神の居ないこの世界で−A5編−


→何だか複雑な事情がありそうですね?

     一弥が戻ってきた時には美汐が聞きたいことはあらかた聞き終わっていた。  それでも何故こんな事ができたのか、何故行ったか。  それが解らずに、困惑している雰囲気だった。 「すまない、迷惑をかけた」 「えぇ、すまないと思うなら誠意を見せてもらいたい物です」  ちょっと不機嫌ですと言った表情と棘のある音色に一弥は引きつった笑みを浮かべるしかない。  一弥は美汐の隣に座ると、ノートパソコンを起動させて、カードリーダらしき物を接続する。 「本気で行うのですか?」 「まぁな。その子が嘘ついているとは思えないから」 「あ、あの? この人は何なのですか?」  一弥が目を合わすとレンズが不気味な音を奏でながら目の前に座る女性を捉える。  ひぃ、と小さく悲鳴を上げる女性に一弥は、そういえば初対面だったと思いを巡らせた。 「私の上司ですが、何か?」 「あ、あ、あ、ぁ? そ、そうですかぁ」  一弥は目線をずらすと、すぐさま生徒証を受け取ってカードリーダに通す。  女性はちらちらと一弥を恐る恐る見ながら、小動物的に怯えていた。  美汐はそんな女性を観察するように見詰めている。 「ん?」 「……どうしました?」 「何だ? これは」  一弥が気がついたようにキーボードをカチャカチャといじり始めた。  生徒証には磁気テープしかついていないように見える。  しかし、セキリティーが破られていた。  攻撃的なシステムが備わっているようには見えない。  一弥はゴーグルのつまみを調整して、もう一度、生徒証を見詰める。  ICチップが埋め込まれていることにそこで気がついた。 「天野……ちょっとここを見てくれ」  小さな声で美汐に耳打ちする一弥。  美汐は何事かと思いつつ、そこを注視する。   「? 何も無いじゃないですか?」 「いや、ここだ。何か不自然な所無いか?」 「え?」  美汐は何も違和感に感じないが、一弥が指差した所を注意深く見てようやく何かあることに気がついた。  一弥はもういちど、セキリティーのレベルを設定しなおして生徒証を通す。 「ただの生徒証だと思っていましたが……」 「あぁ、鍵破りが入っているとは誰も思わない」  何度か試してみて、かなり強めのセキリティーで鍵が破れないと解った。  こうなってくると、疑いが女性にかかってくる。  それよりも先にやらなくてはいけない事があるのでその場は美汐に任せた。  そして、一弥は佐祐理に電話をかける。 「姉さんですか?」 『あはは〜、ただいまこの電話は、愛の囁きしか受け付けてません。電話番号を確認のぉ!』  電話に出たのは佐祐理。  しかし、佐祐理が言い切る前にゴ、と言う音が入り込む。  そのころ会話が持たなくなっていた美汐はテレビをつけた。 「ん?」 『一弥、何の用?』  電話を代わったのは、舞だ。  その後ろで、佐祐理が何か言っているようだが、一弥も舞も何も言わない。  そのまま、会話を続ける事にした。 「すまないが、全エリアのkanonのセキリティーのレベルを最大まで上げてくれないか?」 『どうして?』  一弥はとりあえずの説明を開始する。  破られた状況に、道具、その特徴。そして、最後にそれを持っていた人物。  佐祐理の声も聞こえていたが、途中から一緒に聞いているのか息遣いしか聞こえない。 『舞、ちょっと代わって』 『ん』 「姉さん?」 『解りました、責任持ってこちらで対処します。ですからそちらは通常業務に戻ってください』 「わかりました」 『すぐに通達が行くと思いますけどね』  軽い打ち合わせをした後に電話が切れた。  美汐と女性(橘麻耶)はTVを見ている。TVに速報のテロップが入った。  そして、すぐに安全第一のヘルメットを被ったレポーターの映った映像に切り替わる。 『学校に扮して、子供を諜報員や兵士を育成するという事がここエリアLでありました!  当然の事ながら、これは国際法に違反しており、関係する機関の人間は全て国際警察に身柄を拘束されています。  くわえて、関係者に事情を聞き、その親玉を逮捕すべく国際警察が動いています。  