GE及びAHナンバーには、はっきりとした自意識は持たされていない。
さて、では何故、祐一はそして、舞は、そしてあゆは自意識を持つに至ったのか。
その原因はいろいろと有る。あゆに関して言えば偶然だったというのが一番しっくりと来る。
あゆの精神を調整中、祐一に機材を破壊されて全てのプロテクトが外れてしまったから自意識を持てた。
舞は川澄冬葵研究主任が周囲にばれないように、自分の地位を利用してプロテクトを外したから自意識が持てた。
では祐一は? その他のGEナンバーは?
彼らも、プロテクトを外すまでは行かなかったが自意識がもてるようにはなっていた。
刷り込みの書き換えを行う事によって。
元々刷り込まれていた意識とは『殺戮』と『服従』のみだった。
祐一いや、残りのGEナンバーに最後に刷り込まれた意識は『疑問』『守護』『殺戮』『反逆』『懺悔』の5つ。
『疑問』人が必ず持つであろう意識は彼らにはありえない異物だった。
彼らには疑問を持つ事はありえなかったし、考える事は無かった。
これを持たなかったおかげで、精神が持ったと言っても良いだろう。
そうでなければ、罪の意識で精神が壊れるもしくは狂ってしまっていただろう。
『守護』彼らは兵器であった。それも侵略するべき兵器であった。
守護とは彼らの意義の対極にあり、そして、最も難しい事であった。
攻撃しか能が無い、いや、守るという術や知識を持たない彼らに一番酷な事だった。
もし、「守る」という事を少しでも知っていればそんなに難しい事ではなかったかもしれない。
攻撃を避けるのと、何かを守るということは全くの別物だから。
『殺戮』は「服従」とセットで最も最初に刷り込まれ、彼らの存在における最大の意義であった。
敵を壊す事、敵の壊しやすい箇所、自他の弱点、自分の特性に限界、効率的な戦略、状況判断能力。
使うものの特性、修理の方法、敵味方で使う物の能力判断、自分の怪我に対する修理の方法に意識の逸らし方。
それらの知識が彼らの全てで、それ以外は何も無かった。
そして、絶対に消せない意識でもある。
『反逆』彼らに最もタブーで、禁忌なもの。刷り込まれる事など絶対に有り得ない物だった。
「服従」の上に上書きするように刷り込まれたそれは彼にしか刷り込まれなかった。
否、彼にしか刷り込む事が出来なかった。彼らではない。「彼」にしか刷り込めなかったのだ。
彼とは祐一のことであり、最も最後にナンバー入りした彼にのみに間にあった刷り込みだった。
この「服従」のお陰で、命令されて許可が出ない限り、彼らは自殺する事は出来ない。
よほどの負担が脳にかからない限りは。
『懺悔』これは何の為に刷り込まれたか意味は分からない。しかし、それは確実に刷り込まれていた。
すんなりと、彼ら全員に刷り込まれているもの。
もしかすると、『守護』を失敗した時を想定したのかもしれない。
それは誰に対して刷り込まれた意識なのだろうか。
刷り込んだ本人自身に向けた意識なのかもしれない。
それがその時GE−13に刷り込まれた意識の全てで、川澄冬葵が仕掛けた最後の爆弾で最後の抵抗だった。
結果が相沢祐治の失踪の引き金となった研究所の壊滅事件の発端となったのは言うまでも無い。
その事を『舞』も『あゆ』も『他の人』達も知らない。
そして、それに未だに縛られ続けている『祐一』にも、解っていない。
ただ、事実として、研究所は壊滅し殆どの研究員にGEとAHナンバーは消滅した事だけが残った。
▲▽ ▲▽ ▲▽ ▲▽ ▲▽
舞は、ただちょっとした好奇心から、祐一が言う『何故』が聞きたかった。
何故か解らないが聞きたくなっている自分に舞は戸惑っている。
戸惑っている自分に気が付かないように、舞の口が勝手にと言って良いほど動いた。
「教えて……どうして? ここにいるの?」
