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小池は、何が起こったのか解らなかった。
自分は何も出来なかった。ただ、衝撃で自分がその場から押し出されただけだ。
その押し出した原因を見る。
「え?」
それを見る。ただ、振り返っただけの筈だった。ただ、それは現実感を伴わないものが目に入る。
火に包まれ、その背中からでも解るほどのひしゃげたコクピットを曝すそれは衝撃的だった。
どうして? という疑問詞が頭の中に多く飛び出てくる。
目を奪われた。判らないまま、何も出来ないまま。
ガチャンと装甲の一部が地面に落ちる。それが切欠となって小池はやらなくてはならない事がわかった。
「γ1! 応答して!」
咄嗟に、声を出して自分の隊長となった人間に声をかける。
それは、希望的観測を交えた懇願の声だった。
もし、無事ならば、返事をしてと。これが冗談だといって欲しかった。
「γ1! γ1!! 応答してよ! 応答してってばぁ!」
子供の癇癪のように、言葉を繰り返す。
自分がヒュントに助けられたんだという事が解る。
加えて、身を挺して守られたという事が解ってしまう。
前に回りこんだとき、それが決定的になる。
背後は任せる、その一言を守るために犠牲になったのではないかと、思ってしまう。
「嘘でしょ? 何か、悪い夢だといってよ! ヒュントさん!」
信じられない光景とは言えない。背後からでも解るほどコクピットがひしゃげていたのだ。
想像する事は難しくはなかった。むしろ、その想像を押し殺していた。
コクピットに大きく打ち抜かれた穴がある。これでは、多分、即死だっただろう。
弾丸が直撃するまでの短い間に、身を挺して自分を逃がしたのだと。
「何で、何でなのさ!」
不条理に対して叫ぶが、それに帰ってくる答えは無い。
それに対する答えも何も無かった。
▲▽ ▲▽ ▲▽ ▲▽ ▲▽
向こうから歩いてくる2列縦隊のドール。β小隊はそれを迎撃している。
弾丸を変えたとしても、相手には通用しない。ただ、真っ直ぐ、弾丸も無いようにゆっくりと前へと進んでくる。
地雷も踏むには踏むが、多少体勢を崩すだけで、ダメージは見られない。
唯一の救いは相手の動きが遅い事だろうか。だが、亀のように確実に近づいてきている。
正面に意識を集中していた為に、突然、空から降ってきた2つの鉄球。それに反応できた人間はいなかった。
1つはゲートの内側に落ちた。もう1つは1機のドールを巻き込んで地面に落ちた。
ゲートのふちで守備をしていたドールが1機、見るも無残に押しつぶされている。
運が無かったと言えば運が無かったと言えるだろう。
もし、1mでもずれていたならば、コクピットがつぶされる事は無かっただろう。
潰されたドールはオイルを漏らし、ぱちぱちと火花を散らす。
それが引火したのか、火がついた。誰がどう見ても、搭乗している人間は生きていないだろう。
不幸中の幸いだとしたら、意識する暇もなく押しつぶされ、ほぼ即死だったという事だろうか。
「返事をしろ! ラウス!」
まるで何か悪い冗談でも見ているような状況。皆の声が無い。
何が起こったのか理解できないという感じである。
ただ、藤川だけが反応して声を出していた。
それと同時に、オレンジ色の光が海の方へと落ちて行く。
藤川がここまで取り乱すのは珍しい。だが、隊員全員が知っている。
彼は仲間を失うという事を最も嫌うと。それが、β小隊に配属されて間もない隊員だったとしてもだ。
既に取り乱して、呼称を忘れているくらい。藤川は甘い。だが、それは悪く無い甘さ。
それは相対する相手に対しても言える。極力、人を殺さないようにと。
だが、特定の条件下ではそれが無効化される事をまだ、隊員は知らない。
体験した事もなかった。それに、隊員としても仲間を失うという覚悟はしていても、経験はしたくないものだ。
「全員、ゲートから離れろ! 対ショック体勢!」
運が悪い時は重なるものである。
藤川は、今相手が何をしているか手に取るようにまではいかないが、解っていた。
混乱に乗じて、爆発する荷台をゲートにぶつけるだろう。そして、それを爆発させる。
自分が相手だとしても、その位はやってのける。その隙は逃しはしない。
