瓦礫の街。壊れた家屋。砕けた道路。
でも、ここは壱次が指定した場所だから。
壱次は身を挺して、私達を守ってくれたから。
この場所で、帰って来るまで待ち続けよう。
まだ、悲しみは癒えないけれど。
泣き言だって言いたいけれど。
それを言うのは次に逢ったときにしよう。
その時はまだまだ先になるだろう。
その時には一杯の思い出話を持って逢おうと決めている。
あいつが悔しがるくらい。
一杯の思い出を持って。
あいつが驚くぐらい。
一杯の幸せを持って。
いつかきっと出会えるその時のために。
準備しよう。
もう私は人形じゃない。
一人の人間だ。
それを気が付かせてくれた人たちに。
それを守ってくれた一人のために。
沢山の思い出と幸せをもてるように努力しよう。
そうすればきっと。
再び出会った時に、笑って会えるような気がするから。
多分あいつはそう願っているだろうから。
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神の居ないこの世界で−A5編− |
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