神の居ないこの世界で−A5編−


→After 5 years の始まる4.4年前のお話・倉田一弥の華麗な日々

     kanon本社。その会議室。  今までその本社はエリアKにあった。しかし、今はエリアAにある。  これは理事である佐祐理の判断だった。 「聞きましたか?」 「あぁ、理事の弟さんはすごいですな」 「まさか、あの難攻不落の相沢海運から、よい条件で契約を取り付けてくるなんて」  話している内容はバラバラだが、話題に上っているのはほぼ同一人物だ。  話題の渦中にあるのは倉田一弥その人である。 「しかし、あの視力補助ゴーグルはどうにかならないのか」 「何でも、保護された時には既に目が見えなかったという話。しょうがないといえばしょうがない」 「もう少しデザイン的になんと……」  ざわついていた雰囲気が一気に静かになる。  そう、本人が登場したのだ。それに遅れて理事である佐祐理とそのボディーガードである舞も。 「すいません。遅れてしまいました」 「いや、良い。時間通りといえば時間通りだ。我々が少し早かったのだろう?」  一弥の声は張りのある好青年のようだった。  会議室での代表らしい男が一弥に返事をする。  その声には多少怯えが入っていた。  申し訳ないといった感じで一度、一弥は頭を下げる。 「姉さん、こちらへ」  彼は佐祐理の秘書も勤めている。  その目の部分には大型の視力補正のゴーグルがかけられていた。  失明した目の視神経と外部カメラを繋いで目の見えない者の目を見えるようにするもの。  一般的な視覚補正ゴーグルは眼鏡のような形をしている。  少しでも、人からかけ離れたデザインにならないように。  だが、彼のそれはあまり良いものではない。    大きなカメラがゴーグルの中央についており、まるで一つ目の怪物のような様相だった。  一つのレンズの中に小さな7つのレンズが内包され、きゅるきゅると音をたてる。  一つの大きな目玉の中に小さな目が7つ。不気味を通り越して恐怖すら抱かせるデザインだった。  加えて目と頬の大部分をそれが覆ってしまって、表情がわかるのは口元だけとなっている。  鈍い光を放つ白銀のゴーグルに紫色の濃淡の有るカメラのレンズ。  その色の組み合わせも不気味がられる一因だ。 「さて、会議を始めましょうか」  そう佐祐理が言って会議が始まる。  会議は滞りなく終って、役員達一同は穏やかな笑みをしながら会議室を出て行った。  成功も良いところ。反対意見もあまり出ずに、充実し建設的な会議だった。 「ふぅ……無事に終ってくれましたか」 「!? ……一弥? 怒ってないですよね?」 「姉さん、何を言ってるんですか?」  大きなレンズの中の7つのレンズが全て佐祐理を捉える。  慣れたとはいえ、心が緩んだ時にはそれは驚きを呼び起こすものだった。  当然一弥には怒ったとかそんな感情は持っていない。 「やっぱり、デザインを変えたほうが……」 「駄目です!」 「駄目!」  佐祐理と舞の声がほぼ同時に上がった。  一弥の口元が何でさっと言った表情になる。  鏡を見たときに、いつも驚くのは一弥だけの秘密だ。  だが、会う人間の殆どが引きつった笑みを浮かべるのには困っていた。  交渉など、駆け引きをしなくてはいけない場所ではこれほど有利な道具は無いが。 「なら、もうそろそろ普通のリアクションを返して欲しいのだけど」 「困りましたね〜、見つめた時の内側の7つのカメラの動きを指定したのは確かに佐祐理ですけど」 「ここまで怖いとは思わなかった」  一弥は口元を苦笑させながら頭をかく。  既に見ているとか見つめられているといった表現では追い付かない。  肉食の昆虫に標的として狙われているような錯覚に陥ってしまうほどだ。  もちろん、小さい子が今の一弥に見つめられれば大抵の子は逃げ出すか泣き出す。  威力は絶大だ。計画した当初の目的は果たしている。  