨も
「それに、量産試作機の設計のために変形機構もオミットされてるんだ」
ロブによると、以前データ取りを行っていた極東基地では、SRX計画と平行してグルンガストの量産計画が行われているらしい。
グルンガストは3段変形を可能としたスーパーロボットなのだが、そのために量産には向かないとの事。
その点を踏まえて、量産型のグルンガストは変形機構を簡略化して設計を行っているらしい。
「ふむ。色々と動いているんだな」
「ああ」
感心したように頷くユウイチと相槌を打つロブ。
「ユウイチ、こいつも持っていくか?」
そんなユウイチにジョナサンが提案する。
「良いのか?」
「構わんさ」
「量産計画で使ったりしないのか?」
「う〜ん。どうだロブ?」
「一応データは取り終わったので、大丈夫だと思います」
「ならOKだ。どうせここに置いても埃を被るだけだ。だったら実戦で使った方が良いだろう」
「そうか……ならありがたく戴いていくか」
ユウイチは礼を言い、2人は気にするなと笑った。
そして3人は踵を返し…………。
「……おお! 肝心の武器がまだだったな」
ここに着た理由をジョナサンが思い出した。
話の流れ的に帰ろうとした3人は、一瞬の沈黙の後、お互い顔を見合わせて乾いた笑いを上げる。
…………空気が痛かった。
「そ、それでどれが目的のヤツなんだ?」
気分を変えるように切り出すユウイチ。
「あ〜。あぁ、あれだ」
ジョナサンは首をぐるぐる回し、見付けたのか、ある場所を指差した。
その場所に向かって行く3人。
そこにはPTサイズの刀が二振りと、ライフルより一回り大きいランチャーのような武器が一門置かれていた。
「斬機刀とシュナイダー・ランチャーだ。両方とも試作品だが、威力はかなりのものだぞ。特にシュナイダーは私が設計した」
どことなく誇らしげに説明するジョナサン。
若干胸を張っている。
「斬機刀は、ゼンガー少佐の乗機に装備されている刀を基に作ったんだ。最終発展系のシシオウブレードと言う刀が開発中さ」
「あの人に刀か。くくく……」
眼鏡を拭きながら説明するロブ。
第零格納庫は埃っぽいので眼鏡が汚れたようだ。
ユウイチは笑いを噛み殺している。
ゼンガーが刀を装備した機体に搭乗するのが、似合いすぎて面白いらしい。
実際、彼が和装をすれば、江戸時代に紛れ込んでも違和感が無い。
「シュナイダー・ランチャーの方は、ATX計画の機体に装備するはずだったんだが。はぁ……」
そんな2人を無視するようにジョナサン。
説明の後、何を思い出したのかため息を吐く。
「ここにあるって事は、何か問題でもあったのか?」
「いや、機能は完全だ。問題もない」
「じゃあ何故?」
「ロブ、説明してやってくれ」
そう言った後、またしてもため息を吐く。
そんな
「長いからランチャー抜いてシュナイダーで話すけど、実はシュナイダーの実装はほぼ決まってたらしいんだ」
「それならどうしてまた」
「ATX計画の開発主任にダメ出し食らったらしいんだ」
「あぁ、それならありうる。ATXの開発主任はラドム博士だからなぁ」
苦笑しあう2人。
マリオン・ラドム女史。
前述の通りATX計画の開発主任を務める。
優秀な科学者なのだが、ワーカーホリックで自己顕示欲や嫉妬心が強い。
自分独自の価値観を持っており、余人に理解されない事も多々ある。
ある事情により、『EOT(エクストラ・オーバー・テクノロジー)』−所謂異星人の技術−を毛嫌いしている。
「それで、ダメ出しの理由は何なんだ?」
「ああ、それは――」 「美しくないからだと」 「――と言う事」
ロブの発言に被せるようにジョナサンが答える。
吐き捨てるような喋り方が、彼の怒りを如実に表している。
ジョナサンに理由を言われたロブは、ユウイチに向かって肩をすくめた。
「実用的だとは思うんだがなぁ」
ユウイチはシュナイダーを見る。
銃口の下部にブレードが取り付けられており、接近戦時にはブレードでダメージを与えられるようになっている。
そのブレードが
当然砲身の強度も相当のものだろう事は想像に
これなら懐に入られても大丈夫だろう。
「……うん。これと斬機刀を貰ってくわ」
