神の居ないこの世界で−A5編−


→穏やかな時間に起こる穏やかじゃない出来事

     さて、珍しく。本当に珍しくだが、佐祐理、舞、美汐、真琴、秋子達が船に集まった。  秋子と美汐そして、真琴は結構平定者の関係で居る事が多いが、佐祐理と舞も、となると珍しい。  やはりと言うとしつこいかもしれないが、茜と聖も船に同乗している。  それが一同に食堂にて顔を合わせた。時間はおやつの時間。  当然のことながら、それぞれ仕事が残っている。 「……何だか、珍しい顔合わせになりましたね」 「全員揃ったのは久しぶり」  美汐と舞の一言からそれは始まる。  食堂での会話のひとコマ。ちなみにこの席には祐一は居ない。  お菓子を作っている真っ最中で、今はアリアとサラサの2人に教えながら作っている。  秋子も手伝おうとしたが、何故か茜に引き止められていたのでしぶしぶこちらに参加していた。 「本当に全員揃うのは久しぶりですね」 「さて、今日集まってもらったのは、エリアKに着くまでの3日間の予定を決めるためです」  秋子がしみじみそう言った後に、佐祐理がその場を仕切るために発言する。  それぞれ別に予定を立てている可能性もあるが、人気者の祐一をどうするか? が議題だった。  それぞれ仕事がある、まぁ、秋子と聖はそれほど重たいものでもないが。  重たいのはkanonに勤めている4人。それなりなのが茜と言った按配である。  ちなみに、祐一は仕事を船に乗る前に殆ど終らせてあるので細かい仕事しかない。  ほぼ休日のようなもの。だから、今回のような争奪戦に発展しているのだった。  話し合いを始めようとしたとき、聖がビク、と身を振るわせた。  そして、何か凄まじいものを見たと言う表情になる。  それを不審に思った茜が視線の先をたどり、同じような表情で固まった。   「あぅ? どうしたのぉ!!」 「どうし!?」  まことが不思議そうにそちらを向き、語尾を上げながら硬直。  美汐もそちらを向いて、椅子から転げ落ちた。  舞はその場を動かないのもの、視線をすぐ逸らす。  佐祐理も舞と似たような反応だった。 「えへへ〜、せいこうなの!」  そこには倉田一弥時につけるゴーグルをつけた秋弦が居る。  ぶかぶかなそれをつけてご満悦そうな秋弦だが、周りは硬直していた。  秋弦の一種の異様さに気圧されてである。  もっとも秋子を除いて、であるが。 「秋弦? それは大切なものだから、悪戯しちゃ駄目って言ったでしょ?」 「いたずらじゃないの、ちゃんとパパからせーきのてつづきをふんで、かりたノー!」  ひょい、とゴーグルを取り上げる秋子。  秋弦はご満悦だった表情を一転させて、不機嫌そうだった。  頬を膨らませて、両手を地面に向けて真っ直ぐに伸ばし不機嫌だとアピールする。  可愛いポーズだが、秋子はそれを見て溜息を吐いた。育て方を間違ったかしらと。 「そうね、ゴーグルは大切に扱ってるけど悪戯しちゃ駄目よ」 「いたずらなんてしてないの、ただかけただけなの」 「あら、そんなこというの」  おもむろに、それを被る秋子。  流石にサイズ的に少し合わないが問題ない程度に収まる。  そして、秋弦を見る秋子。秋弦は怯え始めた。  まるで、見たことの無い怪物に睨まれたみたいに。 「ま、まま、こわいの」 「あらあら、今度から怒る時はこれをしようかしら?」  秋弦のときには動かなかったカメラがキュルキュルと音を立てて秋弦を捉える。  捉えられたその先の秋弦は蛇に睨まれた蛙状態。  カタカタと、指先から震えが体全体に広がっている。 「ままままま、まま、こそいたずらはだめなの」 「ちゃんと借りる正規な手続きはするわ。どう悪戯じゃないでしょ?」 「ふ、ふぇぇぇぇぇ! ぱぱ! パパ〜〜!! ままが! ままが〜〜〜!!」  言い負かされてその上、怖ろしい躾までされて泣きながら秋弦は食堂の台所に飛び込んだ。  それをゴーグルを外しながらやれやれと、溜息を吐く。  最近この手の悪戯が多くなっている。