二つの月と星達の戦記

プロローグ

 

 

 

 

 

 あれから、どれくらいの月日が流れただろう―――

 

 

 穏やかな風が流れる草原。

 その草の絨毯に寝転ぶ少年がいた。

 

「は〜……楽しかった。

 なぁ?」

 

 満足げに笑う一人の少年。

 黒髪の、明るい少年だ。

 

「なぁ、と言われてもな。

 殆どお前一人だけで楽しんでただろ、アレは」

 

 その隣にやってきたのは金色の長い髪を靡かせた、深紅の瞳をした少年だった。

 どこか大人びた雰囲気と、品位を感じる。

 寝転ぶ少年とは対照的と言っても良い。

 

「まったくです。

 皆さん呆れていらっしゃいましたよ?」

 

 更に一人の少女が現れる。

 銀色の長く美しい髪を靡かせた、アメジストの様に綺麗な瞳をした少女だ。

 寝転ぶ少年を窘める様であるが、でも今が幸いだと思う少女。

 

「まあ、あんなのやってて許されるのは今の内だからね。

 今楽しめる事は今やっておかないと」

 

 なんの悪気もなく、そんな事を言う少年。

 満面の笑みで。

 どこまでも無邪気に。

 

「まったく」

 

「相変わらずですね」

 

 そんな少年を見て、何時の間にか笑みを浮かべる二人。

 どんな事であれ、今は楽しい時間なのだ。

 

 

「……あと少しで、もう3人でこんな事はできなくなるのか」

 

 暫くして、先ほどまで無邪気な笑みを浮かべていた少年がポツリと呟いた。

 隠し切れぬ寂しさを含ませて。

 

「……そうだな」

 

「そうですね……」

 

 静かに同意する二人。

 静かに、ただ静かに。

 

 風の吹く草原に、沈黙が降りる。

 そして、失われ行く時間に悲しみが満たされてゆく。

 

 しかし、そこにあったのは、寂しさだけではなかった。

 まだ弱く、小さくあるが、確かにある光。

 

「片や雲の上とも言える貴き場所へ。

 片や事実、雲の上たる高き場所へ、か」

 

 少年は呟く。

 自嘲ととられてしまうかもしれない笑みで。

 しかし、純粋に二人を称え、誇るものとしての笑みを浮かべながら。

 

「ああ、その中でもトップに立つつもりだ。

 そして、俺は俺の理想を実現させる」

 

「ええ、私もその場所でも最高位に立ちます。

 私はそこで、全てを見守しましょう」

 

 二人は自尊も、驕りも、躊躇も無く。

 ただ、それこそが自分であると言う様に応えた。

 少年にこそ誇る様に。

 

「そして、お前も来るのだろう?」

 

「そうですよね? 全てを夢で終らせない為に」

 

 大凡、この世界における最高位の二つに立つという二人が、それでも尚平等であると言える場所。

 誰でもなれる可能性がありながら、この二人の場所よりも難しい高み。

 そんな場所に立つ―――そう言う存在に少年はなると誓った。

 

「ああ、なるさ」

 

 寝たままの少年が手を伸ばすのは昼間でも大地を見下ろす純白の月。

 手を伸ばせば届きそうでありながら、決して届かぬ場所。

 だが、それでも―――

 

 と、そこへ、2つの足音が聞こえてくる。

 3人がよく知る者であり、3人をよく知る2人の少女の足音だ。

 他の者では決して見つけられなくとも、あの2人ならば、この場所を、この3人を見つけられる。

 そんな2人の足音を聞きながら、少年は笑みを浮かべながら告げる。

 

「そんでもって、そうなった日にはまた俺達、あの2人も一緒に、5人集まって騒ごう。

 あの場所を貸しきって」

 

 

 けど、その場所で、もう一度会う為に。

 

 あの日の語った夢をこの手で掴む為に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれから、月日は流れ。

 そして、今ここは皇国からは辺境に位置するクリオム星系。

 この果てしない宇宙に浮かぶ3隻の戦艦があった。

 

 その艦隊の旗艦。

 指令席に座る一人の男。

 

「はぁ……クーデターか……」

 

 誰にも聞こえない様に呟く男。

 黒髪の若い男だ。

 一応にもこの艦隊の司令官を務めているが、とてもそんな風には見えない。

 その外見から覗える年齢もそうだが、雰囲気そのものが。

 

 だが、今はどこか暗く沈んでいる様であった。

 

「タクト……大丈夫か?」

 

 副指令であり、彼の友人である男、レスター・クールダラスが声を掛ける。

 これも、他の者には気付かれない様に。

 今、司令官タクト・マイヤーズが暗い原因を少しだけ知る者として。

 

「ああ、大丈夫だ。

 しかしまあ、いきなりクーデターが起きるなんてな。

 トランスバール本星は今どうなっているんだろうか」

 

 レスターに返事をした後、タクトはその前とは打って変わって軽く、そう皆に聞こえる様に口に出した。

 彼の本来の普段通りの様に。 

 

「皇王ジェラール陛下はご無事なんだろうか。

 『白き月』におられる『月の聖母』シャトヤーン様は……

 情報収集しようにも、第2方面軍の司令部と連絡が取れない。

 たかが駐留艦隊の司令官の身としては、情勢がハッキリするまで待つしかないか」

 

「……おい、タクト」

 

「まあ、こんな辺境にまでクーデター勢力が来るのは時間がかかるだろうし。

 今はのんびり待機していよう」

 

「タクト。

 タクト・マイヤーズ司令」

 

「なんだいレスター?

