美汐達、エリアKの実働部隊の久瀬小隊と倉田小隊の混成部隊は無事エリアMから帰還した。
今はブリーティングルームで回収してきた映像を出撃したメンバー。
それと上官の久瀬圭一、倉田佐祐理の二人と川澄舞を含めて見ている。
「ねえ、ねぇ、美汐。ドールって何種類か種類があるの?」
「真琴、今でなくて良いですか?」
2回目の画像を見ているときに、真琴は集中力を無くしたのか、疑問に思った事を美汐に聞いていた。
それを彼女達の上官である、佐祐理が答える。
「真琴さんが知らないのはしょうがないですよ。元々は民間人でしたからね。
ドールは真琴さんの乗っているあの鉄の巨人の事です。
正式名称は、ドール・JC414型ユニット。
JCは、関節の互換性の事を指してます。みんな面倒なのでドールって呼んでいますね。
ドールは大体の値ですが、全長つまり前から後ろが3から5m、幅が3から5m、全高が5から10mです。
標準サイズの高さが7m、大型だと10m位でしょうか?小型は確認されているのは5mが一番小さいですね。
大まかにタイプ分けをすると、F型、S型、M型の3種類に分類されています。それを詳しく説明すると、
F型は近距離射撃・近接戦闘、格闘も含むものを専門に、設計されたドール。
S型は遠距離支援・遠距離射撃を専門に、設計されたドール。
M型は近接から、遠距離まで受け持てるように設計されたドール。
頭に『耐』がつくと、防水加工がしてあり、雨天のときでも行動は可能になる。ただし水中は行動不可です。
まぁ、殆どの陸上のドールには防水加工がしてあるので、これは無視する事が殆どですね。
防水加工のしていないドールを配備しているのは雨の降らない地域位ですかね?
頭に『水』がつくと、水中専用機という事になる。深海200メートルまでが行動圏内。
頭に『両』がつくと、水陸両用機という事になる。陸では雨天で行動でき、深海100メートルまでが行動圏内。
ただし、水陸両用機は陸上でも水中でもどちらかに特化した機体には劣りますよ〜。注意してくださいね。
例を挙げると耐F型は雨天でも行動可能な近距離型のドール。
もう一つ挙げると水M型は水中専用の万能型のドール。という感じです。
あと、もっとも大切なのはドールは水に弱い事です。浸水には注意してくださいね」
真琴は佐祐理の話を熱心に聞いている。2人を除いた他のメンバーは画面を熱心に見ていた。
「武装の口径は25mmから45mmくらい。
マシンガン、ライフルこれが主要の武器。弾薬代はまだ安いですが沢山はつかえないです。
次はバズーカ、ロケット、ミサイル。
ただし、これらの武器の弾薬が高価なため、あまり使われる事はありませんが、威力は最も大きいです。
主戦の武器は近接武器であるマシンガンなどの火器か、近接格闘武器になってしますよ。
何せ、機体を整備をするにも弾薬を補充するにも、お金がかかってしまいますからね。
格闘武器は、刀など色々あります。
ただし鞭や弓のような武器はあまり無いです。使いにくいですから。
格闘武器で挙げるなら、舞が使っている両刃の長刀ですね」
「ねぇ、佐祐理。HとNの違いって何?」
最も知りたい事を真琴は佐祐理に質問した。
「それはですね、OS(オペレーションシステム)の違いです。
OSとは簡単に言うと、機体を動かすためのシステムです。
OSにはCROSSとYASの二つがあって、どちらにも良い点があるんですよ。
まず、CROSSはあの相沢祐治が失踪する前に作ったドール用のOSで、遺伝子による適正クラスがあります。
上からA+、A、A−、B+、B、B−、C+、C、C−そしてNとなっているんですよ。
Aに近づくほど人が少なくなってます。
適性のある人が少ないので戦争が日常だった頃は適性を持っている人が軍のエースの殆どだったて言う話ですね〜。