もっとも秋子が瀬戸際でブロックしているのだが。  だから船の中で悪戯の被害は思いのほか少ない。  代わりに秋子の気苦労が反比例に増えて行く。被害が少ない=秋子の気苦労が多いと言う事だ。  余談であるが、祐一がゴーグルをつけていても秋弦はそんなに驚かない。  慣れとは怖ろしいものであるが、他の人がそれをするのにには慣れていなかったみたいだ。  ちなみに、一弥とのファーストコンタクトは混乱しながら、泣き出した。 「さ、さて、気を取り直して話を進めましょうか?」  佐祐理がようやく息を吹き返して何とか議題が元に戻る。  美汐も何事もなかったように椅子に座りなおしていた。  誰もその事に突っ込みを入れなかったのは彼女達の優しさだと信じたい。  秋子としては、このまま議題をうやむやにして祐一との時間が多くなる事を望んでいたがそうはならかった。  加えて、秋弦の躾対策を相談したいと思ったが後の祭りでもある。  その判断の遅さが、致命的になるとは知らずに。
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     さて、その頃の厨房。  アリアとサラサの2人がオーブンの前でケーキのスポンジが出来上がるのを待っていた。  顔をつき合わせて、オーブンがなるのを待っている。 「ふぇぇぇぇ! ぱぱ! ぱぱぁ!」 「ん?」  トッピングするものを用意する手を止めて祐一がそちらを向く。  切り裂くような泣き声。秋弦が、祐一に抱きついた。  そして、顔を祐一のズボンに埋めて泣き続ける。 「秋弦、どうした?」 「あのね、あのね……」  鼻をぐずらせて、しかも泣きながら説明をする秋弦。  アリアとサラサはとりあえず聞き耳を立てているが興味はそちらよりもオーブンだった。  中で焼きあがりつつあるケーキのスポンジを目を輝かせてみている。  秋弦から先ほどあったことを聞いて祐一は苦笑した。 「解ったよ。そう簡単に貸し出せないようにしておくから」 「ぱぁぱぁ! だ〜いすき!」  泣き顔のままだが、ようやく収まり始めた。  それと時を同じくして、オーブンが焼き上がりを知らせる。 「「できた!」」  ぱん、とレンジの前でハイタッチを交わすアリアとサラサ。  祐一に手伝ってもらいながらでも、自分で作っているものが形になりつつあるのだ。  嬉しくないはずが無い。 「秋弦も一緒にするか?」 「うん!」  鍋掴みを装着した祐一がレンジの中からスポンジを2つ取り出す。  そして、冷めるのを待っている間に注意と綺麗に見えるコツを3人に教え始めた。  当然のことながら2人組みは祐一と秋弦。アリアとサラサだ。  秋弦はまだ巧く出来ないので祐一が後から手を添えてやっている。  サラサとアリアは姦しくやっていた。  秋弦は先ほどあった事をすっかりと忘れてご満悦だったのは言うまでもない。
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     一方、食堂。その予定を決める方法で論議が頓挫していた。  あれこれ言っているがなかなかに決まらない。 「早く決まるアミダ籤とかはどうでしょう?」 「あぅ……作った人が有利な気がする」 「……模擬戦闘」 「それは、私達が不利だ。医者と技術者に戦闘員とではハンデがあっても勝負にならない」 「あはは〜、ババ抜きなんてどうでしょうか?」 「佐祐理さん、トランプは未開封のものを用意してますか?」  上から秋子、真琴、舞、聖、佐祐理、美汐の順である。  まだ茜だけが発言していないが、迷走していた。 「では、こういうのはどうでしょうか?」  茜が目の前にこの船の見取り図のパンフレットと鋏を出して、パンフレットの船、外側部分を切り離す。  船の内側部分になったパンフレットを更に7等分に切る。  そして、それをパズルのように並べた。  他のメンバーは何をしたいのか、わからない。 「今から3時間後の祐一さんが誰と何処で何をしているか、それを予想しましょう?」  