水瀬名雪の朝は遅い。
彼女の朝の時間はいつも時間ギリギリで構成されている。
そんな名雪が今日に限ってかなり早起きをした。
理由を知っていなかったら、彼女の親友は天変地異の前触れだというだろう。
今日、彼女が早起きしたのは祐一を探すためだ。
起きて、服を着替えてからリビングを通って洗面所で顔を洗う。
そして鏡に映る自分の顔を見てからその頬を軽く叩いて気合を入れた。
「うん! 今日は気合を入れていくんだから!」
気合を入れたまでは良かった。
彼女のお腹が、可愛い音を立てて空腹を訴えなければ、絵になっていただろう。
周りに誰もいない事を確かめ安心した後に、名雪はリビングに出る。
しかしそこには誰もいない上に、テーブルの上には何も無かった。
「あれ? お母さん何処に行ったんだろう?」
いつもなら、朝食を作って名雪を起きてくるのを待っている秋子が今日に限って部屋にいない。
「もしかして、有夏さんに行きそうな場所を聞きに行ったのかな?」
名雪は祐一の何かヒントになる物が有るかもしれないと、有夏の元に行くことにした。
秋子もそこにいるだろうと考えて。
そのまま、名雪は扉を開けて隣の部屋のドアをノックする。
出てきたのは祐一だった。
「……」
「あ〜、その、なんだ? とりあえず、そんな顔はやめてくれ。」
何でこんな所にいるの? という驚きの顔。
その顔のまま名雪は固まっている。
次に出てきた声はとても大音量だった。
「祐一!?」
名雪の目の前で意識があるかどうかを手を振ることで確かめていた祐一は思いがけない声に対応できずに眉をひそめる。
「何でこんな所にいるの!?」
「こんな所にって……居ちゃ駄目なのか? なら出て行くが?」
本気とも冗談とも取れる顔で祐一は続ける。
名雪はひたすら大声だった。
その大声に反応してか美坂姉妹の部屋の扉が開く。
祐一の言葉に焦った名雪は大声から一転、急に小さな声となった。
名雪は手を体の前でちょこまか動かして動揺を隠している。
「わわわ、そ、そんな事無いけど、なんで? 何でいつもの通りに生活してるの?」
「それは、「祐一さん!」」
説明しようとした所にパジャマ姿の栞が乱入してくる。
その後ろにはこれまたパジャマ姿で目を擦っている香里が栞に引き連れられていた。
「あ〜なんだ? 美坂チームがお揃いで一体全体、何のようだ?」
名雪と栞は祐一にひたすら困惑していた。
香里はまだ頭がしっかりと働いていないみたいだった。
そんな香里を説明してなかったのか? という目で祐一は見ていた。
香里はまだ眠たそうに目を擦っている。
無理も無い、今日の朝方まで起きていたのだから眠たくて当然なのだが、祐一にはこの上なく迷惑だった。
「あのな、栞に香里、その姿は簡単に殿方に見せて良いものなのか?」
ビシィッと言う効果音が付きそうなくらいで祐一が美坂姉妹を指差した。
「へ?」
栞はパステルカラーの花柄パジャマ。
香里は、シックな一色のパジャマだった。
顔を真っ赤にした栞はそのまま部屋に戻ろうとして戻れなかった。
香里は無言のまま自分の格好を上から下まで見直した後に。
パチィ―――――――――ン!