CROSSを積んでいないドールと積んでいるドールでは動きがまったく違んです。
動きの処理、つまり各動作の速度が3倍近く、違ます。
乗せているドールはHドールと呼ばれて、載せていないものはNドールと呼ばれてます。
これが大きな違いですね。
そのシステムは一人の科学者である相沢祐治が作り上げた物です。
特定の遺伝子を持つものに対して、ドールの本体と操縦者の動きをリンクさせるシステム。
中のプログラムなどは殆どブラックボックスで、作った人以外の人間が見てもさっぱり分からいんですよ。
でも、使うと便利なのでみんな使ってます。
ただし、登録した後に、毎回、機体に乗るたびに遺伝子、網膜、声紋、指紋による本人確認をするんですね」
「あ〜、それ真琴が毎回乗るときにやってる!」
「そうですね。一度このCROSSに自分を登録すると、それ以外の人は操縦が出来なくなります。
そして、その人以外がCROSSへの介入も難しくなるんです。
適性の無い人つまり、Nクラスの人はCROSSではドールを操縦できません。
それと必ず、人型である必要があります。
なにせ、操縦者の動きをトレースしますからね。
続いて、YASは相沢祐治が初めて作ったドール用のOS。
誰でにでも操縦できる代わりに、CROSSと違い、うまく機体を動かす事が出来きません。
うまく動かせないと言うのは語弊ですが、速度が段違いです。
かわりに、登録などの必要が無く、本人確認が無いために作業用に向いているんです。
改良はされていますが、CROSSほど簡単かつ自由に機体を動かせない為に、このOSの使用の大部分が作業用ですね。
ただし、発揮できる力は同じですが、動きはCROSSに比べるとかなり見劣りしますよ。
適性がない人はこっちのOSを載せた機体で戦闘に出ています。
最近は少数精鋭が流行ですから、数はあまりないですね。
お隣くらいじゃないですか?Nドールを大量に配備しているのは。
CROSSと比べて、個人の照合とかが無いので整備率がとても良いんです。
なにせ、機体の使いの使い回しが出来ますから。
OSがCROSSだと専用機になってしまうので使い回しが出来ないんですよね。
それで、適性による違い+・−はその程度が強いか、弱いかの違いです。
Cクラス、ギリギリCROSSを起動する事が出来ます。
操縦者の動きを大体、機体にトレースする。タイムラグが若干あるんですね。
適性のある人の殆どがこれですね。それでも、YASによって引き出せる動きの違いは3倍近く開くんですよね〜」
「あぅ。真琴はCクラスだから。今のやつかな?」
「そうですね。次がBクラス、操縦者の殆どの動きをトレースします。
タイムラグは殆ど無いが若干残ちゃうんですよね。
佐祐理はこのBクラスですよ。
最後にAクラス、操縦者の動きを完璧にトレースします。
タイムラグはありません。 舞と美汐さんがこのクラスですね。
トレーサーは、簡単に説明すると操縦者の動きをトレースするものです。
他には指紋と遺伝子をこれで、本人かどうかチェックするんですね。
アイモニターで網膜を、マイクで声紋をそれぞれチェックします。
あとは、新しくドールを作るとしたら、OSさえ既存のOSコクピットを使えば楽ですね。
つまりCROSSとYASの本体ユニットを組み込む事にしてしまえば、設計自体はかなり簡単ですよ〜」
「真琴も勉強すれば出来るようになるの?」
「えぇ。その気になれば出来ますよ。
ある程度の知識さえあれば、YASの方ならば簡単に作る事が可能です。
でもCROSSのほうは、専門的な知識がないと作る事は出来ませんが、知識さえ積めば誰にでも設計と作る事は出来ます。
作るのは設計図と部品があれば5人が一日八時間労働で大体5日から7日で作る事が出来ますね。
修理はその傷の大きさによりますね」
「ありがとう! 佐祐理。真琴もっと勉強するね」
「はい。頑張ってくださいね」
