ドゴォォォォォオオオオンンン!!
舞い上がる爆炎と煙。
手榴弾8つによる爆発。
効果範囲は20mにも及び、一帯は木っ端微塵だ。
しかし、こんな場所で何を考えているのだか・・・
「こちらデルタ、高町 恭也を始末した。
そちらは高町 桃子が戻り次第爆破しろ」
などと連絡している黒服を発見する。
因みに言葉は適当な言葉に和訳している。
本当は英語だ。
「どうした?応答しろ」
どうやら繋がらない様だ。
向うも始めたか。
さて、俺も心置きなく始めるとしよう。
「誰が誰を始末したって?」
俺はその黒服の真後ろに、木の枝から着地する。
そして、
ザシュ!
同時に首を一閃し、始末する。
「・・・」
断末魔をあげる事も無く事切れる黒服。
ん?
ズガガガガガガガン!!
後方よりサブマシンガンを乱射しながら突っ込んでくるデカイ黒服複数。
神速・改
ダンッ!
俺は手榴弾から逃れたのと同様に神速・改を発動させ、
近くの木の枝に跳び乗り、木から木へと跳ぶ。
頭上は死角故、俺が移動した事にも気付かず、
まだ、先ほどいた位置に乱射している黒服の1人の背後に忍びより、
ザシュ!
着地と同時に斬る。
これで二人目。
「サムライではなく・・・ニンジャ・・・」
などとほざきながら絶命する黒服。
いや・・・俺は剣士でどっちかと言えば侍のつもりなんだが・・・・
まあ、こいつ等にそんな事をいっても仕方ないだろう。
何にせよ、こいつ等の最大のミスは、ここまでのこのこ付いてきた事だ。
そう、ここは俺の
その頃 美由希サイド
正面を向いて立つ私から見て、
社の影、左右に1人づつ。
私から5時と7時の方向の木の影にそれぞれ1人づつ。
合計4人・・・
恐らくは全員銃器を装備している。
・・・・
私は外見上解らない様に、
この状況を予測し、袖に仕込んでおいた物を落す。
それは・・・
コトッ! ドォォォンッ!!
それは特製の煙玉。
一瞬にして私を中心に周囲を煙が包む。
ズガガガン!!
一瞬遅れて私の立っていた位置に四方からサブマシンガンだろう銃弾が飛び交う。
勿論、既に私はそこにはいない。
何処にいるかと言えば・・・
正面から見て右側の社の影に潜んでいた黒服の真横。
間抜けにも、そいつはまだ私が近づいたことに気付いていない。
こんなの、煙の移動を見れば解ってしまうのに。
ザザザシュッ!
「!!」
自分の四肢の腱が斬られた事に気付き声をあげる前に、
ドゴッ!!
後頭部を柄で殴って倒しておく。
ズガガ!・・・・
銃声が止んだ。
まだ視界も晴れていない中、無駄だと気付いたか?
煙玉の有効時間は後20秒程度。
私は音無く社の屋根に登る。
奥の方だから、敵から狙われる事はない。
屋根を伝い、反対側へ移動し、様子を伺う。
敵はマシンガンを構え、まだ私が立っていた方を見ている。
私は飛び降りると同時に、
ドゴッ!
殴り倒す。
ついでに行動不能にしておく。
これで後二人。
残り10秒。
最も、既に煙は神社を包むほどまで広がっているから、私にも視界は無い。
でも後一人はいけるかな。
私は、小刀を1本、私が初め立っていた当たりに投げる。
カキィンッ!
ズガガガガ!!
小刀が地面に落ち、音が鳴った瞬間。
そこ目掛けて銃弾が飛ぶ。
その音でハッキリする。
私にとってここは庭同然。
何処に何があるかくらい見る必要も無く解る。
音のした場所から敵の位置が解れば、後は簡単。
今私がいる位置から狙える所にいた敵。
初めの位置から言えば7時の方角にいた敵は。
幸運にも、今私の立っている位置の方を向いて身体を木の影から出している。
私は小刀を両手に合計8本持ち、
ヒュゥンッ!!
