帰還後

 

 那美さんに傷は塞いでもらったものの、

 俺は1番重症だったので、一日入院する事となった。

 俺が病院に着たとき、傷を見て、フィリス先生が卒倒しかけたりしたが・・・

 その他の人達は自宅休養で治るらしいので、俺だけだ。

 ・・・ちょっと情けないな。

 

 因みに、俺の入院を聞いた家族達(忍含む)が、

 先程、心配そうな顔で駆けつけてきていた。

 ・・・また心配を掛けてしまった・・・俺もまだまだ未熟だ・・

 

 それにしても・・・

 

「暇だ・・・」

 

 傷が塞がってるなら別にいいんじゃないかと思うんだが・・・

 この何度もお世話になった病院のベット・・・ 

 今や、フィリス先生の部屋にあり、『高町 恭也』専用とまでなっていたりする。

 因みにこのベットシーツは何故か恭也が退院した日に無くなってしまうらしい。

「なにが『暇だ』ですかぁぁ!!」

 

 凄い勢いでドアを開けて入ってくるフィリス先生。

 病院内では静かにした方がいいのでは?

 

「そんな事今はどうでもいいです」

 

 俺を睨むフィリス先生。

 ていうか、読んでますね?

 

「はい、逃げ出そうとしないように心も見張らせて頂きます」

 

 と、キッパリ言ってくるフィリス先生。

 俺のプライバシーとかは?

 

「無茶ばかりして死にかける人にはそんなものありません」

 

 断言しますか?普通・・・

 やっぱりリスティさんの妹か・・・

 

「姉と一緒にしないでください!!」

 

 フィンを展開して叫ぶフィリス先生。

 そんなに嫌ですか?似ているところがあるんだなぁと思っただけなのに・・・

 

「で、何をそんなに怒っているんですか?」

 

 美人が台無しですよ?

 

「御世辞なんか考えてても何も出ませんよ」

 

 あ、少し顔が赤くなった・・・可愛い・・・

 

「そ、そんな事より!

 恭也君、貴方、自分がどんな重症だったか解ってませんね」

 

 なんかちょっと誤魔化されたような気がするが、

 その後、四時間に渡ってフィリス先生の御説教を聴く羽目となった。

 

 

 その頃 某所 

 

「・・・皆さん、ケガの具合はいかかがですか?」

 

 集まったメンバーを見回し、尋ねる金髪の少女。

 

「ああ、もう大丈夫だよ。

 元々大した傷じゃないし」

 

「俺のはただのガス欠だしな」

 

 答える美少年と青年。

 

「それより・・・」

 

 本題への移行を求める美女。

 

「ええ・・・」

 

 少女の表情が沈む。

 他のメンバーもいい顔はしていない。

 

「まだ・・・まだ大丈夫だから・・・

 この事は、私から二人に話しておくわ。

 今回の事は私のミスだから・・・」

 

 悲しげにそう告げる少女。

 集会は、その後沈黙のまま終った。

 

 

 その頃 さざなみ寮

 

 あの後、後始末を済ませ、ちょっと遅れて帰還したメティ。

 

「メティ」

 

 夕食も済ませ、部屋で漫画を読んでくつろいでいたメティの元に、

 久遠(小)がやってくる。

 

「何?」

 

 読みかけの漫画を閉じて部屋に久遠を入れるメティ。

 既にお互いちゃんと普段通りに戻っている。

 

「手、大丈夫?」

 

 申し訳なさそうに尋ねる久遠。

 

「手?何が?」

 

 何を言っているの?と言った顔をするメティ。

 

「右手、動いてない」

 

 そう指摘する久遠。

 

「・・・バレた?」

 

 笑いながらそう言うメティ。

 

「これ、久遠が結界を無理やり破ったせい」

 

 悲しげにメティの『見せ掛けだけ』再生している手を取る久遠。

 昼間の戦闘において、結界を支えていたメティ。

 それを久遠に無理やり破られたせいで支えていた右腕が焼け焦げたのだ。

 

「ああ、いいわよ、そんな事。

 私はそう簡単には死ね無い身体だから。

 この手も、神経接続に時間がかかってるだけだし。

 それに、おかげで手っ取り早く終ったんだもん」

 

 メティは気にした風も無く、笑う。

 

「まあ、同世代のアンタに私自慢の結界を破られるとは思ってなかったけど」

 

 そう続け苦笑するメティ。

 

「くぅん?メティも長生き?」

 

 メティの言葉に首を傾げる久遠。

 

「あれ?貴方には言ってなかったっけ?

