神の居ないこの世界で−A5編−


→守るという事と守られるという事。前半

     kanonの会議室から理事の部屋に戻るための移動途中の事。 「かーずや」  エレベーターに乗って、後は上に昇るだけ。  扉が閉まって、3人だけになったときに佐祐理は一弥に後から抱きついた。  舞はそれを面白くなさそうに見ている。 「姉さん……いくら部外者が居ないからって……ここで、それをやるのはちょっと」  表情は判り難いが唇の形が苦笑している一弥。  舞も同調しながら佐祐理を恨めしそうに見る。  佐祐理はそのまま抱きついたまま嬉しそうに笑っていた。 「えー? だって良いじゃないですか?」 「駄目、一弥迷惑そう」  舞はたまりかねてそう言った。  ちなみに、身分証明関係(免許証とかパスポートなど)もゴーグル付きで写っている。  祐一が一弥を演じている時の呼び方は舞はそのままだが、佐祐理の事は姉さんと呼ぶ事が決まり事になっていた。  他の事情を知っている少数の人間も適応先は違うが決まり事は同じである。 「そんな事、ありませんよねー?」 「人が乗り込んでこないと良いけど……」  一弥がそういったと同時に、エレベーターの扉が開いた。  乗り込もうとしたのは2人のOLで、佐祐理と一弥を見て顔を真っ赤にした。  エレベーターに乗らずにすぐに階段の方へと歩いていく。  舞は堪らずに溜息を吐く。 「あ、あはは〜。こういう事もあるんですね〜?」 「はぁ」 「これで、また噂が広まる。一弥と佐祐理は禁断の間柄って……」 「あれ〜? もしかして舞は妬いてるの?」 「佐祐理……後で祐一に思いっきり甘える。佐祐理の横で」  そうこうしている内に、もう一度扉が開いた。  佐祐理は先ほどの格好、つまりは抱きついたまま体を動かしていない。  よって、その姿は扉の向こうの人に見られたという訳だ。 「公私混同ですか? 佐祐理さん……」 「あぅ〜、佐祐理が〜、佐祐理が〜」 「落ち着きなさい、真琴」  やれやれといった感じのジト目で佐祐理を見る美汐。  美汐はエレベーターに乗り込みながら溜息を吐く。  そして、器用にも目線を外さないまま、真琴を落ち着けるよう働きかけていた。 「全く……佐祐理さん? 一弥さんが社内で密かに人気になっているからって焦っていませんか?」 「え? 美汐、それは本当?」 「まさか、そんなはず無いだろ?」 「無自覚ですか……それはそれでカチンときますね」  舞が驚いた顔を見せるのと一弥が否定するのは同時だった。  佐祐理は知っていたのか、かなり曖昧な笑みを浮かべる。  見た目(視覚補正ゴーグルのせいで)はあまり良い印象はもたれない。  だが、実際に話してみると柔らかい物腰に言葉遣いに、細かい気配り。  もしゴーグルをつけていなかったら、簡単に人気が出ただろう。  もっとも、憧れに近い感情で恋愛感情になるかといわれると疑問になるのだが。  加えて内輪の祭りでの舞台が話題になり、主演していた騎士が一弥だと解ると静かに人気が出てきた。  あのゴーグルさえなければという感じで。 「まぁ、良いです。佐祐理さん、これがスノウドロップの予定表です」 「はい、わかりました。受け取ります」  今は、真琴と美汐はkanonのテストパイロット部隊兼実働部隊として働いている。  平定者としての活動も兼務できる為だ。  ONEで言うクロノスと同じような立場だと思ってもらえれば良い。  その計画予定表を佐祐理に提出したのだ。 「今回は真琴に一弥さん、そして秋子さん達にも手伝ってもらいます」 「私と、佐祐理は?」 「理事はこの1週間スケジュールがみっちり詰まっていると思いますが?」  舞が苦虫を噛み潰したようにだまりこんだ。  佐祐理はあぁ、そういえばといった感じで引きつった笑いを浮かべる。 「相沢海運関係その後にアイビーに出向ですから一弥さんに来てもらわないことには、話が進みませんし」 「悔しいけど……今回は諦める……」  諦めているように見えない舞。  しかし、舞が我侭を言わない為に佐祐理も我侭が言えなくなってしまった。 「あぅ〜、美汐? 予定だったらこの後すぐにだったよね?」 「えぇ、そういうことです。では一弥さんを借りていきますね」  そう言ってエレベーターを身近の階で止めて、さっさと降りてしまう。  真琴は戸惑う一弥の袖を引っ張り、一緒に降りる。  美汐は優雅に一礼してから、エレベータの扉を閉じた。 「何だかものすごい敗北感……」 「あはは……やられてしまいました……」  残された二人の声は何だか納得のいかない感じの声。  だが、どうしようにも仕事なのだ。しょうがないと2人は同時に溜息を吐いた。
