神の居ないこの世界で−A5編−


→神が居ないこの世界だから。

     時間を遡って事が終った直後の話し。  殆ど原形のとどめていないシヴァのコクピットにて、高橋は気を失っている。  戦闘をしていた痕は色々とある。藤川はそれを見上げてかなり不安になっていた。  もしかすると、高橋まで失ってしまうのかもしれないと。  膝をついているシヴァの様子を見ながら、コクピットへと向かう。  そこには、闘う姿勢のまま気絶している高橋が居た。  右手を前に突き出し、構えを取るようにいつでも動けるよう意識した体勢をしている高橋が。 「……良かった」  張り詰めていた藤川からでた声は安心だった。彼、いや彼らは仲間を失う事に慣れていない。  だから、この声も仕方ないだろう。優しい手つきで、トレーサーを外し高橋をシヴァから切り離す。  高橋の暖かい体温がまだ生きている事を示していた。 「君まで……失ってしまうかと思ってた」  そっと高橋を抱きかかえ、コクピットから地面に降りる藤川。    地面に降りたときに、高橋が目を覚ましたのかもぞもぞと動く。 「あ、あれ?」 「気がつきましたか?」 「友宏?」  ここがどこか判らずにきょろきょろする。そして、ばっちりと藤川と目が合った。  藤川は微笑む。それに対して、高橋は陰った微笑を返した。 「辛い事があったの?」 「……」  高橋の言葉に、藤川は何も返せない。  ただ、気まずそうに目を逸らすだけである。 「ごめん、凄く無神経だったみたい……」 「そっちはどうだったんですか?」 「私は私の強さを誇って良いみたい」  その言葉に、藤川は多少驚く。それと同時にそれを嬉しく感じていた。  高橋の顔はまだ陰った感じ取れないが何か吹っ切れているようにも感じる。 「あと少しで勝てたのに自分で勝てる勝負捨てちゃったしね」 「無事でよかったです」 「ごめん、本当にごめんね……」 「どうして、高橋が謝るんですか?」  藤川は高橋が謝っているのか判らない。高橋は悪くないと言うよりも関係ない。  むしろ、ちゃんと任務をこなしただけである。  抱きかかえられたままの高橋は藤川の首に手を伸ばし抱きつく。  顔を首筋に当てて、藤川からは顔が見えないようにして。 「今、悲しいのは……友宏だよね?」 「どうしたと言うのですか?」 「だって、高木さんが亡くなった時もそんな顔してた……私、その時、何も、できて、ない。なにも、返せ、てない」 「あの時は……」  あの時は仕方なかったと言おうとしていえなかった。  ポツリポツリの藤川の首筋に涙が当たる。涙声の高橋。  それを感じ、慰めにもならないと藤川は言葉を止める。 「友宏は、あのときから、ずっと、私をささ、えてくれて、たん、だよね?」 「……買い被りです」 「嘘、言わ、ないで……今は、私より、友宏の方が、泣きたい、はず……誰が、亡く、なったの?」 「ヒュントさんと、ラウスです……」 「辛い、こと、聞いて……ごめん、ね」  藤川は困り果てる。確かに悲しみたい。でも、悲しむだけでは駄目だと知っている。  自分は責任のある立場にあるのだから、毅然としていなければならないと言う責任感も有った。   「私、私ね、友宏を、支えられる、くらい、強くなるね、そうすれば、友宏も、泣ける、よね?  その、時は、泣いて、悲しみを、ため、こまないで、私、頑張るよ、もっと、つよ、くなる」  嗚咽を漏らしながら、高橋は泣き続ける。  藤川はそれに困惑するしかない。高橋は同情から自分を支えたいといっているのか?  そんな疑問さえ、藤川の中にある。ただ、嬉しくないかといわれれば嘘になる。納得は出来ないが。 「私、友宏と、対等に、いつまでも、歩いていきたいから、だから、強く、なるよ」 「対等に?」 「だって、私が、ずっと、甘えてたら、友宏、泣け、ないもん。私は、友宏の、事、好きだから」 「それが、高橋の答えですか?」 「私、の、答え、だよ? 嘘なんかじゃ、ないんだから。一緒に、歩いて、生きたいのは、友宏、だけ、なんだから」  納得できない物が氷解する。既に対等だよと言う言葉は飲み込んだ。  藤川自身、高橋が先に何歩も進んでいると感じてしまったからだ。 「お互い、強くなりましょう。