『あさー、あさだよ〜。朝ごはん食べて、学校行くよ〜。

おはようございます、祐一さん。さぁ、起きてください。朝ごはんの支度が出来ていますよ』


ピッ!


「う〜む。前半は、逆に眠りに誘っているような・・・」


祐一は、目の前にある目覚まし時計を見ながら、そんな感想を言った。

この目覚ましは、声を吹き込んで目覚ましとするタイプのもので、さしずめVer水瀬親子といったところだ。

昨夜、秋子から渡されて使ってみたのだが、こんなものだとは思わなかった。


「さて、今日から学校だな。レン、お前もいくぞ」


「・・・・・・ねむい」


「使い魔のくせに、眠いというだけで、従わないとはいい度胸だな・・・」


レンは、青を主体とした寝間着に、青のナイトキャップをしている。

眠たげに、ほんの少しだけ目を開けて、こちらを見ていた。


「まぁいい。何かあったら、念話で連絡しろ。じゃあ、俺は行くから」


(コクリ)


レンは、再び眠りに戻り。祐一は着替えると、一階へと降りていった。










宵闇のヴァンパイア



       第一話 初めての学校










「おはようございます、祐一さん。お早いんですね」


秋子が、何時も通りの暖かな微笑で、祐一を出迎えた。

居間には、おいしそうな匂いが立ち込めており。寝起きとはいえ、食欲をそそる。


「あぁ、おはよう。ところで、これで早いのか?遅い方だと思ったが?」


祐一が、時計の方を見ながら、そう言った。

時刻は、7:30。確かに、早いとは言えないだろう。


「えぇ、名雪に比べれば、ずっと早いですよ」


顎に手を当てながら、秋子は微笑を崩さずにそう言った。


「まぁいい。朝食をくれ」


「ご飯にしますか?それともパンにしますか?」


「ん〜、パンでいいや」


祐一がそう言うと、秋子はすぐにパンやコーヒーを準備する。

見事なバランスのとれたメニューで、それなりに手の込んだものだ。


「(パクッ)へぇ、うまい。市販品とも違うみたいだな。自家製か?」


「はい。どうですか?気に入りましたか?」


若干不安げに、秋子が尋ねてくる。


「あぁ、さらに腕を上げたんじゃないのか?」


「! 覚えていてくれたんですか!?私の料理?」


「当たり前だろ。お前の料理はかなり美味かったしな」


祐一の言葉に、秋子はどんどん機嫌を好くしていく。

自然と彼女の、微笑みも強くなっていく。


「じゃあ、今度は自家製のジャ「ジリリリリリリリリリ」・・はぁ、名雪ったら」


うれしそうだった表情から、一転して、やや疲れの見える表情になる。

音源は、二階から。かなり大きな音が聞こえる。この音量では、騒音以外の何者でもない。


「この音は・・・・、もしかしなくても、目覚まし時計か?」


「はい。お恥ずかしい限りです・・・」


秋子は、情けないやら、恥ずかしいやで、祐一に申し訳なさそうに言う。


「しかし、このままでは、近所迷惑だな。起こしてくる」


「あらあら、頑張ってください。名雪は手強いですから」


微笑みながら、秋子は言う。その様子から、手伝うということは無さそうだった。






◆ ◇ ◆








祐一は、ある部屋の前に立っていた。

部屋の中からは、物凄い音がしており。かなり喧しい。


「たくっ、なんて五月蝿さだよ」


扉の前で、祐一は愚痴る。少し、覚悟を決めた後。祐一は、扉を開けた。


ジリリリリリリリリ!!

ピピピピピピピピピ!!

パープー、パープー!!

ファンファンファンファン!!

ズキューン!!ズキュ−ン!!

あえて言おう!カスであると!!