何事か思案した後、ユウイチは頷いた。
どうやら気に入ったようだ。
「おお、そうか! 使ってくれるか!」
「あ、ああ」
先ほどまでの鬱状態から一転、躁状態になったのか、やたら元気になったジョナサン。
ユウイチの両手を握り締めてしきりに頷いている。
自分の武器が日の目を見るのが嬉しいらしい。
「よし! ついでに小型化が終わった『テスラ・ドライブ』も1基付ける。持ってって良いぞ」
「博士!! そんな簡単に……」
「構わん。
正論と言えば正論なのかもしれない。
ジョナサンが開発に携わっていたらの話ではあるが。
「テスラ・ドライブの小型化……成功していたのか」
微量の感動を乗せた口調で呟くユウイチ。
テスラ・ドライブとは、『EOT』を用いて作られた装置である。
通常の核融合エンジンを超えるエネルギーを発生させ、そのエネルギーによって飛行を可能とさせる。
当初は異星の技術と言うことで開発が難航し、戦艦サイズのテスラ・ドライブが最小であった。
しかし今回小型化が成功した事により、機動兵器への搭載が可能となるサイズまで縮小する事に成功。
一般の機動兵器にこのドライブを搭載するだけで、飛行可能となる優れものである。
現在、テスラ・ライヒ研究で開発が終わった小型化テスラ・ドライブは2基のみ。
「ふっ、凄かろうユウイチ」
「……2基ともラングレー基地に持って行くはずでは?」
胸を張って偉そうなジョナサンに、確認を取るロブ。
その顔には半ば諦めの表情が……。
「マリオンの婆さんのところに持っていくのは1基で良い。あの頑固婆が搭載を許可する可能性が低すぎるわ」
マリオン本人に聞かれたら速攻で地獄に送られそうなセリフを口にする。
ユウイチもロブも苦笑しているが、よく見るとその口元が若干引きつっているのが解る。
……怒るとかなり怖いらしい。
「確かにあの人は『EOT』と名のつくものを嫌っていますからね」
マリオンの『EOT』嫌いを思い出したのか、納得顔で頷くロブ。
「まぁあれには理由があるんだがなぁ。な?」
「ああ」
「そんなのがあるんですか? 是非教えてくださいよ」
「「内緒」」
同時に答え、顔を見合わせてお互い苦笑する。
理由としては他愛も無い事だからだ。
ロブもその内知る事になるだろう。
「ん? 何だこのでっかい箱は……?」
何となしに格納庫を見回したユウイチの目に、台形を重ねたような筐体が映る。
実物を見た事があるユウイチには、それがPTのコックピットブロックを模したものだと言う事が理解できた。
「ああ、それは『バーニングPT』の操作用ブロックだ」
ユウイチの疑問に答えたのは、当然ロブである。
彼はこの『バーニングPT』と呼ばれるロボットゲームの生みの親なのだ。
『バーニングPT』とは、ロバート・H・オオミヤが開発した、世界規模のロボットシミュレーションゲームである。
自作PTのデータを専用のフロッピーディスクにコピーし、筐体内のドライブに読み込ませて操作する。
基本は1対1、複数対複数の対戦モードなのだが、数千人が一度に参加することができる大戦モードの存在で一躍人気を集めた。
各地区でバトルロイヤルを行い、勝ち残ったプレイヤーによるトーナメント形式の全国大会も開かれている。
各パーツ、装備のカスタマイズの自由度が高く、子供から大人、果ては軍事ヲタクまでファン層は幅広い。
しかしリアルな戦争描写により、一部のPTAや政治家に批判を受けているらしい。
一般には普通のアーケードゲームという認識なのだが、実際は優れた資質の民間人を探す目的で企画したものである。
「ほ〜。そりゃ凄い。基地には娯楽なんて無かったから知らなかったぜ」
ロブから説明を聞いたユウイチは、感心する事しきりである。
教導隊解散後のユウイチは、ほとんどを基地内で過ごしていた。
基地から出るのはアカネ達とのデートくらいだったので、当然ゲームセンターなんかには寄り付きもしないのだ。
余談だが、サユリ・クラタ嬢がこの『バーニングPT』をやっている姿が、総司令部近くのゲームセンターで目撃されている。
「これの凄いところは機体のカスタマイズが容易な事でな。専用のソフトを使えばネジ一本一本まで作れたりするんだぞ」