 そんなに何度も呼ばなくても聞こえてるよ」

 

「お前はこの非常時に、なにをそんなにのんびりしている。

 少しは緊張感というものを持ったらどうだ?」

 

「心外だな〜。

 皆が緊張しすぎない様になごやかなムードを演出してたのに」

 

 邪気無く笑みを浮かべるタクト。

 それをみて呆れながら溜息を吐くレスター。

 

 この変わり身、半ば演技だろうがそれでも呆れるしかない。

 先までの暗く沈んだ感じのあるタクトなどもっての外と考える一方で、普段通りだと緊張感が無いとも思う。

 

「和める様な状況か?

 クーデターが起きたんだぞ? 

 早い話が戦争だ」

 

 タクトに対し、半ば反射的にそう突っ込みを入れてしまったレスター。

 しかし、言ってから自分の発言がどう言う意味かを思い出す。

 そして、慌ててタクトの様子を覗った。

 また、先の様に沈んでいるのではないかと。

 

「解ってるよ。

 でも、俺達がじたばたした所で状況が変わる訳じゃないし。

 それに、俺達軍人でも実戦の経験がある人は少ない。

 なら、休める時に休んだ方がいいだろう?」

 

 レスターの心配を他所に、タクトは普段通りの緊張感の無さを見せつける。

 

 が、それが殆ど演技である事は、付き合いの長いレスターだけは気付いた。

 全身が緊張という言葉を知らない風でいながら、今は瞳の奥にだけ、何か暗いものが映っていたから。

 

「お前は仮にも司令なんだからな、もっとシャキっとしてくれ」

 

「大丈夫だよ、皆言われなくても情報収集はしてるし。

 俺もその時になれば全力を尽くすさ」

 

「はぁ……お前のその気楽な性格はときどき羨ましい」

 

 確かに緊張は解す事ができただろう二人の会話。

 中にはタクト・マイヤーズの司令としての在り方に疑問を抱く声もある。

 だが、タクトは気にすること無く、気楽に待機を堪能しようとしていた。

 

 本当に全力を尽くさねばならない『その時』に備えて。

 

 

 

 

 

 それから少し時間が流れた。

 だが、ここ、辺境のクリオム星系の駐留軍には何の変化も無い。

 

「……おや? もうこんな時間か。

 そろそろ何かあってもよさそうなんだけどな」

 

 クーデターの情報があってから経過した時間。

 それを考えても『何か』が起きるくらいの時間になっている。

 そう、それがどのような方向性のものだとしても、『何か』は。

 

「オペレーター、司令部との交信はまだか?」

 

「依然沈黙したままです。

 周辺の星系の駐留軍とも連絡をとっているのですが。

 まだ何処からも応答が……」

 

「そうか、クーデターの影響か……

 トランスバール本星に正体不明の武装勢力が侵攻したというのに。

 肝心の情報が入ってこない」

 

 焦っている様子すらあるレスター。

 それもそうであろう。

 軍にとって情報は人に例えるならば血に等しいほど重要なもの。

 それが滞ったなら、軍としての機能が失われる。

 

「そう焦るなよレスター。

 それに、正体不明じゃない。

 少なくとも首謀者は解っている」

 

「……そうだな」

 

 レスターは、また少ししまったかと思ったが、これからはそうも言えんと思い直し、あえて続けた。

 

「ああ……エオニア皇子か……

 まさか生きていたとな」

 

「皇子じゃないぞ、レスター。

 エオニアは5年前に追放され、その時に皇族の地位も剥奪されている」

 

 複雑な表情を見せるタクト。

 何故複雑なのかは、レスター以外ここで解る者はいない。

 

「しかし、生きているだけでも驚きなんだがな」

 

 皇国からの追放、それは死を意味したはずだった。

 何も無い宇宙を漂流しろというのに等しいのだから。

 

「そうだな。

 人が皇国の外でも生きていけるという証明なのだな……

 まさか、こんな形で帰って来るとは」

 

「そうだな……」

 

 エオニアという人物をよく知らないレスターであるが、少なくともエオニアが皇国を恨んでいるだろうとは考える。

 追放の理由は明確にされていないが―――いや、それ故にいろいろと想像してしまう。

 場合によっては、本当に向こう側が正義という可能性すらあると―――

 

 その時だった、艦内に警報が鳴り響く。

 普段使われない警報音。

 いや、この艦が出来てから初めての警報かもしれない。

 

「何の警報だ!」

 

 タクトの目つきが変わる。

 普段の軽い感じやゆるさなど跡形も無い。

 

「前方から所属不明の戦闘機らしきものが急速に接近中。

 無人哨戒機が発見しました」

 