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     港の船に、美汐と真琴そして、祐一は乗り込んだ。  祐一はまだ、ゴーグルをつけているので、まだ倉田一弥である。  船の船内に入った3人を迎えたのは秋子だった。   「いらっしゃい。お持ちしてましたよ」  祐一は、ゴーグルを外しつつ苦笑した。  真琴も美汐もそれに倣い、私服に着替えるべく自室へと移動する。 「相沢さん、ではまた後で格納庫で合いましょう」 「そうよぉう! またあとでね!」 「あぁ、解った」  祐一は砕けた物言いをしながら、秋子に微笑みかける。  秋子も嬉しそうに補助のゴーグルを受け取った。 「お疲れ様です」 「いえ、秋子さんもお疲れ様ですよ」 「そうそう、姉さんから電話を入れるように伝言を承ってますよ」  面白そうに微笑みながら、祐一に話しかける秋子。  祐一はまたかと言った感じの顔をする。 「後で連絡します……」 「フフフ、頑張ってくださいね」  頬に手を当てて微笑む秋子。  祐一は少し、表情を崩しながら秋子と共に部屋へと歩いていく。 「秋弦は?」 「お昼寝中です」 「今回はアイビーで里村さんを拾って……」  予定を話そうとする祐一の口を秋子は人差し指で押し留めた。  ちょっと私不機嫌ですといった顔で祐一を正面から見つめる。 「もう、今は私しか居ないんです。こんな時くらい他の女の人の事を話すのはやめてください」 「……そうだね」  秋子のちょっと不機嫌な表情に、困った顔をする祐一。  そんな少し困った表情が面白いのか、微笑みながら秋子は祐一の腕を持って部屋の中に引きずり込む。  ここから先のことは彼らしか知らない。
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     場所はエリアLのとある港近くの町。  雨が降っていた。それもかなり本格的な雨が。  にも拘らず、橘麻耶(たちばなまや)は家を飛び出していた。  もう何度目になったかわからない。  成績も上の下辺り、決して悪い成績ではなかった。  運動も運動部に所属している人間に比べれば多少劣るが、それでも平均の運動レベルよりも上の人だ。 (私は悪くないじゃない!)  雨の中、傘さえ差さずに走る。  誰も居ないところへ、雨の当たらないところへ。それを求めて走る。  彼女の走って後には誰も追ってこない。それはいつものことだった。 (何で、そんな事を言われなくちゃいけないの!? 私は貴方達の人形じゃないのに!)  もう帰りたくないとばかりに、人が居ないところへと、人気のないところへと走る。  そうすると、港のしかもコンテナの置いてある区画へと足が向いていく。  麻耶は、一週間前に見つけた鍵の壊れた用務員用の扉に手をかけた。  まだ壊れたままらしく、生徒証のカードをリーダーに通したら鍵が開いた。   (まだ壊れたままみたい……ありがとう、神様)  本物のカードキーがなくても開いてしまう困った扉だ。  すぐ中に滑り込む。人の気配に気をつけながら、中に入っていく。  中には、所狭しとドールの部品などの入ったコンテナが置いてある。 「くちゅん!」  物陰に身を潜めて周りを慌てて見渡す。どうやら人はこのあたりには居ないみたいだ。  長い間、雨に打たれた為に体が冷え切っている。  身を震わせながら、人に見つからない。かつ、服を乾かせる場所を探す。 (そういえば、前に授業でドールのコンテナは湿気を嫌う為に一定の環境に整えられているって聞いた)  このコンテナの山がドールの関係のものだと知っている。  一度前に入ったときに一回調べたのだ。ただ、その時は人が居たのですぐに出て行ったが。  扉の付いていてかつ鍵の付いていない、比較的小さなサイズのコンテナを選んでそれの中に入る。 (あ、温かい)  ドールは精密機械の塊である。だから、湿気などの水分を嫌がる傾向が高い。  ことに、まだ組み上げていないドールの部品などはその傾向が顕著だ。  麻耶の入ったコンテナはその傾向が顕著なものだったようだ。  温度と湿度が一定に保たれている。目が暗闇に慣れるまでじっとしていた。  