 私と貴方は大体同じ歳よ。

 まあ、お互い正確な誕生日が解からないから推定でしかないけどね」

 

 ポンと久遠の頭に手を乗せて言うメティ。

 

「メティも300歳くらい?

 ・・・」

 

 年齢を聞き、メティの身体を上から下へ、そしてまた上へと見渡していく久遠。

 

「・・・何が言いたいわけ?」

 

 言いたいことが何となく解かるメティは、

 ちょっと顔が引き攣っている。

 

「大体、アンタに言われたくない」

 

 と、久遠の頭に手を乗せるメティ。

 その意味を理解した久遠は、

 

 シュパッ!

 

 大人モードへと変化する。

 

「何か言った?」

 

 不敵な笑みを浮かべてメティを見下ろす大人モード久遠。

 そして、今の自分の腰ほどしかないメティの頭をポンポン叩く。

 

「私は栄養失調で成長が止まってんのよ!」

 

 久遠の手を払い除けながら言い放つメティ。

 

「栄養失調?

 メティ、久遠より沢山食べてる」

 

 ?マークを浮かべる久遠。

 

「それは普段使ってるエネルギーと戦闘での消費したエネルギーの補充よ。

 私が言ってる栄養は、私の種族特有の物よ」

 

 面倒そうに説明するメティ。

 

「メティの種族?」

 

 まだ?マークを浮かべている久遠。

 

「あれ?これも話してない?

 ん〜、誰に説明して、誰に説明してないかこんがらがってるわね・・・

 私が人間じゃないなんて事は解かってるでしょう?」

 

 と、問うメティ。

 

「うん、それは解かる」

 

 頷く久遠。

 

「私は夜を渡り、人の生気を貪るサキュパス。

 闇に生き本来、光の中には在れない存在」

 

 メティは喋りながら振り返り、窓からさしこむ月光の中に入る。

 そして、

 

「夢魔とか淫魔とも言われる、夜の一族とは違う、正真正銘の化け物」

 

 バサッ!!

 

 セリフが言い終ると同時に、背中から悪魔の翼を出現させるメティ。

 服は元々久遠の服と同じように具現化させている物なので、

 服はすり抜けている。

 

「・・・その姿は初めて見た」

 

 ちょっと驚く久遠。

 

「そりゃあ、人に自慢するような姿じゃないし。

 ま、結構翼は飛ぶのに使ってるんだけどね」

 

 そう言ってすぐに翼をしまうメティ。

 

「つまり、私が成長の為に失調している栄養は人の生気よ」

 

 月光を浴び、妖しき輝を帯びたメティはそう告げる。

 

「それで、好きな人が抱いてくれないんだっけ?」

 

 などと、当たり前の会話の様に確認する久遠。

 

「・・・なんで種族を知らなかったのにそれ知ってるのよ?」

 

 なんか、妙に疲れてガクッと肩を落すメティ。

 雰囲気丸つぶれなのは言うまでも無いだろう。

 

「前メティ愚痴ってた」

 

 と、笑顔で答える久遠。

 

「・・・そうだっけ?