 緊張と、少し怯えが見えるオペレーターの報告。

 そして、艦内には今までよりも更に緊張が渦巻く。

 

「所属不明?」

 

 レスターも何時もより更に真剣に問う。

 この皇国内で所属不明の機体とは何かを。

 

「戦闘機の後方に多数の艦影を捕捉。

 無人哨戒機からの情報によりますと、戦闘機と艦隊はまっすぐこちらに向かって来ている様です」

 

「今こちらのレーダーでも確認しました。

 先行する3機は大型の戦闘機です」

 

 矢次に飛んでくる報告。

 艦橋は半ばパニックに陥っていた。

 そこへ、

 

「全艦、第一種戦闘配備に移行。

 直ぐに迎撃の準備をしろ。

 ただし、命令があるまで攻撃はするなよ」

 

「了解、全艦、第一種戦闘配備を通達」

 

 凛とした声が響いた。

 最初、復唱したレスター以外、誰のものなのか解らぬほどの。

 

「……どうした?」

 

「はっ、も、申し訳ありません!

 全艦に通達、第一種戦闘配備!」

 

 慌てて動く艦内。

 その中、タクトはレーダーに映る戦闘機を眺めていた。

 

(この速度……)

 

 戦闘機の接近速度はかなりの高速だった。

 普通の戦闘機ではまず出しえない程の。

 

「未確認機の映像きました。

 メインスクリーンに出します」

 

 オペレーターの報告の直後、メインスクリーンに映し出されたのは3機の戦闘機。

 それぞれ形も武装も違う3機。

 だが、どの機体も共通する紋様がある。

 それは装甲に描かれているエンブレム。

 その紋章は―――

 

「戦闘機を攻撃対象から除外しろ」

 

 それを見たタクトは即座に命令を下した。

 この戦闘機への攻撃は在り得ないが故に。

 

「なに? タクト、あの機体を知っているのか?

 どこかで見た紋章ではあるが」

 

「ああ、だから除外を。

 間違っても撃つな」

 

「了解」

 

 レスターはまだ理解できていないが、タクトを信じて命令を下す。

 だがそこへ、裏付けが来た。

 

「未確認機から緊急通信が入りました」  

 

「すぐにこちらにまわしてくれ」

 

「は、はい」

 

 タクトの迷いの無い即答に、驚くオペレーター達。

 こんな敵か味方かもわからぬ相手の通信を迷い無く取るなど。

 そして、未確認機との通信回線が開いた。

 

『すみません、そちらはクリオム星系駐留軍で間違いないでしょうか?』

 

 艦橋に響いたのは若い女性の声だった。

 そして、モニターに映しだされるのも、その声通りの可愛らしい少女。

 ピンクの髪に花の髪飾りをした少女だった。

 

「ええ、間違いないですよ」

 

 通信の主に皆が面食らっている中、タクトだけは平然と応える。

 むしろ、当たり前だと言う様に。

 

『では、タクト・マイヤーズ司令という方はいらっしゃいますか?』

 

「マイヤーズは俺だけど……

 っ! 君! 後ろ!」

 

 返答の途中、タクトは未確認機の後方の艦隊からミサイルが発射されているのを見た。

 それを何とか伝えんと叫ぶ。

 

『え? きゃ〜〜!』

 

 通信から聞こえる爆音。

 そして、通信が少し乱れた。

 

「未確認機被弾。

 後方の艦隊からの攻撃です」

 

「何? 後方の艦隊は同じ部隊ではないのか?」

 

 その事実に驚くレスターとオペレーター達。

 そんな中、タクトは一人後方の艦隊を睨んでいた。

 

『こんな所に敵がいるなんて聞いてないよ〜』

 

 戦闘という緊迫した状況のなか、やや間の抜けた声が響く。

 だが、その言葉の中の一つの単語をタクトは聞き逃さなかった。

 

「敵? じゃあ、アレはクーデター軍なんだな?」

 

『そうよ! クーデター軍の艦隊。

 いいからさっさと助けてよ!』

 

 タクトの問いに応えたのはもう一機のパイロットだろう金色の髪を靡かせた少女だった。

 

「ああ、解ってるよ。

 総員戦闘準備! 敵、クーデター軍艦隊」

 

 何の躊躇も無く命令を下すタクト。

 レスターすら反応できないくらいに。

 その声に一番に反応したのは、未確認機3機の最後のパイロットだった。

 

『おお、凄い決断力だねぇ。

 なるほど、これは見所あるじゃないか』

 

 通信を開いたのは紅い髪の女性。

 3人の中では唯一軍人らしいと言える女性だった。

 

「それはどうも。

 ではとりあえず名前を教えてもらえるかな?

 ムーエンジェル隊の紋章機パイロット諸君」

 

「ムーエンジェル隊?! 紋章機だと!! 何故此処に!?