こんな思いを二度としないために」 「うん、うん。うん!」 「私も、高橋の事好きですよ」 「友宏……」  涙声で花をすする高橋の頭をゆっくりと撫でる藤川。  不謹慎かもしれないが、藤川は喜んでいた。高橋も喜んでいた。  高橋の腕に入っていた力がきゅ、と少しだけ強くなる。 「はなさ、ないか、らね?」 「えぇ。私もです」 「はなさ、ない、んだからぁ」 (いつか、私の代わりに高橋が泣いてくれると、言ってあげましょう。最大の感謝と共に)  藤川は結局泣かなかった。でも、代わりに高橋が泣いてくれた。  そう思うことで、藤川は良かったのだ。  2人の夜は悲しさと愛しさが混じる、不思議な夜となる。
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     小池は何も出来ずに、ただ、割り振られた部屋で虚空を睨んでいた。  明かりもつけない、つける勇気も無い。  自分自身が許せない。そして、ヒュントを殺したのは自分ではないかと考えている。  色々なもしが、表れては消えてまた表れてを繰り返している。  高橋が高木さんに庇われた時もこんな気持ちだったのかと考えて、それを打ち消す。  今、高橋の気持ちが判った事で、小池は何も出来なかった事を痛感した。  ただ、傍に居ただけで、何も出来てない。  話しかけていたかもしれない。でも、それが相手の役に立ったのか判らない。 「あら? こんな所に居たんだぁ」 「……サンティアラさん」  ぱちん、と電灯のつく音。暗闇だった部屋に明かりが灯った。  灯したのは部屋に無遠慮に入ってきたサンティアラだ。  その表情には呆れが正面に押し出されていた。   「暗いわね」 「……放って置いてください」 「もしかして、ヒュントさんに関して責任感じてるの?」  びくんと、小池の体が揺れる。一番指摘されたくない事だった。  サンティアラの表情が更に深くなった。 「やっぱり。貴方も藤川君もお難いわねぇ」  もっとも、藤川君は泣かないし、立場があるものねとサンティアラは言う。  貴方とはぜんぜん違うものねと言う視線を受ける小池。  その無神経さに一気に血が頭に上った。 「うるさいなぁ!」 「図星かぁ……貴方は、いえ、高橋さんもそうだけど、貴方達は幸せね?」 「なんだと!?」  掴みかかる小池。サンティアラはそれに対して何も行動を起こさない。  ただ、ちょっと苦しそうにするだけである。 「貴方は判ってる? この部隊の異常性が」 「この部隊のどこが、異常だって言うんだよ!」 「私が以前居た軍だったら、ドール隊のメンバーの入れ替わりは激しかったわよ」 「何の関係が有るんだよ!」 「ドールに乗るのは命がけの仕事だって事よ。少なくとも、メンバーの死別が少なすぎる」 「そんなの当たり前だろ!」 「当たり前じゃないわよ。だから私は言うの。小池君は恵まれすぎてるわってね」 「……」 「私は少なくとも10人と死に別れてるわ。知り合いも知り合いじゃないのも」  事実、聖ジョージ部隊の死者は例外を除いて殆どいない。部隊の質の高さに加えて名雪の絶妙すぎる指揮のおかげだ。  皆に覚悟があるはずだが、覚悟が足りないと、サンティアラは言う。  サンティアラとて、心を痛めないわけではない。だが、悲しんでいるだけでもない。  事実を事実と受け止め、それを自分の中で消化している。その術を持っている。 「戦場は死が溢れた場所なのよ? 自分の命と他人の命を代償に戦ってるわ。  そんな事も忘れて、生きているのが当たり前と感じて、覚悟も無く戦ってたの?」  そんな当然の意識が無いのか? とサンティアラは問いかける。  小池はそれに何も答えられない。  ふぅと溜息を吐きながら、サンティアラは続けた。 「私は、ヒュントのおじ様が羨ましいわ。だって、ただ死ぬんじゃなくて、仲間を選んで死んだんですもの」 「そんなはずない! ヒュントさんが……」 「ある。これを見なさい」  ぽいっと渡された便箋。それは遺書だった。小池は凄まじい勢いでそれを読んでいく。  そこにはもし死ぬのなら、仲間の為に死にたいと書いてあった。  遺書は書きたい人間だけが残す。ヒュントは家族と隊員に当てた遺書を書いている。 「悲しむのは……いけないことなんですか?」 