鉄球に気を取られすぎたと、藤川はそう思う。その判断は間違っていなかった。
藤川の判断の速さと、絶対的な信頼で結ばれた部隊の行動は迅速の一言。
その指示を出して数瞬。衝撃と閃光そして装甲越しでも解る酷い爆音が、ゲートとその後ろまで届く。
「被害は無いか!?」
気が落ち着かない。藤川はそう思った。相手は確実に進んできている。
ゲートはボロボロになっていた。それもそうだろう。
爆発の影響で、ゲートだったものといった方が良いくらいだ。
それを観察しつつ、隊員全員の返事が帰ってきた。
先程失った一人以外は全員無事。ただ、小破2機、中破1機の被害。
体勢を整えるように指示を出しながら、藤川はすぐに名雪に連絡を入れる。
「本部、作戦の変更を要求します」
『状況は?』
「ゲートが破壊されました。敵の進行は時間の問題です。小破2、中破1、大破1」
藤川はデータを本部に送りながら、敵を見る。
敵は瓦礫を退かしながらゆっくりと進んできていた。
『そう……データを見た限り選べるのは、プラン4とプラン7。好きなほうを実行して良いよ』
「プラン4を選択します」
『責任は私が持ちます、γ小隊と連携して敵を殲滅しなさい』
「了解。全機、聞け! プラン4を発動する! 損傷を受けた者は優先的に下がれ! 残りは作戦通りに行動!」
声に多少の勢いをつけての発言。隊員からの返事を聞きながら、藤川は歯を噛みしめていた。
部隊の困惑が聞こえてくるような気がする。声には出さないが、全員が困惑している事は藤川にも解った。
解ったからといって何かを変えるわけではない。
「これは、弔いでもある! 責任は私が取る、皆は今は任務に集中してくれ」
戸惑う隊員に指示を飛ばす。
どちらかと言えば、任務自体ではなくて、藤川がこんな事を指示するなんてという困惑なのだが。
だが、その意見に賛成なものが殆ど。それに、この方法が一番手っ取り早いとわかっていた。
藤川の指示に信頼を返す動きをする隊員。行動を開始して、すぐにγ小隊に連絡を入れた。
それが、更に彼らの意識を高めるとは思っていなかったが。
▲▽ ▲▽ ▲▽ ▲▽ ▲▽
秋子達はそのまま、前に進んでいる。
真琴が部隊に合流し、そして、落とした鉄球の混乱に乗じて、荷台を用いてゲートをこじ開けた。
ちなみに、真琴のパラシュートは荷台に乗せたので、燃えているだろう。
これで、戦力を正面に集中させなくてはならなくなる。
秋子たちの目的はほぼ8割は成功させている事になった。
ただ、これから第2ゲートと呼ばれる施設まで進めば、だが。
「行きましょうか」
鉄球から残りのマリオネットを出し、ゲートの反対側を保持させる。
それにあわせて、前面をマリオネット達が進んで行く。
今の所、美汐、秋子、真琴の3人はゆっくりとそれについて行くだけ。
ゲートを押さえた事で、ここを守備していた部隊は第2ゲートまで撤退を決めたような動きを見せる。
「どうしましょうか」
【進まないのですか?】
「それも一つの手です」
【あぅ……でも、ここに居たら、相手こないよ?】
「そこが頭の痛いところ、なんですよね」
どうしたものか、と秋子は考える。
マリオネットを除いた3人はある程度の事態にも柔軟に対応できる。
近接戦闘を美汐が、中距離を素戔嗚が、遠距離を真琴が、そして状況の判断を秋子が行う事でである。
残されたマリオネットはある意味、戦闘には向いていない。機動力が無い、それが大きなネックである。
敵も驚くくらいの防御力があっても、進むのは遅い。
「進みます」
ここに居ても何も得る物はないと、秋子は結論を出す。秋子の声に、了解の意を返す美汐に真琴。
第一、こちらは陽動だという初めの事を思い直したのだ。
それに相手が第2ゲートまで戻ったという確証も無い。ならば、進むしかないと結論付ける。
時間を見て撤退しようと思っていた。マリオネット達にそれぞれ指示を出して、ゆっくりとした速度で進む。
散発的な銃撃がマリオネット達を襲っている。時折とかでは無いが、常に何処かから隙を狙ってる感じが解った。
「しかし……しつこいですね」
【狙いも的確です】
撤退する為なのか、それとも故障した仲間を援護しているのか。
ただ、効果が無いことがわかっているのか、進行を遅らせる事に重点を置かれている。