 いや、それよりクーデター勢力がこんなに早くここまで来たのか!」

 

 タクトの言葉に驚愕するレスターとオペレーター達。

 

 ムーエンジェル隊といえば『白き月』の近衛隊。

 そして紋章機といえば、ロストテクノロジーの結晶である機体。

 宇宙最強と言っても良い戦闘機だ。

 

「こちらでも照合終りました、間違いなく紋章機の3機です。

 GA001ラッキースター! GA002カンフーファイター! GA005ハッピートリガー!」

 

 読み上げられる機体識別コード。

 そして、少女達が乗るこの宇宙で最強たる機体の名前だ。 

 

『私はミルフィーユ・桜葉です!

 ラッキースターのパイロットです!

 精一杯がんばります!』

 

『私はランファ・フランボワーズ。

 カンフーファイターのパイロットよ。

 頼むから変な指揮はしないでよね』

 

『そしてあたしがフォルテ・シュトーレン。

 ハッピートリガーのパイロットさ。

 よろしく頼むよ、マイヤーズ大佐』

 

 ピンクの髪の少女、金髪の少女、紅い髪の女性がそれぞれ自己紹介を済ます。

 そんな中、一つ気になる事があった。

 

(俺の階級を知っているか……となるとやはり……)

 

 少ない情報から今この話の裏にある事を推測するタクト。

 尚タクトは司令という地位に居るからある程度階級が高いのは確定事項だが、軍人の顔、名前、階級の資料はそう簡単に見る事は出来ない。

 勿論直属の部下の人間の名前と階級を把握するのは上官の務めであるし、兵が直接の上官の名前と階級を知ることが出来るのは業務上の都合で当然行われている。

 だが、それ以外でのそれ等の資料は軍内部でも閲覧には許可が必要となる。

 何故なら、簡単に上の人間が解ってしまうと暗殺などの対象になりかねないからだ。

 その為、階級を示す腕章なども、基本的に味方しかいない艦内でも隠しているのが普通であり、現にタクトも階級を示す物は何一つ表に出していない。

 だが、その思考もすぐに中断する。

 敵は目の前にいるのだ。

 

「ああ、よろしく。

 今は敵が前に居るから聞きたい事は全て後で聞く。

 指揮はこちらで出していいのかな?」

 

『いい判断だ、マイヤーズ大佐。

 高速リンク指揮システムは知ってるかい?』

 

「ああ、聞いた事はある。

 が、この艦に積んではいない、転送できるかい?」

 

『お、知っているのかい? そりゃ話が早い。

 今から送るよ。

 使い方は?』

 

「大丈夫だ」

 

『頼もしいねぇ。

 戦闘でも頼むよ』

 

 高速リンク指揮システムとは、紋章機専用の指揮システムの事だ。

 それを、何故辺境駐留軍の司令官が知っているのかは謎ではあるのだが、フォルテ・シュトーレンはそのことを問わなかった。

 戦闘中である事と、彼女なりの予測が立ったからだ。

 

「ああ。

 レスター、状況把握は終っているか?」 

 

「今終った所だ」

 

 ものすごい速度で展開していく状況。

 しかし、副官レスターは仕事をこなしていた。

 スクリーンに映し出されるのは敵味方の配置状況だ。

 前方に並ぶ敵艦隊と、3機の紋章機、3隻の戦艦。

 敵のタイプは駆逐艦タイプ4と巡洋艦タイプ4。

 一見して、こちらが不利と思える数字だ。

 

「……よし、では行こう。

 初の実戦となるが、総員戦闘開始!」

 

『了解』

 

 タクト・マイヤーズ司令官の号令の下、ここに戦闘が開始された。

 これから長きに渡る皇国軍とクーデター軍の戦闘が。

 タクトとレスターにとっての戦争は、此処からスタートする。

 

「ミルフィーユ君は11時の方向の敵を頼む、先に駆逐艦を狙ってくれ。

 ランファ君は12時の方向の敵を中央の敵に一通り攻撃して一度通り過ぎてくれ。

 フォルテ君は、2時方向の敵を頼む」

 

『了解で〜す』

『了解』

『ああ、解ったよ』

 

「1番艦はこのまま全速前進。

 2番艦は2時の方向の巡洋艦を。

 3番艦は1番艦の後に続け」

 

『『了解!』』

 

 即座に攻撃司令を飛ばすタクト。

 その言葉には迷いもなく、的確だった。

 

 まず、足の速いカンフーファイターが一番に敵に接近した。

 

『いくわよー!』

 

 ランファの気合の声と共に攻撃が開始された。

 紋章機の射撃が敵巡洋艦に命中する。

 戦闘機一機の攻撃であるが、紋章機はロストテクノロジーの結晶。

 その攻撃力は高く、一度通り過ぎる間の攻撃だけでも敵戦艦は各部から火を吹くことになる。

 

 更に、高機動の戦闘機であるカンフーファイターの動きに、敵の攻撃はついて来れない。

 雨の様に降り注ぐ攻撃はカンフーファイターを掠るのがせいぜい。

 しかも掠ったとしても紋章機の強固なシールドによってダメージを与えることは出来ない。

 よしんば攻撃が抜けたとしても、その下には通常の艦艇の数倍の強度を誇る装甲がある為に、やはりダメージは与えられないだろうが。

 

 そんな動きで縫う様に12時の方向にいた3隻の戦艦にダメージを与えていく。

 そして、3隻全てに攻撃が終了し、旋回して戻ろうとする時だ。

 