「そんなわけ無いわ」 「だったら、どうすれば良いんですか!」 「私は不幸な主人公です。だから、悲劇に酔わせてくださいって、言いたいのね?」 「え?」 「私悲しんでます。だから、慰めてください。甘ったれるんじゃないわよ」  立場が逆転する。完全にサンティアラが小池の上に立った。  目が据わり、かなり怖い。小池の嗅覚が多少のアルコールの匂いを捕える。  小池はサンティアラがアルコールを摂取していることに今更ながら気がついた。 「貴方は良いかもしれない。慰めてもらえる人が近くにいたものね。誰も、死にたいなんて思ってないわよ!」 「そんな事……」 「やってられるかー! 落ち込んでた高橋さんがいたから、慰めて満足になってたんでしょう?」 「……」 「あら? 図星? 立場が変わって、急に怖くなったの?」  突き刺さった言葉は痛かった。小池自身が認識していなかった真実があったから。  認識できなかっただけで、今、認識できてしまった。  高木さんが亡くなったとき、小池は何故悲しくなかったか認識できてしまった。 「あ、あはは、はははは」  もう、笑い声しかでてこない。感情が麻痺しつつあった。  麻痺してしまいかけていた感情を取り戻す切欠になったのはサンティアラが続けた言葉だった。 「私だってねぇ。悲しいわよ。誰だって知り合いは死んで欲しくないわ」 「僕は……」 「私だって泣きたいわ……ヒュントさんは誰にだって優しかったじゃない」  麻痺しかけていた感情が解け、思考を呼び込む。  高橋を好きになったのはどうしてだろうか? それは、悲しんでいる高橋に笑って欲しかったから。  同情から始まった恋だったのか? 恋愛感情が始まったのか? そう感じてしまう。  あれほど恋焦がれていた物があっさりとなくなってしまってしまう。  だから、サンティアラの声は小池の耳の右から左へと流れていた。 「ねぇ、私が、貴方のことを庇って、死んだら貴方は泣いてくれる?」  そんな状態でも、ポツリと呟かれた冷たい言葉には反応できた。  それを小池はこれ以後、一生感謝する。反応できた偶然に。  後にこれが、小池の新しい始まりだとわかったから。  反応できなかったら多分、生きていけなかっただろうと。 「え?」 「私が、貴方を庇って、死んだら」 「そ、そんな、仮定の話し……」  うろたえる小池。確かに物騒でありえなさそうな話である。  だが、知り合いが死に不安になる事は誰にだって有る。 「私の為だけに、泣いてくれる?」 「そ、そんな事させない!」 「泣いて、くれないの?」  酷く弱くなったサンティアラに小池は焦る。  暗く、沈みこんだ表情に慌てて、言葉をつなげた。 「僕が、サンティアラさんを守るから! 死なせるなんて事は絶対にしない!」  両肩をつかんで、サンティアラに言い切る小池。  サンティアラは俯いたまま、顔を上げなかった。 「もう、悲しい思いはしたく無いから、そんな事態にさせないよ……サンティアラさんは絶対に死なせ無いから」 「………………うふ、うふふふふ、あははは」  サンティアラの肩が小刻みに震えて、少しの沈黙の後に笑い出した。  小池は何が起こったか理解できない。 「それってプロポーズ?」 「あ、え?」  呆けた顔の小池。何言ってるの? サンティアラさんといった表情だった。  かちゃりと、サンティアラは録音した、小池の会話を流す。 『僕が、サンティアラさんを守るから! 死なせるなんて事は絶対にしない!』 「プロポーズよね?」 「サ、サンティアラさん!」 『僕が、サンティアラさんを守るから! 死なせるなんて事は絶対にしない!』 「プロポーズ?」 「さ、サンティアラさぁん!」 『僕が、サンティアラさんを守るから! 死なせるなんて事は絶対にしない!』 「うふふ、初めてプロポーズされちゃった♪」 「あぅ……」 「私の初めてゲットね、小池君♪」 「さ、ささ、サンティアラさん! か、からかわないで下さい!!」  顔を真っ赤にして、怒る小池。サンティアラは笑いながら、ひらひらと小池から離れる。  塞ぎ込んでいた先ほどまでとはぜんぜん違っていた。 「うふふふ、良かったわ。元気になって」 「あ……」  先ほどまでおちゃらけていた雰囲気が一気に無くなる。  