なにやら、おかしな音も混じっていたようだが、名雪の部屋から凄い音が広がった。


「う、うるせぇ〜」


騒音に引きながら、祐一はそう言った。

祐一は、自分が起こしに来た相手。この部屋の主人を探すと・・・・。


「・・・・・・・まぢか?」


「くー」


名雪は、気持ち良さそうに、ベットの上で寝ている。

カエルの人形を、ギュっと抱きしめて、実に気持ち良さそうだ。

この騒音を気にしなければ、普通だったのだが。

この騒音が、全てを別にしていた。

ともかく、祐一は名雪を起こすために、行動に移ることにした。


「おい!名雪、起きろ!!」


「地震だお〜」


ユサユサと名雪を揺さぶってみるものの、効果は無い。

さらに、強く揺すってみる。


「まぐにちゅーど9だお〜」


「・・・・・・」


祐一は、無言で準備運動を始める。

そして、跳躍・・・・。天井ギリギリまで飛び上がり、そのまま右足を突き出したような格好になる。

重力に従って、祐一が落ちてくる。

突き出された右足は、そのまま名雪の首へと吸い込まれていった・・・。


「だぼっ!!」


いつもと違う奇妙な声を出して、名雪が悶絶する。

首を押さえて転げまわり。時折、こちらを恨めしげな目で、見てくる。


「ふぅ、起きたようだな。さっさと着替えて下りてこいよ」


祐一はそう言うと、居間へと戻って行った。





◆ ◇ ◆







「どうでしたか?祐一さん」


「あぁ、起こしたから、そろそろ起きてくるはずだ。」


がちゃ
「う〜、ひどいよ、祐にぃ」


祐一と秋子の会話の途中に、名雪が剣呑な目つきのまま入ってきた。

恨めしげな目で、祐一を睨んでいるが、さほど怖くはない。

秋子は、そんな名雪の姿を見て、かなり驚いているようだった。


「あらあら、夢を見ているのかしら?」


「う〜、どういう意味?」


本気とも、冗談とも取れる態度で、秋子は言い。

そんな秋子の言葉に、名雪はますます不機嫌になる。


「いいから、さっさと飯を食え。遅刻するぞ」


祐一の言葉どおり、時刻は8:10を過ぎていた。





◆ ◇ ◆







「さむ〜。なんて寒さだ」


「そんなことないよ。今日は暖かいほうだよ」


外に出て、祐一の第一声に、名雪が反論する。

ようやく、食事も終わり。祐一と名雪は、学校に行くことになった。


「遅刻まで、あと何分だ?」


「え〜っと、あと5分かな」


「ここから、ガーデンまで走って何分だ?」


「10分かな・・・・」


間違いなく遅刻である。


「祐にぃ、ふぁいとだよ」


「気が抜けるな・・・・」


名雪の言葉に、祐一はげんなりとしながら、返答した。


「仕方がない・・・」


そう言うと、祐一は名雪の腰に手を回す。


だ、だめだよ、祐にぃ。そんないきなりなんて・・。初めてはベットの上が・・・


「何言ってやがる」
ごすっ!!


「だおっ!!」


祐一は、暴走し始めた名雪に、拳骨を食らわせると、そのまま名雪を小脇に抱える。


「さぁ、急ぐぞ!!」


そう言うと、祐一は跳躍した。






◆ ◇ ◆








私の名前は、美坂 香里。ガーデンの高等部二年生。

私には、誰にも言えない・・・。誰にも言ったことのない、悩みがある。

それは・・・・。


ザワザワ・・・・


? どうしたのかしら?周りが、急に騒がしくなったけど・・・。

え?上?

私が上を、見上げると・・・・。


「祐にぃ!パンツが見えちゃうよ〜!」


「我慢しろ、見られて減るもんでも無し」


な、名雪!?なんで男の人に、小脇に抱えられてるの!?

それに、なんで宙を舞ってるの!?

私の疑問をよそに、二人は私から50メートル先にある、校門前に着地した。

ともかく、周りから注目を浴びていて、声をかけるのは少々恥ずかしいけど。

声をかけてみることにした。


「名雪!」


「あ!香里〜。おはよ〜」


相変わらず、気の抜けた声で、名雪は私の名を呼ぶ。

名雪の隣にいる男の人は、目だけでこちらを見ている。

顔立ちは、けっこういい。髪の毛は肩ほどまで、無造作に伸ばされている。

初めてみる顔だから、ここの生徒では無い。あるいは、転校生か・・・・。


「珍しいわね。名雪が、遅刻しないなんて・・・。天変地異の前触れかしら?」


「酷いよ、香里〜。極悪だよ〜」


「何が酷いんだよ。俺がここまで、直線距離で走ってこなかったら、遅刻してただろうが」


「だお〜」


男性の言葉に、反論できないのか。名雪は、唸るばかりだ。


「ねぇ、ところでこの人・・・誰?」


「俺も、美人の名前は気になるな」


「「え!?」」


男の人の言葉に、自然と頬が赤くなるのを感じた。

名雪の方は、逆に不機嫌そうな顔になる。


「俺の名は、相沢 祐一。君は?」


「あ、わ、私は美坂 香里です。はじめまして」


男の人(相沢 祐一というらしい)に、慌てて名乗る自分は、目に見えて慌てているだろう。

はっきり言って、物凄く情けない・・・。何時もの私らしくない。


「美坂 香里ね・・・・。香里でいいか?」


「は、はい!」


「うむ。では、俺も祐ちゃんと呼んでくれて構わないぞ」


「そ、それは遠慮しておきます」


私がそういうと、彼は目に見えて残念そうな顔になる。

本気だったのかしら・・・・?