例えば、足関節を重点的に狙うとか。足元に地雷があればそれを精密に射撃するとか。
一定の距離を保って、攻撃してくるそれは確実に進行が遅れる。
【あぅ〜、相手が一定の動きしてない】
ライフルを構えていた真琴がそう弱音を吐く。
マリオネットは反撃をするが、それが当たる前に相手は移動している。
法則性があれば先読みできるのだか、個人ではなくチームで動いているそれ。
チーム内には法則性が有るにはあるのだろうが、中々それが判らない。
無駄に弾丸を放つ趣味が真琴には無い為、まだライフルが吼えるような事態は無かった。
徐々に進んでいるのには間違いない。だが、思いのほか前に進むのに時間がかかっている。
「ここから道が狭くなります。注意を」
秋子はそう指示しながら、嫌な予感に囚われた。
片方は崖。事故を起こしても落ちないようにガードレールは敷かれている。ただ、ドールサイズではない。
もう片方は登るのも不可能だと思われる絶壁。登ろうにもドールの自重を支えきれずに崩れるだろう。
その二つの間を申し訳ないように存在する道。それの幅が一番狭い地点に差し掛かっていた。
狭いところで、何かを仕掛けられたら、引くに引けない。秋子はそう思っている。
自分ならば、ここにドールを伏せておく。そして、自分つまり司令塔を潰しに来ると考えていた。
秋子の危険だと思う事は、正しいが秋子の予想を超える出来事が起こる。
ビシリ
その音は聞き逃す程の小さい音。亀裂のような、何かに入る皹のような音。
秋子が気が付けたのは、真琴が何か不自然に上を覗き込む仕種を見せたからだ。
何故上を向くのか、そういった事は何も無い。秋子は直感的に、叫ぶ。
「引きます! 最大戦速で、撤退!」
その言葉を良い終わった瞬間、絶壁が崩れた。咄嗟に反応できたのは、真琴、美汐の2人。
素戔嗚は秋子の叫びに数瞬遅れて行動して、ギリギリ間に合った。
それぞれ、振り向き、もと来た道を逆走する。
機体の背中部分に、カンカンと、大きさの異なる石がぶつかっているのが解る。
追ってくるのは酷い爆音と、ものが崩れて行く音、そして、物が落ちて、水に叩きつけられる音。
音、音、音。それの洪水。
マリオネットは、崩れ落ちた土砂に押し流される形でがけ下に落ちるか、土砂に押しつぶされていた。
いくら装甲が厚くても、自身よりも重い物に押しつぶされれれば機体は壊れる。
もしくは、海に突き落とされれば沈むしかない。
形勢逆転も良いところだろう。先程まであった戦力の殆どが思いっきり削られた。
先程まで、ゆっくり歩いていたと思えないほどの速度で、3機が一斉に引く。
【……あれはなんですか】
「まさか、こんな事をするなんて」
秋子は名雪の評価を間違えていた感がある。何故、名雪が消極的な布陣しか引かなかったのか。
その理由をあまり考えなかったのだ。答えは簡単。名雪はプランを出して、部下に選択をさせている。
もしくは、部下にもプランを出させてそれを自分ではなく、部下に選択させている。
だから、消極的だが、堅実な作戦しか取らなかったのだろう。これは名雪の色ではない。
元来、名雪は攻撃面の戦略において秋子を超えている。そして、何より攻撃的な方法を好む。
つまり、名雪が有無を言わせなかったら、これを真っ先に使っていた可能性が高いという事だ。
今回、受けた罠というよりも地形を利用した攻撃はまさに名雪の手によるもの。
秋子なら選ばないような手も平気で選べる。今回の秋子は全く思いつかなかったが。
準備と味方の多くが安全地帯まで逃げる時間を稼ぐ為に足止めを行っていたのだろう。
それもある一定の距離は安全を測った距離でもあった。
もし、初めからこれに嵌めるつもりだったら、全滅していたかもしれない。
安全な距離を測る、そういった事があったために、発動にタイムラグが出来たのだろう。
「ともかく、稼げるだけ距離を稼ぎます」
【ぁぅー、大丈夫なの?】
真琴の情けない声。それは逃げ切れるのかという事を心配している風でもある。
相手の何機かは戦闘に参加できないにしても、数はこちらの倍は居る。
そして、面倒なほどにしつこく、レベルも高い。
「そうすぐに、こちら側に出られないはずですが……油断は禁物です」