その時、ちょうど鑑賞会が終わったみたいだった。出撃メンバーで真琴と斉藤以外は顔色が若干悪い。
「これは、天野君の判断が正しいですね」
久瀬圭一が口を開いた。それに佐祐理が同意する。
「確かに、目標を確保しても、全滅したら意味はありませんからね〜」
「……斉藤が負けたのもしょうがない。性能が段違い」
今まで何も喋らなかった舞が会話に参加した。
「ところで、壱次。あの機体はなんだい?エリアMの新型と見たほうが良いのか?」
「……判りません」
今になって悔しくなったのだろう。斉藤は手に握りこぶしを作り、何かに耐えるように久瀬に返事をした。
「あはは〜、エリアMの新型と考えるのは難しいですねぇ〜」
「ほぅ?何故でしょうか?」
「まず、敵の新型なら、美汐さんたちに当たったあの白い機体が出てきた理由がわかりません」
久瀬がなるほどと頷いた。舞が佐祐理に同意の意見を述べる。
「……エリアMで、確認されているドールの部隊は2つ。白いのと、あの動きの悪いの」
「私もそう思います。エリアMではなく、企業の新型もしくは試作機と見たほうが良いのではないですか?」
美汐がそう意見した。他のメンバーも同じような意見だったみたいで他に意見は出なかった。
「では、これまでの方針とエリアMとその周辺の企業の情報収集を加えるという事で異論はありませんね?」
それに皆が頷いて、この集まりは解散となった。
佐祐理、舞、美汐、真琴の四人は、歩きながら割振られた小隊の部屋に戻った。
「……美汐。敵と戦ってみた感想は?」
「私は、実際に戦闘はしていません。ただし、白い機体には要注意が必要です」
「あはは〜。そうですね。白い機体の部隊には注意を払わないといけませんね〜」
「それ以前に、作戦想定外に目標があったこと。そこで戦闘をしなくてはいけないというのが一番痛かったです」
美汐は行った作戦のアクシデントを指摘した。
「あの情報は信頼性が低かった」
「それに、斉藤さんが食いついたって訳ですね〜。やっぱり久瀬さんの部下は使いにくいですね〜」
「ねえねぇ。次まで時間あるんでしょ?ゆっくりしても良いの?」
真琴が無邪気に、佐祐理たちに声をかけた。
「そうですね〜、どうしましょうか。当分、お休みにしましょうか」
「やった! 美汐に佐祐理! ドールについてもっと詳しく教えて! 真琴も設計してみたい!」
美汐は苦笑しながら、佐祐理はいつも浮かべる笑顔を浮かべながら、真琴に頷いた。
「……真琴。私は体を鍛えてあげる」
「あぅ〜。あ、ありがとう。舞」
舞のその言葉に、真琴は迷惑そうな笑みを浮かべた。それを見ながら舞は何かを考えていた。
(それにしても、あの黒い機体どこかで見た事がある。何処だっただろう?)
「舞?どうしたの?」
「……なんでもない」
舞は佐祐理に心配されてしまったために、その思考を途中で打ち切った。
場所は変って、久瀬小隊に割振られた部屋。部屋の中には、久瀬と斉藤、それにNドールで作戦に参加した3人が居る。
「しかしあの機体は誤算でしたね」
「次ぎあうときは! あの機体には負けません!」
斉藤は声を張り上げた。
「分かっています。次があるか分かりませんが。ともかく、当分は指示があるまで動かないでください。良いですね?」
「「「了解」」」
「では、斉藤以外解散して通常の職務に戻ってください」
小隊に割振られた部屋から3人が出て行く。残ったのは久瀬と斉藤のみだ。
「壱次。君にはもう一機サイクロプスを与える。調整をしておくと良い」
「次に向けてですか?」
「たぶん、次は倉田君のところがまた提案を持ちかけてくるだろう。そのときは君は作戦に参加させれない」
斉藤の顔色が変る。しかし久瀬はそれを見て見ぬ振りをした。
「あの機体はイレギュラーだ。もっとしっかりした実力が知りたい。再戦の機会はその後だ」
「しかし!」