「よし、ランファ君はそのままミルフィーユ君の援護に回ってくれ」

 

『え? ええ、了解』

 

 ランファの攻撃により3隻の戦艦はダメージを負っているが沈んではない。

 それなのに、攻撃を中断して別の敵を狙えという命令。

 ランファは直ぐに意図が掴めなかったが、旋回しながら気付いた。

 既に1番艦と2番艦が、ランファが相手をしていた戦艦を射程内におさめているのを。

 

「攻撃開始!」

 

「了解、攻撃開始!」

 

 戦艦二隻によるミサイルの雨が、ダメージを負って動きの鈍くなっている3隻に降り注ぐ。

 程無く、3隻から爆発が起き、敵戦艦は宇宙の藻屑と化すのだった。

 

 その頃、2時方向の敵もほぼ殲滅を完了していた。

 まずハッピートリガーが接近しながらの攻撃で駆逐艦は撃沈。

 ハッピートリガーの火力の前に、相手は反撃の機会すらなかった。

 それからハッピートリガーは傍にいた巡洋艦と駆逐艦の攻撃を受けるが、半分以上を回避。

 もう半分は当たるも、紋章機ハッピートリガーの装甲に軽い跡をつけるだけに終る。

 

 直ぐに旋回しもう一機の駆逐艦を攻撃、撃破したところに2番艦が到着する。

 ハッピートリガーとの同時攻撃で、既に火を吹いている。

 もう、落ちる頃だろう。

 

『こちらラッキースター、敵を撃墜しました』

 

 そして、11時方向の敵も倒し終えた所だった。

 ラッキースターと、直ぐに合流したカンフーファイターの二機の紋章機の攻撃。

 それに敵戦艦はあっけなく宇宙に消えた。

 

 これで戦闘も終了。

 そう思ったその時だった。

 

「新たな艦影を確認! クーデター軍です!」

 

 艦内に響く敵増援の知らせ。

 現れたのは駆逐艦タイプ2隻。

 出現したのは3時方向、ミルフィーユとランファが戦っている場所の直ぐ傍だった。

 その配置をレーダで見たタクトは直ぐに通信を開く。

 

「ミルフィーユ君、ハイパーキャノンは発射できるかい?」

 

『ええ、撃てますよ』

 

 タクトが尋ねた武装は、ラッキースターの主砲の名。

 そして、タクトが見ているのは増援としてきた敵とラッキースターの配置だった。

 

「では、そこから8秒後に発射してくれ。

 手前の敵に目掛けて」

 

『了解です。

 えっと7、6、5、4、3、2、1……ハイパーキャノン発射ー!』

 

 命令通りに8秒後、ラッキースターから発射されるピンクの光。

 それは、一直線に増援として現れた敵の一隻に。

 

 宇宙に突き進むピンクの光。

 その光はまず、ラッキースターからみて手前の敵に到達し、敵を貫通。

 ―――そして、そのまま突き進み、丁度このタイミングで射線軸に重なっていたもう一隻の敵をも貫通。

 撃沈した。

 

 ズドォォォォンッ!!

 

 宇宙に散る黒き戦艦。

 戦闘開始から僅か数分。

 全ての敵艦隊はこの宙域から消滅した。

 

「ふぅ……やっぱり凄いな、紋章機は。

 俺の指揮なんて必要なかったな」

 

 戦闘結果は大勝と言えるだろう。

 こちらに被害らしい被害は無く、敵を短時間で全滅できたのだから。

 しかし、タクトの表情に喜びという色は薄かった。

 

『何言ってるんだい、いい指揮だったよ。

 本当に初めての実戦かい?』

 

 初の実戦と言う事で、フォルテ達は自分達の力だけで切り抜ける覚悟もあった。

 そして、それが可能な力もあった。

 だが、今回の戦闘は確かに自分達の力であるが、それが最大限に引き出される指揮であった。

 フォルテはそれなりに戦いというものを経験している。

 軽い戦闘であったが、これほど上手く立ち回れたのも珍しいと思っている。

 

「初めてだよ。

 今まではこの皇国内で戦闘らしい戦闘なんて無かったからね」

 

 今まで内紛というような事件はあった。

 だが、宇宙で戦艦同士が戦うなどと言う事は無いに等しい。

 少なくとも、トランスバール皇国が出来てからは。

 

 しかし、その歴史は今変わる。

 今回のクーデターによって。

 元が付くとはいえ仮にも皇族の手によって起きた戦争でだ。

 

「しかし、あの黒い艦隊は一体なんなのだ」

 

 レスターが呟く。

 それも当然だろう。

 これほどの数の艦隊を動かす人員が、一体いつエオニアについたのだろうか。

 

「それが、敵艦をスキャンしたのですが、生体反応はありませんでした。

 最初から無人であったと思われます」

 

「無人艦か……」

 

 人員についての答えは出た。

 だが、更なる疑問が浮かび上がる。

 ならば、それほどの技術、無人艦の製造は一体何処で、どうやって行われているのか。

 少なくとも皇国にそんな技術は無く、生産する工場も存在しない。

 トランスバール本星を襲撃できるほどの数を揃える為の資材もだ。

 

「全部、話してくれるのかい? 俺を呼んでいる人は」

 

 その疑問は、この敵を連れてきたエンジェル隊。

 そして、彼女達を向かわせた誰かこそ、それを知る人であろう。

 

『なんだ、何にも話してないのに、もうそこまで解ってるのかい?