香里の平手が祐一の頬を捉え、かなり気持ちの良い音がそこに響いた。
栞も名雪もその行動に釘付けになる。
香里は何事も無かったように、部屋に戻って行った。
残された3人は呆気に取られている。
特に祐一の頬には立派な紅葉が出来ていた。
栞も弾かれた様に自分の姉の後を追って自分の部屋に戻る。
祐一は名雪を見て俺、何か悪い事したか? という顔をする。
「もう、デリカシー無いんだから」
「いや、俺のせいじゃないだろ? どちらかというと被害者だ」
「あ、ちょっと待ってよ!」
祐一はそのまま部屋に入っていこうとする。
名雪がそれを引き止めた。
「説明、まだだよ!?」
「ここは寒いから中で説明だ」
「う、うん」
納得はいかないみたいだが、とりあえず頷いてその後に続く。
中に入っていくと、相沢親子に秋子が仲良く談笑している。
名雪はまたも呆気に取られた。
有夏が、祐一の頬に出来た紅葉を見てまた爆笑し、秋子もあらあらと微笑む。
祐夏はお兄ちゃんはしょうがないんだからという顔をした。
「もしかして、知らなかったのは栞ちゃんと私だけ?」
「名雪、そんな事無いですよ。私も朝まで知りませんでしたから」
「私もだ、名雪」
その母親姉妹を名雪は怪しそうに見ている。
相変わらず祐夏は幸せ一杯で朝食をはぐはぐ食べている。
「だって、祐夏がつれて帰ってんだもん」
その一言で、名雪が凍りついた。
祐夏が何か悪い事をしたかなという顔をして有夏を見る。
祐一は名雪が再起動してから詳しく事情を話した。
名雪はひたすらに感心している。
「じゃあ、私も次からそうしようかな?」
「……やめてくれ……」
祐一の一言には、切実なお願いと疲れが混ざっていた。
そんな祐一が、有夏に向けて真剣な顔をする。
「母さん。俺、CROSSのド−ルに乗るけど良いか?」
「ん? 良いんじゃないか?」
呆気に取られる祐一。
何かもう一波乱有りそうだと思っていたのにという顔をする。
「なに面白い顔をしているんだ祐一。記憶は戻った。なら問題ないじゃないか。ただし、ベルセルクとか言うのは駄目だ」
「それは俺だって頼まれたって嫌だ」
「なら、一旦、確かめてからなら私は文句を言わない」
「ありがとう、母さん」
そのまま、朝食に戻る二人。
その間、他の3人は無言だった。
祐一が席について普段の朝食が始まる。
名雪はちゃっかり、一緒になって朝食をいただいていた。
5人での平和な食卓。
その後に起こる、祐夏と苺の取り合いになった事、その後に栞達が来てまた一波乱あったのはまた別のお話。
場所は第3格納庫横のシミュレーター室。
そこに、美坂姉妹に北川、祐一がいる。
秋子に名雪、あゆに祐夏は有夏に連れられて道場へ。
部屋の大きさは機材のおかげでかなり狭く感じる。
コクピットと殆ど同じ物が、4つ並んでいる。その他に一つ席がある。
それは設定や機体の特性を入力する、もしくはホストコンピュータと通信するための席だ。
他には、対戦を外の人たちが見るために大きなモニターがある。
外の感じは何となくゲームセンターのような感じだ。
「結局、帰ってきたか」
「色々有って、脅されれば戻ってくるさ……」
「……理由は聞かないが、これからもよろしくな」
「こっちこそ……」
香里と栞が設定をしている間に、北川と祐一は話していた。
その会話も祐一はどこか疲れた受け答えをしている。
栞が画面から顔を上げて、祐一を見る。
そして手招きをした。祐一はそれに従って栞の許に行く。
その横に着いたところで、栞が席を立ち祐一に座るように促す。
祐一は素直にそれに従い、席に着いた。香里は栞の後ろについている。
「よく出来てるな。後ろを考えなかったらコクピットとまるで同じだ」
「企業が作った物ですからね。その位しないと売り物になりませんと思いますよ」
「それで、俺はどうすればいいんだ?」
「そのまま、手順に従ってCROSSを起動させてください。私がサポートに入りますから」
「りょーかい。頼んだぞ」
アイモニターとトレーサーをつけながら祐一は続ける。
栞はそれを確認してから席を離れて一つだけ違う席に着いた。
文字が浮かぶ。
【注意・仮想的にCROSSを起動します。そのため、情報の蓄積などはありません】と浮かんでいる。
『祐一さん。無視してくださって結構ですよ』
「了解」
『CROSSへようこそです。何か問題は有りますか?』
「いや? 特に何も無い」
画面に栞が言った言葉と殆ど同じ言葉が浮かぶ。
【CROSSへようこそ】と。
画面が切り替わり、操縦者の適正確認中と出た。
そのまま点滅を繰り返している。
突如、機械的に合成された音声が流れる。
【搭乗者の氏名を登録してください】
「相沢祐一」
【搭乗者、相沢祐一。適正、A+クラス】
情報処理中と画面が切り替わる。