「私の方は、相沢さん。とお呼びします」


「ん〜、せめて君にならないか?同い年なんだし」


「え!?・・・・同い年なの?」


これには驚いた。立ち振る舞いとか、凄く年上に見えるのに・・・・。

言動は・・・・もっと年下に見えるけどね・・・。


「うむ。ピチピチの17だぞ」


「ピチピチなんて使っている時点で、物凄く怪しいんだけど・・・」


「ふっ、細かいことを気にするな。

そんなことより、そろそろ時間もやばくなってきたぞ」


相沢君が、校舎に取り付けられている時計を、指差しながらそう言った。

気がつけば、周りにいた生徒たちも、ほとんどいない。


「やばい!急ぐわよ、名雪!!」


「OKだお〜」


「じゃあ、俺は職員室に行くから」


相沢君は、職員室に行くようだけど、・・・・・道が逆のように見えるのは、気のせいだろうか?

とはいえ、本当に時間がやばいので、教えている余裕は無い。

無事、たどり着けることを祈っておこう。・・・・・・本当に祈るだけだけど・・・。






◆ ◇ ◆








「迷った・・・・」


おっす。オラ、相沢 祐一。今日から『カノン』のガーデンに通うことになった、ナイスガイだ。

実は、現在遭難中だ。・・・・・校舎の中で(泣)

一向に、職員室にたどり着かない・・・。ここは樹海か!?(そんなわけない)

う〜む。どうしたものか・・・・。

このままでは、態々名雪のスカートの中身を全開にしながら、ここまで一直線で着た意味が無くなってしまう。


「誰かに、道を尋ねるのが、一番いいんだが・・・・」


廊下を見渡しても、歩いている生徒なんて一人もいない。

それも当然か、今はHRの時間だしな。歩いていたら、完璧に遅刻者だぞ。


「も〜、舞ったら。寝坊しすぎだよ〜」


「ゴメン、佐祐理」


すばらしい。なんて都合のいいタイミングなんだ。

遅刻者が二人。しかも二人とも美人とは、日ごろの行いがいい成果だな。


「すまない。ちょっといいか?」


「はい?」


「・・・・?」


俺が声をかけると、二人はこちらを向いて、俺を見る。

最初に返事をした方は、金髪のストレートで、緑のチェックのリボンをしている。

顔立ちも、かなり美人で。つられて微笑んでしまうような、綺麗な笑顔だ。

プロポーションも、制服の上からだが、中々よさそうだ。

後者は、無言でこちらを見ている。

黒髪をポニーテイルにしていて、藍色のリボンをしている。

顔立ちは、凛とした美女であり。表情は、無表情だが、そこが綺麗とも言える。

プロポーションは、制服の上からでも分かるぐらい。かなりいい。


「実は職員室に行きたいんだが、迷ってしまって、道が分からないんだ。

すまないが、道を教えてくれないか」


「あははー、かまいませんよ〜」


「・・・・(コクリ)」


二人は、快く快諾してくれたようだ。


「じゃあ、行きましょうね〜」


「え?いや、道を教えてくれるだけでいいんだが・・・」


「いいんですよ〜。佐祐理たちも、遅刻が決まっていますから〜」


朗らかな笑顔で、そう言われてしまった。

まぁいいか、美人と歩くのは、嫌じゃないしな。


「あ、そういえば、自己紹介がまだでしたね〜。

佐祐理の名前は、倉田 佐祐理って言うんですよ〜。このガーデンの高等部、三年生なんです」


「・・・・川澄 舞


むむ、先に自己紹介をされるとは、英国紳士として(英国生まれじゃないけど)あるまじき行為・・・。

ここは、すんばらしい自己紹介をせねば。


それがしの名は、シャア・ア○ナブル。赤い彗星と呼んでくれ」


「分かりました。よろしくお願いします。赤い彗星さん」


「・・・・三倍?」


「・・・・・冗談だ。相沢 祐一、今日からこのガーデンの高等部、二年だ」


「はえ〜、冗談だったんですか〜。じゃあ、祐一さんとお呼びしますね」


「・・・・祐一」


くっ、あっさり受け入れられるとは思わなかった。

しかも、何気に舞の奴は知ってるっぽいし・・・。

それにしても・・・、川澄 舞か・・・・。どこかで聞いたことがあるんだけどなぁ〜。

う〜ん、う〜ん、思い出せん。・・・・歳か?