主に女性に近づきにくくするといった目標は十分すぎるほど果たしていた。 「慣れてくれた受付の人しか話してくれないんだよね……道に迷った時は途方にくれるよ」  実際には地図は一弥の見ている視界に表示は出来る。  ただし、目的の人がどこにいるかまでは表示されないのだ。  まだ会社に不慣れな一弥には宝の持ち腐れと言うところか。 「舞、聞きました?」 「後で、チェックしておく」 「頼みました」  一弥には2人がどんな会話をしているか聞き取れなかった。  声を潜めた会話で、しかも耳打ちしあっているのだから。  流石に聞き取れるのは本人達しか居ないだろう。 「また何か企みごと?」  一弥は多少疲れた口元を見せながら2人に聞く。  舞と佐祐理はなんでもないと言ってから、立ち上がった。  本来ならば、佐祐理を中心に歩くはずだが、一弥が中心となっている。  一弥の左には舞が、右には佐祐理。そういった配置だ。 「今日はもう予定はありませんよね?」 「……私達はもう無い」 「残念だけど、僕はまだあるんだ」  一弥が口元を苦笑させながら言う。  彼の表情の変化は口元でしか判らない。 「はぇ〜、それは残念です」 「……はぁ」 「有夏様のじきじきの指名だからね」  談笑をしながら、ゆっくりと歩く。  佐祐理達はこんな感じで生活をしていた。
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     アイビーつまりは、久瀬圭一が復興をしている街の名前だ。  一弥と秋子はその街を訪問していた。  本来ならば、ゴーグルを外して訪問をしたかった。  しかし、平定者とkanonの両方の責任者が必要となりしょうがなく、ゴーグルをはめている。  街は綺麗に整備されて、以前のような瓦礫などは見当たらない。  急速に、元の形に戻りつつあるがまだ人は少なかった。  それもそのはず、数少ない生き残りの街人しか帰って来ていないからだ。 「すいません……こちらが久瀬代表のご自宅ですよね?」  一弥はそう言って、街の中心近くにある小さな家を訪ねた。  中から、久瀬夫人が対応に現れて、ッヒっと声を上げる。 「一弥さん、私が話しを通しますから。少し離れててもらえますか?」 「えぇ、すいません。お願いします」  その対応がデフォルトとはいえ精神的に辛いものがある。  秋子はそれをみて、僅かに口を微笑ませて、久瀬夫人(旧姓柳)に声をかける。 「今日訪問する予定を伝えた平定者の代表代理とkanonの理事代理です」 「あ、はい。聞いてますが……先ほどの人は?」 「倉田一弥さんです。理事の弟さんで」 「あぁ、すいませんでした。とても失礼な対応をして」  引きつった笑みを浮かべて案内しますっと2人をつれて歩く皇子。  一弥とは極力目を合わせないようにしている。  よほど、刺激的に映るようだ。それも悪い意味で。  案内された奥の部屋は、中央管理室にでもなるのではないかと思われる造りだ。  まだ、機材がそろっていないので何とも言えないが、候補予定地のうちの一つであろう。  ちなみに、この家が出来て一番喜んだのは竹井と須藤の2人である。  なぜなら、新婚夫婦と一緒に生活する事ほど精神的に大変な事はない。  ちなみに彼らは今、別の場所をドールで整備している。  彼らにはまだちゃんとした家屋はないが、近くのプレハブで生活をしてた。 「皇子、ありがとうございます」 「これが私の仕事だもの。圭一さんも、お仕事頑張って」 「わかってます」  軽くキスを交わして、出て行く皇子。  秋子はそれを少し羨ましそうにみていた。 「お恥ずかしいところをお見せしました……しかし、こうでもしないと妻が嫉妬するもので」  圭一は複雑なしかし、幸せそうな笑みを浮かべて2人に対して頭を下げた。  そして、上げた時にすぐに口を開く。 「一弥さん、いえ、相沢さん。それを外しても良いですよ。