そして、もう一度が面が切り替わった。
【あなたに割り振られる登録番号は、MDSF04です。今回はこれで終了します。お疲れ様でした】
「え? これでお終いか?」
「一回目はそれでお終いよ。登録だけで終わっちゃうわ」
いつの間にか祐一の座っていた席の後ろに香里が来ていた。
その横には北川もいる。
祐一はアイモニターとトレーサーを外しながら二人の方向へと向いた。
何かを話そうと口を開いた瞬間、栞の声に取って代わられた。
その声は困惑だ。
「祐一さん……ランクはA+なんですね?」
「それは良く分からないが、そう表示されたたんだが?」
「おかしいですね……」
「だから言ったじゃない。Mクラスなんて無いんだから」
「それはそうだな」
祐一は曖昧な笑みを浮かべながら、香里の意見を肯定した。
何でそこでお姉ちゃんを味方するんですか? と栞は頬を膨らませて怒っている。
祐一は栞以外の反応が知りたかった。
安心したような顔をしている香里に北川。
「まぁ、いいか。こればっかりは運だろうし。気にしてもしょうがないだろ?」
「そうですね……それに特に起動に問題は有りませんでしたし、あのベルセルクとか言うのだけが特別なのでしょうか?」
「まぁ、そうだろ。で、これからどうするんだ?」
「時間も有りますし、訓練でもしましょうか?」
考え込んでいた二人が急に顔を上げる。
北川の方は待っていましたといわんばかりで祐一の隣の席に滑り込んだ。
香里は回りこんで、どうやら北川の前の席に滑り込んだようだ。
二人ともやる気満々である。
「えらく二人ともやる気満々だな」
「……そうですね。じゃあ、祐一さん。もう一度席についてもらえますか? ついた後に画面に従ってくれれば始められると思います」
「さんきゅ」
もう一度、アイモニターなどを付け直す。
そして画面に文字が現れるのを待った。
何時もさっきの初めと同じ始まり方。
その後が多少違っている。
【登録番号を入力してください】
「MDSF04っと」
【搭乗者、相沢祐一。適正、A+ランク。搭乗機体を設定してください】
画面に見たことのある機体がいくつか上っている。
祐一は見たことの無い機体を選んだ。
見たことは無い。
でもその機体を作ったであろう人物は特定できる。栞だ。
その機体の所々に栞らしさが見て取れる。
【搭乗機体、SM−03−アレス。標準M型です。これでよろしいですか?】
「OK。次、武装確認」
画面に機体の特徴が載った。
その後に画面が切り替わり、機体が選ぶ事の出来る武装がカタログのように所狭しと画面の中を並べられていた。
祐一はそれに目を走らせる。
いろいろな武装があるもんだと祐一は思っていた。
【基本装備はSG−34、シェルショットを2丁装備する事です。これは武装を変更する事は可能です】
「武装変更、右手にHS−22、左手にMG−4を……やっぱり左手はHR−17を装備」
【HS−22、亀の甲羅、MG−4、マッドショットからHR−17、スタンステークに変更します。しばらくお待ちください】
画面が何処かの森の中に切り替わる。
見渡す限り、銀世界。雪がなければ、うっそうと茂る森の中であろう。
真っ白の雪の中。
複雑な起伏のある山中だろうと祐一は思った。
【山林フィールド展開、戦闘準備終了。通信待機中……通信つながります】
『祐一さん。心の準備は良いですか?』
「ちょっと待て。これはサバイバルか? 俺はそれでも構わないが……」
『チーム戦も良いわね。相沢君と栞で組んでくれるかしら?』
「了解。なら敵はアテナとアルテミスか」
『ちょっと待ってくださいね。ミッション設定してしまいます』
軽く機体を動かす。
少し癖のある機体だったがすぐに慣れる事は出来た。
しばらくすると、画面に新たな文字が浮かんだ。
【ミッション05、タッグ戦。敵を無力化してください。敵機SM−01−アテナ、SM−04−アルテミス、開始まで後60秒】
『祐一さん。相手とは交信できませんから。注意してくださいね』
「あぁ、解った。栞の武装は基本装備か?」
『そうです』
「そうか。まずは北川だな」
【作戦開始まで後30秒】
「これはレーダーが付いてるからな。この青い点が栞か?」
『はい。それが私です』
「案外、離れてるな……もちろん香里達は写っていないし。困ったもんだ」
『……そうですね』
互いのレーダーには一つの青い点以外は何も映っていない。
【作戦開始】
「栞、香里を下手に攻撃しようと思うな。北川の援護が必ずあると思った方が良い」
『そうですね』
「俺が先頭に立つから援護を頼む」
「了解です」
祐一のアレスが3Dで出来た森の中を周りに注意を払い、レーダーを見ながら前に進む。
途中で栞と合流をした。
栞の装備は左腕にショットガンを装備し、右腕でそれを支えている。