「グアァァァアアア!」
下手な鉄砲数撃ちゃ当たる。
ガン!カラカラン・・・
どうやら武器も落とした様だ。
私は煙が晴れる前に、そいつに回りこんで近づく。
近づいて見れば、私の投げた小刀で、腕をやられ、
果ては小刀で木に磔になって倒れることもできない黒服C。
私の投げ物も捨てたものじゃないわね。
「ニン・・・ジャ・・・などと聞いていない・・・」
私を見てそんな事を言う黒服。
私は剣士だよ・・・
私はそいつを完全に行動不能にしようとした、その時だ、
ズガガガガガガガガ!!
最後の敵が私目掛けて撃って来た。
銃撃のせいで煙が引くのが少し早かった様だ。
だが、弾は磔になっている黒服にほぼ全て当たり、
私は顔と腕を掠ったにすぎない。
勿論私は木の影にすぐに身を隠した。
因みに磔になっていた黒服は・・・まさに蜂に巣となり痙攣を起こしていた。
「味方を完全に無視するなんて・・・」
同じ手は使えないというより、ストックが無い。
困った事に、この木から他の木の陰に移るには、距離がありすぎて、
弾を避けきれる自信がない。
敵は両手のマシンガンで乱射している。
木を盾にしているとは言え、このままずっとこうしている訳にもいかない・・・
考えなくちゃ・・・
一方 メティサイド
とある廃ビル。
バタッ!
バタッ!
自分が死んだ事にすら気付かないまま倒れる黒服達。
そして、
ゴゥッ!!
蒼い炎に包まれ、跡形も無く消えていく。
「さて、後は爆弾の回収と、
桃子の周りにいるやつか。
ま、そっちはケビンがついてるし、先に爆弾の撤去でもしようかしら・・・
それにしても・・・」
誰になく呟きながら、窓際に立ち、国守山と八束神社を見詰める少女。
結界のおかげで、普通の人には何も変わってないように見えるが。
その実、そこは日本では有り得ない戦場と化している。
「恭也は楽勝。
美由希も心配無いわね、
そろそろ実戦でもう1段階強くなってもらわないといけない時期だし」
そう呟き、闇に溶ける様に消える少女。
後には静寂のみが残り、誰かがいた形跡すら残らない。
その頃 恭也サイド
ザッ! タッ! シュッ!
微妙な速度差を付けながら森を跳び回る俺。
そうする事により、
「ぶ、分身しただと!」
「う、撃て撃てぇ!!」
ズガガガガガガガ!!
ほぼ半狂となって乱射する。
いくら龍の工作員でも、この暗闇の森の中、
残像に囲まれ、仲間を殺されていれば、
よほど訓練を積んでいないと耐えられまい。
で、すでに視界が数m、仲間の位置もちゃんと確認できないのにそんな事をすると・・・
ズガガガガガガガ!!
「ぎゃぁぁぁ!!」
「ぐあああ・・・」
同士討ちになる。
今ので二人。
残るは3人か・・・
その3人は妙に冷静だな・・・いや、動きが機械的と言ってもいい。
オートマータでは無い様だが・・・まるで人形だ。
美由希サイド
ズガガガガガガガン!!
まるで機械の様に淡々と撃ち続ける敵。
しかもほとんどブレが無い為、その内木を貫通してしまうのではないかと思えてくる。
その動きは機械的というより、自動人形かと疑うほどだ・・・
だけど、こんな攻防何時までも続く物ではない。
ズガガガガ! カチッ!
そう、弾切れだ。
リロードのタイミングは銃器を操る者にとって最大の隙。
私はすかさず木の陰から飛び出し、敵に向かう。
このタイミングで腕を狙えば!
私が小刀を投げようとしたその時だった。
ガシャン!
あろう事か、敵は手に持っていたマシンガンを両方とも捨て、
何をするかと思えば・・・
ヒュン!
手榴弾を両手に2つづつ、4つ投げてくる。
「!!」
それは、距離を詰めながら、小刀を投げようとしていた私の目の前に来て・・・
ドゴォォォォォン!!
