神の居ないこの世界で−A5編−


→棘を持つ存在と棘を溶かす存在

     秋子は躊躇いがちにノックをする。  中から、はい、なんでしょうか? そんな感じの声が聞こえてから扉が開く。 「はじめまして」 「……はじめまして。あの、貴女はなんですか?」 「橘さんですね? 貴女の雇い主……という感じでしょうか? 水瀬秋子です。はじめまして」  麻耶の処遇が決められたのはついさっきという感じである。  警察機構の要請を受け入れる形でkanon理事が判断を下したのだ。  kanon側が警察機構に恩を売る形になっているのは間違いない。  最も、警察機構がこの借りが大きな物になるとは思っていないのだが。  話が逸れたが、麻耶を受け入れることが決定したのには間違いが無い。  しかし、どうするかで話が迷走していた所に秋子が子供たちの教師役をさせては? という提案をしたのだった。  それが通り、秋子が迎えに来たと言う感じになっている。  彼女を連れて、泊まっていた宿舎の応接室まで秋子は移動した。 「座ってください」 「はい……」  何故ここまで連れて来られたか解らない麻耶はひたすらに困惑を示している。  おおよその予想はついているがそれでも不安には違いなかった。 「不安ですか?」 「え?」 「貴女が了承すれば、私に雇用されます。雇用内容はこんな感じです」 (女王蜂みたい……なんていうか、女王様?)  一枚の契約書を見せながら、秋子は頬に手を当てて微笑んだ。  麻耶は始めてみる契約書(アルバイト等させてもらえなかったせいも有る)を見て驚いている。  そして、秋子の言葉を聴きながら内容を読んで行く。 「何か問題でも?」 「いえ、無いですが……どうして私なのですか?」 「そうですね……似たような環境に居たにも拘らず、世間とズレが少ない事が上げられます」 「え?」 「ここから先は、守秘義務に入ります。もし、契約なさるのでしたらお話しましょう」  もし契約しないのであれば、すぐに忘れて出て行け。そういう態度をされて、麻耶は契約書に視線を戻した。  悪くはない。いや、条件としては破格だった。  高々、高校出(それでも異常な環境で、彼女自身その異常さに気がついていない)の給料ではない。  1も2もなく、サインしても良いと思う。  しかし、何か気持ちの悪い事がある。やはり、何故こんなに条件が良いのか解らない。 「あの……どうして、こんなにも条件が良いのですか?」 「貴女は自分の価値について考えた事は有りますか?」 「自分の価値?」 「はい。自分の価値です」  秋子は自分の価値つまり才能を鉱石や宝石に例えて話し出した。  自分の持っている才能は宝石の原石であると。そして、自分は宝石の鉱山であると。  人はなにかしら、才能を持っている。それを発掘し、加工し、価値を見出して行くと。  自分が大した事無いと思っていても実はそれが凄まじい加工をされ、価値があることに気が付けない時がある。  レアメタルや宝石の価値はその時に応じて変る、それは人の才能にも言えることだと、秋子は纏めた。 「そんなに、自分には価値があるのですか?」 「えぇ。だって、あの学校を陥れたのは貴女でしょう?」  麻耶の本当に息が止った。何故、ここで追求されるの解らない。  秋子はいつもと変らず微笑んでいる。  彼女は何者だ、と警戒心がようやく出てきた。しかし、それが失敗だと彼女は思う。  否定するにも、誤魔化すにもそれが出てしまって時点で相手に断定されてしまった。  そんな、寒さを麻耶は感じる。 「貴女が何をされて、何を思い、何をし、ここにいるかまでは干渉しませんよ」 「……」 「ですが、心得ておいてください。こちらも貴女と同類なのだと。だから貴女なんです」  麻耶はその意味の咀嚼に忙しい。  とりあえずは、こちらが派手な敵対行動をとらなければ、問題は無いと判断を下す。  