私は貴方の事を知ってますから」 「良いのか? っというよりも、何故っと聞いたほうが良いかな?」 「私の育ちも貴方と似たようなものでしたし、一度貴方に叩きのめされていますから」  覚えていないですかっと圭一は目を細める。  祐一はゴーグルを外して思い出そうと必死になっていた。  確かに声には聞き覚えがある。 「何処かで会った事が有りそうな声なんだが……」 「実際は初対面ですし、私の父を殺す事で頭が一杯でしたでしょうしね」 「あの時の?」 「えぇ、そうです。それと、勘違いしないでください。あの時あの場で私も死ぬはずだったんですから」 「あの、何の話なんですか? 祐一さん」 「まぁ、知り合いだったというわけですよ」  苦笑する祐一に、圭一も穏やかな笑みを返した。  方面は違っても、育て方はほぼ同じようなものだろう。  圭一は操り人形として育てられ、祐一は兵器として育てられた。  年齢こそ、祐一のほうが下だが、精神的な双子と言っても良いだろう。  その2人には共通点が多い。もっとも、談笑をしに来ている訳ではないのでそういった話は後にという事になった。 「そのうち来ると思っていましたが、用件は?」 「平定者の活動で保護された子供達をこの街に住まわせて欲しい」 「それは、里親探しといった事で良いのですか?」 「最終的にはそうなる」 「ふむ、できれば拒否したい」 「この街の警備は平定者が受け持つし、ドールなどの兵器にその他はスポンサーが提供する」  スポンサーの一覧をまとめた書類を見て、圭一は目を白黒させる。  ドール開発のトップ3社に、海運産業の最王手で、シェアの8割を持つ相沢海運がそこに並んでいるのだ。  化石燃料の殆ど無い世界では、陸上で物を運ぶよりも海から運んだほうがコストが良い。  実際、大きな都市が海岸沿いの近くにあることが多いのはこんな理由があるからだ。 「悪い条件では有りませんね」 「では?」 「ですが、人というものには感情が有ります。私の一任では決められないのですよ」  圭一は困った笑みを浮かべる。  それもそのはず。この街も元々は戦争被害者たちなのだ。  そういったことに一番敏感な人たちの集まりである。 「この街に受け入れる戦争被害者の人が子供達を拒否したらそれの話は無かった事で良いですか?」 「それで構わない。しかし、この街だからこそ、頼みに来ているっと思って欲しい」 「祐一さん……」 「それは何故ですか?」 「久瀬なら、その子達の気持ちがわかるからだ」 「……フフフ、ならば頑張るしかありませんね。皇子そこに居るのでしょう? みなを集めてください」 「は、はい」  皇子が、物陰からそっと返事をした。  圭一は信用が無いのかっと少し、残念そうな顔である。 「妬いて貰えるのは嬉しいが、相沢君の妻に手を出す勇気はないよ。それに……」 「圭一さん……」  恨めしそうに圭一を見る皇子。  圭一が心外だと言う感じの苦笑を浮かべる。 「あぁ、言い方が悪かった。そんな顔をしないで。皇子以外の女性は僕の目には魅力的に映らない」 「ぁ……」 「許してくれるかい?」 「はぃ」 「恥ずかしいことをさらりと言う奴だな……」  祐一は隣の秋子をみる。子は、祐一を見上げてポーっとしていた。  口が何かもごもごして何か言っているようだが、動きが小さく、聞き取れないし読み取れない。 「ふ、ふふふ」 「ど、どうかしましたか? 秋子さん」 「いいえ、なんでもないですよ?」 「では、私達は街の人に話しを聞いてきます」  そういって2人は出て行く。  残された秋子と祐一はお互いに苦笑しあっていた。 「でも、もしこの街に受け入れられたとしてもその先はどうするつもりですか?」 「流石に俺が張りつきっぱなしってわけにもいかないからね。それは判っているさ」 「もしかすると、その子達を取り返そうとするかもしれませんよ?」 「だけど、船の中に閉じ込めるわけにもいかない。