 まあ、いいや。 

 そう、それで、私は300歳にして処女の希少なサキュパスなの。

 300歳にもなって処女なんて地上初めての存在よ、絶対・・・

 そのせいで成長できないの解かってても抱いてくんないのよ〜〜」

 

 頭をかかえて叫ぶメティ。

 

「ついでに男嫌いだよね」

 

 付け加える久遠。

 

「言っとくけど、だから女好きって訳じゃないわよ、

 あの人以外の男に触れられるのが嫌なだけだから。

 私の身体に触れていい男は、この宇宙で3人だけよ」

 

 高らかに宣言するメティ。

 

「3人?」

 

 多くない?と言った感じで尋ねる久遠。

 普通はこう言う場合は一人だから。

 

「兄兼未来の夫と、兄兼父と兄よ」

 

 家族は蔑ろにできないらしい。

 因みにこの家族誰一人として血の繋がりは無い。

 ついでに種族もバラバラである。

 

「ったく、大事に思ってくれるのは嬉しいけど、

 そのせいで成長できいっていう悪循環なのに・・・」

 

 盛大な溜息をつくメティ。

 ここ200年近くの悩みだけに、溜息も深い。

 

「それで未だにその姿なんだ」

 

 そう言って、

 

 シュパッ!

 

 子供モードに戻る久遠。

 

「悪かったわね」

 

 久遠が戻ってる間に、ちょっと青筋を浮かべながら言い捨てるメティ。

 

「メティ」

 

 戻って少し雰囲気の変わる久遠。

 話題を変える様だ。

 

「何?」

 

 別に話題を続けたい訳じゃないメティは、それに乗る。

 しかし、

 

「久遠とメティ、友達?」

 

 などと聞いてくる久遠。

 それに対し、一瞬強張るメティ。

 だが、すぐにいつもの調子に戻り、

 

「貴方の友達の定義がどうなってるか知らないけど、

 貴方が私を友達と思ってるなら、友達なんじゃない」

 

 少し考えてそう答える。

 

「じゃあ、久遠、メティと友達」

 

 微笑む久遠。

 

「久遠、なのはと友達。

 メティ、なのはと友達?」

  

 真剣な目でそう続けて問う久遠。

 

「・・・久遠となのはの関係を友達と言うならば、

 私はなのはと友達ではないわ」

 

 真面目な顔で答えるメティ。

 

「なんでなのはを避けるの?」

 

 悲しげな目で問う久遠。

 

「ふ・・・さっき言ったでしょう?

 私はこんな身体でも300を超えてるのよ。

 生涯のほとんどを祟りとして、封印されていたアンタとは違う。

 私とあの子じゃ、何もかもが違いすぎるのよ」

 

 吐き捨てる様に言うメティ。

 しかし、久遠はその言葉には、悲しみの色が含まれている事に気付いた。

 いや、元々久遠には解かっていたことだ、だから久遠はこの部屋に来たのだから・・・

 

「違わない、久遠も、なのはも、メティも」

 

 少し微笑んでそう語りかける様に言う久遠。

 

「何が違わないのよ?」

 

 少し苛立って問うメティ。

 

「外見と精神年齢」

 

 ・・・

 にこーと、本人はいたって真面目にそう答える。

 その場に暫し沈黙が下り、

 

 カチャ!

 

「・・・アンタ、ケンカ売りに来たの?

 いくらでも買ってあげるわよ」

 

 兄より授かった漆黒の装飾銃を取りだし、

 弾倉に弾が入っている事を確認するメティ。

 

「違うよ」

 

 おろおろアーム付きで首をふる久遠。

 

「大体『精神年齢』って・・・

 何で、アンタこう言う時はボキャブラリー増えんのよ・・・」

 

 滅茶苦茶疲れたようで、肩と首がうな垂れている。

 

「なのは、久遠と友達だよ」

 

 メティが回復するのを待って続ける久遠。

 諦めていない久遠に嘆息するメティ。

 そして、俯き、

 

「貴方は、祟りに取りつけれたのと、愛する人を失った、と言う理由がある。

 そして、その穢れと祟りは那美の手によって取り除かれた。

 悲しみは、別として・・・」

 

 メティの雰囲気に黙って言葉を聞く久遠。

 

「でもね、

 こうなったのは私が望んだ事だし後悔もしてないけど・・・

 貴方は解かるでしょう?