皆がなるほど、と静かになった。  茜は地図を見つつ、更に説明を続ける。 「まず、この7つのどこに居るかそれぞれの地図をそれぞれ選びます」  7つに裁断されたパンフレットの地図を指差しながら考えを言う。  地図を選んだら、次にどんな事をしているか。  そして、自分達は干渉しないで、誰と一緒に居るのかを予想する。  干渉した時点で、その人間は失格となる。  正解している数の多い人から好きな日の夜に予定を組み込むことが出来るという決まりになった。  場所はそれぞれ一箇所を選び、行動は被らないようにする。  誰と一緒に居るというのは、重なっても良いことになった。  合っている時が単発の時の優先順位は、場所、行動、誰との順である。 「では、予測した地点が誰かと重なったらどうするのですか?」 「話し合いが望ましいですが、ジャンケンで良いのではないですか?」 「あはは〜、それでは地図で不利を被った人は、予想が重なった場合に優先されるにすれば良いじゃないですか」 「……文句ない」 「確かに、それは良いバランスになると思う」  舞と聖が頷き、他のメンバーも佐祐理の意見に文句は出なかった。  それでは決まりと、なったときに祐一たちが厨房から出てくる。  茜と聖は協力して地図を片付け、さりげなく秋子が祐一たちの足止めに行った。  ちなみに切り分けられたケーキをアリアとサラサが持って来ていて、祐一が飲み物だった。   「まま、ぱぱといっしょにつくったの!」  嬉しそうに秋子にじゃれつく秋弦。  秋子は秋弦の頭を撫でながら視線を祐一に移した。 「手伝う事有りますか?」 「2人のケーキを配る作業を手伝ってあげてください」  ちょっとした笑みを浮かべる祐一。  2人はテーブルにケーキを置くと丁寧にケーキを分け始めた。  片方はちょっと形がいびつになっている。  それでも、2人は嬉しそうにお皿に2つずつケーキを乗せて行く。 「メルファとファイ連れてくるね!」 「あ! 待ってよ! アリア!」  よほど自分で作ったのが嬉しいのか、アリアとサラサは一気に駆け出した。  自分で作ったのだと、メルファとファイに自慢したいのだろう。 「じゃあ、先に食べてようか」 「いえ、待ってましょう?」  そういって席に着く祐一。秋弦は祐一の膝の上に陣取った。  秋子のその言葉に皆が頷く。団欒というものは良いものだと知っているからだ。  ただ、秋弦だけが真剣に自分のケーキを見詰めていた。  先ほど、プリンを食べていたにも関わらずにもだ。 「秋弦は今回はやめておこうか?」 「えー?」  祐一のその一言に秋弦は、納得がいかないという表情になった。  目の前に美味しそうな物があるのにお預けをされているような物だし。 「夕食を食べれなくなるだろ?」 「そだちざかりだからー」 「何でそんな単語を覚えてるんだよ……」 「あ、すいません教えてしまいました」  それに答えたのは、美汐だ。  どうしてだと祐一が聞こうとしたときに。  アリアとサラサが、メルファとファイをつれて帰ってくる。  タイミングを逃したと祐一は諦める事にした。 「「おまたせ!」」  アリアとサラサが声をそろえて言う。  メルファとファイは目を丸くして、ケーキに驚いていた。 「わぁ、これお父さんが作ったの?」 「……メルファ」  ファイはメルファの袖を引いて、サラサとアリアの方へと向かせる。  アリアとサラサは頬を膨らませて怒っていた。  私たちだって作ったんだもん! そういう表情になっていた。 「あ、あー確かに片方は形が……まぁ、胃の中に入れば同じだよね?」 「メルファ……2人激怒。発言失礼」  ファイが、2人をなだめながら席へとついた。  お茶会が始まって、そのケーキの評判はよかったとだけ言っておこう。  ちなみに、秋弦は祐一の物を食べさせてもらっている。文字通り食べさせてもらっていた。  一人分を、半分こにしながらである。  初め、女性陣の目が結構怖かったのは祐一の感じた感想。秋弦はいたって普通だったが。  