サンティアラに言われた通り、確かに小池が感じていた心の重さはなくなっていた。  真剣な表情のサンティアラは言葉を続ける。 「ヒュントさんだって、塞ぎ込まれたままだったら多分成仏できないから」 「……ありがとうございます」 「再びこんな思いをしない努力が必要なだけよ。だから……ね。元気出さないと」  じゃあね、といってウインクを残して部屋を出て行くサンティアラ。  からかいに来たのか、元気付けに来たのか判別できない小池。  でも、感謝しても良いかもしれないと思っていた。 「あ、それと、私。さっきの言葉、かなり嬉しかったから」 「え?」 「私。貴方の事、好きよ。小池君」 「えぇ!?」  がちゃりと、部屋に戻ってきて言うだけ言うとさっさと出て行くサンティアラ。  小池はサンティアラに勝てないなぁと感じていた。  ちなみに、彼はこの後、一生頭が上がらなくなる。恥ずかしい言葉(プロポーズ?)を言質に取られたからだ。
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     護衛期間が終って撤退する聖・ジョージ部隊の話し。  その部隊に厄介になろうと1人の人間が接触していた。   「水瀬さん」 「何かな? 精神患者さん」  棘のある言葉。名雪は彼、GE-09が好きになれなかった。  いや、好きになることなど一生出来ないだろうと思っている。  初対面の人間ならば、その表情に冷たさを感じるかもしれない。  ただ、隊員たちが今の名雪の表情を見たら誰もが驚くであろう。  張り詰めていた物が緩んだと言うとおかしいが、ある程度背負っていた物がなくなった感じがする。   「自分も、あなたの部隊に加えてくれませんか?」 「……それがどういう意味を持つか判って言ってるの?」  ラインハルトにしてみれば、切り札になりうる人材である。  名雪にしてみれば、扱いに困るだけの存在だ。実力もある程度しか判らないし、適正も判らない。  戦略眼は多分あるだろうが、どこまでそれを信用して良いかも判らない。  何より、決定的なのは今まで寝たきりのような生活をしていて体が貧弱すぎる。 「これが、自分の役目だから。兵器から人になるために……ね」 「役目? そんなものだけの為に、隊に入れて欲しいって言うの?」 「えぇ。逃げ出すのは、逃げるのはやめたんです。弟が頑張っていたから、自分の出来る事をやるだけですよ」 「後悔しても知らないからね」 「頼みます」  名雪は携帯電話を取り出して、まずはラインハルトに連絡を入れる。  事情を説明して入隊希望者である彼に、代わる。  ラインハルトは意志を確認して、快諾した。彼ほどの切り札は出さないでも効果があるからだ。   「どうして、私の部隊なのかな?」 「弟は言ってました。貴女は自分の意志を継いでくれたんだって」 「……祐一が」 「だから、私は貴女の部隊に入るんです。私も、弟の意志を継ぎたいから」  ふん、と鼻を鳴らす名雪。心なしか、頬も多少上気している。  そして、憎らしげな声で次の言葉を発した。   「ふん、その清まし顔。いつまで続くか楽しみだよ」 「地獄は既に見てきました。だから、大丈夫です」  携帯電話で鬼教官を呼び出し、戦力になるまで鍛えてと伝える。  彼はそれを楽しそうに見詰め、電話が切れた際にいつから訓練が始まるのか聞いた。 「2日後から、徐々に始める予定だよ」 「わかりました」 「そう言えば、貴方。名前は?」 「Geo・Nineジオ・ナインです」  GE−09と言う、識別番号をそのまま自分の名前にする神経に名雪は眉を顰める。  本人はいたって気にしていないみたいだ。 「何の皮肉?」 「この名前は自分が背負うべき物ですから」  ナインは真剣な表情でそう言いきった。  名雪は本人がそれで満足ならそれで良いと言う表情である。 「あーあ。貴方がもっと嫌な人なら良かったのに」 「どうしたんですか?」 「嫌な人ならもっと憎めたのに。憎めないよ」 「それは重畳です」 「でも、こき使ってあげるから、早く戦力になるようにね」 「はい」  そこでナインと名雪の会話が終る。良くも無く、悪くも無い終り方。  こうして、聖ジョージ部隊は施設警備の任務を終えたのである。