なお、噂の段階ですが世界政府の高官が関わっているという噂もあり、国際警察の活躍が期待されます!』  まるで、悪霊にでもとり憑かれたように熱を持って話すレポーター。  大きなニュースには違いない。一弥はそれを確認してから、詩子に連絡を付けるべく、電話をいじる。  美汐も麻耶も口をぽかんと空けてTVを見ている。  女性にそれを指摘するのはちょっと勇気のいる事だった。 「私の学校……」  麻耶の口元が微妙に歪む。歓喜とも、愉悦とも、つかない微妙な歪みだった。  それは一瞬、浮んだだけですぐに消えてしまう。  気が付けなかったのはお互いに良かったかもしれない。  詩子にかけた電話は通じずに、留守電に切り替わっていた。  一弥はメッセージを残して、電話を切る。 「国際警察も最近は色々と手を出すようになったのですね?」 「まぁ、世界政府の官僚の腐敗が激しいからな。でも、まだ一時期に比べればましだって姉さんは言ってたぞ?」  これでもまだ、ましになったのだろうという感じで一弥は首を振った。    美汐も追求するつもりが無いので、そのままである。 「あの……」 「なんですか?」 「さっきの学校は、私の学校でした」 「ん? 確かにそうだな……」  一弥はテーブルの上に置かれた生徒証を見て呟く。  確かに偶然の一致としては何か作為的なものを感じるが、確かに一致していた。 「ところで、天野。情報の漏れはないのか?」 「はい。あのコンテナに入っていたのは既に発表されている部品でしたから」 「そうか……じゃあ、この子は警察に預けた方が良いな」 「え?」  愕然と言う感じで驚く麻耶。  何でこんな所で驚いているのか解らない一弥に美汐。  普通、この尋問の方がおかしいと思うのだが、麻耶にはそうではないみたいだ。 「いや、対応としては普通のはずだが?」 「何か問題でも?」 「まっとうな反応だよな?」  一弥が不安そうに美汐を見る。美汐はそれに対して、普通の対応だと頷いた。  しかし、それで麻耶の感情が落ち着くわけではない。 「あの、あの!」 「どうしたんですか?」 「あそこには帰りたくないんです!」 「それが?」 「警察に行けば、絶対に両親に引き渡されるから……」  麻耶は驚くくらいに青ざめている。これを演技というとしたら、履歴書の特技の欄に嘘泣きと書けるだろう。  だが、はいそうですね。とは簡単には言えない。  彼女がここに居るという事を自分の意志で決めたとしても、回りはどう思うだろうか?  kanon側に非があると思うのが普通だろう。  物事の始めは有耶無耶にされてしまう可能性が高かった。 「酷いようだが、我々の方が君の両親よりも酷い存在かもしれないよ?」 「でも! あんな場所よりもここの方が良い!」  テーブルをバシンと叩いて、立ち上がる麻耶。  しかし、ここはkanonの船の中。何処に行こうにも何処にも行けない。  襲い掛かるという選択肢はない。  美汐の服の胸の下が不自然に膨らんでいる事から何かを内ポケットに入れていることが判る。  それがスタンガンだったら、掴みかかった瞬間に気絶させられるだろう。 「何故、そんな事を言うのかな?」  一弥がそういう。その目(目というよりもレンズなのだが)は見透かすように麻耶を見ていた。  麻耶は怯む、怯むが睨み返した。  この目よりも、両親の方が嫌だという意思を込めて。 「……私は元は孤児ですから、あの家には居場所が無いんです」 「親類で味方は?」 「他の親類にはあったことありません」 「では、それ以外に味方は?」 「昔の孤児院の院長先生くらいしか……」 「それで、ここに残ったとして、君は何が出来る」 「それは……」  一弥の一言に麻耶は言い返せない。  麻耶の年代で働いている人間が居る事は一弥は百も承知である。  しかし、働いている場所にkanonがあるか? といわれればNOであった。 「君はまだ法的には親の保護下にある。それを考えないにしても、雇うには能力が足りない」 「別に雇ってとは言ってません……」 「ここは企業。善意の施設じゃない。無償で場所を提供できる余裕はない、何より君は犯罪者という意識が欠けている」  言われて、う、と麻耶が呻いた。  