途中で子供に何んで妬いているんだと皆が我に返りほのぼのとした空気になる。  お茶会が終ってからの事。祐一が後片付けをしようとしたら秋子にやんわりと断わられた。  しょうがなく、食堂を出て行こうとする。  するとメルファに引き止められた。 「お父さん、今日はお休みなんだよね? ね?」 「そうだけど?」  メルファがガッツポーズをとって、ファイを見る。  ファイは何だか迷惑そうな感じの表情だった。  表情が、秋弦の相手は僕がするのかと言っていそうで申し訳無さそうな顔になる祐一。 「じゃあ、行こ!」 「行……」  ちなみに、アリアとサラサは後片付けを手伝っている。  今回作ったケーキの責任を最後まで果たしたいらしい。  メルファとファイは祐一を連れて、訓練施設へと行くのだった。
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     さて、後片付けの終った食堂に場所は移る。  アリアとサラサは聖に勉強の課題を出されてしぶしぶ船室に戻っている。  これが終ってから遊んで良いといわれたのでたぶん必死になって終らせている頃だろう。 「おえかきがしたい」  秋弦がわめきだした。こんな事を言うのが珍しいのか皆が困惑している。  茜はしょうがなく、先ほど切った船のパンフレットの外側といつも持っているペンを一緒に渡した。 「ありがとー」  茜に無邪気な笑みを返して、テーブルの端で何かを書き始める秋弦。  秋弦なら聞かれていても良いかとそれぞれが、意見を言い始めた。  すんなりと、場所が決まったのは意外であるが。ただ、行動に関しては結構難航した。  一番人気が遊んでいるか、相手をしているだ。  多少のいざこざが有ったものの、結果として決まった。  茜は訓練エリアでメルファ、ファイと訓練している。  秋子は個人船室エリアで秋弦と遊んでいる。  佐祐理は食堂共用エリアでアリアとサラサの相手をしている。  聖は医務エリアでアリアとサラサの勉強を見ている。  舞は格納庫エリアでメカニック達と機体整備している。  真琴は娯楽エリアでアリアとサラサの面倒を見ている。  美汐は操縦室エリアでファイと仕事をしている。  言葉の言っている事が違うだけで結構重なっている事が多い。  とりあえずのルールともう一度確認してから、不思議そうな顔の秋弦に皆が気がついた。  予想の内容は見えてない。 「なにしてるの〜?」 「あははー、あのですねー」 「……秋弦は祐一が3時間後に何してると思う?」  佐祐理がしどろもどろになった時に舞がすかさず、フォローを入れる。  秋弦に質問を向けることによって、質問自体を忘れる用に、だ。  秋弦はそれに少し考えてから、言った。 「ひとりでおそーじしてるの」  そういって駆け出す秋弦。  先ほど書いていた紙とペンはそのままだ。  秋子は慌てて、秋弦に行き先を聞く為に手を伸ばすが、するりとそれを避ける。 「秋弦! どこにいくのですか!?」 「パパとね、あそぶの!」  多分、やっている事は気がついているはずがない。  そう思いたい7人だった。 「え、えっと、秋弦ちゃんが持ってたのは……」 「確か船外の地図ですよね?」 「あぅ〜、参加してるのかな?」  困惑する茜。なんと言って良いか判らない美汐に真琴。  とりあえず、保留という事にしてここで解散と相成った。
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     一方、祐一のところに場面が移る。  現在、メルファとファイを相手に武術で言うところの型を教えていた。  飲み込みはファイの方が早い。  運動に対する癖がないのがその要因だろう。   「さて、これが一通りの型なんだが……どうだ?」 「難」 「うん、難しい……」  祐一とメルファはそのまま組み手に入っている。  ファイはそのまま型の反復運動をしていた。  そこへ秋弦が入ってくる。初めはメルファと祐一との組み手を見ていた。  