 本当に察しがいいね』

 

「ま、その相手も大体予想がつくけどね」

 

 最初、ミルフィーユはタクトの名を呼んだ。

 ここの司令としてではなく、タクトという人物を指名したのだ。

 そして、タクト・マイヤーズという人物を呼ぶのに、エンジェル隊を使う様な人物。

 更に、この状況で、この場所に居そうな人は一人しかいなかった。

 

「そうなのか?」

 

「ああ、レスターも知っている人さ」

 

 レスターの問い、それだけ答える。 

 その予測に自信はあったが、答えは言わなかった。

 

「兎も角、連れて行ってくれるかい? その人の所へ」

 

『勿論、じゃあ、ついてきて』

 

『行きますよ〜』

 

 元気良く答えるランファとミルフィーユ。

 タクト達は、持ち場を放棄する事を承知で全艦でエンジェル隊について宇宙を移動した。

 

 

 そして、約半日という時間が経過した。

 一行が到着したのは小惑星帯。

 何かが隠れるのにはうってつけの場所だった。

 

「こんな所になにが……」

 

 疑問を口にするレスター。

 だが、タクトはその答えにも大凡の見当をつけていた。

 

(エンジェル隊が単機でここまで来る事は不可能だ。

 するとなると、この場所で待っているのはエンジェル隊の母艦。

 つまり……)

 

 一瞬、その予測される答えに顔を伏せるタクト。

 と、そこに、報告が入った。

 

「レーダーに大型艦らしき反応あり。

 映像出します」

 

 タクトの予測を裏付ける報告。

 そして、メインスクリーンに映しだされたものとは―――

 

「エルシオール……」

 

 アステロイドに影に隠れた美しい戦艦だった。

 ただ、今はところどころに傷を負ってしまっている様だった。

 

「照合出ました。

 近衛軍の衛星防衛艦隊旗艦エルシオールです」

 

「エルシオールといえば、近衛軍の象徴的存在だぞ。

 皇族の儀式や式典などにしか出てこない艦だ」

 

 レスター達が驚くのも無理はないだろう。

 こんな辺境にいて良い船では無い筈なのだ。

 

(平常時ならな……)

 

 エルシオールに付いている傷は戦闘によるものだ。

 エルシオールという艦の平常時の用途からしては在り得ないもの。

 

 更に、護衛艦隊らしきものが2隻見える。

 これは軍で使っている巡航艦だ。

 こちらはエルシオール以上にダメージを受けている。

 

「エルシオールから未確認機が出てきました。

 映像を出します」

 

 警報音と共にオペレータの報告がくる。

 同時にスクリーンに映し出せれるのは青と白の大型戦闘機。

 

「残りの紋章機か」

 

 最早驚く事も無く、レスターが呟く。

 

「トリックマスターとハーベスターか……

 紋章機、ムーンエンジェル隊が勢揃いだな」

 

 滅多にお目にかかれる光景ではない。

 エルシオールにしても、紋章機にしても。

 それが、ここに全て揃っていた。

 ある意味で絶景ともいえる光景だろう。

 

 そこで通信が入った、新たに出てきた紋章機からだ。

 

『エルシオールへようこそ。

 歓迎いたしますわ、マイヤーズ司令。

 私はトリックマスターのパイロット、ミント・ブラマンシュと申します。

 どうぞ、お見知り置きを』

 

 通信画面に姿を見せたのは10歳ほどの少女だった。

 特記すべきは、犬か何か、動物の様な耳が頭に着いている事だ。

 

「ああ、よろしく」

 

 だが、そんな事をさして気にとめること無く挨拶を返すタクト。

 そして、次いで最後の一機からの通信が入る。

 

『……エルシオールにご案内します。

 連絡艇を派遣しますので、搭乗してください……』

 

 ミントよりやや年上かというくらい、碧色の髪の少女だった。

 感情を映さぬ紅い瞳と、色の無い肌をした、物静かな子だ。

 

「ああ、ありがとう。

 その前に君の名前を教えてもらえるかな?」

 

『……ヴァニラ・アッシュ。

 5番機ハーベスターのパイロットです』

 

 タクトの問いに、必要最低限の事だけを答える少女。

 

「俺はタクト・マイヤーズ。

 よろしくお願いするよ」

 

「よろしくおねがいします」

 

 そっけなく、しかし最低限の礼儀だけは欠くことは無く受け答えをする少女。

 このやりとりで、タクトはなんとなく少女の事を理解する。

 事前に持っていた情報と合わせて。

 

「こんな子供がムーンエンジェル隊の隊員なのか……」

 

 先のミルフィーユとランファならまだしも、新たに現れた二人には驚きを隠せないレスター。

 それもそうだろう、ミントとヴァニラはどう表現した所で子供でしかない。

 それが宇宙最強とすら言われるロストテクノロジー結晶たる紋章機に乗っているのだから。

 