「君は一回命令無視をしている。加えて、機体を失っているんだぞ」
「……しかし」
「次も、倉田君と川澄君は出ないだろう。だったら黒い機体に無理な戦闘は仕掛けまい。また天野君が指揮するだろうからな」
斉藤は肩を震わせていた。それは、自分の不甲斐なさに向けられているようでもあり、怒りで震えているみたいでもあった。
「だから、完璧な機体を用意しておくんだ」
斉藤の肩をぽんと叩いて久瀬はそのまま部屋を出て行った。後には斉藤が残されただけだった。
場所はエリアK。祐一の朝は早い。一日の始まりは家族の朝食を作る事から始まる。
「〜♪〜〜〜♪」
鼻歌交じりに、朝食を作っていく。この習慣は彼の母親が起きてくる時間に合わせられていた。
「ぐぁ。しまった……いつもの癖で、3人前作ってしまった……」
旅行中は他人の家にお世話になっていたこともあり、食事を作る事はなかった。もっぱら掃除とかが主だった。
しかし、習慣とは間隔が空いても身に刻み込まれている。
「しょうがない。秋子さんまだ朝食作ってないと良いな」
祐一は玄関から出て隣の部屋の水瀬親子の扉をノックした。すぐに玄関は開かれた。
「あら?祐一さん、どうしましたか?」
「あの、いつもの癖で、朝食3人前作ってしまったので、食べに来てくれませんか?」
「良かった。まだ、朝食作ってなかったんです。お言葉に甘えますね」
「名雪はどうしましょうか?起こします?」
制服姿の秋子は頬に手を当て、いつものポーズをとった。本当に困っているみたいだ。
「とりあえず起こしてきますね」
それを見て祐一は名雪を起こす為にお邪魔しますと言いながら部屋に入っていった。
なゆきの部屋と書かれたプレートのかかった部屋のドアをノックする。
あっさりと名雪が出てきたが、目がトロンとしている。
「おはよう、名雪」
「ん、おおきなケロピー」
寝ぼけていた名雪がそのまま祐一に抱きつき、祐一は慌てふためいた。
「名雪! 起きろっての!」
「ケロピー……あったかい」
名雪は祐一の胸に顔を押し付けている。
「名雪、起きなさい」
秋子の声とは思えない、低い声が聞こえて、名雪も祐一も一瞬で目が覚めた。
もっとも祐一は目が覚めているが。
「おはよう。名雪」
さっきの声とはまったく別の声で秋子は微笑みながら、朝の挨拶をする。
「おはようお母さん。あれ? 何で、祐一がここに居るの?」
何でこんな場所に祐一が居るのか理解できないという顔をしながら、部屋を出て行く秋子に続いた。
隣の祐一の部屋に移動する。そこで、名雪は何故祐一が、部屋に来ていたかを知った。
「わぁ、祐一が作ってくれたの?」
「あぁ、ちょっと癖でな」
名雪は、そのままテーブルの昨日着いた席に座る。秋子も同じだ。
「祐一さん。昨日頼んだあれ、出来てますか?」
「えぇ。出来てます。待っててください」
そのまま、キッチンに祐一は消える。名雪は急に不安に襲われた。そして出てきたのはオレンジ色のジャムだった。
「秋子さん。お待たせしました」
それを秋子の前に置く。秋子は躊躇わずにそれをトーストに塗りつけた。そしてそれを口にする。
秋子の目が驚愕に開かれた後に頬を緩ませ、手を頬に当てた。その顔は至福の一時の顔だった。
その反応に、名雪は信じられないものを見たかのように、目を見開いた。
あの、オレンジのジャムを食べてあんな反応が出来るのか? って言う顔をしている。
「秋子さん。どうですか?」
「美味しいです。こればっかりは私は作れないんですよ……」
「え?」
名雪は自分の耳を疑った。私は作れない? なら、あのオレンジのジャムは一体何なんだと。その疑問が顔に出ていた。
「名雪、何で面白い顔してるんだ?」
「え? な、なんでもないよ」
しょうがないので、名雪は普通に朝食を食べる事にした。サラダから手をかける。
トーストをかじろうとした所で、イチゴジャムの存在に気がつきそれを乗っけて食べる。