その頃 高町家
「さて、これで全部か・・・」
高町家の庭先、手にした金属のケースを消滅させながら呟く少女。
もう一度サーチで爆発物及び毒物等の危険物を探索して安全を確認する。
因みに、ちゃんと隠行術は使用して今高町家にいる3人には見えないし、声も聞こえない。
「後は桃子を張ってるのを消して、私の分は終りっと」
そう呟きながらタナトスを抜く少女。
と、そこへ、
「誰かいる?」
なのはが庭に出てくる。
「!!」
バサッ!!
本来は鳴る音を消しながらも、あわてて飛び去る少女。
偶然ではなく、明らかになのはは少女に感づいていた。
「どうした?なのちゃん」
突然庭に出たなのはに問う晶。
「うん・・・誰かが泣いてるような気がして」
少し悲しげに答えるなのは。
「誰か・・・こんな時間人の家の庭で?
・・・まさか幽霊・・・」
那美と知り合ってから幽霊の存在は実在すると証明されたので、
ちょっぴり敏感になっている晶。
「違うと思うけど・・・・」
確証があるわけでは無いが、なのはに何となく解っていた。
「そう言えば、師匠達遅いね」
ちょっとといって出ていった二人だが、
もうすぐ夕飯の用意が出来てしまう。
「そうだね・・・」
悲しげに国守山の方角を見るなのは。
何故そんなに悲しげなのか、その時晶は少し怪訝に思うだけだった。
恭也サイド
残り3人となってから少し困ったことが起きた。
残りの3人と言うのは、どれも似たようなゴツイ大男で、
武器は同じサブマシンガン。
それはいい。
だが、違うのは、今までの奴等とは違い、全員機械的な動き、
落ちついているとかいうレベルではなく、感情が無い・・・
そして現状に至り、3人が固まって行動する様になってしまった。
移動しながらも3人が背を合わせ、隙が無い。
こうなると、どっちが攻められてるのやら・・・
などと思うが。
こいつ等を放って置く訳にはいかない。
どうする・・・3人となると、一筋縄には・・・
と、その時、俺は先ほど倒した黒服が目に映る。
美由希サイド
ドゴォォォォォン!!
後方で鳴り響く轟音。
そう後方で・・・
ドサッ!
少し遅れて、私の後ろに立っていた黒服が倒れる。
「・・・今のが・・・神速?」
手榴弾が目の前に来た瞬間。
私の周りの世界は白黒になって、スローモーションになっていて、
ゼリーの中にいるみたい動き難かったけど、
手榴弾を追い越して駆け抜けて、無我夢中で敵を斬って、
今、世界が戻った。
恭也サイド
お互いの死角を補うため、3人固まって移動するゴツイ黒服。
そこへ、
ヒュンッ! ヒュンッ!
飛んで来る手榴弾2つ。
「・・・・」
ズガガガガガガ!!
3人はそれすら無言で眉も動かさずに迎撃し、
ドゴォォォォン!!
ドゴォォォォン!!
撃ち落してしまう。
だが、その瞬間、3人はほぼ同じ方向に向いて、
一角に隙ができる。
手榴弾はトラップによる物。
俺はその反対方向から木々を渡りその隙を突く。
タッ!
神速を使い、枝から枝に跳び、今まで通りに近づく。
が・・・
タンッ!
目標地点まで最後の枝に到達し、
後1跳びで手榴弾を迎撃している3人の黒服の背後が取れると言う時、
バキッ!
なんと、俺が跳ぼうとした時、その衝撃に耐えきれず枝が折れてしまった!
タッ!
跳んだ時に折れた為、体勢を崩す事は無かったが、
予定の跳躍距離を稼げず、敵の一歩手前で着地する事になってしまった。
その為、一瞬攻撃のタイミングが遅れる。
一瞬だが、その一瞬が・・・
ザシュッ! ザシュッ!!
振り返ろうとしていた手前の2人の首筋を斬り裂き、倒すまでは良い。
だが、問題の3人目、ミスした時間と、二人への攻撃の時間で、
こちらに振り向いてしまう。
「ちぃっ!!」
ガキィンッ!!
まず、左手の八景を振り抜きと同時に切り落しに変え、
構えていたマシンガンを叩斬り、使用不能にすると同時に、
ドスッ!