侵入した事をすっかり忘れていた節があったのは言うまでも無い。   「……うぅ」 「とにかく、警察に引き渡すのは決定事項だ」 「では、港の方に手配しておきます」 「あぁ、頼んだ」  テキパキと手順が進められていく。  それを見ているしか出来ない麻耶。 「……私は……あの学校の生徒だったんですよ?」  恨めしそうにTVを見る。そこにはまだ、学校について報道されていた。  一弥はチラリとそちらに視線を送って、麻耶に視線を戻した。   「君は目的があってあのコンテナに入った。違うか? 何の目的かは知らないが」 「……違いません」 「邪推のしようはいくらでも出来る。実際に貴女が諜報員の教育を受けていたらとかね」  一弥は相手を茶化す笑みを浮かべて言った。  麻耶はそれに過剰に反応した。 「私は! あの人たちが嫌いで! 逃げる為に……」 「自分の意志でどうにかできるのなら、どうにかできる所まで頑張ってもらおう。それだけだ」 「……冷たいんですね」 「同情を引こうとしても無駄だぞ? 世の中は君みたいに強い人間ばかりじゃない」  どう言い返して良いか、解らない麻耶。  強い人間と言われて、喜んで良いのか、それとも、同情してもらいたいが為にもっと演技をするべきか。  既に気持ちの整理が出来なくなっている。  ともかく、麻耶は警察に引き渡す事が決定した。
    ▲▽  ▲▽  ▲▽  ▲▽  ▲▽
     さて、麻耶を引き渡すと言っても、大きな罪になるわけではない。  kanon側は、とりあえず不備を認めて、訴える事もしないと明言し警察に引き渡すだけだ。  もしかすると、口頭注意で終るかもしれない。  少なくとも、天野美汐はそう思っていた。 「はぁ!? この子のデータが存在しない?」 「まぁ。こちらとしても困惑しているんですよ」 「とりあえず、引き渡しますが」 「それがですね……」  麻耶も美汐も困惑するしかない。  いざ引渡し、という時に引き渡す先が何かトラブルが起きているようなのだ。  用というのはまぁ、そのままなのだが。  来ている警察組織の人間すらその原因が判っていないように見える。 「貴女は橘勇蔵さんの義理の娘さんですね?」 「は、はい」 「そこまで判っているんですよね?」  美汐の表情に何故そこまで判っているのにデータが無いのだという表情が浮かんだ。  警官は手を振りながら、誤魔化す。 「データがなくても資料があるんです。あの学校はずいぶん前から内偵されていましたし」 「では、何故?」 「正式なデータが無いと言いますか、あの学校の通っていた人物の殆どが孤児なんですがね」  警官は声を潜めて美汐に耳打ちをする。  美汐は多少、眉をしかめながらそれを聞くことにした。 「その殆どが正式には住民登録されていないんです」 「でも、保護はそちらの仕事ですよね?」 「施設がすでにパンクしかかってまして」 「他のエリアや国際警察に助力は頼んだのですか?」 「えぇ、頼んでいます」  じゃあ、何故? そういう表情をする美汐。  少なくとも回りのエリアと国際警察に助力を頼んでいれば問題はないはず。  警官は曖昧な笑みを貼り付けつつ、続ける。 「あの子の受けていた教育に問題がありまして……」  美汐は渡されたファイルを受け取った。  しかし、美汐はそれを見ようともしない。 「良いですか? 私達は部外者です。部外者に資料を渡すのはどうかと思いますが?」 「そうですが……私達には手にあまる、むしろ抱え込むと、こちらが消耗してしまう可能性がありまして」  怪訝な顔をする美汐。とにかく、ファイルは押し返した。  警官はまだ曖昧な笑みを張り付かせている。 「何が言いたいのか判りませんが……ともかく、あなたでは話になりません」 「えぇ、お互いに話にならないですね」  美汐つまり、kanon側にしてみれば引き渡してはいおしまい。  そういうスタンスだが、何故か警察側が渋っている。  それが理解できずにいた。何故、そんな事を言うのか解らない。  落ち度はこっちに有ったとは言え、被害者はこっちのはずである。 「どういうことですか?」 