そして、自分と同類だと言う存在に興味が引かれた。  同類と言われて、まだピンと来ないがそれでも、何か惹かれるものはある。 「秋子さん、ここでしたか?」 「祐一さん」  ノックをしていたのか、少しだけ顔をのぞかせている祐一。  秋子の顔にちょっとした変化が現れる。麻耶はそれを観察していた。 (喜び? あの人は水瀬さんと親しい関係にあるのかな?)  観察は麻耶が生き残るために必要だった。その癖がここに出ている。  その観察の目を祐一に伸ばして麻耶は顔を顰めた。  観察眼の確かさは、彼女がここにいることの一因。  鋭いと言うよりも普通の捉え方とは違っている。 (何こいつ……気持ち悪い。何だか機械みたい)  だから、麻耶が祐一に抱いた第一印象は機械みたいだった。  表情は確かに自然な物。でもそれは貼り付けられた物のように感じられてしまう。    必死になって、自分と言う物を構成している。そう感じ取った。  今までに見たことの無い種類の表情だったのだから、なのかもしれない。  ちなみに、倉田一弥は血の通ってない一つ目。天野美汐は狐の皮を被った虎だった。 「どうかしましたか?」 「い、いえ……」  咄嗟に麻耶は表情を繕って、秋子に答える。  そして、5分ほど思考した後に契約書にサインをした。
    ▲▽  ▲▽  ▲▽  ▲▽  ▲▽
     kanon所有の船舶の中。麻耶の初めての顔合わせは、メルファとファイだった。  これには理由がある。アリアとサラサは気難しい。  懐く時は一気に懐くが、それ以外は何故こんなに毛嫌いするのか解らないほど警戒する。  まずは、比較的大人しいメルファとファイからゆっくり慣らしていこう、という事である。  秋子につれられて、麻耶は部屋の中に入った。そこに居るのは白い服装の2人組。  ハイネックに下も互いにズボン。肌の露出を限りなく控えたような姿。  自分よりも3から4くらい年下ではないか? 麻耶はそう思った。 「あ、お母さん?」  少女、メルファの方が秋子を見て戸惑いの声を上げた。  隣に居る麻耶に対して警戒とも、困惑とも言える何かを持っている。  メルファの隣に居るファイも同じように戸惑っているような感触があった。  ただ、青年の方はあまり、それを表には出していない。 (女の子の方は無理やり熊にさせられたハイエナ……それで残りはそれにきぐるみ着せたような感じね)  麻耶は、熊にきぐるみを着せたらどうなるだろうと想像して可笑しくなった。  外見は穏やかそうに見える熊。それにきぐるみを着せるのだから、面白いという他無い。 「この子は、家庭教師。あなた達、アリアとサラサも含むんだけど、勉強と常識を教えてくれる先生よ」 「ふ〜ん、アリアとサラサが居ないのは……」 「えぇ、気難しいから」  困ったように頬に手を当てる秋子。  そこから、自己紹介をして解散となった。あくまで、今日は顔合わせ。  お互い、何か思うところがあるらしくぎこちない雰囲気で終った。  秋子は終始、端の方で微笑んでいただけ。麻耶もメルファもファイも何か言ってくれれば良いのにと思っていた。  メルファとファイを残して、秋子は麻耶を連れて歩く。  とりあえずの顔合わせも終ったのだ。今日の仕事はこれまでである。  むしろ、環境の変化に戸惑いを隠せない麻耶だった。  何故ここまで、自分に対してしてくれるのか解らない。それが違和感となっている。  食堂など諸施設を案内し、歩きながら秋子はぽつりと言う。 「私達は、貴女の敵ではありません。貴女の味方でも無いです」 「……判ってます」 「ですが、辛かったら言ってください。寂しかったら言ってくださいね?」  麻耶は何も言えない。ただ、その気使いが不愉快だった。  秋子の表情を盗み見る。そこには嘘を言っているような表情をしていない。  