誰かのために流す涙は美しい。そう決めたのは誰なのか。
いつか、どこかで、確かに、聞いた覚えがある。
なら、今流れている涙ほど美しいはずだ。私の手の中で息を引き取る我が子の為に流しているのだから。
これほど美しい涙は無いだろう。その言葉を言った本人には。
しかし、これほど惨めな気持ちな涙が。自分を許せないこの涙が。
何より、この身を抉り出すような悲しみの涙が。
美しいと感じるはずが無い。これを美しいと感じるはずが無い。
もし、美しいと言う人が居るなら同じ人間だと認めたくは無い。
これほど情けなく、自分が嫌になってしまうと感じてしまう涙を。
例え、それが誰かのために流す涙であっても。私は美しいとは認めない。
涙よ、流れてしまえ。もう、私には涙は必要ない。全て流れてしまえ。
私は誓う。これ以上涙を流さないと。
だから、流れるだけ流れろ。涙腺よ、枯れはててしまえ。私には必要の無い機能だ。
私は誓う。もう涙は決して見せないと。
だから、枯れはてるまで流してしまえ。この気持ちを糧に、生き抜いてやる。
私の幸せを奪ったやつらに、絶対の復讐を。
この悲しみよりも更に大きな悲しみを振りまいてやる。
癒える事の無い痛みをこの身に抱いて、生きてやる。
私の居場所を壊したやつらに、絶対の恐怖を。
この痛みよりも更に大きな苦しみを痛みを振りまいてやる。
途切れる事の無い憎悪をこの身に抱いて、生きてやる。
私の全てを踏みにじったやつらに、絶対の後悔を。
この絶望よりも更に大きな絶望を、振りまいてやる。
絶対に。壮絶に。覚悟しろ。次はお前だ。
嗤いながら、まだ観ぬお前に牙を突き立てるために牙を磨いでやる。覚悟しろ。
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神の居ないこの世界で−A5編− |
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