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香里は溜息をつきながら、報告書を読んでいる。
足を組んで、ソファーに座っていた。ぺら……ぺら……いう音が部屋を満たしている。
「全く出鱈目よね。平定者って……」
場所は名雪の執務室。
時間帯は深夜と言っても良い時間帯だった。
「ドールメーカー大手の3社の部隊と行動をしたことがあるんだから……」
「ONEのクロノスにAirの空を舞う者、そして、kanonのスノウドロップ」
香里の呟きに名雪がそれを指折って答えた。
呆れ果てるような声で香里は続ける。
「一体どんな生活してればライバル会社全てと仲良くなれんのよ……」
「祐一だから、可能なんだよ」
祐一だからのその一言で納得できてしまうから、理不尽な物である。
はぁ、と溜息を吐く香里。
「最近、美樹さんは大分参っているわよ」
香里が急に話を変えた。平定者に関して話しても益が無いと感じた事もある。
名雪は不思議そうな顔をしながら、口を開いた。
「美樹さんはね、天性の闘士だよ。それに異論は無いでしょ? 香里」
「えぇ、そうね」
「ちなみに言うとね、美樹さんに小隊を組ませないのは意味が無いから」
「そこよ、腑に落ちないのは」
納得が出来ないという感じで香里は異議を申し立てる。
名雪は慌てずに答え返した。
「じゃ、聞くけど香里。美樹さんの戦いかたに援護が出来る?」
「……私の部隊じゃあ無理ね」
「そうだよね。後、藤川君の部隊も無理だね」
「…………援護と言うよりも、足の引っ張り合いになるわね」
「射撃と近接戦闘が両方かなり出来ないと援護は出来ないよね」
納得しかかった香里。
だが、まだ一つの部隊が名前に上がっていない事に気がついた。
「γ小隊は?」
「乱戦しかも近接戦闘の中で味方と敵を撃ち分けられる人が居たら、その人は神だよ」
「……そうね、跳弾が味方に当たるかも知れないわね」
「簡単に割り切れるほど人間は巧く出来て無いんだよ。撃つ方も撃たれる方も。
もし、γ小隊が援護に入るんだと美樹さんが止めを刺しそこなったのに攻撃くらいでしょ?」
「そうね……援護ではなく、取りこぼしを拾うくらいに割り切れる人じゃないと」
「援護できるとしたら、瑠奈さんか祐一くらいだよ」
名雪は苦笑を浮かべながら手を振る。
香里が言った言葉に過剰に反応していた。
「ほら、私、嫌われちゃったから」
「だからって、あれは無いんじゃない?」
「ううん、意味はあるよ」
「どういう事?」
「今はまだ、うまく噛み合って無いだけだよ」
あの事とは、子供2人を美樹につけたことである。
確かにΩ小隊は訓練ではまだ、大した成果を上げれていない。
「へぇ……」
「もっとも、香里達と違って美樹さんはそろそろ限界が近いんだけどね」
「どういう事?」
「さぁね?」
名雪は曖昧に笑ってその場を誤魔化した。
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神の居ないこの世界で−A5編− |
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