もうひとつ、腰の後ろに似たようなショットガンを持っていた。
祐一は右腕に盾。
左腕にパイルバンカーという装備、バリバリの格闘仕様である。
視点は北川に移る。
北川の操るアルテミスのレーダーはアレスのそれと比べて範囲は広い。
それでも、レーダーには味方の反応である青い斑点しか写っていない。
『案…、離れてるな……も…ろん香里…は写って……いし。困っ………だ』
貧弱ながらも通信を傍受する機能を持っている。
アレス、アテナにはその機能は無い。
加えて説明すると、アテナにはレーダーすら付いていなかった。
よって北川と香里は随時連絡を取り合っている。
『北川君。傍受の方は?』
「今の美坂の位置では敵さんのレーダーには写っていないみたいだ」
『そう』
「敵はこっちでも捉えていないからな。このフィールドだと美坂の方が敵さんに近そうだな」
北川から香里の機体は視界の中に納まっている。
もちろん辛うじてだが。
画面に文字が踊る。
【作戦開始】
『そうね。ところで相沢君はどんな武装で来ると思う?』
「どうだろうな? 俺はあいつを知っているわけじゃない。面白い事をするんじゃないか?」
ちなみに、この二人の装備はアルテミスが、ライフルに換えのマガジンを幾つか。
アテナが両手トンファーだ。
特に香里は前回、祐一のNドールに負けているためにやる気満々。
しかも相手は同じHドールの設定である。負けるつもりは無い。
アテナが少しずつ前進を開始する。
それに合わせてアルテミスも少しずつだが、前進をする。
『変化があったら教えて頂戴』
「了解」
当然のことながら、北川の視界にはアテナの後姿が見えている。
と、北川のレーダーに赤い点が写った。
「美坂! アテナから見て、2時の方向に一機いる!」
『こっちでも確認したわ。援護よろしく。間違っても私には当てないでね。』
「解ってるよ。」
北川の視界にも辛うじてその機体が目に入った。
白いその機体はよく目を凝らさないと見えないくらいだ。
木のせいでその機体は頭の部分しか見えていない。
アテナのように近づけば、全身を見えるようになるかもしれないが。
ライフルの狙いを見えている敵の頭に定めて発射姿勢をとる。
引き金に指をかけ引こうとした瞬間にその機体は急に沈み込んだ。
ガォン!
頭を狙ったためにアレスには当たらなかった。
すぐさま排莢を済ます。
(くそ! さっきので位置が割れちまった! すぐに移動をしないと!)
北川はすぐにアテナの後ろに付くように見通しの悪いから好都合だといわんばかりに移動する。
と、目の前でアテナに格闘戦を挑んでいたアレスが、アテナを出し抜いてアルテミスに向かって来ていた。
あの美坂の操るアテナを出し抜くとなると、あれは相沢だろうと北川は見当をつける。
右腕に亀の甲羅といわれてあまり使われる事の無い盾を装備している。
そのためにアレスの全身が見えない。
北川の右側に盾を前にしながら滑るように走ってくる。
まだ距離がある。
そう感じた北川はライフルを構えて迎撃をした。
ガォン! パキャン!
ライフルの弾が盾に弾かれた、急いで排莢を済まそうと動作をする。
(何!? スピードが上がった!?)
今まで向かってきていたのが全速だと思っていた北川。
それでは二発目を撃つために排莢が終わったらすぐ横に来てしまう。
それではライフルを撃とうにも撃つ前にやられてしまう。
逃げようにも振り向いて走り出している間に追いつかれてしまう。
瞬間だが、判断に迷った挙句にその場で迎撃することにする。
排莢を済ませて、盾を持ったアレスを銃身で殴ろうとタイミングを計った。
(よし! タイミング通り!)
北川の読み通りのタイミングで予測通りの場所にアレスが来る。
銃身の底の部分がアレスを襲うはずだった。
北川の予測を裏切るタイミングで裏切る位置で、具体的には殴りつける一呼吸前。
それは回転して方向転換をし、アルテミスの左側に移動している。
回転の勢いそのままで、殴りつけてくるだろう。
既に行なっている動作はもう止められない。
銃身の底は誰も居ない空間を殴っていた。
ズガぁん。
北川の画面が真っ赤になり、その中心に大きく文字が躍る。
【機体損傷状況:行動に問題無し 搭乗者状況:即死】
「おいおい、マジかよ……」
北川は脱力しつつトレーサーとアイモニターを外した。
時は少し戻って、視点は香里に移る。
ちょうど、2時方向の敵に相対している所だった。
機体を半身にして右肩を香里に向けて突進してくるアレス。
この動きは栞の動きではないと香里は直感した。
「正面勝負なら負けない」
速度と速度の対決と思って右肩しか見せないアレスに向かって速度を上げる。
ふと、アレスの体が沈み込んだ。
体を小さく縮めて、右手の何かのために反動をつけるつもりなのだろう。
ガォン!