だから、それが余計に不愉快な思いをさせる。 (私は味方なんて要らない! 一人でも、大丈夫なんだから……) 「もし、一人が辛くなったら、頼ってくれても良いんですよ?」 (何を馬鹿な事を……) 「貴女は強い人ですから、心配要らないと思いますけどね」  秋子は困ったように微笑んだ。  それが麻耶の胸に残ったが、勘違いだと自分をねじ伏せるのだった。 「それと言い忘れていました」 「私と同類って言う話でしたね?」 「はい」  秋子の目にはこれが守秘義務に入るという事が示されていた。  それを理解する麻耶。 「あの子達はとある研究機関から救出されたんです」 「……え?」 「もちろん、兵器として育てられてました」 「それと私と余り関係ないように……」 「貴女は兵士として、諜報員として育てられてましたよね?」  秋子のその言葉に、黙り込む麻耶。  何か言い返したいが、何も言い返せない。 「私達、私も、祐一さんも麻耶さんを利用したくてここに置くわけじゃ有りません」 「……信用しろと?」 「いいえ、無理に信用しなくても良いです」  秋子は困ったように微笑みながら麻耶を見る。  麻耶は猜疑の篭った視線を秋子に送っていた。 「ただ、今までの生活以外のものが有ると知って欲しいだけです」  寂しそうに微笑む秋子に麻耶は何も言い返せない。  その微笑に気遣う色があるのだから。  今まで生活していた時とは違う反応に、どう反応して良いか解らない。  そのまま、黙ってしまう麻耶。  結局、会話はそのまま途切れてしまう。  次に会話が再開されたのは、食堂に着いたときに仕事の話しの打ち合わせになったのだった。  どういう事を教えるのか、どういう教材を使うのか、2人の勉強のレベルは?  細かい所まで、秋子に聞き、麻耶なりにどうするかを考える。  それは、ある意味楽しいことだった。  今まで、自分でお金を稼ぐという事が無かったし、教えるという行為もしたことが無い。  何となくだが、楽しんでいる自分を見つけて麻耶は少しだけ不機嫌になった。
    ▲▽  ▲▽  ▲▽  ▲▽  ▲▽
     麻耶がメルファとファイに勉強と常識を教え始めて数日。秋弦がそこに初めて入ってきた。  一番初めに気がついたのはメルファ、ついで、ファイだった。  麻耶はいきなり乱入してきた子供に何を言って良いか判らず困惑する。 「あ、秋弦? どうしたの?」 「あのね、ままのしゅくだいがおわったのー」  無邪気に笑う秋弦はメルファにじゃれ付くように部屋の中に入る。  ファイに挨拶しようとして、その隣に居る麻耶に気がついた。  少しだけ、ファイが悲しそうな表情をする。  メルファがそれに気がついて、まーまー、と慰めた。 「おねえさん。だあれ?」  そんな2人を放って置いて、秋弦は麻耶に話しかける。  秋弦は意外に薄情なのかも知れない。  麻耶もこの人物にどうして良いか解らなかった。  とりあえず、距離を置く事にする。 「はじめまして、橘麻耶です。2人の家庭教師よ」 「はじめまして〜、あいざわしずるです!」  警戒心も持たないような笑みで微笑む秋弦。  マヤは表面上は穏やかに秋弦に微笑み返した。  相沢と言う言葉に何か引っかかる事があったが、あの機械みたいな奴の子供じゃないだろうと麻耶は思う。 (この子は多分親戚よね? 苗字が同じでも) 「なにおしえてもらってるの〜」  麻耶がそう考えている間に秋弦はメルファのノートを覗き込む。  そして、何か悪い物を見たという表情で、効果音を付ければ『うへぇ』と言う感じで顔を顰めた。 「……なに? その表情」 「がんばってね?」  達観した笑みと言いますか、人の不幸は蜜の味と言う笑みで微笑む秋弦。  何だか納得できないがこの場の怒気を収めるしかないメルファ。 「なんだか、かなり腹が立つわ……」  その言葉に怒りを感じたのか、秋弦は慌てて出て行く。  