そういう事しか、言えない秋子。
相手がドールという事を考えれば、まだ甘いかもしれない。
戦車が相手ならばそう言えるだろう。相手がドールなのだから、楽観視は出来ない。
ほんの僅かな時間しか、猶予は無いだろうと秋子は思っていた。
だが、何も無ければ逃げ切れるだろうとも思ってる。
▲▽ ▲▽ ▲▽ ▲▽ ▲▽
時間はかなり戻る。ファイ、メルファ、アリア、サラサ、秋弦の5人はファイの部屋に居た。
その部屋は秋子たちが攻略している施設にそれほど離れていない。
相沢海運の所有する港。その近くの警備拠点である。拠点の中の一番警備の厳しい建物の中の一室。
そこで、ファイの開いているノートパソコンをじっと見詰めている。
悪巧みというわけではない。それにはマリオネットなどの機体の情報が画面に映っていた。
まだこの画面には飛空船の情報が映っていた。
「このまま行けば安心かな?」
「多分」
「「まこ姉(みし姉)だもん、大丈夫だよ」」
夜更かししてはいけませんと、起こられるかもしれない時間帯。
しかし、それを怒る人間が今ここには居ない。
「それだと良いんだけど……」
秋弦が食い入るように画面を見ている。それを見て何か不安を覚えるメルファ。
この中で、一番危険予測が巧いのは秋弦である。だから、不安を覚えるのだろうか。
もちろん、子供達はそれぞれ何か起こるとわかっていた。
子供は雰囲気の変化に敏感である。そして、ここまで大きな準備をしていたのは初めてのことだった。
だから、子供達は集まっているのだ。
「「あっ!」」
マリオネットの表示が一つ消えた。アリアとサラサが声を上げる。
一斉に不安になる5人。何か出来る事は無いかと頭を寄せて相談し始めた。
そもそも、マリオネットをつれての行動など、今まで行った事が無い。
でも、機体を失う事は今まで無かったのだから、相手はよほどなのだろうとしか判らない。
「……何か出来ることあるかな?」
「……無」
「ドールがあればね、アリア」
「うん、サラサ。私達でも援護は出来るよ」
「でも、お父さん達……絶対に怒るじゃない」
秋弦はそんな4人を放置して、既に部屋から出て行った。
1人で行動を起こすほど馬鹿じゃない。出来る何かを探しに動いている。
しかし、部屋の中の4人は気がつかない。
秋弦は外に出たときに、麻耶にばったりと出くわした。
麻耶のその格好は物々しいの一言。ボディアーマーに身を包んだ麻耶はまるで別人だった。
アーマーの中から、ガチャガチャと音がする。武器が入っているのだろう。
「ま〜や〜? どうしたの?」
「ちょっと、自分に出来る事をしに行くの。秋弦は?」
「う〜ん、しずるもじぶんができることするの。あぶないことをさけて、ね」
秋弦に気がついた麻耶はしょうがないといった表情で屈み、秋弦に目を合わせる。
その表情には決意が隠れているが、秋弦には判らない。
秋弦はただ、ニコニコとした顔をしている。
「このカード、あげるわ。でも約束して、危険な事したら駄目よ」
「うん! まやもね!」
解っているという風に、くしゃくしゃと秋弦の頭を撫でる麻耶。
その後に、首に下げられていたカードを秋弦の首に下げた。
静かに微笑んでから、麻耶は立ち上がり、建物から出たら駄目よ、危ないからと言って外へと出て行ってしまった。
秋弦は、そんな麻耶を見送りながら、掃除用品の倉庫を目指す。
一方、部屋に残った4人はまだ相談を続けていた。
自分達にドールがあれば、何とかできるかもしれない。
多分、いや絶対に、確実に説教はされるが、その位で皆が無事ならそれで良い。
そう言った雰囲気になっていた。
「でも、私達の船に未登録のドールは無いよね?」
「それは、間違いないよ」
「みし姉が確認してたし」
「大丈夫」
それを否定したのは、ファイだ。PCから画面を立ち上げて、メルファたちに見せる。
相沢海運、しかも、この拠点の納品リストに、未登録のドールが5機ある。
その内の1機はワンオフの機体。それを持ってきたのは佐祐理達だった。
5機もあって納品されてまだ、1日もたっていない。その機体が相沢海運の格納庫に運び込まれている。
まだ、未登録の状態のまま置かれている可能性がある。
「ここから、未登録かどうか、わかる?」
「無理」