「はぇ?どうかしたんですか、祐一さん?」


「いや、何でもない。じゃあ、俺は佐祐理、舞と呼ばせてもらうぞ」


「はい」


「・・・・(コクリ)」


それから、三人で談笑しながら職員室まで歩いた。

最後に、佐祐理から昼食のお誘いまで受けてしまった。実に楽しみだ。


ちなみに、職員室まで角を二回曲がっただけで到着した。

自分の新たな一面を見た気分だった。






◆ ◇ ◆








「じゃあ、ここで待っててくれ」


そう言うと、男は教室に入っていった。

男の名は、石橋いしばし 堅剛けんごう。俺の担任らしい。

中々の実力者のようだ。・・・・どうでもいいことだが。


「あー、今日はお前らに発表がある」


そういうと、教室内の声が、少し騒がしくなる。


「急な話だが、今日から転校生が来ることになった」


ウォォォォォォォォ


明らかに、野郎の声だ。男になんぞ歓迎されても、悲しいだけだが・・・。


「ちなみに、男だ」


シーン


いきなり、静かになった。

男に歓迎されても悲しいだけだが、こうも静かだと、少し寂しい・・・・。


「さぁ、相沢。入って来い」


ガラッ


石橋の言葉に従って、教室に入ると・・・・・・見知った顔が三人・・・・・。

教室の窓際、後ろの方に、名雪と香里の姿が見える。

名雪は、実にうれしそうに、手なんか振ってくる。

香里の方も、口元に笑みを浮かべながら、軽く手を振っている。

最後の一人は、教室のど真ん中の列の、一番前に座っている。小学生・・・・もとい、あゆだった。

かなりびっくりした表情で、こちらを凝視している。

ともかく、名雪がずっと手を振ってくるので、返してやることにした。

すると、教室の男子から、明らかな敵意が向けられる。

やれやれ・・・・。


「自己紹介をしてみろ」


「えー、相沢 祐一です。ガーデンには初めて通うので、よろしくお願いします」


とりあえず、無難な自己紹介をしておく。

とはいえ、今までガーデンに通ったことが無いというのは、さすがに驚かれたな。

いきなり、ガーデンの二年から入学する奴なんて、かなり珍しいだろうからな。(というか、いない)


「よし、じゃあ相沢の席は、空いてる席だな」


ざっと見渡して、石橋がそういった。

随分といい加減な扱いを、された気がするが・・・・。

空いている席は、前が名雪、横が香里だった。

狙っているとしか思えない。


「普通の自己紹介だったわね」


香里が、俺の自己紹介に感想を言ってきた。

一体何を期待していたというのか?

悪いが、そうそうネタは出てこないのだ。作者の頭ではな。(ほっといてくれ)


「ま、いいじゃないか。俺には、そこまでの芸人根性は無いんだ」


「そう?まぁ、相沢君らしいけど」


「どういう意味だ?香里」


「言葉通りよ」


いや、意味が分からんぞ。という言葉を目一杯言ってみたが、香里は変化なし。

俺の心の叫びは、香里には聞こえなかったようだ。


つんつん


「ん?」


誰かが、俺の背を突付いてきた。

振り向くと・・・・アンテナがあった。


「よう、転校初日から目立ってるな、お前」


「あ、アンテナが喋った!?」


アンテナが、いきなり気安く喋りかけてきた。

なんだこれは?・・・・九十九神か?