「……後悔しないな?」
「…………………うん」
「考え込むくらいなら聞かないほうが良い。これ忠告だ」
「大丈夫」
そうかと言って、祐一はため息を吐く。
そして、静かに語り始めた。
「俺達の研究所が壊滅したのは知ってるな?」
「知ってる。だからお母さんと一緒にこのエリアまで来れた」
「あれを起こしたのは、俺だ」
「えっ?」
信じられないといった表情で祐一を見る舞。
ニュースで派手に報道されていたのはエリアOの自治権が世界政府に抑えられたこと。
そして、その発端となったの舞達のいた研究所の非人道的かつ、軍事バランスの崩れる事を行なっていたからだ。
その研究所は世界政府の兵によってなされたと報道されていたはずだ。
舞の頭の中に混乱が生じる。
「その顔は疑問だって顔だが……あの頃の兵器で複数のYAタイプに勝てると思うのか?」
―――YAタイプ。
GEナンバーのためだけに作られて、破壊力、行動時間、機動力、防御力、その全てが異常だった機体。
そのスペックに7年経った今も追いつけないでいる現在。
相沢祐治が生み出した狂気の機械で、相沢祐治にしか作れない狂った兵器。
それに対抗するとすれば、Hドールのある現在ならまだ何とかなるかもしれないと舞は思った。
しかし、Nドールしかない7年前はどうだろう?
「……それは……無理」
一つのエリアが傾くほどの戦力を投入してもまず、13人をとめる事ができない。
正確にはロストナンバーになった6人に、舞を除いた人数を引いた6人がHドールに乗ったらまず止められはしない。
乗せた時点で負けは決定になってしまう。
飛び抜けたスペックのHドールを完璧に操る集団が連携をとるのだ。
数では確かに優勢でもそれをもひっくり返してしまう実力があると舞は知っている。
もし、GEナンバーの生き残りがYAタイプに載ってしまったらどれだけの戦力が必要になるだろう?
引き分けるのに、そして負けないために。
それが13人全員だったら、バックアップがあれば世界に喧嘩を売れるだろうと思えてしまう。
「なら、納得してもらえるか?」
「……するしかない」
舞は苦い顔をして頷いている。まだ、それだけではないのだ。
そのときのあの研究所の戦力は。
そう、研究所はGEナンバーの乗ったHドールだけではなく、他の多数のAHナンバーが控えている。
うまく行けば、素手でNドールを破壊する連中である。
下手をしても、素手でNドールを止める連中がいるのだ。
世界政府の兵が壊滅させたというよりも祐一が一人で壊滅させたといった方がまだ現実味があった。
「今の舞は知らないが、GEナンバーは自殺ができない。それは分かっているな」
急に話が変わって慌てる舞。それでもしっかりと受け答えが出来た。
「……うん」
「事の発端は川澄主任が新しく刷り込んでくれた意識のお陰でもある」
「お母さん?」
「川澄主任に感謝こそすれ、恨む事なんて出来ない……」
舞は祐一の言葉が大きく引っかかっていた。
祐一はここで大きく息を吸い込んだ。
そして、震えを押さえ込むように右手を左手で押える。
「俺達は、正確には俺だけが行動の自由の恩恵を受け取った。残りの兄さんたちは巧く意識を刷り込めなかったんだろう。
さて、俺たちは自殺をしなくても長い時間をかけてなら死ぬ事は出来る。致命傷にならない所を何度も切りつけることでな……
そのときは多分罪の意識で押しつぶされていたんだろうな。みんなが、痛い痛いって言うんだ。
俺には理解出来なかったよ、何故そんな事をしているのか。俺を見て、止めを刺してって言うんだ……
俺、もしくは私達はここでお休みするけど、お前には生きて欲しいって。これ以上奴等の言いなりにならないって。
でも逆らえないって分かっているから殺してって。痛いから、足手まといになりたくないからって殺してって言うんだぜ?