「どこからなら解る?」
「警備指令室、副警備指令室、情報エリア、ホストエリア」
ファイが指を折りながら、可能性のある場所を挙げていく。
この時間で、人が少ないのは情報エリアだけである。
ただ、入り込むのにIDが必要となる。それさえクリアしてしまえば警備員の目を盗む事は簡単だ。
どうやってIDを手に入れるか? それが命題になってしまう。
ホストエリアとはホストコンピュータが置いてある場所。ここには侵入する事は出来ない。
これはIDが有っても無理だ。そして、両方の警備指令室には常に人が居る。
行動は決まったものの、動くには確実性が無い。
一度捕まれば、もう次はないだろう。何を言っても無駄。
それが解って、4人は頭を悩ませている。
「ただいまー」
そこに、リュックを背負った秋弦が帰ってきた。
そのリュックはこんもりとしていて、何か嫌なものを感じる。
出て行ったことに気が付けなかった4人は驚く。
「ど〜したの?」
秋弦は何がなんだか判らない。4人全員が自分に注目している事もよく解らずに首をかしげていた。
胸元にある、カード。それはIDカードだ。麻耶の。
何故これがここに有るか判らない。でも、希望が見えてきた。
「秋弦、これどうしたの?」
「まやがね、そとにでないならって」
「使って良いの?」
「ん〜、わからないけど、いいとおもう」
秋弦はそう言った。外に出ない代わりに、これを貰ったのだと。
4人は秋弦を巻き込んで、相談を始めた。
そして、情報エリアにはファイが1人で行くことになった。
残りの4人は相沢海運の格納庫へと行く事になる。
「連絡は密に。とりあえずのキーマンはファイだからね!」
「了解、無理は無し」
「「解ってる!」」
「うん」
「じゃあ、行くわよ!」
ノートPCを持ったファイがまず部屋を出て行く。
少し遅れて、4人が部屋を後にする。格納庫までは外に出たほうが早いが遠回りをする。
これは、麻耶と約束したと皆が思っているからだ。それに早く着いても意味が無い。
手順としては、ファイが確認、確認した後に未登録のドールがあれば連絡。
連絡した後に、ファイがコンピュータで制御されているものを掌握。3機が外に出る事をエスコートする。
秋弦は格納庫で目くらましの役目と、整備員の足止めである。
遠回りしながら、格納庫を目指して、走る4人。
思いのほか時間の掛かる距離である。情報エリアは歩いて5分かから無い。
格納庫までは走って15分はかかる。格納庫目前になって連絡が入ってきた。
『未登録、有。北口、手前左右、右2番目』
「ありがと、ファイ。エスコートよろしく」
『了解』
「いくわよ、みんな」
リュックから、物を取り出しながら、一斉に火をつける準備をする。
4人全員にそれぞれ、2つ。秋弦だけはリュックに入っている数がまだあった。
「みんな、覚悟は良いわね?」
「怒られても良いもん」
「アリアに賛成」
「やらないの?」
秋弦はなにか、悪戯と勘違いしてそうな顔で首を傾げる。
そんな秋弦に、苦笑するメルファ。一番の年上である。
「3,2,1で、とびこむわ」
よ、という前に秋弦が飛び込んでいた。
慌てて、その後に続くメルファ、アリア、サラサ。
手にしてたものに火をつける。それから勢いよく、煙が噴出した。
「けほ! けほ! しずるとくせいのけむりだ、けほけほ! まー!」
そんなヤケクソ染みた声が相沢海運の格納庫に響いたそうな。
秋弦は思いっきり、煙に囲まれている。それにもめげずに、次から次へと煙を出すものを取り出し、火をつける。
ちなみに、煙球とは煙の出るタイプの殺虫剤を同時に大量に火をつけたに過ぎない。
もうもうとした煙は害虫に効くのだから、人間にも効くに決まっていた。
茜たち、整備班の人間がその餌食となる。その人たちは一瞬何が起こったかわからなかった。
To the next stage
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あとがき
はい、とりあえずはここまでです。次回は時間軸を少し戻して佐祐理さん達の話を書きます。
やっぱり戦闘は書いてて楽しいですね。疲れますけど……最近、SSSを書くよりも戦闘かいてる時間のほうが長いです。