北川の援護射撃。アレスのカメラがそちらの方向を向く。
アレスとアテナの距離はあと少しで0になる。
そんなときにかなりの余裕を見せられたようでカチンと来た香里。
(えらく余裕じゃない! 余所見をする余裕があるなんて!)
右手を振りかぶりつつ、相手の頭部カメラを狙ってトンファーを繰り出す。
当たるか当たらないかのその瞬間。
ガイン!
右肩しか見えなかったアレスの右腕に装備された盾がアテナの胴体から頭部にかかって打ち当てられた。
アレスはその盾を基点にアテナを飛び越えた。
そのままアテナを無視しつつ、アルテミスへ向かうのだろう。
(逃がさないわ!)
振り向いてそのアレスを追おうとした瞬間。
バスン! カッチャ。バスン! カッチャ。
ショットガン特有の発砲音。
慌てて、そちらの方向を向く。
栞だ。かなり遠くからショットガンを撃ってきていた。
しかしこの位置ではそれの効果は薄い。
何故なら、ショットガンは近づけば近づくほど集弾率と共に威力が上がる。
よって無闇矢鱈と近づくわけにはいかなかった。
後ろには、北川を倒しに行ったであろう祐一。
そのために時間をかける訳にはいかない。
素早く栞のアレスに近づく。
フェイントを交えつつショットガンの直撃を避ける。
栞の持っているショットガンでは速射が出来ないのが幸いだった。
左腕のショットガンを投げ捨て、新しい物に取り替えている間に距離を0にする。
ゴン! ガァン! バキャン!
側面からのトンファーの3連撃。
アレスの右腕を肩の付け根から叩き折った。
バスン! ガシィ。ミシ、ミシ、 ピシィ! ベキャァ!
ショットガンを避けつつ、後に回って左腕を片腕で掴み機体の自重をかけてへし折った。
格闘に関して殆ど技術が無いために、接近戦が極端に弱い栞。
格闘戦を最も得意としする香里。
栞がその変化に富んだ香里の動きにはついていけないのはしょうがなかった。
達磨の様になったアレスはそのまま放って置かれた。
すぐに振り返る。
相手はあの相沢君だ。と意気込んで。
思いのほか時間がかかったのか、目の前には盾を持ったアレスが居た。
(2度も同じ手は喰らわないわ!)
先ほどと同じ体勢から繰り出される相手の盾。
今度はしっかりとそれを受け止める。
ダン! ズガァン! バチン!
香里の画面は真っ赤になった。
何が起こったかさっぱりである。
画面の中央に文字が躍り出た。
【機体損傷状況:電撃を受け、麻痺状態 搭乗者状況:即死】
「あぁ! もう一体何なのよ!」
香里は自分の不甲斐なさに怒りつつ、乱暴にアイモニターとトレーサーを外した。
画面にはまだ続きが現れているがそれを見るのは癪だった為に、アイモニターは真っ先に外している。
【作戦失敗。あなたの部隊は全滅しました。またのご利用お待ちしています。お疲れ様でした】
To the next stage
あとがき
えーっと今回は、こんな感じで……急に戦闘を書きたくなったので、祐一君との絡みはあまり無しです。
次は、いえ、次こそは、ちょっとしたイベントを起こそうかと思います。
ただ、どうなるか解らないので、あまり期待しないでください(期待するようなほどでもないでしょうし)。
後、私の間違いで混乱されたかと思いますが、栞の機体の正式名称は「アレス」です。
管理人様と、皆様にここに深く陳謝します。混乱させて申し訳ありませんでした。
管理人の感想
ゆーろさんからSSを頂きました。
相変わらず突っかかって行く香里のお話。(笑
実力差を正確に察する事は不可能なのだろうか……。
まぁそれでも突っかけるのが香里らしいっちゃらしいですけどね。
負けず嫌いですし。
栞も一応戦闘できるんですねぇ。
まぁシミュレーターだからでしょうけど。
操縦できるなら、テストパイロットは要らないので経済的なのかな?
感想は次の作品への原動力なので、送っていただけると作者の方も喜ばれると思いますよー。
感想はBBSメール(yu_ro_clock@hotmail.com)まで。(ウイルス対策につき、@全角)