「イチゴ、イチゴ。おいしいな〜♪」
「名雪、頼むから食事中は歌わないでくれ……」
「だって、イチゴなんだよ?」
その返答に祐一は返事をするのをやめた。返事をしても疲れるだけだと感じたからだ。
「秋子さん。そういえば昨日、俺がこのエリアのドールを破壊したと言いましたよね?」
「えぇ。言いましたが?」
「それって拙いんじゃないですか?」
たった今思い出したかのように、祐一はその事を口にした。秋子は相変わらず、微笑んだままだ。
「それは大丈夫です。何せ、嘘ですから」
「じゃあ、俺はドールは破壊していないんですね?」
心持安心した声で、返事をする祐一。秋子は笑顔のまま、顔をゆっくりと振った。
「一機は破壊しました。それはこのエリアのドールではなくて、テロリストのドールでしたから。祐一さんは罪には問われません」
「は?」
祐一は呆気にとられて、返事が間抜けになってしまった。
名雪はそれを見てくすくす笑っている。
「むしろ、こっちとしてはありがたかったんですよ」
「そうなんですか? まぁ、罪に問われないのなら、良いですけど。あと、時間は良いんですか?」
食べ終わったのを見計らって祐一は声をかける。
時間は8時を過ぎていた。
秋子と名雪は落ち着いていたが言っている内容は全く違った。
「あら、もうこんな時間ですか? このままだと間に合いませんね」
「そうだね。100m7秒前半で走らないと間に合わないね、母さん」
「じゃあ、どうするんですか?」
やっぱり、名雪と秋子は親子なんだと感心しつつ、やや呆れながら、祐一は質問した。
「祐一さんならどうしますか?」
「え? 俺なら、あのボードをとばしますけど?」
「じゃあ、それに決定ですね」
祐一の言葉を待たずに、名雪は隣の部屋に戻って行った。多分、着替えるのだろう。
「よろしくお願いしますね。祐一さん」
「……マジですか?」
「マジです」
「……判りました」
祐一は、部屋に戻ってすばやく着替えて、ボードを手に部屋の外の通路に出た。
そこには秋子と名雪が待っている。
「秋子さん。職場って何処ですか?」
「大体あそこ辺りですけど」
大体の位置を指で示した。その先には灰色の大きな屋根が見える。
「あの灰色の屋根の所で良いんですか?」
「えぇ、そうです」
祐一はその直線上に屋根がしっかりとある事を確認する。そしてボードに片足を固定した。
「じゃあ、秋子さんが前に名雪は後ろに乗って、途中で落とされないでくださいよ」
「ねぇ、祐一どういうこと?」
「あぁ、しっかり捕まって覚悟してくれよ」
秋子と名雪がしっかりとボードに乗った事を確認してから、祐一はスイッチを入れる。
3人を乗せたボードは浮き上がった。
「いいですか、文句は後にしてください。屋根の上を行きますから」
二人の返事を待たずに、祐一はボードを通路に走らせる。
階段のところでそれは大きくジャンプして向かいの屋根に飛び乗った。
名雪と秋子は初めての体験に、悲鳴を上げている。
二人とも振り落とされないように強く祐一を抱きしめた。
祐一は半ば、二人を無視して屋根の上を走り続ける。
ボードは屋根の傾斜に合わせてそれは飛んだり跳ねたりしていた。
そして、直線で目標に向かってボードを走らせ続ける。
目標の手前で大きくボードをジャンプさせて、地面に着地させた。
着地させた所で、美坂姉妹が目を見開いて驚いていた。
ちょうど美坂姉妹の目の前に落ちてきた様だった。
「おはよう、お二人さん。秋子さん、名雪、到着しましたよ」
歩けば30分かかる所を5分で走ってきたのだ。時間には間に合ったみたいだ。
「危ないじゃない」
「すまない。慌ててたんだ。名雪が」
アクセントを名雪において祐一は言った。
「あなたねぇ……面白い所から来るのね」
「ん? 俺は良く知らないけど、時間が無かったみたいだったからな」
「あの、2人は大丈夫なんでしょうか?」