メルファは秋弦を恨めしそうに見るが、まだ今日の授業は終ってないのだからと言う感じで机に向かった。  その頃、ファイは漢文を相手に悪戦苦闘している。  文学関係は殆ど独学で、読むことも少ない。  法則があれば読み方はわかるのだが、意味が解らない。しきりに首を傾げていた。 「あ、そこは……」  首をかしげるという事は一種の信号となって麻耶に伝えられる。  引っかかったであろう場所はファイの視線をたどれば、麻耶には解ったのですぐに説明できるのだった。  秋弦は邪魔をしてはいけないと思ったのか、すぐに出て行く。  気にせずに麻耶は指導を続けた。麻耶は指導が終って、外に出た時に袖を引張られた。  秋弦だ。麻耶は怪訝な表情を作って秋弦を見る。 「あそんで?」 「ごめんなさい。疲れているからまた今度ね」 「……ざんねん」  咄嗟にそう言った麻耶。秋弦は残念という表情でメルファたちの元へと走って行く。  麻耶が勉強を教える日が何日か続く。  秋弦は毎日、麻耶に遊んでと、せがんでいた。  何日かすれば、そのうち誘わなくなると思って麻耶は秋弦の事をあしらい続けた。  しかし、秋弦は諦めない。先に限界が来たのは麻耶だった。 「あそんで?」 「いい加減にして!」  麻耶の本気で苛立った声が鳴り響く。  それと同時に、パチン、という秋弦の手を振り払う音も。 「私に関わらないで!」  ヒステリックに叫ぶ麻耶。周りにしてみれば、何故ここで叫ぶのか解らない。  しかし、麻耶には確実にストレスになっていた。  叫んでから、しまったと言う表情を麻耶は作る。 「ごめんなさい……」 「秋弦は悪くないじゃない! どうして!?」 「ううん、ちがうの……しずるがわるいの」  泣きそうな顔で秋弦が言う。メルファは納得がいかない。  とにかく、麻耶を睨みながら秋弦をそばに引き寄せた。険悪なムードと言っても良いだろう。  ファイも同じように、麻耶を睨んでいる。  緊迫し、空気が重たい。息をするのさえ、辛い空間だ。 「あのね、あのね、しずるがね、まやのいたいところをさわったの」 「でも……」 「まやはね、わるくないの」  困惑したようにメルファが秋弦の顔を覗き込む。  麻耶は、ばつが悪そうに視線を逸らして外を見ていた。そして、いつものように何かを数え始める。 「どうしてそういうの?」 「しずる、ばかだから、パパみたいにやさしくないし、ママみたいにつつんであげれないの」  泣きそうになりながら、たどたどしく言葉を紡ぐ。  メルファはここにアリアとサラサが居なくて良かったと考える。  こじれにこじれてしまうだろうと、解るからだ。 「わるいことにはちゃんとあやまらないと」 「でも……」 「ごめんなさい」  秋弦は麻耶の方に歩いて行って頭を下げる。  しかし、麻耶に反応は無い。秋弦は頭を下げたままだった。 「……」  麻耶はゆっくりと扉の方に向かう。  それを見てメルファが怒る。何故、そんな反応しか出来ないのかと。 「何処に行くの!?」 「頭を冷やしてくる」  麻耶はそれだけ言うと、さっさとそこから出て行った。  背中の方から、秋弦の泣き声とメルファとファイが慰める声が聞こえる。  感じた事の無い罪悪感で麻耶は押しつぶされそうだった。居心地が悪い。気持ちが悪い。  しかし、麻耶は自分は悪く無いと鼓舞する事で何とかそれの拡散を防ぐ。  でも、後味が悪いのは仕方の無いことだった。 (あの子は何を考えているの?)  何故、そう簡単に他人の中に入ろうとするのかが理解できない。  そう簡単に友達と言うのか解らない。  麻耶には考えられない世界。それが広がっていた。  打算も無く、本当に遊びたいだけなのだろう。  だが、麻耶にはそれが怖い。今までの環境ではありえなかった事だから。  