「こちらも困っているんですよ」 「ともかく、陣頭指揮をとっている人もしくはそれを補佐する人を呼んでいただきたいのですが」 「私も、そちら側の責任者を呼んで頂きたい」  美汐の困惑は更に深まる。  何故、ここで自分以上の立場の人間が呼ばれないといけないのか解らない。  既に麻耶は話についていけなくなって、飛んでいるウミネコの数を数えていた。  今数えれる数はとりあえず11羽。増加する傾向がある。 「この船の責任者は私ですが?」 「いえ、理事の弟さんが乗ってらっしゃるでしょう?」  ここで美汐の心に猜疑心が生まれる。  隠してはいないが、この船に乗っている事を公表しているわけでもない。  何故ここに警察が一弥が居るとわかっているのか解らない。 「あ、いきなり言われると困惑しますよね?」 「……」 「ちょっと前に、倉田一弥氏が居るのが目撃しまして、もしかしたらこの船に乗られてるのではと思われたんです」  へらへらとした笑みを浮かべる警官。  予想としては悪くない。しかし、口調が気になった。  何故、断定で言えるのか解らない。  悪い事をしていない以上(後ろめたい事は確かに有るが)何も問題ないはずである。 「何故、一弥さんを呼ばなくてはいけないのですか?」 「ちょっとした商談ですよ」  美汐を相手にしていた警官の後ろから上司とわかる服装の男が現れる。  その姿が、美汐の警戒心を更に煽った。 「失礼しました、こういうものです」  警察手帳を見せながら、困ったような笑みを浮かべる男。  ちなみに、麻耶が数えていたウミネコの数は23羽。現在は波消しブロックの数を数え始めている。 「もう一度聞きます、何故ですか?」 「いやぁ、お恥ずかしい話なのですが……保護した子供達の戦闘能力、諜報能力が高すぎるんですよ」  上司のほうの男が頭をかきながらそう言う。  内容としては、警察の所属している警官の戦闘能力を上回る戦闘能力と諜報能力を持っている。  保護はできるが、警戒の為に機動隊・特殊部隊、もしくはそれに類するものを付けなくてはいけない。  そうでもしないと、内側からでも彼らが一致団結して行動を起こせば塞き止める事が出来ないという事らしい。  周辺エリアに頼んでいるが、それでも生徒の数を考えてもまだ足りていないのだという事だった。  むしろその子達をスカウトして警官に仕立てたい。そういう表情でもある。 「全く、怖ろしいほどの練度ですよ。そのカリキュラムが欲しい位です」 「それは判りましたが……何故、kanonなのですか?」 「ONE、Airのどちらにもコンタクトをとったのですがね。色よい返事はもちろんもらえませんでして」 「聞き方が悪かったですね、何故、ドールメーカーなのですか?」 「ドールの制圧部隊、あっと、言い方が悪かったですね。正確にはドールの試験部隊があったじゃないですか」  美汐の表情に咄嗟に言い直す上司の男。  ただ美汐と同じような言葉を用いて、しっかりと嫌味は忘れていない。 「そこでなら、彼女は働けると思いましてね」 「はぁ?」 「ここだけの話ですよ? 彼女、異端なんですよ」  上司の男はそう言いながら、声を潜めた。美汐としては聞くつもりはない。  聞いたところで自分には決定権は無いし、何よりフェアじゃないからだ。 「困りましたね……やはり、一弥氏を呼んでいただくしかないですね」 「正式に、アポを本社の方にとっていただきたいですね」 「それが、そちらのルールですか?」 「えぇ。それがこちらのルールです」 「わかりました。正式な手順を踏んでそちらに申し込みをします」  それまで、彼女を預かっていてください。そう、上司の男は言って部下を連れて帰っていった。  美汐が待てという暇も無くである。 「はぁ……とりあえず、当分の間このエリアに居ますから……問題ないでしょうね」 「あの〜。話は終りました?」 「えぇ……当分の間は貴女は私の監視下におきます。まだ、行き先は未定ですけどね」  美汐はとりあえず、会話の内容をはぐらかして麻耶に伝える。  麻耶には保護施設が一杯なので他のエリアで空きが無いか探していると伝えた。 