「理由は後で説明もあるだろうさ。

 紋章機がどう言うものなのかも」

 

 ムーンエンジェル隊の隊員の方から何か言われる前にレスターを嗜めるタクト。

 通信画面には何かを言おうとして止めた女性がいるのが見えた。

 

『その口ぶりだと知っているのかい?』

 

「ああ、ちょっとね。

 そちらに行くのは俺とレスターだ。

 よろしいか?」

 

 フォルテの問いに簡単に答えるタクト。

 そして、立ち上がり、エルシオールに移る準備をする。

 

「おい、俺もか」

 

「ああ」

 

「仕方ない」

 

 あまり乗り気でないレスターを連れ、タクトは連絡艇でエルシオールへと乗り込んだ。

 

 

「マイヤーズ司令、長旅お疲れさまでした!」

 

「長旅って、半日もかかってないじゃない」

 

「……ようこそ、エルシオールへ」

 

 出迎えてくれるムーンエンジェル隊のミルフィーユ、ランファ、ヴァニラ。

 

「やあ、呼ばれてきたよ」

 

「俺はついでだがな」

 

 通信画面ではなく、直接の対面。

 改めて挨拶を交わす。

 

「さて、お前さんが予想した人物と合っているか、答え合わせといこうかね」

 

「こちらですわ」

 

 そして、フォルテとミントに連れられ、進んだ先にいた人物。

 タクト・マイヤーズを呼んだその人。

 

「もう、気付いておるんじゃろう?」

 

 軍服を着た、年配の男。

 温和そうな顔でありながら、どこか威厳を感じる人。

 

「お久しぶりです、ルフト先生」

 

 つい、笑みを浮かべながら当時の呼び方でその人の名を呼ぶタクト。

 そう、嘗ての師である人の名を。

 

「馬鹿者、何を士官学校の生徒気分でおるんじゃ。

 ワシの今の地位は何か、答えてみい」

 

 ルフト・ヴァイツェンはやや怒った様子で問う。

 既にここは士官学校ではなく、実戦の場であるが故に。

 

「解ってますよ、近衛艦隊の衛星防衛艦隊の統括、ルフト准将」

 

 アッサリと答えるタクト。

 そして、軍人らしい敬礼も忘れない。

 

「うむ、よう知っておったのう」

 

 感心するルフト准将。

 しかし、それにタクトは笑って返した。

 

「マントの下から階級章が見えてますよ」

 

「おっと、カンニングはいかんな、カンニングは。 

 じゃが、相変わらず抜け目がないのう」

 

 階級章が見える状態にあるというのは油断とも言えるが、この男、ルフトの場合わざとちらつかせた可能性もある。

 タクトがそれを捉えると考えて。

 

「お褒めに預かり光栄です」

 

「ふ、まったくかわっとらんのう。

 何よりじゃ」

 

 ルフトの言葉を素で誉め言葉と受け取るタクト。

 そして、その様子を笑うルフト。

 明るく、少しだけ懐かしむ様に。

 

「さて、立ち話もなんじゃ、ワシの部屋に移ろうか……

 エンジェル隊の諸君、ご苦労じゃった。

 ゆっくり体を休めてくれ。

 タクト、レスター、ついて来い」

 

 それから、ルフトに連れられて艦内を移動するタクトとレスター。

 着いた部屋はルフト将軍の部屋であり、司令官室。

 

「さて、どこから話そうかのう」

 

 部屋に着いたルフトは考えを巡らす。

 今までいきさつを思い出すように。

 

「その前に一つ、お聞きします」

 

 そんな中、タクトは一歩前にでて問う。

 いつにない真剣な顔で。

 瞳に何か、暗い色を映しながら。

 

「ここへ着たのは偶然ですか?」

 

 ここへ、つまりはタクトの居る場所へと言う事だ。

 ルフトが、エンジェル隊が。

 そして、エルシオールが。

 

「……半分はな」

 

「そうですか……では取り敢えずは、まず情勢を教えてください。

 第2方面軍との連絡がとれないのはまさか……」

 

 二人だけが解る言葉を交わした後、タクトは軍人へと戻る。

 そして、今まで考えていた最悪の事態に対して確認を取る。

 できれば、間違いであってほしい予測を。

 

 エンジェル隊も、あの無人艦隊も、第二方面軍からは何の連絡もなかった。

 レーダーに映れば何かしらの報告がある筈なのにだ。

 それは、つまり……

 

「そうか、第2方面軍も全滅か……

 クリオムまでくればなんとかなるかと思ったが、予定通りロームまでいかねばならんか」

 

「そうですか……」

 

「そうですか、ってタクト、おい!