しばらくして飽きたのかファイの動きを観察し始めた。 「……」 「ぅーん?」  秋弦の視線を気にしつつ、いつのもペースで型の反復を行うファイ。  ファイの動きはとてもゆっくりだ。  太極拳の動きを想像してもらうと良いかもしれない。  激しい動きではないが、確実に汗をかき疲れる運動である。  型をゆっくりと行うことで、形を徹底的にそして綺麗に覚える為であった。 「うん!」  2度の目の型の動きを始めたファイの横で秋弦は同じ動きを一生懸命真似始める。  ゆっくりとした動きだから、隣で1テンポ遅れて真似が出来た。  その動きが余りに堂に入っているのでちょっと意地悪したくなったファイ。  2度目の型が終った時に、今まで習った型を初めから始めた。  ゆっくりとした動きだが、確実に今までとは違う。  そのはずなのだが、秋弦は何故かついてこれた。 「……驚」 「う〜ん? あ!」  唸り声を上げながら、ファイの動きがわかると同じ速度でまねをする。  祐一と秋子の子供だと判る瞬間でも有った。  簡単に真似をされていると思うファイ。こうなると意地になるのが人間である。  ファイは知っている型をすべてやろうと言う意志を固め、ゆっくりとそのまま動き続けた。  秋弦は無邪気な笑顔を浮かべたまま真似し続ける。  流れるような動きの中に鋭さを隠す。そんな型を続けているが秋弦は遅れない。  ファイも秋弦も汗だくになりつつあった。  秋弦も秋弦で必死になって、動きを真似る。秋弦も意地になっていた。 「すごーい……」 「なんとも……秋弦には教えたつもり無いんだがな?」  祐一は複雑そうな顔で秋弦の動きを見ている。  一方のメルファは真剣に2人の動きを見ていた。  ファイが綺麗な型を披露している為なのか、秋弦もファイと同じくらいのレベルで綺麗な型を演じている。  ファイも秋弦も汗まみれになって。祐一とメルファが見ていることすら気がついていない。  もし気温が低ければ、頭から湯気でも出てきそうな勢いであった。 「お父さん、あの2人いつまで続けるんだろうね?」 「さぁな? 気が済むまでじゃないのか?」 「えー? もう2巡目に入ってるよ?」 「さて、終った時に、一息つけるようにしておくか」 「あ、お父さん。それは私がやっておくから……代わりにやって欲しい事があるの」  メルファは祐一に頼み込む。  祐一はそれに嫌な顔せずに頷いた。 「じゃあ、2人を頼むよ? もし終らないようだったら適当に切り上げさせてあげて」 「は〜い」 「秋弦は多分くたくたになって寝るだろうから、秋子さんのところに連れて行って」 「まっかせて」  メルファは小さくガッツポーズをして答える。  祐一は微笑んでから訓練場を後にした。
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     場所は医務室。そこではアリアとサラサが唸っていた。  目の前にあるのは教科書。それの問題でつまっている様な感じ。 「う〜……」 「あ! ……違う」  聖はそれを聞きながら自分の書類に向かっていた。  普段なら、秋弦も一緒のはずなのだが午前中に祐一と一緒に済ませてしまっていた。  父親の前で良い姿を見せたいのかいつもの3倍の速度で終らせるのだ。  次、祐一とやる日が判ったら少し難しい問題を用意しようと聖は心に決めていたりしている。 「「え? えぇ〜〜〜!!」」  アリアとサラサが、叫び声を上げた。  聖は何事かと2人の方向を見る。  視線を追ってから、口があんぐりと開いた。  窓の外で、祐一が窓掃除をしているのだから、驚いてもしょうがない。 「お、お父さん……何してるの?」 「えっと、まだ船は海の上だよね?」 「うん……落ちたら凄い事になりそう」  アリアとサラサが教科書とノートを放り出して窓に駆け寄る。  祐一は丁寧に窓を拭いていた。  もちろん命綱はつけているが、危ない物は危ない。 「全く……何をしているんだね!」  聖が窓に詰め寄り、祐一に対して大声を出す。  