ジョナサンが楽しそうに話す。
事実、パソコン専用のカスタムソフトが市販されており、少しパソコンの知識があれば簡単にPTが作れるのだ。
カスタムするにも元となるデータが必要になるので、『バーニングPT』用の機体データも市販されている。
もちろんこの機体データはカスタムしないでも普通に『バーニングPT』で使用できる。
現在発売されている機体データの総数は26に上る。
「結構面白くてな。私達も自分で機体を作って、暇な時に対戦していたりするんだ」
「自分のアイデアを形にするのが簡単だからね」
ロブの発言はもっともだ。
開発というものは元来金がかかるものであるのだが、『バーニングPT』内で使うものは金がかからない。
かかるのは製作時間くらいなものだ。
それでいてリアルさは現実とそう変わらないのだから、研究者にとってこれほど優れた発表の場はそうないだろう。
「どうだい。ユウもやってみるかい?」
「これをか?」
筐体を軽く叩く。
鈍くこもった音が格納庫に響いた。
「お。良いじゃないか。現役パイロットの操縦テクニックを見せてもらおうか」
「面倒な……」
「まぁそう言わないでくれよユウ。俺もちょっと興味あるんだ」
顔の前で手を合わす。
ロブにとっては地球圏トップクラスのパイロットの腕を見る機会なのだ。
ここは押しの一手。
「う〜ん」
「やらないと、このパーツはお前にくれてやらんぞ」
ジョナサンは、ニヤニヤと擬音が付きそうな笑みを浮かべる。
ユウイチは折れるしかなかった。
1時間後。
「ふ〜」
息を吐き出しながら、シートに身を預ける。
スクリーンには、『WINNER』の文字。
空気の抜ける音が聞こえると、ハッチが静かに開いていく。
外の明かりが暗い筐体内に差し込む、ユウイチは目を細めた。
「凄ぞユウ!!」
「さすがに大したもんだ」
なにやら興奮しているロブと、頷いているジョナサンが顔を出した。
いきなり2人も男の顔が出現したので、思わずユウイチはハッチと反対の壁に身を寄せる。
「何が凄いか分からんが、取り敢えず外に出させてくれ……」
中にいたのは十数分とはいえ、狭く暗い筐体内はなかなかに息が詰まる。
ユウイチとしては新鮮な空気を吸いたいところだ。
「ああ、悪いな」 「すまんすまん」
「ふぅ〜」
2人が身を引くのと同時に外に出て、ユウイチはもう1度息を吐き出した。
後ろを向いて、今までいた場所を見る。
「なかなか大したものだな、この『バーニングPT』ってやつは」
格納庫から戻ったユウイチ達は、早速『バーニングPT』をやるために移動を開始した。
案内されたところには例の筐体が半円を描くように5つ、円の中には壁に沿うようにコンピューターが同じく5台。
その壁には両脇にドアがあり、それをくぐると同じ大きさの部屋がもう1つあった。
ドアをくぐったユウイチは、思わず出そうになった声を自制したものだ。
(何でテーブルやイスが……。おいおい自販機まであるよ)
部屋の中にはテーブルセットやソファなどが置かれ、しかも最奥の壁には飲み物や食べ物の自販機まで存在していたのだ。
研究員の憩いの場になっているのは間違いないだろう……快適すぎる。
(あの大型のモニターは、多分『バーニングPT』内の戦闘を見せるんだろうな)
ドアのある壁には大型モニターが設置されていた。
ユウイチの思った通りの使い方をされているのだろう。
部屋を見たユウイチは、ロブやジョナサンが筐体のセットをしている間、自分の機体を作る事になった。
と言っても素人の悲しさ、機体のカスタマイズなどできるはずもなく、市販の機体をそのまま使う事に決定。
使う武器をチョイスするだけで終わってしまった。
そうこうしている内にロブが呼びにきて、筐体に入って冒頭に繋がるのである。
「ユウイチ? 聞いてるか?」
「あ? ああ」
ジョナサンに生返事を返す。
そう聞かれて、まさか「聞いていませんでした」と答えるわけにもいかないのが人間だ。
答えられたジョナサンは、釈然としないのか首をひねっているが。
「いやぁ、それにしても大したものだ」
気にしない事にしたのか、先ほどと同じ言葉を繰り返すジョナサン。