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     本部の名雪の執務室。そこに香里とあゆ、栞。そして、名雪。  旧エリアMのメンバーが集まっていた。   「あのね……」  口を開いたのは名雪だ。3人は名雪が何を言いたいのか判らないが、それを聞き届けようと言う感じである。  その表情を見た名雪は安心して、言葉を紡いだ。 「私は、これから、戦争に争いにドールの必要の無い世界の為に動こうと思うの」 「うぐぅ、それって?」 「もう、祐一の事はお終い。私は私の為に、動くって事」  香里には判っていた事だが、それ以外の2人には判らないことだった。  だから、驚きが大きい。あゆと栞の驚いた顔を見て、若干頬を膨らませる名雪。 「こ、こほん。そ、それで何のようなんですか?」  咳をして誤魔化しながら、失礼に当たると栞は態度を改める。あゆも同じように改めた。  名雪はそれを見て、話を進める。 「これからも、力を貸して欲しいの……」 「良いわよ」 「本当? 香里……良いの?」 「まぁ、今以上に忙しくなるって訳じゃないんでしょう?」 「そうだけど……」 「なら良いわよね?」 「そうだよ」 「そうですね」 「ありがとう……」  名雪は感謝のあまり泣き出した。  それにうろたえるのは前にいる3人である。 「ちょ、ちょっと泣くこと無いじゃない」 「苛めっ子になった気分だよ……ね? 栞ちゃん」 「あゆさん、そんな言葉を振らないで下さい」 「ごめん、私弱いから……また、力を貸してね」  涙を拭くこともせずに、泣きながら続ける名雪。  香里は仕方ないわね、といった表情で。栞は、当たり前です、といった表情で。  あゆはうぐぅ、頑張るよ、といった表情で。それぞれが頷くのだった。  
    〜部隊新生〜
     部隊全員をそろえた会議室。そこには、メカニックとファーム生も含めた全員が押しかけていた。  全員を正面に迎えて、名雪は熱弁を振るう。 「これからは、争いに戦争にドールの無い世界。私達が必要の無い世界を作ります。  言っていることは奇麗事だと思います。でも、理想を理想と言って何か悪いでしょうか?  実現する為の努力をします。奇麗事だけでは世界は変わりません。だから、力が必要です。  だから、皆さんも力を貸してください。お願いします」  名雪は頭を下げながら、誰も出て行かない事を願った。  しんと静まり返る会議室。手を上げる人間が1人居た。藤川だ。 「力を貸せと言うのは、命を差し出せというのですか?」  藤川は冷たくそう言いきった。  名雪を試すような視線、探るような声色だった。 「私は犠牲は嫌いです。尊い犠牲なんて認めない。私は、残酷でもこういいます。死ぬのは許さない。  だから、必要なら泥をすすってでも生き延びろと、無様でも生き残れと、命令します。  私は全員に生きてもらって、そして、私達が必要の無い世界に生きて欲しいんです。  だから、命を差し出せなんていいたくありません。無力な私に……力を貸して欲しいのです」  藤川は表情を緩めた。香里は頷きながら名雪の話しを聞いている。  メカニック達はそれでこそ、仕事の遣り甲斐が有ると言う表情。  他の隊員や教官も表情にあまり変化はない。 「活動は変わるのかしら?」 「あまり代わりません」 「そう、だったら良いじゃない。文句ある人は出て行ったら?」  サンティアラが名雪に質問をして、他の人間に畳み掛ける。  他の人間達もあまり文句が無いようで誰も出ていかなかった。  ありがとうみんな、と頭を下げる名雪。こうして、聖ジョージ部隊は生まれ変わる。  外面的には変らないかもしれない。でも、内面的には変っていく。  はて、さて、聖ジョージ部隊、ひいては名雪さん達の活躍、これから先はまた別のお話。 To the next stage