ようやく慣れて周りを見回すと足を伸ばしてゆったり出来るスペースがそのコンテナの中にはあった。  中には、衝撃緩衝材や毛布にくるまれている部品がコンテナに固定されている。 (うん、これなら長い間ここに居れそう。そうだ、中から閂みたいにして外から入れないようにしようっと)  びしょ濡れの服を脱いで、湿気などのどうにかしている排気口付近に広げておく。  しばらくすれば、乾くでしょうっと言った感じで全裸になった。  素早く出入り口を確認する。落ちていたスパナを拾い上げて扉に器用にくくりつける。  出入り口は一つだけだったのですぐに扉が開かなくするよう工作することが出来た。 (ちょっと寒いけど、あの毛布を引っ剥がせば、しのげるよね?)  固定されている部品の毛布のようなものをはがして身を包む。  温かく、これで篭城時間が長引くなっと麻耶は思った。 (部品がむき出しになるかと思ったら、その下にもまだ巻いてあるじゃない。これだけだったら大丈夫だよね?)  そう思いながら、床に足を伸ばして座る。  コンテナ内部の温度が一定になっているので床もほんのり暖かかった。 「ふわぁ」  ちょっと遠慮がちに、欠伸をする。  そのまま、ゆっくりと目を閉じてするすると眠りに落ちてしまった。  それも、多少揺れても起きないくらいに深い眠りに。
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     アイビーの唯一の喫茶店『Polar bear』。  そこで、瑠奈はマリーと皿洗いをしていた。  初めこそ、危ない手つきをハラハラしながら見ていたものだ。  しかし、今では安心して任せられる。  瑠奈が綺麗に洗い、水で洗剤を洗い流す。それをマリーに渡し丁寧に拭いてもらう。その繰り返し。 「瑠奈さん……終わりですか?」 「えぇ。終わりよ、ありがとう」  ふう、と息を吐くマリーに瑠奈が微笑みかけた。  マリーも何となく微笑み返す。 「いえ、この位しないと……」  がっしゃーん、と外で派手な音がした。  マリーはやれやれと溜息を吐き、瑠奈はあらあらと微笑する。  やんちゃ坊主が何かしでかしたのだ。 「えい」  ぴん、とマリーの額をはじく瑠奈。  マリーがちょっと納得がいかないといった感じで瑠奈を見る。 「ほら、そんな顔してちゃ駄目よ」 「でも……」 「あー……ジュピターの奴、粗大ごみをひっくり返したな」  潤が手を洗いながら、瑠奈たちの元へと現れる。  瑠奈の表情を見て、潤が行ってくると言い、外に出た。  出る前に、休憩中と札を出して、瑠奈に目で合図を送る。  瑠奈もそれを見て頷いた。 「さて、ジュピターの事はあの人に任せましょ」 「はい」  ふとマリーの視線が気になった瑠奈。  どうしたのかしらと言う表情で視線をたどると、最近目立つようになってきた瑠奈のお腹に視線が行っている。 「気になる?」 「……いえ」 「こっちにいらっしゃい」  瑠奈は柔らかく微笑みながら、カウンターを出て、窓際のテーブル席の椅子の一つに座る。  愛しくお腹をさすりながら、マリーが来るのを待った。 「ここにはね、新しい命が宿っているの」  優しくお腹をさすりながら、マリーに言う。  そして、マリーの耳を瑠奈のお腹に当てるように言った。  マリーは恐る恐ると言う感じで、耳を当てる。 「何か……動いてる……」 「この子もね、あと2ヶ月もしたら生まれてくるの」 「うまれて?」 「えぇ、貴女も私の娘だから、弟が増えるのね」  弟が増えるといわれて、マリーは顔を強張らせた。  瑠奈はそれを見て、マリーを優しく包み込む。 「大丈夫、私達はあなたを見捨てないし、守ってなんて無責任な事は言わないわ」 「えっ?」 「私たち、いえ、親は子を守るものよ。それが普通なの。だから、貴女に責任を押し付けるわけじゃないの」  包み込み、優しく頭を撫でながら、瑠奈は続ける。  マリーは耳を瑠奈のお腹に当てながら続きを静かに聴いていた。   「この子が生まれてきたら、生まれて良かったねって。私があなたの姉よって言ってくれるだけで良い」 「本当に?」 「えぇ。でも、仲良くしてくれたら私もこの子も嬉しいと思うわ」  瑠奈のお腹の中の子供が動いた。  軽く、動いてお腹を蹴る。それが、瑠奈にも聞いていたマリーにも解る。 「ほら、この子も生まれたがってる」 「うん……」  柔らかな雰囲気の中。がちゃりと扉が開く音がする。  