 私にこびりついた血の匂いと死臭が・・・」

 

 悲しみを隠した声で語るメティ。

 久遠は、その言葉に反論しよとした、

 その時だった、

 

「久遠〜、どこ行ったの〜」

 

 廊下から那美の声が聞こえてきた。

 それに反応し、久遠がメティから目を離した、その瞬間、

 

 バサッ!

 

 翼を展開し、窓枠に立つメティ。

 それに気付いた久遠が、振り返る。

 

「私は、みんなが思ってるほど綺麗じゃない」

 

 最後にそう自嘲ぎみに微笑んで、振り返り、外に飛び立ってしまうメティ。

 

 だが、久遠は見逃さなかった、

 メティが振り返った瞬間、メティの瞳から涙が空に散った所を・・・   

 

「・・・メティはいい子だよ」

 

 久遠は、最後にそう言い残し、

 いつもの久遠に戻って、那美の元に向かった。

 

 

 その夜 海鳴大学病院

 

 草木も眠る丑三つ時。

 恭也が眠る部屋、フィリスの部屋でもあるが、

 今は電気も消え真っ暗だ。 

 そんな中、動く人影が一つ。

 

 スゥ・・・

 

 その人影が持っているのは注射器。

 そして、その注射器を向ける先は眠っている恭也。

 

「・・・何をしているんです?」

 

 と、恭也は突然目を開けて問う。

 

「きゃっ!」

 

 それに驚いたフィリスは、ゆっくりと動かしていた注射器を、

 思いっきり下ろしてしまう。

 

「っと!!」

 

 流石は恭也、その注射器の魔の手から見事に逃げ出す。

 ベットから飛び起きてフィリスと反対側に立つ。

 注射器は、ベットに刺さる、これでもうその注射器は使えない。

 

「お、起きてたんですか?」

 

 驚くフィリス。

 

「そりゃあ、となりで仕事をされては、

 しかも、突然電気を消したりして・・・

 で、一体何なんですか?」

 

 と、恭也はべットに刺さっている注射器を見る。

 

「私だと解ってたなら、大人しく注射されてくださいよ」  

 

 凄く残念そうな顔をするフィリス。

 

「夜中忍び足で近づいてきて注射されそうになれば、

 誰だって何かを尋ねますよ」

 

 一応間合いを取っておく恭也。

 

「ただの長期型の筋肉弛緩剤ですよ。

 1週間くらい動けなくなるやつ♪」<実は惚れ薬混入

 

 などと音符つきで解説するフィリス。

 

「・・・何故そんな物を?しかも闇討ちで・・・」

 

 流石の恭也も引き攣る。

 まあ、当然の反応だが。

 

「昼間、正面から言ったら打たせてくれますか?」

 

 笑顔で問うドクターフィリス。

 しかも、予備か、もう1本懐からだして構える。

 

「嫌に決まってるじゃないですか。

 大体1週間も動けなかったら、生活が・・・」

 

 食事からトイレ、フロ等の問題を考える恭也。

 

「大丈夫、私が全部面倒見てあげますよ♪」

 

 ちょっと赤面して、楽しげに答えるフィリス。

 

「断固お断りします」

 

 何やら異様な寒気を感じキッパリ答えておく恭也。

 

「どうしてそんな事をするんですか?」

 

 真面目な顔で尋ねる恭也。 

 フィリスが冗談や悪戯でそんな事をするとは思えない。

 

「・・・じゃあ、どうしたら、1週間くらい大人しくしていてくれますか?」

 

 真面目な顔で問い返すフィリス。

 

「・・・鍛練も仕事も、1週間もサボれる訳ないじゃないですか」

 

 1日鍛練をサボれば取り返すのに3日かかると言われる。

 それに、身体を動かしていないと落ちつかないしな。

 

「だったら、薬でも使うしかないじゃないですか」

 

 と、真面目にそんな事を言うフィリス。

 

「だから、何で俺が1週間も大人しくしていないといけないんですか?」

 