「とりあえず、このエリアに当分居ますので……仮宿舎に案内します」 「はい」 「着替えとかは……私と同じサイズで良いですね?」 「多分大丈夫だと思いますけど」  とにかく、保護というわけだし相手が折れれば向こうに引き渡せると見ている美汐。  体型も体つきも似たもののようだし、という感じで空いている宿舎に移動する。  宿舎とはkanon社員用の港についているビジネスホテルだと思ってくれれば良い。  一弥つまり、祐一は船室にそれを構えている。  秋子に秋弦は無論同じである。加えて、ファイ、メルファ、アリアにサラサも同じであった。  祐一を代表するメンバーはどちらかというとマスコミ対策の意味もある。  世界的な企業となると宿舎までマスコミが入り込むときがあるからだ。  流石に、船の中にまでは入り込めない。 入ろうとするならば、麻耶みたいにコンテナに忍び込むくらいしか無いだろう。  ただ、その方法も次からは使えなくなるが。  事を重く見た佐祐理は荷物やコンテナの徹底チェックを言明したからだ。 「それにしても……貴女も私も苦労しますね」 「迷惑かけます」 「そんなに嬉しそうに、迷惑かけますなんて言わないで下さい」  溜息を吐きながら、言う美汐。  麻耶の顔には控えめな、控えめと言ってもかなり感情を抑えての笑みが浮んでいる。  抑えなかったらかなりの笑みが浮んでいる事だろう。 「良いですか、拘束はしませんが出来る限りの行動には私の許可を取ってください」 「あの人達の所に帰らなくて良いなら、約束します」  美汐が約束させたのは外出する時は美汐の許可を取る。  その際に誰か同行させるというものだ。  他には逃げない、探らない、壊さない。  部屋は一室貸し出すので、好きにして良い。  ただし、お金は後で徴収するので覚悟するようにと言う感じ。 「そんなに大きなお金を請求するつもりはありませんが、お酒などを飲めばかなりの額になりますので」 「まだ、学生ですから……お酒は飲みませんよ?」 「判りました」  そんな細かな事を美汐は説明しながら、頭の中で報告プランを考える。イレギュラーすぎるのだ。 ともかく、麻耶を部屋に届けてある程度の服を渡したら報告に行こうという計画を立てた。  なんだかんだで、部屋の前。 「とりあえず、生徒証はこちらで預かります。これが部屋のカードキーです」 「はい」  美汐の手から、麻耶に水色のスチール製のカードキーが手渡された。  ぴ。という乾いた電子音の後に扉が開く。 「ひろ〜い」 「とりあえず、標準サイズの部屋です。私の部屋は隣、内線はこれ、携帯の番号はこっちです」  美汐はいつも持っているメモ帳の一枚を破って、それに自分の番号を書く。  渡してから、ちょっと部屋の中で待っていてと言って隣の部屋に入った。  麻耶はとりあえず、備え付けのベットに腰を下ろす。 「あ、このベット良いスプリングしている。うちのベットとかなり違うね」  飛び跳ねてみてもベットはキシとも軋みの音を立てない。  スプリングがしっかりと跳ねる事が嬉しくて麻耶は何度かそれを楽しんでいた。  しばらくそうしていると、美汐がドアをノックする。  麻耶は不思議な気持ちで、鍵を開けて美汐を迎え入れた。 「あの……そちらは鍵を持っていないのですか?」 「言い忘れましたがその鍵は一つしかありませんから、無くさないで下さい」  なくしたら、弁償として幾らかかると美汐は言う。  麻耶はその金額を聞いて首を凄い勢いで縦に振った。 「他にはマスターキーしかありませんが、よほどの事が無い限り使われません」  ちゃんと対等の立場として扱ってくれている事に麻耶は感謝した。  もっと、酷い扱いを受けると思っていただけに、この待遇は嬉しい。 「下着は新品ですから、気にしないで下さい。貴女にあげます。どうせ安物ですし」 「あ、ありがとうございます」 「服の方は……貸すだけですからね?」  美汐が渡したのは3セットの下着と3着の服。  ちょっとカジュアルな感じなものが多い。  後はパジャマが2着である。ちなみに、下着を着けて…… 「何か、胸の辺りがキツイです……」  麻耶がそういって、美汐に顰蹙を買ったのだった。  怖いもの知らずである。 To the next stage