俺は言ったさ、無理だって。みんなで行けば何とかなるってな。でも、みんなが首を横に振ったんだ。
俺達には絶対に逆らえないってわかっているから、ここで終わりにしたいんだって言いながら俺に銃を渡すんだ。
だから、俺は最後の望みを聞いてから止めを刺してあげたんだ。その望みの為に俺はここに居る」
「……私……そんな事知らなかった……」
半ば舞を無視しながら、祐一は続ける。
絶望的な気分に陥る舞。
仲間、いや、家族や兄弟といわれる人たちに止めさす気分はどんなものだろう。
想像も、いや想像すらしたくない。
「兄さん達の望みは2つ。あの研究所の完全な破壊。そして、川澄主任と南主任補佐以外の職員の消滅だ。
研究室の破壊は完膚にまで行なったし、そのとき居合わせた救出不能な全てのAHナンバーと全ての職員は殺した。
兄さん達の為にな。GEナンバーはロストナンバーになった兄さん達と舞以外は全て俺の手で殺した。
俺は……兄さん達のためにも、そして、今まで忘れていた事を上乗せしても早くこの望みを早く達成してあげないといけない」
血を吐くような告白に、舞は目の前が真っ暗になる。
何故、私だけが助かったのだろう。
私は、母さんは、残りのGEナンバーは全て世界政府に保護されたと思っていた。
事実はもっと冷たかった。
気持ちが悪くなる。
視界が狭まり、自分が座っているのは椅子だと、解らなくなってしまう。
地面がゼリーのように不安定な物に感じて気持ち悪い。
そんな感覚に襲われながら、舞は口をポツリと開いた。
「……辛くは無いの?」
「辛くないはずが無い……でも、涙も出なければ、悲しいって感じられないんだ。ただ、みんなが見てるんだ。
眠りに意識が落ちた時に、今まで殺した人たちが俺の首を絞めるんだ。
何故殺したって、何故望みを果たさないってな。
俺は言い訳しか出来ないんだ。俺はただ、兄さんたちと笑いながら生活したかっただけだって。
泣き叫べば、自分が死ねば、兄さん達が帰ってくるなら、喜んで命を差し出しただろう。でも現実はそうじゃ無い。
だから、俺はここに居る。兄さんたちの望みを嘘にしないためにも。自分のためにもな」
「私は……どうしたら良い?」
捕食者の前の小動物のように何かに怯えるような目をした舞が祐一に言う。
舞から見た祐一の目は暗くそして深い。
何をその目に映して何を見ているのか、感情なんてものは読み取れない。
それが薄気味悪くて、そして懐かしくて、辛かった。
研究所ではこの目を皆がしていた。
その目が舞の目の前にある。
「俺の邪魔はするな。それだけで良い」
「え?」
思ってもみない言葉。
望外の言葉が、舞に投げかけられる。
その意味を捉えるのに舞には時間が欲しかった。
「姉さんはもうGEナンバーじゃない。出て行ってくれ」
「…………………………………解った」
ようやく意味を捉えた舞は、祐一の目を覗き込んだ。
しかし、何にも感情の浮かんでいない目で、舞を見る祐一。
舞はのろのろと、席を立ちそしてテントを出て行った。
(何で、何があって?)