窓の中の凄い剣幕の聖に気圧されてか、祐一は何か言っているようだったが、窓が厚く声は通らない。  祐一はしょうがなく、片手でジェスチャーを始めた。 「何々? 窓が汚いと、外の風景が見えないと思って?」  頭が痛い聖。それだけで、窓を掃除しているのかと顔を顰めた。  祐一は問題ないと合図を送ってから作業を再会する。  丁寧に、拭かれた窓は確かに綺麗だった。 「……だからと言って、今やらなくても良いだろうに……無茶はしないでくれ」  聖はそう呟いて、そう合図を送り返した。  アリアとサラサも勉強に戻るように言う。2人はそれに素直に従った。  そのとき内線がなり、聖は時計を見る。そして溜息を吐いた。  3時間ちょうどたっている。 「医務室です」 『あはは〜、お疲れ様です。祐一さんはどこに居ますか?』 「外で掃除をしているよ」 『外? という事は医務エリアですか?』 「いや、船外だ」  聖は溜息を吐きながら説明する。  それと、手の空いた人間が甲板に行って祐一に説教するように頼み込んだ。 『結局、正解は誰も居ないですね?』 「秋弦を除いてな……」 『あはは〜』  乾いた笑い声を出す佐祐理。  聖は溜息しか出なかった。  結局、勝負はお流れになり、とりあえず今晩の祐一は秋弦に譲る事となった。  もし、考えが有って行動しているのなら秋弦は怖ろしい子だという認識なるがそうは思われていない。  子供なのだし、偶然だろうというのが皆の意見だ。  秋子だけは実の子供に負けて悔しそうにしているが。  祐一と一緒になれる予定は今後一緒に行動できる時間が少ない人に割り振られる事になる。  それでも、ひと悶着あったのは言うまでもない。 To the next stage

     あとがき  はい、祐一君達の日常風景でした。……今回は結構反省点が多かったり。  やはり人を多く書くと動かしずらいって言うことですね……オリキャラが前面に出てしまいましたし。  やっぱりもっと、精進しないといけないなぁって思います。  次に祐一君サイドを書くときはほのぼので無い予感です。  そろそろお話を動かそうかと。  もっとも、次回は名雪さんサイドのお話なんですけどね(苦笑  ではここから下はいつものように拍手のお返事です。 >名雪に無様な敗北を期待してます 5/8  あっさりと決まるとそれはそれで面白くないですし。  私としても決めかねているところが有りますしね(苦笑  まぁ、何と言いますか勝敗の行方については見てからのお楽しみと言う事で……   >祐一と茜のほのラブが見たい >茜の子供も見てみたい 5/9  次回のSSS入れ替え時はこの一言により、ほのラブ系統で統一します。  本音を言えば苦手なのですが、まぁ、何事もチャレンジなので。  茜さんの子供ですか……そっちは本編登場は無理かなぁって思ってみたり。  SSSでなら、可能かもしれませんけどね。……どうしましょうか?


    管理人の感想


     ゆーろさんからのSSです。
     ほのぼのだなぁ、いい事です。  秋弦嬢は周りの人間があれな所為か、かなり影響されているみたいですね。  あの歳にしては頭の出来が違うなぁ。  ゴーグル装備時の姿は考えない方向で。  彼女が被った状態で夜中にでも出会ったら、その後絶対魘されそうですよね。
     子供達がオリキャラなのは仕方ない事です。  でも個性がしっかりしているので問題はないと思います。  こういった話の時くらい目立っても、多分バチは当たらないのではないかと。  彼らは戦場に出てこないでしょうから。  戦えても祐一達が出すとは思えませんしね。

     あの船で1番変人は祐一で決定。  彼は、何やっても生きていけるタイプですよね。


     感想は次の作品への原動力なので、送っていただけると作者の方も喜ばれると思いますよー。

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