 どう言う事ですか! ルフト准将! クーデターはどうなったのです!?」

 

 大凡の見当がついてしまったタクトに変わりレスターが問う。

 このありえざる状況に至った真実を。

 

 

 ルフトから語られるのは悲劇の幕開けの話。

 最初に謎の艦隊を発見した第1方面軍は情報の裏付けに時間を取られ防衛ラインの突破を許した。

 そして、トランスバール本星の首都も、衛星軌道上からの攻撃で壊滅。

 王宮も攻撃を受け、皇帝ジェラールを始めとする皇族は皆死亡した。

 そして、軌道上にいる圧倒的戦力を前に、トランスバール本星は降伏してしまった。

 

「そうですか……皇帝陛下も……」

 

 複雑な表情を見せるタクト。

 何故、複雑なのか。

 少なくとも、己が仕える人が死んだというのに。

 悲しみや怒り以外の何かがそこにある。

 

「『白き月』は?」

 

「シャトヤーン様が『白き月』全体にシールドを張られた。

 じゃから、無事じゃろう」

 

「そうですか……」

 

 『白き月』の無事を知ると、タクトは一度目を閉じた。

 そして、次に開いた時は何か、覚悟を決めた瞳を見せる。

 

「では、ルフト准将はシャトヤーン様にどんな命を?」

 

「まだ、そこまで言っておらんのだがな、流石と言って置こう。 

 では、二人とも、シヴァ皇子という名前を覚えておるか」

 

 タクトの推察に感嘆しながらも、逆に問うルフト。

 その名は、あまり知られていない皇子の名だった。

 

「確か、ジェラール陛下が庶民との間につくった子供でしたね。

 では、その皇子が『白き月』にいて、最後の皇族として護送を?

 先ほどの台詞から察するに、今ローム星系に集まっているのですね、エオニア軍に対抗する戦力が」

 

「察しが良くてなによりじゃ。

 説明の手間がなくて楽でよいの。

 その通りじゃ。

 そして……」

 

 ルフトはそこで一息おいた。

 そして、改めてタクトを見る。

 

「タクト、お前にこの艦とエンジェル隊の指揮を任せたい」

 

 告げた言葉、それは驚愕に値する言葉だった。

 最後の皇族の護送だけでなく、このロストテクノロジーの塊といえる艦と、紋章機の指揮を任されるのだ。

 

 だが、タクトは複雑な表情を浮かべていた。

 

「それは、ルフト准将の意思ですか?」

 

「ああ」

 

 タクトは問うた。

 タクトを知る、タクトの複雑な表情の意味の半分を知るルフトに。

 それでも尚、そう思っての事かを。

 

 その答えに、タクトはもはや迷わなかった。

 

「はい、解りました。

 不肖タクト・マイヤーズ。

 シヴァ皇子を安全な場所までお連れしましょう」

 

 真っ直ぐにルフトを見て答えるタクト。

 先ほどまでの揺らぎを何も感じさせない純粋な瞳で。

 

「そうか、受けてくれるか。

 では早速……」

 

 その答えに満足したルフトは入り口のロックを外した。

 恐らくは、エンジェル隊やこの艦の者を紹介する為に。

 だが、

 

 プシュー! 

 

 扉は、ロックを外した瞬間に開き。

 

「きゃー! いたーい!」

 

「あいたー! いきなり開けないでよっ!」

 

「フォ、フォルテさん……重いですわ」

 

「皆さん、お怪我はありませんか?」

 

「いやー、皆でドアに寄りかかってたのは失敗だったねぇ」

 

 突然雪崩の様に部屋に滑り込む女性達。

 それは全てムーンエンジェル隊の女性達だった。

 

「さて、では改めて紹介しようか。

 彼女達がムーエンジェル隊、お前の部下となる者達じゃ」

 

 笑みをこぼしながらエンジェル隊の横に立つルフト。

 そして、起き上がり、タクトを見えるエンジェル隊の5人。

 

「よろしく」

 

 そして、タクトとエンジェル達の戦いが始まる。

 エオニア軍を相手とした戦争が。

 このエルシオールで。

 エンジェル隊と共に。

 

 一人の青年と5人の天使、そして聖母と堕天使の織り成す物語が、今幕を開けた。

 

 

 

 

 To Be Continued......

 

 

 

 

 後書き

 

 ギャラクシーエンジェルSS、『二つの月と星達の戦記』プロローグでした〜

 エイプリルフール用の嘘予告から始まり正式に連載となりました。

 最初に上げてから2年が経過しましたけどね。

 でも、その二年でいろいろ煮詰めてみましたよ〜。

 冒頭部分もちょっと変わっております。

 更に、管理人殿をして、斬新と言わしめた試みを盛り込んでおります。

 それが吉とでるかどうかは、まあ私の腕次第ですが。

 まあ、がんばって書こうと思うのでよろしくです〜








管理人のコメント


 満を持して新連載の開始です。

 嘘予告にGAを題材として提案した私も楽しみにしていましたよ。

 私もかなりネタ出しをしているので、読者の方もお楽しみに。


 冒頭から色々考えられそうな場面。

 取り敢えず何かわかってもBBSなんかでは明示しない方向でお願いしたいところ。

 予想がついた方は、こっそりとメールでT-SAKA氏へ感想を書いていただければ幸いです。

 では、同時掲載の第一話へどうぞ。



感想はBBSかweb拍手、メール(ts.ver5@gmail.com)まで。(ウイルス対策につき、@全角)