舞は泣いていた。自分は特別だったのだと。
そして、祐一に話を聞いた事を酷く後悔する自分がいる。
その横には、後悔する自分を大きく罵倒する自分もいる。
こんな辛い事を聞くくらいなら、聞かないほうが良かったかもしれない。
そんな思いで胸の中が一杯だった。
痛い、体の芯から来る痛み。でもそれは祐一よりも小さい痛みだと、舞は自覚している。
祐一の痛みはもっと大きいだろう。私の心だと耐え切れない位の痛みだろうと夢想する。
私にはまだ居場所がある。佐祐理の為に私はあるんだからと舞は痛みを誤魔化した。
誤魔化せる自分がとてつもなく嫌で、途方もなく嬉しかった。
▲▽ ▲▽ ▲▽ ▲▽ ▲▽
その頃、美汐と真琴は商店街を歩いていた。
久しぶりの休日でゆっくりと羽を伸ばすつもりだったのだ。
「あぅ……またあそこ行くの?」
「真琴? どうかしましたか?」
「あぅ……」
そう、美汐は行きつけのお茶屋さんに行くつもりでいる。
お茶屋と言っても本格的に茶道を体験できる所だった。
真琴はその場所が苦手である。何故か?
お茶とお菓子は有っても自分の好物が無い上にマナーが厳しい。
特にマナーが厳しい点が苦手とされる要因の殆どを占めていた。
「あ! 佐祐理!!」
商店街で佐祐理の姿を見つけたときは真琴はラッキーだと思う。
もしかしたら、あの茶屋に行かなくてもいいかもしれないそんな思いが表れていた。
佐祐理は前から紙袋を幸せそうに抱きしめて真琴達に向かって歩いている。
「確かに佐祐理さんですね……」
「あぅ」
何だかいつもと違う雰囲気を纏っている佐祐理に2人は引き気味だった。
声をかけた真琴は早くも後悔している。
あぁ、これなら素直にお茶屋さんに行った方が良かったと。
声をかけたからには向こうは気が付くわけで、気が付いたからには挨拶でもする為に嫌でも向かってくる。
佐祐理と真琴と美汐の仲は悪くない、むしろ良好だ。
「あはは〜、どうしました?」
そんな事も露知らず、佐祐理はその雰囲気を撒き散らして近寄ってくる。
その雰囲気とは、お花畑に紛れ込んでいるお姫様といった所か。
(美汐〜、何だか佐祐理怖い)
(確かにちょっと怖いですね)
アイコンタクト。
多分この2人のアイコンタクトの意思の疎通はしっかりと通じ合っている。
佐祐理はその2人のやり取りに気がつけずに、紙袋をまた抱きしめた。
「佐祐理さんこそ、どうしましたか?」
「いえ、どうもしませんよ?」
この後に話が続けることが出来ない2人。
結局、休日に羽を伸ばすのは中止になりそうだ。
嬉しそうな佐祐理を見ながら2人はちょっとため息を吐く。
案の定、佐祐理の惚気話に付き合わされた2人は羽を伸ばすどころでは無かった。
▲▽ ▲▽ ▲▽ ▲▽ ▲▽
場所はエリアM。
美樹と秋子が格納庫の片隅で口論をしている。
いや、口論とも呼ぶことは出来ない。美樹が一方的に秋子に頼み込んでいた。
『お願いします』
その言葉が何度も何度も秋子に叩きつけられる。
秋子は相手に気が付かれない様にため息をつくしかなかった。
「お願いします! 私を、貴方の部隊に加えてください!」
「美樹さん、落ち着いてください」
「何でもしますから! お願いします!」
殆ど錯乱していると言っても良いくらい、牧田美樹の行動は壊れかけていた。
「美樹さん何故ですか? って聞くだけ野暮ですね……」
ストーカーまがいに秋子に接触しようとする美樹に秋子が折れた瞬間だった。
これで、美樹は9日連続で秋子の目の前で土下座をしていた。
美樹はメカニックたちに手引きされて格納庫の中は自由に入れる。
手引きされてというのは正確な表現ではなく頼み込んで無理に入れてもらっていた。
美樹の顔からは優しげな表情は消えうせ、代わりに何か黒いものが表情を取って代わっている。
「美樹さん……姫ちゃんをどうするんですか?」
「姫なら……亡くなりました」
