心が、何も感じなければ。辛くはない。
私が何も気が付かなければ。苦しくはない。
心を鈍くしろ。そうすれば、辛いなどという感情から解き放たれる。
何も感じるな。そうすれば、苦しまなくてすむ。
生きる為に、何も感じるな、生きる為に。
そう思っていた。それでも、そう考えても全てが私を蝕んでいたあの頃。
いや、まだそれらに蝕まれている。
お父さんが私をそこから出してくれた。
私の知らない世界を見せてくれた。
光に溢れ、こんなにも眩しい世界を。
今まで知っていた所など比べ物にならないくらい綺麗な世界を。
色に溢れて、感動的な世界を。
私は戸惑った顔を時々見せるかもしれない。
でもそれは、お父さんに向けての顔じゃない事は覚えていて欲しいよ。
私は感謝しているの。
あの場所から私を連れ出してくれた事を。
私に、何も無かった私に涙を流してくれたことを。
私に、温かい感情をくれたことを。
だから、困った顔をしてもお父さんのせいじゃないんだよ。
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神の居ないこの世界で−A5編− |
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