「誰がアンテナだ!!俺は人間だ、視線を下げろ!!」


言われたとおり、少し視線を下げると、人間の顔があった。

どうやら本当に人間らしい。


「はははは・・・、冗談に決まってるじゃないか・・・」


「俺の目を見て、言ってみろ!!」


やれやれ、受信機のくせに細かいことを、気にするなよ。


「おい。今、アンテナって考えなかったか?」


「いや、考えてないぞ」


そう、アンテナとは考えてない。俺が考えたのは、受信機だ。


「北川君も、それくらいにしておきなさい。

彼に悪意は無いのよ。ボケるのは、彼の本能なんだから」


「おい!十分かそこら前に、初めて会った俺に対して、いきなり本能がどうとか、言うなよ!!」


あながち、間違ってないんだけどね。(笑)


「あら?私の考察が間違ってたかしら?」


「いや、合ってるぞ」(きっぱり)


はっ!しまった、つい本能的に答えてしまう。


「いや。お前、本当に変わってるな」


「アンテナがそんなことを言ってくる」


「アンテナじゃねぇ!!・・って言うか、何だその説明口調は!?」


俺の言葉に、アンテナ(仮)が騒ぎ出す。まったく五月蝿い奴だ。


「だって、俺はお前の名前知らないし。クラスの皆に真実をと・・・・」


「俺は、北川 潤だ!!覚えとけ!それに、何が真実だ!!!」


「○川 淳二?特技は、怪談話か?」


「ちがーう!!北川 潤だ!!」


「はははは、さすがに冗談だ。北川君」


「はぁ・・・、北川でいい・・・」


若干の疲れを見せながら、北川は言う。

ふっ、勝ったな(なにが!?)


「ところで、何で俺が目立ってるんだ?」


「あぁ。今朝の登校だよ。ほら、水瀬を小脇に抱えて飛んできただろ」


「あれか。別に飛んできたわけじゃないぞ。屋根伝いに、走ってきただけだ」


それでも、十分凄いし。目立つだろぉが!という、呟き(?)が聞こえた気がする。


「それで?」


「さらに!二年トップにして、クールビューティーとして有名な、美坂と仲良さげにしているんだぞ!!

十分過ぎるほど、目立つ要素が揃ってるだろうが!!」


なるほどねぇ。そういったことで目立つのか。

とはいえ、そこそこの実力者だとは思っていたが、香里が二年トップだとはな。

まぁ、美人だって言うのは認めるけどな。


「おい。お前ら、いつまでも喋ってるんじゃないぞ。

午後からは、実技訓練を兼ねた、ランク測定を行うからな。準備しとけよ」


石橋は、それだけ言うと出て行った。

はて?ランク測定って何だっけ?


「なぁ、香里」


「何?相沢君」


「ランク測定って何だ?」


「は?」


むむ。香里が、何を言ってんだこいつは?見たいな目で見てくる。

しょうがねぇだろ。知らないものは、知らないんだから。


「はぁ。ものを知らないにもほどがあるわよ。

いい?ランクって言うのは、その人の強さを表すのよ。

このランクが高ければ高いほど、ギルドとかから任される仕事も、いいのが来るわ。

ランクには、E〜SSまであって、D〜Aまでには+と-が付くから、全十一段階で分けられるわ」


ほほぅ。そんなものがあったとは、知らなかった。

なるほど、確かにこれがあれば、死ぬ奴も減るだろうな。

高額の報酬に目が眩んで、実力が無い奴が仕事に挑む場合が、あるからな。

それを防ぐためだろう。確かに便利だ。


「ところで、昼食はどうするの?私たちと一緒に学食に行く?」


「あ〜っと、残念だが先約があるんでな」


「先約?」


「うむ。上級生二人だ。ちなみに、二人とも美人だったぞ」


ピクリ。と、香里と名雪のこめかみが動いた。


「いつ知り合ったのかしら・・・」


「今日、職員室への道を尋ねたんだ。その時、お誘いを受けた」


「ダメだよ祐にぃ〜。極悪だよ〜」


「何がダメなんだよ?」


「う〜、祐にぃの今日の晩御飯は紅生姜!

紅生姜のご飯に、紅生姜の汁を飲んで食べるの」


阿呆か、こいつは?そんなことを秋子が、許すわけないだろ。

仮に許したら、俺は水瀬家を出て行くぞ。


「そうだよ!いきなり上級生を相手にするなんて、ふけつだよお兄ちゃん!!」


「む!出たな、『強襲型盗人娘』あゆあゆ!!」


「うぐぅ!!ボクは、『きょうしゅうがたぬすっとむすめ』あゆあゆじゃないもん!」


「ふっ、そういう反論はな。漢字で言えるようになってからだ!!」


「うぐぅ・・・」


俺の言葉に、あゆは何も言えなくなったみたいだ。


「ともかくだ。俺は二人のところへ行くから」


と言って、俺が教室を出て行こうとすると・・・・・。


「「「私も(ボクも)行く!!」」」


はい?