一度周りを知る場所が無いといけないんだ」  祐一は一つのファイルを取り出す。  秋子はそんなものを用意していたのかっとそれに手を伸ばした。 「マリオネットプロジェクト。これはさっきの久瀬が考えてたものなんだけどね」 「えぇ」 「この街を護るのだけならうってつけかと思ってる」 「ちょっと待ってください」 「流石にこれだけでは無理だと思うけどね」  これならば、被害はあまり出ない。  物的に被害が出るが人的な被害は少ないだろう。  少ない人数でカバーができる事には違いない。  秋子は複雑そうに溜息を吐いた。 「おっさん、秋子さんで言う石橋さんの情報もあわせれば、何とか活動も起こしながら護れる」 「そうですね、ですが甘いです」 「やっぱり常駐する人が欲しいよな……」 「それも、切り込むような人ではなくて狙撃主のような……」  頭を悩ませる2人に閃くものがある。  駄目で元々なのは百も承知といった感じで声を上げた。 「「あっ……」」  同時に声を上げて顔を見合わせる。  アイコンタクトで、何となく言いたい事がわかってしまう2人。 「北川はどうなったんでしたっけ?」 「確か、軍を辞めたはずです」 「母さんに問い合わせてみないと解らないけど、でも名前を覚えたフリーの人間を放って置くほど……」 「姉さんは抜けてませんね」  共通の人物を思い浮かべて笑いあう二人。  何とかなるだろうと、笑うのだった。 「さて、久瀬の説得待ちだな」 「そうですね」 「説得が出来てたのなら、北川の事を考えようか……」 「えぇ、そうしましょう」  ゆっくりとした時間が流れる中。  書き事祐一は寄り添って、圭一が返ってくるのを待っているのだった。
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     北川は招待されたパーティーで今まで、見なかった顔を見る。  kanonの理事弟の倉田一弥だ。  遠目からでも判る異様さ。はっきり言ってかなり目立っている。  人が居るのに、遠巻きにされている。まるで爆弾でも扱っているみたいに。 「おいおい、あれって確か?」 「はい、kanonに最近現れた凄腕の……秘書でしたよね?」 「まぁ、風の噂程度だけどな……でもなんでこんな所に居るんだ?」 「私も、最近の情勢に詳しいわけではないので……」 「だよな?」  そんな事で目を合わせて、微笑みあう。  幸せな空間が出来るが、そのまま続けてっと言うわけではない。 「む?」  北川が何事かと騒がしくなっているほうをみた。見てから北川の表情が曇る。  倉田一弥がこちらに向かって歩き出していた。  人垣が綺麗に開いて行き、進行方向に道が出来ている。  その道が、北川たちの居る場所に向かっていた。  後を振り向く北川に瑠奈。 「……こっちにきているよな?」 「え? えぇ、そうですね」 「俺達の他に誰も居ないよな? あいつの進路には」 「そうですよね?」 「知り合いか?」 「北川さんの知り合いで無いのでしたら、私の知り合いでもありません」  何故こちらに来るのかわからないといった感じの北川ペア。  後ろを確認するが、後には誰も居ない。  目的が自分たちなのか判らないまま、その場に居続けた。  一弥の表情が(と言っても口元だけだが)見えて苦笑しているような気がする。 「まるで、サーカスのライオンみたいだな」 「そうですね。でもこっちに来てますよ?」  その一弥が北川の前に到着する。  一つの目玉の中に内包される7つの眼に捉えられて、北川は顔を引きつらせた。  はっきり言って不気味である。もし隣に瑠奈が居なければ彼とて好んでこの場に居ないだろう。 「はじめまして、倉田一弥です」 「あぁ? あ、あ、すまない。北川潤だ……ぁ!?」  何かに引っ掛かりを覚えて、北川は声を上ずらせた。  そして気がつき、顔が驚愕に彩られる。 (何で、こんなところに、相沢が居るんだよ!) 