 さっぱり意図が解っていない恭也は再度問う。

 すると、フィリスの表情は沈んでいく・・・

 

「やっぱり、私の話し聞いてなかったんですね・・・

 今日のケガも、昨日のケガも、どちらも、

 本来一日で治るような軽傷ではないんですよ。

 いくら那美さん達の力で傷を塞いでいるとは言っても、

 後遺症や、感染症、見えない部分の損失があるかもしれないんです。

 今日の入院はその為の検査入院ですよ。

 それでなくても、一時期1週間置きに担ぎ込まれて、

 普通の人なら何回死ねるかという重傷を負ってきたんです・・・」

 

 怒る様に悲しむ様に、恭也にそう説明するフィリス。

 目には涙が浮かんできている。

 

「・・・私、貴方の膝を治した事、最近後悔する事があるんです」

 

 静かにそう告げるフィリス。

 声が少し震えている・・・

 

「フィリス先生・・・」

 

 黙って聞いていた恭也もそれには反応する。

 

「恭也君・・・膝が治ってから、より危険な道へ足を踏み入れてますね?

 今日のケガの原因と仕事の内容、聞きましたよ」

 

 俯くフィリス。

 

「・・・」

 

 恭也は何も言えない。

 

「膝が治ったから・・・ちゃんと動ける様になったから・・・

 どうして?どうして、そんな危険な事をするんですか?

 膝が治る前だって、自ら死地に向かうような事をして、

 それは家族の友達の為だったからまだいいでしょう。

 でも、今日のは何?誰の為?なんで貴方がそんな危険な目に合わないといけないの?

 前に自ら望んでいるんでしたね?死にたいんですか!?恭也君!!」

 

 涙を流しながら叫ぶ様に問うフィリス。

  

「フィリス・・・」

 

 そんなフィリスを抱きしめる恭也。

 恭也の腕の中で涙を流しつづけるフィリス。

 

「確かに、今回の仕事だって、この街に俺の周囲に直接関係する場所じゃないし、

 俺が出撃する必要は無かった。

 でも、放って置けば、いつか、この街にも影響がでるかもしれない、

 その為に誰かが傷つくかもしれない・・・

 何処かの誰かに任せるのなら、俺は、自分の手で、俺の周りの人が

 愛する人達が傷付く可能性を除去していきたい」

 

 恭也はフィリスの耳元で囁く様に己の信念を語る。

 

「いやですよ・・・いつも大怪我して帰ってくるのを待ってるなんて・・・

 護ってくれなくていいですから、いつも元気でいてください」

 

 恭也に抱きしめられ、抱きついた状態で、

 涙を流し上目使いでそう訴えるフィリス。

 

「フィリス先生、俺は皆が笑顔でいる事が何よりの幸せです。

 だから、俺は、皆を護る為に剣を取り、

 これからも、戦っていきます」

 

 フィリスの涙を拭いながらそうあやす様に言う恭也。

 

「私は、貴方がいなければ笑う事は出来ません」

 

 恭也を抱く手をさらに強くして、そう訴えるフィリス。

 

「大丈夫、『戦えば勝つ』それが御神の剣士です。

 どんな戦いからでも必ず、帰ってきます」

 

 フィリスの頭を撫で、笑顔でそう答える恭也。

 

「約束、してくれますか?」

 

 涙は止まり、潤んだ瞳で問うフィリス。

 

「はい、勿論です」

 

 恭也は笑顔で答える。

 

「じゃあ・・・約束の証を下さい」

 

 月明かりが二人を照らし、静かな病室で、

 二人は・・・・

 

 

「恭也〜」

 

 ガタンッ!