◆ ◇ ◆








「・・・・と、まぁそういうわけで、こいつらがついて来たんだけど・・・。いいかな?」


「はい。佐祐理は構いませんよ」


「別に構わない」


うむ。やさしいのぉ・・・。


「まさか、お誘いを受けたのが、倉田先輩だなんてね」


「? 知ってんのか?」


「当たり前よ。この学園で、もっとも強いとされる川澄先輩と、この国の名士である、倉田家の一人娘である倉田先輩は、この学園で一番有名なコンビよ」


確かに、それだけの二人の上に、美人とくれば。目立たない方がおかしいな。


「ところで、そいつは誰?」


「僕ですか?」


俺が目線を向けた先には、よく言えば中性的な顔立ち、悪く言えば女顔の少年がいた。

身長は、香里ほどで。さらさらの金髪で、線の細い体だった。


「僕は、倉田 一弥。倉田 佐祐理の弟ですよ」


「へぇ、佐祐理には弟がいたのか」


「はい!佐祐理の自慢の弟なんですよ」


うれしそうに、佐祐理が答える。


「倉田君は、強いわよ。一年ではトップの実力者なんだから」


「ほぉ。それはそれは・・・」


「そんな・・・美坂先輩、褒めすぎですよ。まだまだ未熟者です」


どちらが、正しいかと言われれば、恐らくは香里の方が正しいのだろう。

俺の見立てでは、一弥に勝てるのは、香里と舞と佐祐理ぐらいだろう。

無論、俺には勝てないことは、言うまでもない。


「そういえば、ランクで言うと、どのくらいなんだ?」


「倉田君はB-で、私と倉田先輩がB+。川澄先輩がA-よ」


「なるほど・・・。なら名雪はC+で、あゆはC-ってところか?」


「わっ!合ってるよ。どうして分かったの?」


「まぁ大体の、実力を測って予測しただけだ」


「じゃあ、相沢君はどのくらいなの?」


香里が尋ねてくる。

むぅ、なんて答えるべきか・・・・・。正直に言えば、SSなんて目じゃないが・・・。


「う〜ん。A+くらいかな・・・・」


「「「「「えぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」」」」」


めちゃくちゃ驚かれた・・・。失礼だぞ!お前ら!!


「それじゃあ、川澄先輩より強いって言うの!?」


「まぁな。今の舞じゃあ、俺には勝てないよ」


俺がそう言うと、一様に驚きの表情だ。本当に、失礼な奴らだな。


「まぁ、それが本当か嘘かは、午後にハッキリするわね」


「ぜひ、教えてくださいね。美坂さん」


「えぇ、真実をお教えします」


「お前ら、信じてないだろ・・・」


「気のせいよ」


くぅ、こいつらぁ!目にもの見せてやる!!


「よぅし!分かった。もし、俺がA+じゃなかったら、香里と佐祐理の言うことを何でも聞いてやる。

ただし!!もしも、本当だったら、俺の言うことを何でも聞いてもらうぞ!!」


「いいわよ。本当だったらね」


「佐祐理も、いいですよ」


くっ!こいつら、そんなことあるわけないと、思ってやがる!!


「くっそー!絶対A+になって、恥ずかしいお願いをしてやるからな!!」


ビシィ!と、指を突きつけて言ってやるが、こいつらは余裕の笑みすら浮かべてやがる。

くそう!午後に、目にもの見せてくれるわ!!







 
To Be Continued.....








あとがき


どうも、放たれし獣です。

第一話、如何だったでしょうか?

今回は、地の文がほぼ、誰かの視点でお送りしたんですが、私的には書きやすかったですね。

皆さんは、如何だったでしょうか?ぜひとも感想をいただけるとうれしいです。

次回は、ランク測定です。祐一は、A+をとれるのか?佐祐理と香里は、恥ずかしいお願いを受けるのか?

そこら辺を、楽しみにしてもらいたいです。

それではまた、次回。ご意見、ご感想をお待ちしています。







管理人の感想

 初っ端から話題を振り撒いている祐一くんです。

 それにしても、クラスメイトは名雪やあゆの呼び方に何も言わないんでしょうか?

 同じ歳なのに「兄」と呼んでいるのは、結構な違和感ではないかと思うのですが。

 ランクというのは狙って取れるものなのかなぁ。

 A+以上なら分かるのですが、ピッタリA+を取れるのかどうか。

 そんな疑問は次回に期待しましょう。


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