マリーはそれを気にせずに、瑠奈のお腹に耳を当て続けていた。  聞こえてくる音に目を細め、生まれてくる子供を楽しみにするように。  マリーの頭を撫でながら瑠奈は扉の方に視線を向けて、苦笑した。 「おまえなー……いくら、捨てるからといって、あそこまで壊す必要は無いだろうに」 「だって、だって」 「処理する人の気持ちにもなれよ……」  首根っこを掴まれて、潤に説教されているジュピター。  どうやら、粗大ごみを壊して遊んでいたのだろう。  ジュピターにしてみれば、壊したいというよりもトレーニングの一環だったのかもしれない。  威力を見たかったとかその程度なのだろうが、潤に説教されて防戦一方だ。  全てが言い訳臭くなっている。マリーもようやく顔を上げてジュピターを見た。  そして、瑠奈を見た時、同じような顔をしていると解る。  目が合って二人は笑いあった。  ジュピターはいけない子ね。2人の目線はそう言い合っていた。 「あーもう。ともかく、今後一切、ああいった事は駄目だからな」 「えー」  不満そうな声。潤はやれやれと首を振った。  そのとき、電話がかかってくる。  やわらかいベルの音に反応して、ジュピターを下ろした潤。  ようやく地面を踏みしめて、安心するジュピター。  流れるような動作で電話を取った。 「はい、喫茶店Polar bear」 『北川さんですか?』 「あれ? 秋子さん? どうしたんですか? 相沢の奴と一緒に港だと思っていたんですけど」 『ちょっと気になることがありまして、先にこちらに来ていたんです』 「と言う事は?」 『警報がすぐに鳴ります。車を喫茶店正面に回すので、すぐに戦闘の準備を』 「わかりました」 『ごめんなさいね……』 「いえ、これも俺の仕事ですから」  電話を切った直後にけたたましい警報が鳴った。  身を強張らせる瑠奈。  潤は瑠奈に微笑みかけながら、言った。 「さて、行って来るか」 「あなた、気をつけてね」  言わなくても通じる。  これは、瑠奈も知っていることだから。 「大丈夫、町の守り神もすぐに出てくれるからな」 「それでも……」 「必ず帰ってくるよ。ジュピター、説教の続きは帰ってきてからだ」 「そんな!?」 「反論は許さん」  軽く笑いながら、ジュピターを言いくるめる潤。  瑠奈に軽くキスを交わして、マリーの頭を一撫でしてから外に出た。  外にはいつの間にか、車が一台待っていた。
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     場所はエリアK、アイビー近くの港。  船内部の格納庫といったほうが良いだろう。小型の4機のドールがそこには並べられている。  隣のエリアLから最後の部品を受け取り、最終調整の段階に入っていた。  ピラカンサと言う名のkanonの新型試作機である。  これは、アイビーに納入される機体でもあった。  銃撃に重きを置かれた機体で、ガンショットに似ていると言えば似ている。  その横にはそれぞれ複数のコンテナが並べられていた。これが受け取った最終的な部品である。  ドールを下ろす為に一弥と美汐がメカニックと一緒になって作業している。  真琴がいないのは、アイビーに機材を持ち込む申請をしに行っているからだ。 「一弥さん、こっちの調整は終りました」 「天野、ありがとう」 「最後の調整をお願いします」 「了解」  ドールの部品を探しにコンテナの扉を開こうとした時だ。  ごっという音でその扉が開かない。 「あれ?」 「どうしました?」 「いや、このコンテナが開かないんだ」 「それはおかしいですね?」  美汐も同じようにコンテナを開こうとする。  しかし、コンテナの扉は開かない。   「なんですか? このコンテナは?」  通常ならば簡単に開くはずの扉。  しかし、簡単には開かない。開かずの扉と化していた。 「しょうがない。手荒いが蹴り破るか」 「……今から、部品を調達するわけにもいきませんしね」 「じゃあ、やるぞ」 「開けるなら、工具を用意しないと……」  美汐が止めるまもなく、一弥は足を振りかぶる。  そして、体重を乗せた一撃がコンテナの扉に叩き込まれた。  酷く場違いな音が響き渡る。ギャランッと言う音がして、扉が開いた。 「一弥さん? なんて無茶するんですか?」 「ほら、無駄でもやってみるもんだなーって」 「全く……怪我はありませんか?」 「あぁ、問題な……い!?」  