     あとがき  あれれ? と思いました。オリキャラばかりじゃないエピローグ……どうもゆーろです。  目だたないですよね……原作キャラ。でも、原作キャラは大体方向性決まってましたからね。  流されるのは仕方ないかと思います。とりあえず、名雪さん側のエピローグ終了です。  次は祐一君サイドのエピローグです。次で本当のラストですね。  流石にオリキャラ比率を下げれるように頑張りたいですね……  いえ、頑張ります。  では、拍手コメントをお返しします。    >今度はほのぼの路線や一話完結型とかの話がいいです!A5編が完結しても続きが読みたいです! >A5編の次は日常編を書いて欲しいです!  続きといわれても、オリキャラ比率が高くなりすぎてしまうので……  どうでしょうと言うのが私の気持ちですね。ほのぼのとかジャンルは良いのですけどね(苦笑  全く別の話しになる可能性が高そうでちょっとと思ってしまいます。  続きを書くかどうかは微妙と言うことで、お願いします。 >A5編完結してもSSSのような話を続きで書いていって欲しいです!(戦闘もあると嬉しいです!) >A5編最終戦、お疲れ様でした。祐一側が全員生還したのは、嬉しいです。  SSSのようにぶつ切りのお話しなら多分書けるのでしょうが……どうなんでしょうね。  これが本当に二次創作なのかなって思うものになってしまうかもしれません。  すでに、SSSは収拾がつかなくなってますし(爆  ちなみに最終決戦は予定ではM嬢がお亡くなりになる予定でした。  でも、どうしようという感じで修正を加えて現在の形に。  もっと、人死にを! と思っていた方、すいません。どうやら私はチキンみたいです。 >(質問)クラウ・ソラスには、LOSは搭載されていないのでしょうか? 12/12  はい、お答えします。搭載されていません。  あれは、武装ロンギヌスを展開する為のシステムなのでクラウ・ソラスには搭載されてないんです。  更に言うと、クラウ・ソラスには天照以外、目立ったシステムを載せているわけではありません。  武装ロンギヌスが異端過ぎる為、専用のOSが必要になったわけですからね。  近接戦闘に特化したクラウ・ソラスには必要が無かったと言うわけです。 >感動です(T_T) とてもよかったです。 12/13  ありがとうございます。感動してもらえて幸いです。  エピローグはほのぼの系のお話で纏めるつもりなので、ほのぼのしてください。  喜んでもらえて、嬉しいです。ありがとうございます。 >こどもの頃の茜もいい 12/18  SSSですね。浩平君と祐一君は知り合いと言う設定でしたから、こういった形になりました。  祐一君はその頃から手先が器用だったと言うわけですね。  茜さんの幼少期は……たぶん、あんな感じじゃないでしょうか?(爆 >機体設定を読んで、ロンギヌスは再生するんですね。驚きです!12/20  本編中でも一度、再生みたいなことしてたので……書き加えたんですが……  自分の技術力が足りないみたいですね。うん、精進します。  元々反則的な機体ですし、主人公機ですから、かなり優遇されてます。  はい、拍手のお返事を終ります。  あと、残念なお話ですが次回のエピローグを掲載してもらった時点でweb拍手を撤去してもらいます。  これにつきましては、新しいweb拍手に再登録する気がないと言うのが一番の理由です。  文字数がかなり限定されてしまいますし、お話も終わるのでちょうど良いかと思いましたから再登録しません。  では、最後のお話。頑張りますね。ゆーろでした。


    管理人の感想


     ゆーろさんからのSSです。
     聖ジョージ部隊側のエピローグですね。  収まるべきところに収まったという事でしょうか。  一応皆さん前向きに生きていかれるでしょうし。  名雪嬢も大人になって柔らかくなったんだなぁと思うと感慨深いものです。(笑  一時期ホントやばかったですからねぇ。(爆
     高橋嬢は結局藤川氏を選びましたか。  私は小池君より氏を応援していたので嬉しいですけど。  まぁその小池君も新しい女性に出会えたわけですし、良かったのではないかと。  サンティアラさんは凄く恐ろしいけど。  彼女はかの柳さんと同じくらいやばい気がしますし。

     さて、次はいよいよ祐一君たちのエピローグ。  長かったこのSSも次回ついに完結です。

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