えー……暗に、SSSの更新は遅れるのですいませんって事なんですけどね(汗
ちなみに、最後の秋弦の言葉が気に入っていたり。
……すいません、何故か気に入ってしまったんです。
では、拍手のお返事します。
>祐一は、今回は断りなしで舞を置いてけぼりにしましたね。
>YA-11,YA-13の、武装展開すると変形する所が格好良いと思います。 10/25
同じ時間でしたので、同じ人だとおもいますが……違っていたらすいません。
機体に関してはどうもありがとうございます。えぇ、嬉しいです。
断わり無く置いてけぼりにというのは確かにそうなのですが……
舞さんも躊躇っていたし、祐一君は焦っていたとどっちもどっちなような気もします。
それに、舞さん、高橋嬢に襲われてますから……でも、祐一君が悪いんだろうなぁ(苦笑
>聖ジョージ部隊は一歩間違うとただの狂っていかれた集団になりますね 10/26
そうですね、その可能性は否定しません。ですが、正式な集団です。
正式な集団なら何をしても良いかと言われると答えはNOですが。
ですが、聖・ジョージ部隊は命令以外の事はしていないんです。
やりすぎた事は有りますが、命令の範疇内なんですよね。
>美汐は「祐一の妻」の一人なのでしょうか?
>第28話で、祐一達がいない時に大部隊が来たのは、第25話で平定者を裏切っている人のせいでしょうか?
>(SSSのリクエスト)秋弦が祐一のゴーグルを被って、ジュピターを驚かす話を希望します。 10/26
これは同じ時間だったので、違っていたらすいません。
美汐さんは祐一の『精神的な』妻です。これでOKでしょうか?
本格参入はまだ当分先じゃないかと思ってます。
28話の件ですが、間接的にはそうです。
平定者が居ないから、この手持ちの戦力で落とせると考えたんですね。
ちなみに、名雪さんが戦力を派遣した表向きな理由は、平定者がそこに居るから。
ラインハルトさんにちゃんと支持されてます。ですから、問題ないんです。
名雪さんにしても、ラインハルトさんにしても、大部隊を所有する人たちは邪魔なんですよ。
リクエストに関しては了解です。期待に添えれるかどうかわかりませんが努力します。
>祐一と由起子と晴子が酔った勢いで不純な関係になると思った自分はやばいかな 10/26
私も勢いだけで書いているので……これ1対1なら、なるんじゃないかなぁと思ったんですが。
流石に、隣に晴子さんが居たので、それは無いだろうと思ったんですね。
大丈夫です。太鼓判を押します。問題ないです。
>由起子も祐一にフラグをたてて欲しいです! 10/26
む、むぅ……フラグ立てして良いのかなぁ(苦笑
難しいと言うか、何と言いますか……立てたら立てたで問題になりそうな気が……
善処はしますが、期待しないで下さい。確率はかなり低いかな?
>相沢祐治と相沢祐一は、名前は似ていますが、血縁などは一切ない赤の他人なのでしょうか?10/26
赤の他人です。ちなみに、有夏と祐治はかなり遠い親戚関係にあったり。
有夏さんとも血が繋がっていないので、赤の他人です。
名前が似ているのは偶然ですから。自分でもややこしい設定したなぁと思ってます。
では、続き頑張りますね。ゆーろでした。
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管理人の感想
ゆーろさんからのSSです。
表の戦闘は一進一退といった感じですか。
まぁ平定者側がかなり不利になりましたけど。
しかし小池氏や藤川氏は精神的にやや脆いみたいですね。
過去が関係しているとはいえ、軍人としてはちょっと問題なんだろうなぁ。
無論人としては良い事ですが。
他の隊員もそうですが、やはり無敗の部隊故に味方が亡くなると脆い面もあるんでしょうか?
そして子供達がまた洒落にならない事を……。
致命的なまでに足を引っ張るのか、それとも救世主となるのかはまだ分かりませんけど。
麻耶嬢の動きも気になるところですな。
それにしても平定者は身内に弱いよなぁ。(笑
感想は次の作品への原動力なので、送っていただけると作者の方も喜ばれると思いますよー。
感想はBBSかメール(yu_ro_clock@hotmail.com)まで。(ウイルス対策につき、@全角)