どうやら中から何かで閂にされていたみたいで、それが蹴られた衝撃で外れたようだ。  だから扉が開いたというわけのようだった。その先には全裸の女性が寝ている。 「天野……後は任せた」 「はい?」  不思議がる美汐を残して一弥は駆け出す。  とりあえず距離を置いた感じだ。 「は? 何なんですかいった……」  美汐が視線を扉の先に移す。  一度視線を外して、目を擦ってもう一度視線を戻した。  更に、視線を外して両目を軽く揉む。そして、もう一度視線を戻した。 「……何なのですか? これは……」  メカニック達が何事かと集まろうとするのを美汐は視線で制す。  そして、美汐は溜息を吐きながら、寝ている女性をどうにかしようと動き出した。  一弥の行動は確かに正しいだろう。女性が対応した方が遺恨はない。  まだ起こっていることに気がつかずに、幸せそうな顔をして寝る女性をとりあえず起こす事にする。  女性は目を覚ましたとたん、コンテナの奥へとガサ、と飛び跳ねた。  反応に何らかの違和感を感じる美汐。この動きは普通の人間が出来る物ではないと。  何らかの訓練か何かを受けているのではないかと勘繰るが、今はとりあえず、何故ここにいるかを聞くかが先決だった。 「色々聞きたいですが……まずは、服を着てください」 「は、はぃ!」  美汐は溜息をつきつつ、少女が服を着るのを待つ。  あ、ごわごわ……とか、生乾きだ……とか、そういう事を極力、聞き流す。  どうしようかと、思案を巡らせた時。警報が鳴った。 「どうした!?」 「アイビーが襲撃されるみたいです!」  一弥の怒声が響く。  メカニックの一人が一弥の一言に素早く返事をした。 「一弥さん、街から電話です!」 「解った!」  格納庫の壁に埋め込まれている内線を受け取り、すぐに出る。  相手は秋子で、今起きている事を無駄なく説明してくれた。  電話を切ってからの一弥の行動は迅速だった。 「……この機体で出る! 武器の準備を始めてくれ!」 「了解です!」 「一弥さん!」 「ちょっと出てくる! 天野はその子の事を頼んだ」  美汐に面倒事を押し付けて一弥はピラカンサのコクピットに滑り込んだ。  メカニック達は普段、平定者としても活動している。  一弥の指示にテキパキと準備を進めていた。 To the next stage

     あとがき  今回は前半後半と分けてしまいました。へんに新たなキャラを登場人物として書いたせいもあるんですけどね。  という事で、次回も祐一君サイドのお話です。  次回は戦闘中心に書くかもという感じですね、最もあっさりと終らせてしまう可能性も有りますが(苦笑  あと、次回詩子さんが出る予感です。  では、拍手のお返事を >リンカもゆーろさんも応援しています、がんばってください! >名雪はどの位祐一達の事情(その目的、あと周りにいる女性陣や娘さんとか(笑)把握してるんでしょうか?  7/2  今回入れ替えた拍手内容がリンカさんです。2つほど違いますけどね。  あと、質問にお答えすると名雪さんが把握しているのは目的とおよその戦力です。  それ以外、相沢祐一=倉田一弥ということや、回り女性陣や娘さんに関しては把握していません。  むしろ、把握するつもりもありません。ちなみに、秋子さんが平定者に居る事は何となく理解しています。  ただ、確証が無い推論という段階で、ですが。  では、次回も楽しんでもらえるように、頑張りますね。


    管理人の感想


     ゆーろさんからのSSです。
     まず冒頭で何事!? と思ったあなた。  モニター前のあなたです。  そう思ったあなたとは友達になれそうだなー。(爆  実際私も見た瞬間驚きました。  思っている事は現代日本の子供が潜在的に感じている事でしょうけど。  彼女はどう話に絡んでくるか気になるところです。
     北川君一家は理想的な家族ですね。  引き取られた方もいささか行き過ぎた行動があったりしますが、概ね普通の家族。  祐一君の選択は正解だったと言うことでしょうか。  まぁ北川君はオリジナルと親友ですから、クローンだろうと良い関係築けるはずですしね。  後は友達づきあいでしょうか?

     次回久々に戦う北川君。  結婚して夫になった彼の活躍を刮目してみよ。(笑


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