秋子と名雪はまだ祐一につかまっていた。
祐一はやや呆れながら二人に声をかける。
周りにはちょっとした人だかりが出来ていた。
「秋子さん。名雪。いい加減、離れてくれませんか? 他人の目が気になりますし……」
そう言われてやっと二人は気が付いたみたいだった。
ゆっくりと、祐一につかまっていた手を離してボードから降りた。
「大丈夫ですか?」
祐一は二人にそう声をかける。その声に二人は頷くが顔色はあまり良くなかった。
「祐一、極悪だよ」
名雪は抗議の声を上げた。秋子も同じような視線を祐一に送る。
祐一はなんでさ? という顔をした。
「時間には間に合ったんだろ? それに俺は乗る前に覚悟してくれって言わなかったか?」
ボードを点検しながら祐一は答えた。
名雪と秋子はちょっと納得がいかなかったみたいだ。
「それよりも時間は良いのか?」
点検をし終えた祐一がボードを畳みながら皆に声をかけた。
周りの人も、秋子達も心持、早足で建物に入っていく。
祐一も秋子達の後に素直に歩いていった。
途中で、香里達は別れて自分の仕事場に行った。
名雪と秋子は祐一を案内する事にしたようだ。
3人になったとたん、二人は文句を言い始めた。
「ねぇ、祐一。あれは無いんじゃないの?」
「だって、時間が無かっただろ? それに、道を走っていたら人にぶつかるだろ? そっちの方が危ないしな」
「それにしても、もう少し優しく運転してくれても……」
「すいません。何せ3人乗せて飛ばすのは初めてでしたからあれが精一杯でした」
なんだか、その言葉に二人は納得せざるおえなかった。
その後、祐一はここが特殊部隊であること、責任者が秋子である事などの説明を受けた。
仕事場を案内されながら、ふと、祐一は何かに気が付く。
視線の先には格納庫の奥に2体のドールが置いてある。
「秋子さん。あの2体のドールは何ですか?」
「あれはですね、警備隊の方が壊したNドールですね。何でも片方がOSを、もう片方がコクピットの制御系を壊したそうです」
「何でここにあるんですか?」
「廃棄すると言っていたのでこちらに貰ったんです。部品を使うという発想が無かったみたいですね。警備隊には」
多少の皮肉を込めながら秋子は説明してくれた。
祐一は勿体無いと言う顔をしている。
「あれってAir製とONE製のNドールの新型ですよね? それにしても、勿体無い事する」
最後に、今使用しているHドールの説明をして職場案内は終わり、秋子は隊長室に戻った。
名雪と祐一は格納庫のとある機体の前に居る。
祐一はアテナの目の前でそれを見上げながら、なにやら難しい顔をしていた。
「名雪。アテナって機体の設計図はあるか?」
名雪は、目の前の端末を操作しながら、その設計図を出した。
To the next stage
あとがき
ようやく説明が書く事が出来ました。私の頭の中の設定はこんな感じです。
突っ込みどころは満載だと思いますが、技量が無いのだと笑ってください。
佐祐理さん達はまだ少しずつしか登場しませんが、まだ出番じゃないだけです。
佐祐理さんと舞さんにはもっと派手な舞台を用意したいです。ゆーろでした。
管理人の感想
佐祐理さん大活躍の巻。(笑
微妙に黒かったですけど。
説明お姉さんですか、彼女は。
その内、某アニメみたいに説明時だけ物理法則を無視したりして。
秋子さんが良い感じです。
私は彼女と佐祐理さん、香里が好きなので、活躍すると嬉しいですな。
名雪が幼く見えて、どうも妹にしか。(苦笑
ここは秋子さんに期待するしかないですね。(何を?
次回は祐一が何やらやらかすんですかね。
……やはり父親の血が関係?
感想は次の作品への原動力なので、送っていただけると作者の方も喜ばれると思いますよー。
感想はBBSかメール(yu_ro_clock@hotmail.com)まで。(ウイルス対策につき、@全角)