グループに取り込もうと言う打算がありありと解る誘いしか知らないから。  仲良くなろうと擦り寄ってくる者には初期の段階で体良く利用されたから。 「何なのよ……あいつ」  感じた事の無い嫌な、本当に嫌な、まるで鉄を舐めたような気持ちの悪さ。  秋弦は本当に悪い事をしていない。  ただ、単純に遊びたかったのだと、何となく解っていた。 (何で、私に関わろうとするの? 何で、わざわざ声をかけるの?)  甲板に出る。まるで麻耶の心を表すみたいに湿った不快な潮風が麻耶を出迎えてくれた。  カンカンと音をたてながら、手摺りにもたれ掛かり、水平線を眺めた。 (水平線みたいに、いつも真っ直ぐなら楽なのに……何でこんなに……) 「お疲れ様です」  急にかけられた秋子の言葉に麻耶は驚いて、船の外に落ちそうになる。  振り向くと秋子が麻耶の横で微笑んでいた。 「あらあら」  咄嗟にあらあらじゃ無い! と怒鳴りたくなった麻耶。  大人気ないと思ったのか、自分が慌てたのが癪なのか、その言葉を寸での所で飲み込んだ。 「ごめんなさいね、秋弦が秋弦が嫌な思いをさせて」 「え? あの……あの子との、ご関係は?」 「私の子供ですが?」 「えっと、苗字が違いますよね?」 「違う事なんてざらに有りますよ? 夫婦別姓でも問題ないじゃないですか?」 「えーっと? あれ? あれれ?」  良く思い返してみると確かに秋子に似ているような……と思う麻耶。  でも、何故あんなにしつこいのか解らない。  疑問符が頭の中に浮びっぱなしである。 「大丈夫ですか?」  何がとはさすがに言わない。頭はなんて言ったら、麻耶は危ない人になってしまう。  あー……ウー……と意味不明な唸り声を上げながら、何とか考えを纏める。 「あの、その、えっと……」 「無理に言わなくて良いですよ」  何か言葉を形にしないといけないと思った麻耶。  秋子はやんわりとそれをしなくて良いという。 「ごめんなさい、それとありがとう」 「え?」  何故、お礼を言われているのか解らくて、麻耶は怪訝な顔をした。  明らかに場違いだからだ。 「何でですか……何でですか!? 私はお礼を言われるような事していません!」 「ううん、秋弦はこれでまた他人を思いやる事が出来るようになります。  貴女は自分勝手にやったかもしれない。でも、あの子には良い薬になったの」  はぁ? と怪訝そうな顔が崩せない麻耶。困惑しっぱなしである。  秋子はそのまま困ったように微笑みながら、続ける。 「私も悪いのですけど、あの子はあのやり方でずっと生きてこれたんです。  初めは、一緒に遊んで楽しくから始まって、秋弦以外の子が一人で居るのが我慢できなくなったみたいで……  無視されても、反応されなくても、何度も、時間をかけてでもその子と遊ぶんだって」  つまらないですか? と秋子は視線で麻耶に問うた。  麻耶は首を振って話しの先を、と促す。 「今まであの子の出会ってきた子が、何をして良いか解らない、感情が凍った子ばかりだったんです。  反発される事も、拒絶される事も無かった。もっと色んな人が居るはずなのに方法を確立してしまった。  それはとても傲慢な事です。確かに、ある人には有効でも他の人には毒でしかない場合も有ります。  今回初めて、秋弦はこれでは駄目だって解ったでしょう。だから、ありがとうなんです」  ぺこりと秋子に頭を下げられて、慌てる麻耶。  秋子は頭を上げた時、意地悪そうに微笑んでいた。  それを見て、麻耶は頬を膨らませる。 「からかってたんですね?」 「ふふふ、でも、お礼を言いたかったのは本心よ」  もし、お母さんが居たら、本当のお母さんが居たらこんな感じなのだろうか。そう思う麻耶。  不思議と、さっきまで苛立っていた感情が消えているのを思い出して、軽く自己嫌悪に陥る。  何で簡単に忘れる事が出来るのかと。 「ゆっくり慣れていけば良いですよ。秋弦のあしらい方も、この生活にも」 「でも……」 「大丈夫」  大丈夫という言葉に、何処か安心する物がある麻耶。  そう言われたのは初めてだったりする。  大丈夫という言葉は自分に言い聞かせる物であって、他人から言われる物ではない。  麻耶の認識はその程度である。だから、秋子の大丈夫という言葉が響くのかもしれない。  ちなみに、大丈夫の後にあの子、単純ですからと秋子が続けているが麻耶の耳に入っていなかった。 To the next stage