「あの、お連れ様の顔色がよろしくありませんが?」 「え?」  瑠奈をみると確かに顔色が悪い。  確かに悪い。かなり悪い。原因はやはりあれだろうかっと北川がそれを見た。  一弥の口元が苦笑しているのがわかる。  北川は、苦労しているんだなっと何となく感じた。 「主賓に断わって、医務室にお連れしますよ」 「初対面ですみませんね。『倉田』さん」  北川は倉田の部分に力を入れてその眼を見詰め返す。  そこへどこからか聞きつけてきたのか有夏が入ってきた。 「北川、久しぶりだな。元気にしているか?」 「あ、有夏さん。軍をやめた事以外に変りはないですね」 「そうか、うん? お前達付き合ってるのか?」 「え? あ、はい。俺は瑠奈と付き合っています」 「それを絶対に離すんじゃないぞ?」 「もちろんです」 「なかなか言うじゃないか……あぁ、暑い暑い」 「有夏様、申し訳ありませんが、医務室のほうに彼らを案内してよろしいですか?」  話が途切れたところに一弥が有夏にそう発言する。  一弥の方をみて、有夏は頷いた。 「すまないが、お願いする。スタッフが全てで払っているんでな」 「いえ、こちらこそ。出すぎた真似をして申し訳ありません。ではまた後で」 「あぁ、また後で」  そう言って、2人をつれて歩き始める。  人が少なくなったところで、北川に話しかける一弥。 「久しぶりだな、北川に七瀬さん」 「あ、あぁ。久しぶりだな、相沢」 「え!?」 「北川は声で俺を判別できたか」 「まぁな。付き合いは短いが、わからない声じゃない」 「七瀬さん、驚かせてすまない」 「お前さんのその仮面に驚いているんだよ」 「そ、そうですね」  それ以上瑠奈は驚きで声がでない。北川はなんでもないような顔をしている。  医務室について、その部屋に鍵をかけてようやくその仮面を外した。  相沢有夏の開いているパーティーなのだ。  祐一が居てもおかしくはないが、それでも居ないだろうと高をくくっていただけに驚きは大きかった。 「どうした? 俺の顔に何かついているか?」 「祐一さん。何故ここに貴方が居るのか驚いていらっしゃるんですよ、2人は」  その声に更に驚く、2人。  祐一よりも更に驚いたのは、祐一の隣に現れた秋子である。  何故こんなところに? っと言った疑問顔で2人は秋子を凝視していた。 「あの後にですね、祐一さんに助けてもらったんですよ」 「本当ですか?」  北川と瑠奈はそう顔を見合わせて、僅かに微笑んだ。  死んだといわれていた人間が生きていたのだ。  うれしい事は無い。しかし、それでお終いっという訳でもなかった。 「どうして戻ってこなかったのですか? あんなに大変だったのに……」  瑠奈が非難がましい視線と声で秋子に質問する。  北川は横でそれを見るにとどめた。  なぜなら北川も同じ意見だったからだ。 「帰りたいのは山々だったのですが、エリアには拒否されました。死人だと言われまして」  頬に手を当てて、困ったように微笑む秋子。  実際に秋子がエリアMに入ろうとした時に起こった事実だった。  しかし、混乱しているせいか他のエリアでは普通に自分の戸籍が使える。  その戸籍を今はエリアMからエリアAに移して今は生活しているのだった。  入れはしなかったものの戸籍を移す事は出来たのだ。エリアMの混乱している度合いがよく判る。  その事実を北川たちに解るように説明していった。 「そう、だったんですか……なら、しょうがないですね」 「それで相沢は……帰れるわけも無いか」 「そうだな。元々俺の出身エリアじゃないし」  祐一は苦笑しつつ、北川に答える。  そして、祐一は切り出した。 「2人はこれからどうするんだ?」 「ハハ……路頭に迷ってるな。ドール関連のものにはあまり就職したくないし」 「かといって、私達にお金とかコネは無いですから」  北川が言った言葉を留美が補完する。  良い感じの夫婦に見えた。 