     あとがき  書いてて、あれれ? 何だか変な方向に話が転がってしまってると感じました。どうもゆーろです。  何だかどうでも良い事に容量を裂いているような気がします……  ともかく、今回の祐一君サイドはここまで。  次回は名雪さんサイドを書こうと思ってます。  いい加減、話を進めないと……  あと、拍手入れ替えました。  ではコメントのお返事に移りたいと思います。 >最強の機体に最強にして最高の能力を持つ祐一と名雪率いる自他ともに最強と認められている聖ジョージ部隊 >二つが戦った時、どんな戦闘になるのかとても楽しみです! 7/29  楽しみにしていただいて幸いです。まぁ、まだ取り掛かれていないのですけど(苦笑  後2話くらい挟んで本格的に書けたらなぁ、と思ったり。  それが今回みたいに変に話が伸びなければですけどね……ともかく頑張ります >祐一達はやっぱり金持ちなんですか? 7/29  相沢祐一君はお金持ちじゃありません。  倉田一弥君はそれなりにお金持ちです。でもお姉さんには敵いません。  という事で、お金持ちです。 >新しい相沢家一日物語をSSSで読みたいです。 >瑠奈と留美の従姉妹どうしの会話も見てみたい気がします。 7/30  今回入れ替えたSSSはリクエスト中心に書かれています。  相沢家一日物語を相沢家物語にしました。似たような物だと思ってください。  楽しんでもらえれば幸いです。頑張りました。 >名雪達はいつになったら祐一から卒業するのでしょうか?自分が死ぬか祐一を殺すまで無理っぽくて痛いです 8/1  そういった感じに書いている側面有りますから……  なんともコメントし辛いのですが、展開はほぼ考えてあるんです。  まぁ、先のことに関しては頑張りますので、楽しみにしてください、お願いします。 >茜と詩子がとてもいいです! 8/1  人気ですね、お2人。いいと言われて素直に嬉しいです。  今回SSSで実験的にバラバラに書いてみたんですけど……実際どうなんでしょうね?  でもお互いに影が薄くなっている可能性も……難しいです。 >ドールの開発する技術は平定者と聖ジョージ部隊とではどっちが上なんですか? 8/1  お答えします。製品では平定者です。ただ、個人改造品になると聖ジョージ部隊になります。  量産機や高級機はメーカーがついている平定者が開発する技術が上です。  ただし、ワンオフ、つまり、特注機については聖ジョージ部隊が上ですね。  自分としては一長一短があり、まぁ、似たようなものだと思っています。   >しょうがない<仕様が無い≦仕方が無い かなぁ 個人的には。 8/1  これは多分、前回の文章の「一方的に攻撃されているのだからしょうがないだろう」の部分の話でしょうね?  高橋さんが一方的にやられている時の事だと思いますが……  次から表現に気をつけますが、間違って無いと思うので……修正はしません(苦笑 >(SSSのリクエスト)真琴と美汐のkanonでの仕事の様子 8/2  これが一番難産だったりします。  すっぱりといわれてどういった事しているだろうなーと想像するのが難しいです。  次からリクエストするなら、こういった場面が見たいみたいな事を書いてもらえると助かります。  はっきり言ってお題だけではネタが出せないですから(苦笑 >茜と詩子がとてもいいです!最高です! 8/4  どうもありがとうございます。  2人セットなんですね? まぁ。たしかに2人セットの方が書きやすいですけど。  今回、バラバラに書いてみてそう思いました。  では、次に向けて頑張りますね。


    管理人の感想


     ゆーろさんからのSSです。
     今回のコメントは都合によりカット。  少々頭痛が激しいので……。  ゆーろさんすみません。

     最近祐一君サイドの話が少なくて少し寂しいですね。


     感想は次の作品への原動力なので、送っていただけると作者の方も喜ばれると思いますよー。

     感想はBBSかメール(yu_ro_clock@hotmail.com)まで。(ウイルス対策につき、@全角)