「えっ?」
今まで、困惑だけをしていた秋子の顔色が驚愕に塗り変えられた。
知らない事実が突きつけられて、混乱が生じる。
それまでは、牧田の為に部隊に入隊したいのだと思っていたからだ。
「可笑しいですよね? 私の夫が帰ってこないって解って、私の目の前で車に飛び込んだんです」
あの子、お父さんっ子でしたからと言って薄っすらと笑みを浮かべる美樹。
「あの子は聡い子でしたから……あの人の死を受け止め切れなかったんですよ」
そのときの情景を思い出しているのか、わからない表情を浮かべている美樹。
「あの子を助ける事も出来ません。もうこの世には居ませんから……っふふ、母親失格ですよね?」
秋子は言葉が続かない。
美樹はそのまま状況を滔々と説明し始めた。
牧田の実家を姫を連れて帰った後の事。
原因は、牧田の母親が泣き出し牧田が死んでしまった事実を姫に言ったことにある。
死んだ事は理解できなくても、帰ってこない事はわかってしまった。
美樹の娘の姫は牧田が帰ってくると思っていた。いや、信じていた。
姫がその事をたずねるともう絶対に帰ってこないと、口を滑らせてしまったのだ。
美樹は姫の前では牧田の事を何も言っていなかった。
いや、何もいえなかった。美樹自身、自分のことで精一杯になっている時期でもある。
それも仇となって、姫が飛び出したのだ。道路へと。
そして、帰らぬ人となってしまった。
説明を終えた美樹は今にも泣き出しそうで、でも目からは涙は一滴も滲んでは来ない。
目だけが悲しみの色を浮かべて、顔の表情は半笑いのような感じで美樹の表情は固まっている。
悲しみすぎて顔がどんな表情をしているのか解らないと言った感じの表情だった。
「そうですか……」
「お願いします! 私にはもうこれしか残ってないんですよ!」
「しかしですね……」
否定の言葉を発した秋子の前で、美樹はいきなり土下座をした。
頭を何度も何度も地面にこすり付ける。
「何でもします! 何でもしますから! お願いです!」
「……」
「私にはもう何も残っていないんです! だから! だから! お願いします!」
同じ事を壊れた蓄音機のように何度も何度も繰り返し言いながら、美樹は何度も何度も頭を地面にこすり付けた。
「…………………解りました。CROSS試験を受けて適正があれば私の部隊に加われるようにかけ合ってみます」
「あ、ありがとうございます」
美樹は顔を上げて、秋子を見上げる。
その目には涙が溜まっていた。
「いいですか? もし適性が無ければ、諦めて新しい生活を見つけてください。いいですね?」
「はい! お願いします!」
秋子はため息をつきながら美樹を見ていた。
(願わくば、美樹さんにCROSS適正がありませんように)
そんな事を思いながら。
しかし、その願いは叶う事は無く、新しく部隊の一員が加わる事となった。
▲▽ ▲▽ ▲▽ ▲▽ ▲▽
舞が来てからの結構日数の経ったある日。
祐一は外に出るために服を着替えていた。
佐祐理との約束があったのだ。
服を持ち帰った佐祐理はあの後、何度か祐一の元へと尋ねてきている。
そのときにした約束で、町に用が出来たのだ。
着替えている祐一の右肩の肩甲骨の辺りには青いタトゥーのような物が4つある。
一つは大きく、残りの三つは小さかった。
これは、祐一がGE−13であると言う識別票である。
舞も同じ部分に小さい物が7つ入っている。
着替えている祐一がその動作を止めずに口を開いた。
「おっさん。覗き見は悪趣味だぞ」
「いやはや、坊主にこの距離で気が付かれるとはな……腕が落ちたかな」
「以前の俺だったら絶対に気がつかなかったね」
苦笑して頬をかく石橋に、素早く服を着てそれに愛想笑いを浮かべる祐一。
「良く俺がここにいると分かったね」
「有夏がな、心配だから見に行ってくれって」
「そう……それで何か用?」