右手八景で心臓を突き刺す。
ぎりぎり間に合ったと思った、その時!
ガシッ!
まだ息のあるそいつに、腕を掴まれ、
更に、そいつは・・・
ピンッ!
手持ちの手榴弾を起爆させる。
「自爆かっ!!」
その男はそれでも表情一つ変える事無く、
ドゴォォォォォォォンッ!!
美由希サイド
ドゴォォォォォォォンッ!!
山の中から聞こえる爆音。
これで3度目の爆音だが・・・
「恭ちゃん?」
美由希は只ならぬ不安を感じる。
そして、敵がもう動けないのを確認した後、
初めて実戦で使った神速で痛む足を引き摺りながらも、
恭也の下へと急ぐ。
その頃 さざなみ寮前
「ふ〜・・・疲れた・・・」
「くぅ〜ん」
予定より3時間ほど早く帰って着た那美と久遠。
絶対に遅れないようにがんばったので、二人とも、ちょっとお疲れの様だ。
と言う訳で、もう部屋に戻って休もうと思っていた二人。
その時だ。
ドォォォォン・・・
僅かに聞こえた爆発音。
二人には結界の効力が及ばない為、聞き取ることができた。
「あれ?爆発?なんだろう・・ね・・・久遠?」
那美が久遠の方を振り向いた瞬間だった。
シュパッ!
いきなり大人モードに変身する久遠。
それはよかった、
だが・・・
「久遠?」
もう一度名前を呼ぶ那美。
だが、久遠の目に浮かんでいる感情は・・・
ダッ!!
何も言わずにその場から爆発音の方向へと飛ぶ久遠。
「久遠!!」
慌てて、本当に慌てて追い掛ける那美。
久遠の表情、今の久遠から感じた力・・・
それは・・・
その頃 高町家
「おそぇな〜師匠と美由希ちゃん」
「ほんま、何処行ったんやろう?
桃子ちゃんは、後五分くらいって電話あったんやけど・・・」
既に夕食の準備が整っているテーブル。
だが、そこにいる筈の家族2人の姿が無い。
「・・・」
そんな中、無言で目を瞑り、何かを考えているなのは。
晶とレンはそれよりも恭也と美由希が心配だった為、あまり気にしなかった。
だが。
ダンッ!
突然テーブルを叩く様にして立ちあがるなのは。
その表情は、驚愕と恐怖・・・
「「!!」」
そんななのはの行動に完全に固まる二人。
「おにーちゃんの所に行ってくる!」
そんな二人を余所に、家を飛び出すなのは。
「あ、ちょっとなのちゃん?!」
「こんな時間にあぶないて!」
我に帰り、止め様とした二人だが、
フリーズしていた間が長く、
且つ普段のなのはからは考えられない程のスピードだった為、
二人は、なのはを玄関先で見失ってしまう。
その頃 メティサイド
ドサッ! ボッ!
倒れ瞬時に燃えあがる黒服。
「さて、これでおしまいっと・・・」
予定より少し早く片付いた仕事。
何処らへんが予定より早かったと言えば・・・
高町家から移動速度だ。
「何で解ったの・・・・いえ・・・」
なのはが自分の事に気づいたことはショックだった。
だが、
「何で私は慌てて飛び去ったの?」
それより、自分の行動が信じられなかった。
自問する少女。
ソレハアノコニイマノスガタヲミラレタクナイカラ
「何で・・・」
イマノワタシハバケモノダカラ、ヒトゴロシダカラ
出てくる自答は、
「どうして・・・」
キラワレルノガ、キョゼツサレルノガ
コワイカラ
また起こるだろうアノ、現実と言うなの・・・
意識の中で繰り返される自問自答に頭を抱える少女。
だが、その時!
ドォォォォォン
聞こえたのは国守山からの爆音。
それと同時に流れて来る現状の情報。
「恭也!ミスったの!?
・・・この気配!久遠!どうして?!
那美と久遠が帰ってくるのは後3時間も後の筈!!」
思わず叫んだ少女。
だが、すぐに今すべき事が駆けつける事だと判断し、
「チィッ!」
バサッ!!
舌打ちしながらも飛び立つ。
最悪の事態を、避ける為に。