 

 そんな最後まで逝っちゃってもいい雰囲気の中、

 月明かりを遮り、久遠(大)が窓から侵入してくる。

 

「久遠、どうした?」

 

 恭也は特に気にした風も無く振り向いて応答するが、

 

シクシクシク・・・

 

 フィリスは別の悲しみで恭也の胸を涙で濡らしていた。

 

「皆の御見舞いしてた」

 

 そう言って、恭也に後ろから抱き付き、

 

「恭也、傷大丈夫?」

 

 と、上目使いで問う。

 

「ああ、もうすっかりいい」

 

 前からフィリス、後ろから久遠に抱き付かれ、

 ちょっと窮屈そうな恭也。

(こんな状況でも、まあうれしいっちゃ嬉しいが、普通の野郎のいう嬉しさは感じない)

 

「フィリス何を泣いてるの?」

 

 と、未だ恭也の服を濡らしているフィリスに問う久遠。

 当然の事だが、自分が原因だとは全く思っていないし、考えもつかない。

 

「ああ、そうだ、フィリス先生。

 俺には、強い相棒がいますから、

 どんな所からでも帰ってこれるんですよ」

 

 と、久遠を見る恭也。

 

「そ、そうですか・・・」

 

 ちょっと引き攣った笑みで返すフィリス。

 

「うん、恭也、久遠が護る」

 

 そう力強く断言する久遠。

 

「ああ、それじゃあ久遠は俺が護るぞ」

 

 恭也もそう断言する。

 そして、何気にいい雰囲気で寝取られた感じのフィリス。

 

 シュパッ!

 

 久遠は恭也から離れたと思ったら、子供モードに変身する。

 

「・・・眠い・・・」

 

 お子様はとうに夢の中の時間。

 耕介の帰りが遅く、

 真一郎達の見舞いをする為にちょっと見つけるのに時間がかかった為、

 こんな時間になったのだが。

 

「じゃあ、ここで寝ていくか?」

 

 と、ベットを見る。

 何気にまだ注射器が刺さったままだが、抜けば問題無いだろう。

 

「うん」

 

 と、答え、恭也に抱きつく久遠。

 

「えええ?い、一緒に寝るんですか?」

 

 それに、驚愕するフィリス。

 

「はい。

 何か?」

 

 問題でも?と言う顔の恭也。

 まあ、本人そう言う意識は0であるから、

 フィリスの心配も無駄なんだが・・・

 

「じゃ、じゃあ私も一緒に寝ます!」

 

 などとのたまうフィリス。

 ぶち壊されたせいか、正常な思考をしてない様だ・・・

 

「じゃあ、そうしますか?」

 

 あっさり受け入れる恭也。

 言う必要すらないが・・・本人、他意は全く無い。

 

「じゃあ、寝よ〜」

 

 と、言う訳で、ほぼ勢いで恭也を真中にして寝る3人。

 勿論一つのベットで寝るわけだから、密接して。

 二人は恭也の腕を抱き枕にして。

 こんのもいいかな〜などと思っているフィリスと、

 純粋に眠い久遠と、

 やっぱ、彼女達を護っていきたいと思っている恭也。  

 そこに、邪な想いはない、平和な夜なのだが・・・

 

 でも、ま、何かしら落ちというのは存在するので・・・

 

 翌朝、この状態を看護婦に見られ、一騒動あったのは言うまでも無いだろう。

 

 

 続く

 

 あとがき

 

セリス「はい、ついに物語が動き始めました〜」

メティ「そして私達もちょくちょく動くのね」

セリス「裏方だけどね〜」

メティ「まあ、私達はオリキャラでヒロインじゃないからそれが普通」

セリス「いっそヒロインに格上げする?」

メティ「お姉ちゃん、それは浮気だよ?」

セリス「勿論冗談だけどね。

     はい、話を戻しますが、今回明かされちゃったメティの正体」

メティ「早かったわね〜まだ3話よ?

    まあいいけどね。

    因みに私はサキュパスにして吸血能力もある性別固定の特殊型なのよ」

セリス「でも含めて全然サキュパスっぽくないわよね〜

    良い子だし〜男は一人だし、まだ処女だし♪」

メティ「まったく・・・いい加減私もいい歳なんだけどな・・・このままじゃ成長できなし・・・」

セリス「あ〜あ、またいつもの愚痴が始まっちゃった。

    じゃあ今回はこれで、まったね〜」