感心している事がよく解る態度だ。
「な、ロブ?」
コンピューターの前に座ってモニターを見続けているロブに同意を求める。
ロブは、ユウイチが筐体から出た後ずっと座りっぱなしでモニターを見ていた。
何か気になるデータがあるようだ。
「確かにそうですね。相手は
「それをわずか15秒で撃破とは……。いやはや凄まじいな」
「まったくです」
お互いを見ずに会話を交わす。
ジョナサンはまだ興奮気味だし、ロブはモニターから目を離さない。
ロブの発言内容からすると、どうやらユウイチの相手は名のある人間だったらしい。
「さすがにプロだからなぁ、ゲーマーに負けるわけにもいかんだろ」
「あそこまで鮮やかな勝ち方をするとは思わなかったんでな」
なにやら嬉しそうだ。
ユウイチは知らない事だが、実はジョナサンはあのデータに負け続けていたのである。
その戦績は、実に36戦全敗。
今回の事は、期せずして敵を討ってもらった形になったのである。
ちなみに、後日この
(確かに鮮やかな勝ち方だったとは思うが、ゲーマーと比較されてもなぁ)
そこまで感心する事かと首をひねりつつ、先ほどの戦闘を回想する。
戦闘の開始と同時に地面にビームライフルと発射したユウイチの機体は、敵に向かってナイフを投擲し、爆風に紛れて跳躍。
ナイフが刺さり、一時的に動きを止めた敵機の後ろに着地し、プラズマカッターを首筋に突き刺した。
その一撃で敵機は爆発。
機動兵器戦のお手本のような勝ち方であったと言える。
「博士! これを見てくださいよ!」
回想を終えたユウイチの耳に、ロブの声が入ってきた。
コンピューターを見ていたロブが、何やら興奮しながらジョナサンを呼んでいる。
と、そこでユウイチは己が目を疑った。
(はぁ?! み、見えねぇ……。何だあの動き……)
ユウイチの目に映ったのは、一瞬でロブの横に出現するジョナサン。
どうやら研究員はデータのためなら物理法則を超えられるらしい。
「何だね? ……リンク係数0.4!! 凄いじゃないか」
「ええ。現役のパイロットでもあるからでしょうけど、極東支部の”彼”を上回ってます!」
「これはユウイチに持たせるモノが増えたな……」
「ですね。是非ともあのシステムを組み込んでもらわないと」
「「ふっふっふ……」」
怪しい笑いを浮かべる2人。
何も知らない人間が見たら彼らをこう呼ぶだろう。
”マッド”と……。
この時、ユウイチは怪しい笑いを聞かぬように、隣の部屋に避難していた。
その行動は迅速の一言。
何故なら彼は、あの笑いを浮かべる人間に近寄ると、ろくな事が無いというのを経験から知っていたのだから。
次の日、ユウイチは手に入れた土産を満載してテスラ・ライヒ研究所を発った。
時を同じく、ジョナサンとロブも研究所を出発。
ジョナサンは北米支部ラングレー基地に、小型化テスラ・ドライブと補給物資を届けるため。
ロブは、極東支部伊豆基地で行われているSRX計画にスタッフとして参加するためである。
こうして再会を約束して別れた3人は、それぞれ別の場所から舞台に上る事となった。
そして……。
ユウイチの帰還に際し、舞台はジュネーブ連邦総司令部に戻る事となる。
そこでは新たなる出演者が登場し、……物語は動き出す。
To Be Continued.....
後書き
何やらわけの解らない話に……。
最初は、「集う出演者<後編>」と考えていたんですが、ユウイチオンリーな話になってしまったので急遽タイトル変更。
それに伴って、2話の後書きも若干修正入れました。
それもこれもジョナサンとロブが出張ったせいです。(笑
『バーニングPT』って細部が結構不透明なんですよね。
なので、細部は某漫画のゲームで補完しました。
どっか作ってくれないかなぁ……『デンジャープラネット』。
本文の最後にも書いたように、次回から物語が動きます。
ユウイチの部隊の初期メンバーも次で全員揃います。
ちなみにこのSS、物語に整合性を持たせるため一部の時間軸が原作より変更されています。
まぁあまり変わらないんですけどね。
原作とは過去が微妙に違うと思ってくだされば問題ありません。
それじゃ、読んでる人は少ないでしょうけどお楽しみに。