     あとがき  おかしい……おかしいぞ? 祐一君サイドなのに殆ど登場の機会なしでした。どうもゆーろです。  麻耶さん中心で書いてしまったの仕方が無いのでしょうけど……反省点です。  次、名雪さんサイドから話を本格的に動かします。  と言っても今回みたいに何だか、中途半端な形にならないか心配なんですけどね。  では拍手コメントのお返事をしたいと思います。 >由紀子と晴子のドールに関係する対決に祐一がはいったらどんな話になるのか見てみたいです! 8/21  えーっと、リクエストですよね? 善処します。  次回のSSS(いつになるか解らないですけど)には必ず入れれるように努力しますね。 >何で名雪側の人間は全員1つの道しか存在しないって決め付けてるんでしょう?物事を多角的に見ろと小一時間 8/21  多分、これでコメントが全部だと思うのですけど……確かに言えていることだと思います。  エリアMは……そうじゃないとお話面白くないですしねぇ(苦笑  ただ単に、私の実力不足だと思います。   エリアO組みでしたら、私の中では理由があるんですけど、形にしてしまいましょうか?  大雑把な理由は初めての犠牲と黒い獣を葬った事になったと言う事。  エリアOに世界政府からの介入をした事です。世界政府の連中はGEナンバーの恐ろしさを知ってますから。   >名雪達の話はやっぱり重いですね。祐一達の話はとても面白く癒されます! 8/22  話が重たいのは仕様です。どうしても、名雪さんサイドは……ね。  次の話は美樹さん関係で一番重たくなりそうな予感です。  癒されているのはSSSかな? 何とかバランスを取れるように頑張ります。 >祐一×茜の短編を作って下さい 8/22  これもリクエストかな? 多分。  次回のSSSには入れれるように努力します。  ただし、私は甘甘な話は苦手なので……大目に見てくださいね?  では、頑張ります。ゆーろでした。  


    管理人の感想


     ゆーろさんからのSSです。  えらい言われているぞ祐一君、というのが今回の感想。(笑
     内心だけで言葉にしていないとは言え、かなり失礼な事を考えてましたね、麻耶嬢は。  普通の集団生活では無視されるか攻撃されるでしょうね。  読者の方も不快感持った人多いんだろうなぁ。(苦笑  お人よしが割と多い祐一達の中だと大丈夫そうですけど。  徐々に癒されてもらいたいものです。 
     色々なところで祐一の印象が出ていますが、何で良いものがないのかなぁ。(笑  歩んできた人生の所為といえばそれまでですが、ちょっと見てて痛いかな。  まぁ客観的印象は何も知らない第三者の特権ですけどね。  感受性が強い人間だったら、やはり違和感を看破してしまうものなのでしょうか?  本人が望んでそんな印象を抱かせていないと、そこまで見抜ける人間は……やはりいないかな。

     次回も名雪サイドみたいですが……果たして三角関係はどうなったのやら。(気になるのはそれだけかい


     感想は次の作品への原動力なので、送っていただけると作者の方も喜ばれると思いますよー。

     感想はBBSかメール(yu_ro_clock@hotmail.com)まで。(ウイルス対策につき、@全角)