「北川はもし、俺が頼んだらドールに乗ってくれるか?」 「時と場合と場所によるな。俺は戦争したいわけじゃない」 「それは俺だって同じだ」  苦笑しあう北川に祐一。  秋子と瑠奈は2人を不安そうに見ていた。  祐一は北川と瑠奈に平定者の活動とその保護した子供達を預ける町のことを説明する。 「おいおい、そんな事を話して良いのか? 部外者だぞ?」 「あぁ、北川に七瀬さんを信じているからな」  口を挟んだ北川に、祐一はそう切返した。  説明が終って、北川は瑠奈と2人で相談を始める。 「相沢、喫茶店の店舗兼自宅の土地と建物の権利書とドールを俺用のを一つで手を打とう」 「本当か?」 「あぁ、毎日乗る訳でも無いし、護る為のドールなら乗っても良い」 「ありがとう」  瑠奈はちょっと不安そうな目で北川を見ている。  北川はその視線に気がついて、安心しろっと視線を返した。  その視線を受けて瑠奈はしぶしぶ頷く。 「相沢も出来うる限り、参加するんだろ?」 「当たり前だ」 「俺の役割は時間稼ぎ。そういう認識で構わないんだな?」 「そうしてもらえると助かる」 「これなら良いだろ? 瑠奈」 「もう……解りました」  ちょっと不満そうな顔をしつつ北川に頷く瑠奈。  微笑ましいものを見て祐一と秋子はとりあえずホッとした。 「後でここに来てくれ」 「おう、わかった」 「パーティーの途中ですまなかったな。戻って楽しんできてくれ」 「言われなくとも。行こうか瑠奈」 「はい」  腕を組んで出て行く2人を見送る祐一と秋子。  祐一はゴーグルをかけなおした。 「これで一安心ですね。一弥さん」 「えぇ、秋子さん。これからもよろしくお願いします」 「もちろんですよ」  そういって微笑み会う二人。  この後、街と平定者がどのように発展していったかは別のお話。  彼らと彼女達がどうなったかもまた別のお話。 To the next stage

    あとがき  場面がぽんぽん飛んでます。えぇ、悪い癖だと思いますが、これが限界だと思われますね……  一つの場面で、一話が構成できれば良いのですが巧く話がつなげられません……反省です。  登場人物ももっと満遍なく出したほうが良いですよね?  後は、冒頭部分の受付嬢らしきコメント。これの後半部分がweb拍手に行ってます。  本当に没の部分で、ためしに書いてみただけなんですけどね(苦笑  ではここまで読んでいただいてありがとうございました。  追伸、web拍手の中身入れ替えました。  このまま、週で変えていったほうが良いのか悩みます……  出来うる限りそうしようかなぁ……


    管理人の感想


     ゆーろさんからのSSです。  前回の暗さから正反対ですね。  建設的な話がメインでしたし。
     場面が飛ぶのは必ずしも悪いわけじゃないのですけどね。  相沢海運の名前がいきなり出てきた点は気になりました。  有夏が代表か幹部なのでしょうけど、そこが唐突過ぎる感がします。  会社なら突然書かれても大丈夫でしょうけど、今までいたキャラに追加要素が突如加わるのは……。  他の面子が皆金持ちだから、彼女もそう言った事はありると言えばありえるのでしょうけど、それにしてもね。  それなりに有名みたいな印象を受けましたけど、今まで誰も何も言ってませんでしたし。
     北川夫妻(あえてこう言いましょう)が祐一と再会しましたね。  旦那さんも、さすがにドールから完全に身を引く事はなかったみたいで。  これからは戦うマスターになるんですね。  喫茶店の店主が強いのはもはや王道?(笑

     久瀬の発言でありましたが、秋子さんはもう祐一と結婚してるんですか?


     感想は次の作品への原動力なので、送っていただけると作者の方も喜ばれると思いますよー。

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