「お前さんの探している相沢祐治は多分「死んでいる?」」
石橋が言わんとした事を先に言う祐一。
それにある程度予想がついているといった顔を返す石橋。
「まぁ、そうだ。多分という憶測の域は出ないけどな」
「俺も殆どだけど」
「その根拠は?」
「研究施設の事故。責任者、相沢祐治が多すぎる。ここ7年間に27件」
祐一は石場に向かって説明を加えていく。
「相沢祐治は馬鹿じゃない。エリアOの専属で、しかも表には決して出なかった。いや、出れなかった。
しかし、相沢祐治の存在は面白いほどごまかしには向いている。エリアOでの研究所の一件で一躍有名人に仲間入り。
エリアOの役人で、上級職の人間は世界政府の粛清を恐れて他のエリアへ何かを持って移住をせざる終えない。
それがCROSSが全エリアに配備されている結果でもある。
その中に相沢祐治を隠れ蓑に出来ると考える奴が居てもおかしくない。
どのエリアもエリアOと同じ道を辿りたいとは思わないからな。
だから、研究をしていた責任者は相沢祐治だったって言い訳するのさ。
よく調べてみたら相沢祐治だったてね。もし生きているなら何らかのアクションがあるはずだがそれも無い。
同じ時期に起こった事故でもエリアがものすごく離れている場所も有ったしね。
多分、今はエリアOか、その周辺で殺されて冷凍保存でもされているんじゃないか?」
「驚いたな……では、何で相沢祐治は冷凍保存されていると思ったんだ?」
「まずはCROSSのせい。あれははっきり言ってブラックボックスだから。
何がどうなって動いているのか誰も解らないんじゃないか?
後は適正ランクが相沢祐治のDNAを基準に作られているのでは無いかって思われている節が有るから。
それで未だに冷凍保存されている理由が、相沢祐治の体には爆弾が埋め込まれているから」
「それは、初耳だ……」
「笑いながら言ってたよ。もし僕を殺したら当たり一面を巻き込むよって。
相沢祐治に爆弾を埋め込んだ研究室の職員なら止め方を知っているんじゃないのか?」
「そうなるとエリアOの研究者が手引きか何かをして監禁しているか殺しているかという結論に向かうわけだな?」
「おっさんの推論は?」
複雑な笑みを浮かべる石橋。
「殆ど同じだ……では坊主は何の為にこのエリアに居るんだ?」
「残りの、いや最後の久瀬圭吾を殺すためですよ。まだあれだけが生きている」
「そうか……ここは久瀬の出身エリアだったか。ではここでお別れだな」
「わかりました。母さんによろしく言ってください」
石橋は苦笑しながら外に出て行く。
祐一もその姿を見送ってから、外に出て、商店街の方へ足を向けた。
To the next stage
あとがき
もうそろそろ、話を進めないとなんて焦っています。どうもゆーろです。
何だか書いてて(特に前半部分ですね)延びたなぁって思いました。
予定なら、佐祐理さん辺りと祐一君がイチャイチャするはずだったんですけど……
ともかく、ここまで読んでいただいてありがとうございました。これからもよろしくお願いしますね。ゆーろでした。
管理人の感想
ゆーろさんからSSを頂きました。
祐一の過去が大体明かされましたか。
予想以上に壮絶というか。
舞はホント幸せだったんですね。
そりゃあ良心の呵責に苛まれるでしょう。
ロストしたGEナンバーは、やはり後に……?
復讐は戦争の常ですが、実際目の当たりにすると切ないですね。
牧田夫人は被害者として最悪の状態。
敵討ちでやばい事にならなければ良いんですけど。
祐一と久瀬(多分父)とはどんな関係でしょうか?
そして佐祐理さんとのラブはあるのか?(笑
次回以降に期待しましょう。
感想は次の作品への原動力なので、送っていただけると作者の方も喜ばれると思いますよー。
感想はBBSメール(yu_ro_clock@hotmail.com)まで。(ウイルス対策につき、@全角)